「地獄巡り?」
「そ、地獄巡り」
霧の湖の畔に建つ、悪魔が棲む館、紅魔館。その一角である大図書館の主、パチュリー・ノーレッジは、友人であり、この館の主であるレミリア・スカーレットの言葉に首を傾げた。
それは事の発端の二日前。二月一日午後七時三分。全員で食卓を囲み、その日の夕食であるグリーンピース付きチーズカレードリアの熱を冷ましている最中に、ふとパチュリーに振られた話題であった。
「前に言ってたじゃない、旧地獄の温泉の話」
「ああ、あれね……」
何ヶ月前の話だったか。地霊異変の際にパチュリーは、彼女にとって目の上のたんこぶである、泥棒を副業とする魔法使い、霧雨魔理沙に異変解決を依頼し、そのサポートをしたことがあった。
パチュリーは、ああなるほど、と思った。吸血鬼であるレミリアが、「地獄」などというワードに興味を抱かぬはずが無い。ただでさえ太陽のお陰で出不精なのだ。それが陽の光が届かぬ地下にあると知ったならば、行きたいと思うのは当然であろう。
「でも、何でまた今更?」
行きたいのなら、異変後にすぐに行けばいい。パチュリーにとっては、そこが疑問だった。
「ついでに紅魔館の連中も羽を伸ばさせてやろうと思ってね。妖精メイド達には休暇を取らせるわ」
レミリアにしては粋な計らいだ。ようやく好みの温度まで下がったであろうカレードリアをスプーンで掬いながら、彼女は続きに耳を傾ける。
「とりあえず大体のメンバーには話をしたんだけど、パチェにはまだ言ってなかったから」
なるほどそういうことか。パチュリーは納得する。
「で、面子は?」
テーブルを囲む同居人。悪魔の妹、フランドール・スカーレット。メイド長、十六夜咲夜。一応門番、紅美鈴。修行中図書館秘書、小悪魔。計四名に目を配りながら、パチュリーは問いかけた。
「私は勿論行きますよ! 温泉は乙女のオアシスですから!」
どんな根拠か知らないが、美鈴は行くらしい。
「お姉様だけ外に出るなんてずるいわ! 私も旅行するもん!」
まあ、フランならそう言うだろうと彼女は思った。
「地獄って、ちょっと興味あったんですよ。だから私も」
小悪魔が興味を示すのは、ちょっと意外だった。尤も、ただの温泉目的であるのを誤魔化している可能性はあるが。
「館を無人にするわけにいきませんから、私は残ることにしました」
咲夜は相変わらず堅物だ。
「気にしなくていいわ咲夜。異変の時に旧都のことは大体理解したから、私は興味ないし」
パチュリーは最初から興味が無かった。魔理沙のサポートをすることで、大まかな地下の理は理解することが出来たからだ。そして、彼女にとって特に利のあるものは旧都には存在しない、という結論に至った。
だからこそ、咲夜は羽を伸ばすべきだとパチュリーは思った。彼女は働き者だ。たまには自分のために時間を使わせたほうがいい。
「そうはいきません。もしもの時に時を止めて、真っ先にお嬢様達に救援を要請出来るのは私しかいませんから」
「気にせず来いとは言ったんだけどねえ……」
凛とした態度で、咲夜は空になったレミリアのグラスにワインを注ぐ。その堅物ぶりには、主であるレミリアも苦笑せざるを得なかった。
パチュリーもまた、苦笑した。やれやれ彼女は私に似ているなと。一度これと決めたことは、頑として譲ろうとしない。
そう思うと同時に、いい機会だと思った。普段レミリアに半日は付きっ切りの彼女だ。レミリアと離れ離れになるのなら、ゆっくり水入らず語らうことも出来るかもしれないと。
「ま、咲夜がそう言うなら強制はしないわ。で、いつまで?」
「明後日から二泊三日よ」
相変わらず急なスケジュールを組む友人だ。予想の外まだ熱かったドリアのチーズをスプーンで弄りながら、パチュリーは軽く息を吐く。
「まあ、たまにはいいんじゃないかしら? 妹様との距離を縮めるいいきっかけにもなるし」
「そ、そんなつもりで企画したんじゃないわよ!」
「距離?」
慌てて頬を赤らめるレミリアと、言葉の意味が理解出来ていない様子のフランを見て、他の面子は小さく笑みを零した。とまあ、ここまではよかったのだが。
「……やっちゃったわ」
二月三日午前十時二十三分。紅魔館大図書館内。その場に立ち尽くすパチュリーの目の前に立つ咲夜は、同じく立っていた。
「……」
立っていた。
「……」
両手を広げた状態で。
「……」
ずーっと、立っていた。
「まさか咲夜の時間だけ止まっちゃうなんて……」
頭を掻き、天を仰ぎながら、パチュリーは大きく溜息を吐いた。
時はやや遡り、二月三日午前八時二分。
「準備は出来ましたか? お嬢様」
「子ども扱いしないで頂戴」
紅魔館玄関。膨れっ面をするレミリアを前に、咲夜は心配そうに持ち物確認をしていた。
「日傘は」
「あるわ」
「ハンカチは」
「当然」
「お着替えは」
「大丈夫だって」
「輸血パックは」
「心配無いわよ」
「歯磨きセットは」
「いや、だから……」
「赤マムシエキs」
「だから心配無いわよって最後の必要!?」
こんな具合である。普段付きっきりなだけに、どうしても不安なのだろう。
「それくらいにしときなさい咲夜。美鈴もいるし、よっぽど馬鹿騒ぎしない限りは大丈夫よ」
このままでは何分経っても出発出来そうになかったので、パチュリーは半ば強引に咲夜を引き剥がす。
「安心して待っていてください咲夜さん。お嬢様と妹様には、この私がついているんですから!」
「だから心配なんだけど」
どうだと胸を張る美鈴に対し、咲夜は釈然としない様子で溜息を吐いた。
「待っててね咲夜! お土産沢山持って帰ってくるから!」
無邪気に笑顔を作るフランに、流石の咲夜も硬い表情を崩さずにはいられなかった。ふっと小さく笑みを漏らし、レミリアは踵を返す。
「さ、それじゃあ行くわよ。悪魔の地獄巡りに」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
未だ心落ち着かぬ様子ではあったが、咲夜は頭を下げ、レミリア一行の出発を見送ったのだった。
同日午前十時九分。パチュリーはいつも通り図書館に篭り、咲夜は黙々と館内の清掃をして回っていたところだったが、
「咲夜、ちょっと来てくれない?」
二人きりの大図書館。最初に動いたのはパチュリーだった。
(パチュリー様から声をかけるなんて珍しい……)
ちょうど掃除場所を図書館へと移そうとしていた矢先、ドアノブをピカ○ルで丹念に磨いていた咲夜は意外だなと思いながらも、図書館入り口から顔を覗かせるパチュリーの元へと足を運んだ。
「何ですこれ?」
「見てのとおり、魔法の実験よ」
図書館の床には、人一人が立てる程度の広さの円が描かれていた。咲夜には解読不能な文字や図形が描かれたそれは、所謂魔方陣と呼ばれるものである。
「ちょっとこの上に立ってもらいたいんだけど」
どうやらパチュリーは咲夜を実験台にしたいようだ。人使いの粗い人だ。咲夜は想思ったが、パチュリーの本音は違った。とりあえず会話をする何かしらのきっかけが欲しかっただけなのだ。正直、今目の前に描かれた魔方陣なんてとうの昔に得た基礎知識の一つに過ぎない。
「いったいどんな魔法ですか?」
「咲夜がくさやになる」
「絶対嫌です」
「冗談よ。入るのは私」
流石に少し冗談がきつかったらしい。あからさまに咲夜が嫌な顔をしたので、パチュリーはすぐに本題に差し掛かることにした。
「パチュリー様がくさやになるんですか?」
「なるわけないでしょ。これはあらゆる攻撃を跳ね返す術式よ。効果は一回だけだけど」
一瞬自分がくさやになるところを想像してしまったのか、パチュリーもまたあからさまな顔をしてしまったが、落ち着いて説明を続けることにした。
「これがあれば魔理沙のマスタースパークも当然跳ね返せる。少しは防犯対策に役立つんじゃないかなって」
勿論建て前だ。あの泥棒の技一つを返せたくらいで、彼女の犯行を防ぐことなど到底出来やしない。
「ま、見てなさい」
魔方陣の上に立ち、ぶつぶつとパチュリーは呪文を唱え始める。それに呼応するように、足元の魔方陣は淡いエメラルドグリーンの光を放ち、パチュリーを包み込んだ。
「とまあ、これで術は完成なんだけど」
「跳ね返す相手がいないと」
どうやら咲夜はパチュリーの意図を理解したらしい。誰かに攻撃をしてもらわない限り、その術が本当に完成したかの確認が出来ないのだ。
「でも跳ね返されたら私が危ないじゃないですか」
咲夜の意見ももっともだ。投げたナイフが自分に襲い掛かってくることが分かってるのに、敢えて投げるような馬鹿な真似を進んでするメリットなど、あるはずがない。
「何もナイフを投げる必要はないわ。跳ね返すことが出来るのは、ナイフだけじゃないんだから」
「……なるほど、そういうことですか」
パチュリーの言葉に少し考えさせられたものの、咲夜は理解したらしい。そう、何でも跳ね返せるのならば、傷がつかない妨害をすればいいのだ。咲夜にはそれが出来る。
「大丈夫。止まってる間に悪戯したりはしないから」
悪戯をすること自体に意味がない。意味がないことをすることを、パチュリーは好まない。それを知っているからこそ、咲夜は彼女の言葉を信用し、一枚のスペルカードを取り出した。
「それでは、使わせていただきます」
いちいちお辞儀をするあたり、本当に咲夜は堅物だなとパチュリーは内心苦笑する。
「咲夜の世界……」
咲夜がその両手を広げた瞬間、空気が凝縮されるような、温度が一気に下がるような、空気が一気に乾燥するような、そんな気配をパチュリーは感じた。今まで目の前で使われたことのない、自身に向けられた時間停止。これはこれで貴重な経験だなと、パチュリーは思った。
「……」
「……」
そして、パチュリーの時は止まらなかった。いや、元々止まったかどうかなんてパチュリーに分かるはずがない。ただ、目の前で腕を広げたまま微動だにしない咲夜を見て、パチュリーは確信したのだ。
「攻撃に効くのは分かってたけど、時間にまで効果があったのね。これはこれで収穫だわ」
館内に置かれた椅子に腰掛け、パチュリーは筆を執る。この結果を記録として残すためだ。止まったままの咲夜は少し滑稽に見えたが、時間がいずれ解決してくれるだろう。
「……つまりこの魔法は物理的攻撃のみではなく、空間、環境の変化にも対応しており」
事細かに実験結果を書き留めていく過程で、パチュリーは違和感を覚えた。
(……静かね)
当然だ。咲夜の時間が止まっている以上、この場にはパチュリー以外誰もいないことと同じなのだ。
(……じゃなくて!)
ガタンっと、思わず音を立ててパチュリーは立ち上がった。もしかして自分は、とんでもないミスを犯してしまったのではないかという不安に駆られたからだ。そして視線の先に映る咲夜の姿を見て、その不安は次第に現実味を帯びてきた。
(咲夜の時間……いつ動くの!?)
記録を書いていた僅かな時間とはいえ、既に一、二分は経過したはずである。目の前に置かれた異常事態を目にしながら、パチュリーは冷静に分析を始めていた。
(咲夜の世界は咲夜以外の時間を止める効果がある。つまり解除の権限を持っているのは咲夜だけ……だけど咲夜も永遠に時を止めることは出来ない。咲夜にも限界が――)
ここまで考えて、パチュリーの表情が固まった。
(権限を持っている咲夜が動かない以上、咲夜に時は動かせない。そして咲夜の時が止まっている以上、咲夜に限界は訪れない。つまり……)
一つの結論が出た。
(止まっている咲夜の時間を動かす方法が、ない……?)
パチュリーの視線に気付くはずもなく、咲夜は両手を広げたまま明後日の方向を見ている。
「……やっちゃったわ」
そして、今に至る。
「……落ち着け私」
時間はある。レミリア達が帰ってくるのは二日後の二月五日。恐らく夕方になるだろう。まだ二日の猶予があるのだ。
咲夜は今、所謂状態異常の状態にある。その異常を治癒する術式さえ作れば、咲夜の時間も元に戻るはず。異世界の住人を呼び出したり、天変地異を操るような大掛かりなものではない。アルゴリズムは至って単純のはずだ。
午前十時四十七分。意外に解決策は早く見つかった。あらゆる効力を元に戻す術式の魔導書である。
(さっきの反射術式と同じ、記述型ね。となると問題は……)
記述型。所謂床に魔方陣を描き、詠唱をすることで効力を発揮する魔法の形式である。陣の形と詠唱さえ間違っていなければ誰にでも簡単に扱うことの出来る、初心者向けの魔法形式である。しかしこれには一つデメリットがあった。それは、
(材料か……)
魔方陣を作るためには、当然その陣を描くための材料が必要だ。即ち塗料である。魔法は科学に近い。紙で作った機械に電気が流れないのと同じように、鉛筆で魔方陣を書くだけで魔法が出るというわけではないのだ。
(少量の鉄粉に血液と軟水、アミノカラメルに青色三号、カロチノイド、術者の毛髪、オロナ○ンC、……)
このあたりは問題なかった。実験に必要な道具は、あらかじめ揃えてあるからだ。しかしその魔導書に書かれた材料のうちの一つが、パチュリーの行く手を阻んだ。それは、紅魔館には恐らく置いていないであろう物だったからだ。
(これは……助っ人が必要ね)
しかしパチュリーはその材料を見た瞬間、思い浮かんだ顔があった。その材料の専門家である。
午後一時三分。自分で昼食を作るのは久しぶりであったが、パチュリーは適当に食事を済ませ、その助っ人の到来を待っていた。
別に知らせはしていない。そいつは、大体決まった時間にここに来るからだ。
「……来たわね」
館内から、こちらに近付いてくる足音が聞こえる。自分で淹れた渋い紅茶に顔を歪ませながら、パチュリーはその来訪者の到来を迎え入れた。
「ようパチュリー、今日はなんだか静かだな、て……ああん……?」
現れたのは泥棒魔法使い、霧雨魔理沙。入るなりマネキンと化している咲夜を見つけ、彼女は目を細くする。
「そろそろ来る頃だと思ってたわ」
「待っててもらえたとは光栄だぜ。でもこれは一体なんなんだ? 等身大咲夜人形か?」
「そうだったならどれだけよかったかしらね……」
つんつんと咲夜の顔をつつく魔理沙を見ながら、パチュリーは溜息混じりに説明を始めた。
午後一時五分。大まかな説明を聞いた魔理沙は、めんどくさそうに顔をしかめた。
「そりゃーまた随分な失敗をしたもんだな。おたくのお嬢様にバレたらやばいんじゃないか?」
「だからそうなる前に何とかしたいのよ。で、今回は魔理沙にも協力してもらいたいの」
「協力って言ってもなあ……」
渋る魔理沙だが、ここで彼女を逃がすわけにはいかない。パチュリーは魔導書を開き、説明を続ける。
「魔理沙にしか探し出せない材料なのよ。これ」
「あん……?」
元々好奇心の塊である魔理沙だ。自分だけと言われれば、自然と興味が引かれる。その頁をじっくりと読み、魔理沙は納得する。
「なるほど、「シニンダケ」か」
「キノコ専門家の貴女なら分かるでしょ?」
「専門家になったつもりは無いが、分かるぜ」
少し自慢げに、魔理沙は黒い帽子の鍔を弄る。普段パチュリーには小言しか言われないだけに、頼られると悪い気がしないのだ。
「シニンダケ。冬虫夏草に似た見てくれの悪い茸だな。着床、発芽、菌糸成長、菌糸体、形の形成までの条件がすごく厳しい茸だが……成長は恐ろしく早い。多分一日二日で立派な茸になるぜ」
「上出来ね」
正直ここまで詳しいとは思ってなかったので、パチュリーは珍しく興味深げにその話に耳を傾けた。
「まあ、要するに胞子を採取して……」
魔理沙は咲夜の目の前でしゃがみこみ、
「最適な環境下で育てることさえ出来れば簡単だぜ」
咲夜のスカートを摘んで持ち上げた。
「なるほど、つまり胞子さえあれば……って何してんの!?」
さも自然に会話しながら不自然なことを始めたので、パチュリーは突っ込むのが遅れた。
「何って、シニンダケのことを分かりやすいように説明しながら咲夜のスカートをめくってるんだが?」
「誰が詳細を説明しろって言ったのよ! なんで咲夜のスカートめくってるのか聞いてるの!」
「紅魔館のメイド長のパンツをノーリスクで拝める機会なんて滅多に無いぜ?」
「そんな機会いらないわよ!」
「そんな怒るなよ。冷静にならなきゃミスが起こるっていつも言ってるのはパチュリーだろ? そんなんじゃこの熊さんパンツのメイドを助けられないぜ?」
「熊さん可愛いわね! でも可哀想だからやめなさい!」
とりあえず咲夜の前で合掌する魔理沙を引き剥がし、パチュリーは交渉を開始する。
「と、とにかくこの茸がないと咲夜を元に戻せないのよ。協力してもらえる?」
「運がいいぜパチュリー。その茸の胞子なら、家に保管してあるぜ?」
それは確かに幸運だ。予想よりだいぶ上手く話が進み、パチュリーもようやく安堵の表情を浮かべるが、
「協力してやってもいいが……条件がある」
予想はしていた。霧雨魔理沙がボランティアでこんな仕事を引き受けるはずは無い。とはいえ、パチュリーもなりふり構ってはいられない。
「分かってるわ。何冊欲しいの?」
彼女のことだ、当然本を要求してくるだろう。パチュリーはそう思ったが、
「いや、本はいらん」
意外な返答だった。そして魔理沙の口から出された条件は、
「その代わり、茸が生長するまでの間、咲夜の管理は全面的に私がする」
「な……!?」
あまりにも予想外な条件だった。
「パチュリーの大事な本が減るわけでもないし、いい取引だと思うんだが?」
確かにいい取引だ。正直十数冊奪われると思っていたから、この条件は美味しい。しかし不安はある。つい今しがた堂々と咲夜の熊さんを拝んだ魔理沙だ。今後何をしでかすか不安でならない。
「さ、どうする?」
パチュリーは迷った。迷った末彼女が選んだ答えは、
「……分かった、条件を飲むわ」
どの道魔理沙を頼る以外に、咲夜を助ける術が無いのだ。パチュリーの選択肢は、一つしかなかった。
「よーし、そうなったら今日から二泊三日、お世話になるぜ? パチュリー」
「は……?」
パチュリーは、最初魔理沙が何を言っているのか理解出来なかった。
「咲夜を管理しなきゃいけないんだから、私がここに残るのは当然だろ?」
そう、パチュリーは完全に魔理沙の掌で踊らされていたのだ。
「あ、あんた最初っからここに居座るつもりだったのね!?」
「いやー助かるぜ。最近暇だったからなあ。紅魔館でお泊りだなんて、本読み放題じゃないか。よろしく頼むぜ咲夜」
本を奪われないにしろ、魔理沙は数十冊の魔導書を好きなだけ読み漁るだろう。炊事も当然パチュリーにやらせるだろう。
「ハイ、ヨロシクオ願イシマス、魔理沙サン」
「人んちのメイドで腹話術するな!」
そして思う存分、咲夜で遊ぶ気だ。
「にっひっひ、こりゃあ楽しくなってきたぜ」
二月三日午後一時十八分。パチュリーの長い長い三日間は、ここからスタートするのであった。
どうなるか楽しみにです
後編も楽しみにしています
熊パン……。
(´ω`)……。
( ゚ω゚)カッ