(一)
ルナサ・プリズムリバーが手袋を脱ぐと、中は真っ赤で、血に塗れていた。
「ふむ」
ルナサはうなずく。
今日はとても寒い日で、吹雪だった。飛んでいると空中に雪が舞い、少し先も見えないような天気だったから、日課の楽器の練習を外ではなくって家の中でやろうと思って、帰ってきたのだった。
リリカなんかは、「わざわざ外に出なくたってそんなのわかるじゃん。バカ姉」なんて言うだろう。でも、ルナサは体験主義者で、じっさいに試してみないことには、何事についてもほんとうのことはわからないし、きちんと飲み込むこともできないと思っていた。
だから、今目の前にある、血に塗れた自分の手も、ほんとうのことかどうかあやしいと思っていた。
なにせ、ルナサは騒霊だ。血なんて流れていない。
霊的なものか、念的なものか、なんと言っていいかよくわからないし、名前が付いているのかもあやふやなものだけど――とにかく、自分を構成する、なんらかの質料因には、血なんて含まれていないのだと考えていた。
でも、見たところ、血が流れているのはたしかだ。台所に行って、手を洗った。赤い血が肌から離れて、ずるずると水に混じり、流れていった。蛇口から出た透明な水が血の色よりは少し薄い色の赤い水になって、かわりに、ルナサのもともとの肌色の手が見えてきた。真っ白なメルランの肌、少し浅黒いリリカの肌とくらべると、ルナサの肌は若干黄色みがかっていて、髪の色ともあいまって、月の光を浴びているように見える。
人差し指と中指の爪の間から、血がとめどなく流れ出している。ルナサは気分が悪くなった。
手当をしないといけない。ティッシュペーパーを傷口に当てて、おさえつけ、救急箱を取ろうとした。救急箱は棚の上にあって、手を伸ばしただけでは届かないから、踏み台になるものが必要だった。考えているうちに、ルナサは面倒になってしまって、たぶんそれぞれの部屋にいるはずの、どちらかの妹を呼びだそうと考えた。
そのとき、気づいたのは、自分たちは騒霊で肉体がないから、怪我のしようもないのに、どうして救急箱が用意されているのかという疑問だった。
誰も使わないし、使うような場面が来ることは絶対にないのに、そもそもあることがおかしい。けれど自分はそういう、決して必要のないものが、この家にあることを知っているし、一度も使ったことがなくても、それがある場所を知っている。
夢を見ているのかな、と思った。夢であれば、自分が血を流しているのも説明がつくし、こうして頭が回らず、何もできずに左手で自分の右手の指をつかんで、じっとして時間が過ぎていくのをただ待っているのも、さして不思議ではないのかもしれない。
とてとて階段を踏む音がして、妹が、二階から降りてきた。リリカのほうだった。
「お姉ちゃん、何してるの」
ルナサはたどたどしく、血が出ていて、手当をしなければならないの、と伝えた。
リリカはふうん、とてきとうな返事を返しただけで、何もしなかった。冷蔵庫をあけて、アイスを取り出す。寒いのに、リリカはアイスキャンディーが好きで、一日に三本は食べるのだ。
「リリカ、手当をして」
「いいけど、掃除はルナ姉がしてね」
リリカが指し示すのにしたがって、自分の指を見ると、指に当てて、きつく握りしめていたティッシュが、真っ赤に染まった血のかたまりになっていた。形をとどめていられないほどぐずぐずになった紙から、許容量を越えて、ルナサの血液がどぼどぼとあふれ出していた。
血は腕をつたい、ひじのところに来ると重力にしたがって、床にぽたぽた落ちていっている。それに気づいた瞬間、指からどばっと、とめどない量の血液が爆発するように流れだした。
床一面が血に浸されて、ルナサの足も、リリカの足も血で赤くなった。もともと赤いリリカの靴が、血の赤黒さを加えて、肉が腐ったような色になった。自分の血を、これほどまで多く見たのははじめてで――たぶん、生きているころのルナサ・プリズムリバーを勘定に入れても――ルナサはとても、気分が悪くなってしまった。気が遠くなって、失神してしまいそうだった。
「こりゃだめだ」
リリカが言った。メル姉ー、ちょっと来てー、と階上に声をかける。どったんばったん、音を立てて、メルランが降りてきた。姉を呼びつけるとは、何事よ、とちょっと怒っている。服が乱れているところを見ると、寝ていたのかもしれない。
血に染まって、真っ赤になった台所を見て、メルランはなにやら、うっとりしたような表情になった。
ルナサを見つめて、お姉ちゃん、お盛んね、とかよくわからないようなことを言う。早く止めて、とルナサは搾り出すような声をあげた。
はーい、と言って、メルランはルナサの指を押さえていたティッシュを取り上げた。人差し指と中指の先端から、ホースから水が出るみたいにぴゅーぴゅー血が出ていた。床に溜まった血は、台所を越えて、居間のほうにもあふれ出ている。リリカやメルラン、それからルナサ自身の、足首までを浸すほど溜まっていた。動くたびに、ぺちゃぺちゃと音がする。メルランとリリカは、それぞれルナサの人差し指と中指を手に取り、口にくわえた。
妹たちの口の中に自分の血が噴出し、口腔をいっぱいにして、唇からあふれ出るのをルナサは見た。妹たちの喉が鳴っている。メルランとリリカが、ルナサの血を飲んでいた。ごくごくと飲んでも、飲み切れない量が、ふたりの妹の口からこぼれ出し、喉や胸を赤く染めていく。
いつの間にか、ルナサは泣いていた。自分の頬に、涙がつたうのがわかった。けれどそれも、もしかしたら、赤い色をしているのかもしれないと思った。
◆
「……という夢を見たの」
「夢かよ!」
リリカがつっこんだ。椅子から立ち上がって、頭をかかえるくらいの勢いで、けっこう声を荒らげていた。
朝っぱらから起こされて、そのうえこんな陰鬱な内容の夢を話されてはたまらない。この姉はほんと暗くて、何を考えているのかわからない。
メル姉みたいに、いつもけらけら笑っていろとは言わないけど、もう少し物事の明るい面を見れば良いのだ。
「でも、リリカ。疑問に思ったことはない? 私たちがこのままで、どうして存在していけるのか」
「何のことよ。いいから、もう一度寝て、今度はいい夢を見るといいよ」
「今日は寒いわね」
「湯たんぽほしいなら、貸してあげるよ。お湯沸かすのは自分でやってね」
「何と比べて寒いんだろう」
姉が何を言っているのか、リリカにはわかるような気がしていた。けれど、考えてもしかたのないことだと思っていた。
窓の外を見ると、雪が降っている。ルナサが夢で見たような吹雪で、リリカなら今日は絶対、外に出ないような天気だ。
凍えて死んでしまう。
たとえ、自分たちが騒霊で――よくわからない存在で、はかったことはいちどもないけれど、もしかすると、体温がないんだとしても――やっぱり、寒いものは寒いのだ。
寒いという経験を、自分たちは知っている。
いつ、覚えたことなんだったか。
「夢の中でね」
「うん……もういいよ」
「救急箱を取れなかったとき、私は飛べばよかったんだ、と今、話しながら思ったのよ」
「そうだね。お姉ちゃんバカだね」
「生きているときは、飛べなかった」
お姉ちゃんはほんとバカだから、よけいなことを考えるんだ、とリリカは思った。
早く話題を変えたかったので、メル姉がすぐに戻ってくればいい、と思った。メルランは今、当番なので、朝食を作っている。
――食べたものが、消化されて、血になり肉になるのを、自分たちは知っている。
リリカは自分の指先を見つめた。こんな色だったっけ、と思った。爪の下に、ピンク色の肉が見えている。肉を赤くさせるもの。その下に流れているはずのもの。
「あっ! 痛っ!」
台所から、メルランの声が聞こえた。痛い、と姉が言ったのを、リリカは聞いた。
「指切っちゃった。手当をしなきゃ」
リリカとルナサは顔を見合わせて、台所へ急いだ。
(二)
疎の状態になって人里をただよっていると、魔理沙が豆を買っているのを見つけた。
まず、魔理沙が人里にいるのがめずらしい。霧雨道具店の一人娘は魔法使いを志して家を出たときに勘当されていて、自分でも覚悟を決めて実家には近寄らなかったから、しぜん人里に来るのもはばかられる。数ヶ月に一度、どうしてもいりようなものをまとめて買い出しに来るだけだった。今はまだ、それほどものが足りないこともないはずだが、と思って手元を見ると、炒り豆を買っているみたいだった。
時節柄、用途ははっきりとわかった。萃香はちょっと、意地悪をしてやりたくなった。ちび萃香をひとりつくりだして、魔理沙の肩の上にぽんと出現させた。
「わっ」
びっくりした声を出す。ぎゅっと首を曲げて、手乗りサイズの萃香をみとめると、魔理沙は無言で、手に持った炒り豆をひとつぶ、指ではじいてぶつけた。
「わっ」
今度は萃香が、びっくりする番だった。ちび萃香からすると握りこぶしほどもある大きさの炒り豆が、顔にくっついて、じゅっと音を立てて肌を焼いた。焼けた皮膚は黒くなって、ぼろぼろと崩れ落ち、下にある赤い肉が見えた。血がにじみ出てくる。
鬼としてはそう重い怪我でもないが、痛いものは痛い。萃香は文句を言った。
「何するんだ」
「こっちの台詞だ。お前また、覗き見みたいなことしてんのか。趣味が悪いぜ。……今から神社で、節分やるけど来るか?」
「冗談」
萃香はぱっと、また疎の状態に戻って消えた。魔理沙はむ、と声を出して、そのへんにてきとうに豆をばら撒いたが、当たった様子はなかった。
ただ魔理沙の肩に、ちび萃香が流した血の一滴が、跡になって残った。魔理沙がそれに気づいたのは、数日後、洗濯しても落ちない汚れを見つけたときだった。
◆
服についたごくわずかな一滴の血を、魔理沙はきのこパワーで抽出し、虫めがねで見なければいけないほどの小さな結晶のかたちに固めた。鬼の血。言葉にして考えただけで、とても興味をそそるしろものだった。実験材料としてはかりしれない価値をもっているし、単純に希少価値があって、魔理沙の収集欲を満たすことができた。どのようにして使うかは、まだ考えついていなかったから、ひとまず散逸しないよう、固体にしておいたまでのことだった。
けれど、その血の色はとても赤く、美しくて――この世でもっとも美しいとうがらしの色を、同じくもっとも美しいいちごとあわせて、すばらしく純度の高い透明な湖の水でまわりをおおったものを、夕陽で透かしたような――魔理沙はいっぺんで大変に気に入ってしまった。石になった血を核に、いくつかの装飾をくわえて、アクセサリーとして身につけることにした。
その片方だけのイヤリングをつけはじめて、最初の日だった。目ざといアリスが、
「あら、ちょっと都会的ね」
と、魔理沙を褒めた。アリスは専門用語でいうところのツンデレで、素直に相手を褒めることがなかなかなかったから、魔理沙はうれしくなってしまった。調子に乗って、毎日つけて出かけた。パチュリーや、ほかの紅魔館の面々も、血のイヤリングに気付いていろいろと肯定的な評価をくれたし、神社に行けば、あの霊夢までが、ちょっとびっくりしたような顔をして興味をしめした。
「ちょっと、見せてくれない」
「なあんだ、なあんだ。霊夢も、これが好きか。しょうがないなー」
「冷奴には?」
「しょうががほしいなー」
霊夢が石を手にとって、しげしげとながめているときだった。神社の居間に、煙のように白く見えるくらいに濃くなった霧がとつぜんに立ち込めて、ふたりが見ている前で一点に固まり、小鬼になった。
萃香は腰に手を当て、魔理沙と石の両方を睨みつけている。
「返せよ」
「ひさしぶりだな。お前のお豆さんの血、霊夢にも大好評だぞ」
「えっ」
「ほんと、油断も隙もない奴だな。ちょっとした火傷が何やら面倒事だ。気を許せない奴だ……ふん」
「何だ。うれしいか?」
「まあ、いらいらしてるわけじゃないね。……ねえ、返しておくれよ」
「返すったって、これもうただのイヤリングだぜ」
「馬鹿。鬼が体の一部をとられて、預けっぱなしにしておくなんて、大変な屈辱なんだぞ。取り戻せなきゃ、仙人にでもなるしかないんだ。それにこれじゃあ、私がお前に負けたみたいだろ」
「大仰なことだな。鬼の流儀もくたびれるもんだ。でも、ただじゃあ返してやらないぜ」
「わかってる。鬼と人間は、勝負をするのが習わしだ」
「萃香のお豆さんの血……」
「霊夢、あとで説明してやる。とりあえず黙っとけ」
何で勝負する、花札か、七ならべか、と魔理沙が言うと、そんなんじゃつまらない、と言って萃香はにやりと笑った。
お前がまだ経験したことのないような勝負だよ。まいったさせてやるからね。
萃香は血の石から視線を切ると、魔理沙をまっすぐ見据えた。酒を飲んでゲロを吐いているときと根本的には同じ表情だったが、それよりもいくぶんかは、好戦的で、目的に向けて能動的な様子に見えた。
こたつに入っていた魔理沙が立ち上がり、帽子をかぶり直すのを見届けると、萃香は魔理沙につつつと近寄り、手を握った。
握られたところから、魔理沙の体がほどけていき、あっという間に、萃香と同じような霧になってしまった。
◆
赤く色づいた空気の、多面体の空間の中に魔理沙はいた。視界の全体が赤いが透明度が高く、ずっと遠くまで見えるようだった。空間の中に、さまざまな光線が満ちていた。体を動かすと、その光線が複雑な角度で反射したり、屈折したりして、いたるところに赤いだんだら模様ができあがった。
むっとするにおいがした。これは血のにおい。
萃香が飛びかかってきて、すぐに魔理沙はねじ伏せられた。
のしかかられて、両手を相手の手で封じられると、小さな萃香の小さな顔が目の前にあって、ぎょっとするほど大きな目と、口があるのがわかった。腕や足や、体ぜんたいは細く、子どもにしか見えないのに、筋力が凄い。魔理沙はほとんど抵抗できなかった。
口が開く。歯と舌が見えた。萃香のそれを、こんなに間近で見たのははじめてだった。
お前に血を流してもらおう
萃香がそう言ったと思った。他のことに気を取られていて、言葉の半分をきちんと聞きとることができなかった。萃香の角が、ぱちぱちと火花を立てて、赤い空気を燃やしているように見えた。
「これか。何、心配することないよ。私の角と、空気が擦れ合って、摩擦で燃えてしまうんだ。物理学的にありえることなんだよ」
今度は、はっきりと聞こえた。大きく見開かれた萃香の目の中にも炎が灯っているようだった。角と瞳の炎が、たゆみなくずっと燃えている。
萃香の意思だけがここにある。太古の鬼の記憶が、合わせた肌と視線を通して、魔理沙に流れ込んできた。鬼と人間の関わりを、魔理沙は知らない。だから知識によってではなく、魔理沙は思い出した。
慧音ならどう言うだろうか。「歴史とは、ある総合されたものの本質的な部分への接近だ」とかなんとか、そういうことを言っていた気がする。パチュリーならどうだろうか。「すでに過去のことになっていて、そのために現在という持続の状態の中へ組み込まれて生きているものがある。それを見ることは、解体を許さないような確かで動かしがたい総体を示す」とかなんとか、そういうことを読んで聞かせてくれた。
鬼のことだ。鬼はいつかの時点で、幻想郷からいなくなった。それを人間が思い出さなくなったころに、萃香は戻ってきた。
たぶん鬼は、思い出されることではじめて鬼となれる。
魔理沙はそう考えた。
「そして私が熱くなると。魔理沙。お前は溶けてしまうんだ」
体から力が抜けた。多面体の屈折した空間の中で、赤く透明な、四角いようでやや丸みを帯びた、光のあらゆる様相を、魔理沙は見た。手と足が伸びきって、波にさらわれていくようだった。手をつないで、体がほどけたときのように、魔理沙の体のどこかが破れて、血が流れ出した。それはしだいに太い流れになって、空間を満たし、魔理沙の肌のすべてをひたしていった。
◆
目を覚ますと、博麗神社のこたつにいた。夢を見たと思った。向かいに座っている霊夢を見ると、つまらなそうな顔をして背を丸め、こたつの天板にあごを乗せている。気が抜けているにもほどがある表情だった。
「萃香、どっか行っちゃったわよ」
「何」
「知らないけどさあ。なんか、あんたはなかなかやるから、ツバつけといてやった、って言ってたわよ。何かされたの?」
「ん……ああ」
魔理沙は恥ずかしくなって、真っ赤になってしまった。
イヤリングはどうした、と訊くと、私が勝ったから、と言って、萃香が持って行ってしまったという。
負けたとは認めていないが、何だか悔しくて、恥ずかしいのは確かだった。魔理沙は肩をすくめた。あの血。
自分はたぶん、萃香の血の中にいた。そこで自分自身の血を流したから、萃香の血と、魔理沙の血は今では混じり合っている。人間の血と、鬼の血が混じり合ったとき、何が起きるんだろうか。学術的にものすごく興味深いことだった。けれど、すぐに動く気にはなれなかったから、魔理沙はこたつにより深く潜り込んで、霊夢と同じような格好になった。
背中が寒い。火鉢が霊夢の側にあって、頼んでも動かしてくれない。家主の権限を、これでもかと行使しているのだ。黙って座っていると、霊夢がパチュリーみたいなジト目になった。
「鬼の血」
「ん。ああ」
「ねえ、その、萃香のお豆さんの血って、どういうことなのよ」
「そのまんまの意味だぜ。あいつの血は美しかった」
「ふ、不潔。下ネタ」
「何がだ」
何だかあたふたしている霊夢をよそ目にして、魔理沙は服の内ポケットから、小さな巾着袋を取り出した。忘れていたわけではないが、思い出すこともなかった。これを知れば、萃香はまた、ツバをつけにやってくるだろうか。
巾着袋を開き、魔理沙はその中から、豆をひとつぶ取り出した。節分の豆撒きのときに使った豆で、霊夢にも見覚えがあったが、よく見ると、豆の片側に赤黒い染みができていた。
古い豆? と霊夢が訝しげに問うのに、これが萃香のお豆さんだ、と投げやりにこたえる。
魔理沙はその豆を、ぽいと口に放り込み、舌と歯を使って口の中でくちゅくちゅとしごいた。
ルナサ・プリズムリバーが手袋を脱ぐと、中は真っ赤で、血に塗れていた。
「ふむ」
ルナサはうなずく。
今日はとても寒い日で、吹雪だった。飛んでいると空中に雪が舞い、少し先も見えないような天気だったから、日課の楽器の練習を外ではなくって家の中でやろうと思って、帰ってきたのだった。
リリカなんかは、「わざわざ外に出なくたってそんなのわかるじゃん。バカ姉」なんて言うだろう。でも、ルナサは体験主義者で、じっさいに試してみないことには、何事についてもほんとうのことはわからないし、きちんと飲み込むこともできないと思っていた。
だから、今目の前にある、血に塗れた自分の手も、ほんとうのことかどうかあやしいと思っていた。
なにせ、ルナサは騒霊だ。血なんて流れていない。
霊的なものか、念的なものか、なんと言っていいかよくわからないし、名前が付いているのかもあやふやなものだけど――とにかく、自分を構成する、なんらかの質料因には、血なんて含まれていないのだと考えていた。
でも、見たところ、血が流れているのはたしかだ。台所に行って、手を洗った。赤い血が肌から離れて、ずるずると水に混じり、流れていった。蛇口から出た透明な水が血の色よりは少し薄い色の赤い水になって、かわりに、ルナサのもともとの肌色の手が見えてきた。真っ白なメルランの肌、少し浅黒いリリカの肌とくらべると、ルナサの肌は若干黄色みがかっていて、髪の色ともあいまって、月の光を浴びているように見える。
人差し指と中指の爪の間から、血がとめどなく流れ出している。ルナサは気分が悪くなった。
手当をしないといけない。ティッシュペーパーを傷口に当てて、おさえつけ、救急箱を取ろうとした。救急箱は棚の上にあって、手を伸ばしただけでは届かないから、踏み台になるものが必要だった。考えているうちに、ルナサは面倒になってしまって、たぶんそれぞれの部屋にいるはずの、どちらかの妹を呼びだそうと考えた。
そのとき、気づいたのは、自分たちは騒霊で肉体がないから、怪我のしようもないのに、どうして救急箱が用意されているのかという疑問だった。
誰も使わないし、使うような場面が来ることは絶対にないのに、そもそもあることがおかしい。けれど自分はそういう、決して必要のないものが、この家にあることを知っているし、一度も使ったことがなくても、それがある場所を知っている。
夢を見ているのかな、と思った。夢であれば、自分が血を流しているのも説明がつくし、こうして頭が回らず、何もできずに左手で自分の右手の指をつかんで、じっとして時間が過ぎていくのをただ待っているのも、さして不思議ではないのかもしれない。
とてとて階段を踏む音がして、妹が、二階から降りてきた。リリカのほうだった。
「お姉ちゃん、何してるの」
ルナサはたどたどしく、血が出ていて、手当をしなければならないの、と伝えた。
リリカはふうん、とてきとうな返事を返しただけで、何もしなかった。冷蔵庫をあけて、アイスを取り出す。寒いのに、リリカはアイスキャンディーが好きで、一日に三本は食べるのだ。
「リリカ、手当をして」
「いいけど、掃除はルナ姉がしてね」
リリカが指し示すのにしたがって、自分の指を見ると、指に当てて、きつく握りしめていたティッシュが、真っ赤に染まった血のかたまりになっていた。形をとどめていられないほどぐずぐずになった紙から、許容量を越えて、ルナサの血液がどぼどぼとあふれ出していた。
血は腕をつたい、ひじのところに来ると重力にしたがって、床にぽたぽた落ちていっている。それに気づいた瞬間、指からどばっと、とめどない量の血液が爆発するように流れだした。
床一面が血に浸されて、ルナサの足も、リリカの足も血で赤くなった。もともと赤いリリカの靴が、血の赤黒さを加えて、肉が腐ったような色になった。自分の血を、これほどまで多く見たのははじめてで――たぶん、生きているころのルナサ・プリズムリバーを勘定に入れても――ルナサはとても、気分が悪くなってしまった。気が遠くなって、失神してしまいそうだった。
「こりゃだめだ」
リリカが言った。メル姉ー、ちょっと来てー、と階上に声をかける。どったんばったん、音を立てて、メルランが降りてきた。姉を呼びつけるとは、何事よ、とちょっと怒っている。服が乱れているところを見ると、寝ていたのかもしれない。
血に染まって、真っ赤になった台所を見て、メルランはなにやら、うっとりしたような表情になった。
ルナサを見つめて、お姉ちゃん、お盛んね、とかよくわからないようなことを言う。早く止めて、とルナサは搾り出すような声をあげた。
はーい、と言って、メルランはルナサの指を押さえていたティッシュを取り上げた。人差し指と中指の先端から、ホースから水が出るみたいにぴゅーぴゅー血が出ていた。床に溜まった血は、台所を越えて、居間のほうにもあふれ出ている。リリカやメルラン、それからルナサ自身の、足首までを浸すほど溜まっていた。動くたびに、ぺちゃぺちゃと音がする。メルランとリリカは、それぞれルナサの人差し指と中指を手に取り、口にくわえた。
妹たちの口の中に自分の血が噴出し、口腔をいっぱいにして、唇からあふれ出るのをルナサは見た。妹たちの喉が鳴っている。メルランとリリカが、ルナサの血を飲んでいた。ごくごくと飲んでも、飲み切れない量が、ふたりの妹の口からこぼれ出し、喉や胸を赤く染めていく。
いつの間にか、ルナサは泣いていた。自分の頬に、涙がつたうのがわかった。けれどそれも、もしかしたら、赤い色をしているのかもしれないと思った。
◆
「……という夢を見たの」
「夢かよ!」
リリカがつっこんだ。椅子から立ち上がって、頭をかかえるくらいの勢いで、けっこう声を荒らげていた。
朝っぱらから起こされて、そのうえこんな陰鬱な内容の夢を話されてはたまらない。この姉はほんと暗くて、何を考えているのかわからない。
メル姉みたいに、いつもけらけら笑っていろとは言わないけど、もう少し物事の明るい面を見れば良いのだ。
「でも、リリカ。疑問に思ったことはない? 私たちがこのままで、どうして存在していけるのか」
「何のことよ。いいから、もう一度寝て、今度はいい夢を見るといいよ」
「今日は寒いわね」
「湯たんぽほしいなら、貸してあげるよ。お湯沸かすのは自分でやってね」
「何と比べて寒いんだろう」
姉が何を言っているのか、リリカにはわかるような気がしていた。けれど、考えてもしかたのないことだと思っていた。
窓の外を見ると、雪が降っている。ルナサが夢で見たような吹雪で、リリカなら今日は絶対、外に出ないような天気だ。
凍えて死んでしまう。
たとえ、自分たちが騒霊で――よくわからない存在で、はかったことはいちどもないけれど、もしかすると、体温がないんだとしても――やっぱり、寒いものは寒いのだ。
寒いという経験を、自分たちは知っている。
いつ、覚えたことなんだったか。
「夢の中でね」
「うん……もういいよ」
「救急箱を取れなかったとき、私は飛べばよかったんだ、と今、話しながら思ったのよ」
「そうだね。お姉ちゃんバカだね」
「生きているときは、飛べなかった」
お姉ちゃんはほんとバカだから、よけいなことを考えるんだ、とリリカは思った。
早く話題を変えたかったので、メル姉がすぐに戻ってくればいい、と思った。メルランは今、当番なので、朝食を作っている。
――食べたものが、消化されて、血になり肉になるのを、自分たちは知っている。
リリカは自分の指先を見つめた。こんな色だったっけ、と思った。爪の下に、ピンク色の肉が見えている。肉を赤くさせるもの。その下に流れているはずのもの。
「あっ! 痛っ!」
台所から、メルランの声が聞こえた。痛い、と姉が言ったのを、リリカは聞いた。
「指切っちゃった。手当をしなきゃ」
リリカとルナサは顔を見合わせて、台所へ急いだ。
(二)
疎の状態になって人里をただよっていると、魔理沙が豆を買っているのを見つけた。
まず、魔理沙が人里にいるのがめずらしい。霧雨道具店の一人娘は魔法使いを志して家を出たときに勘当されていて、自分でも覚悟を決めて実家には近寄らなかったから、しぜん人里に来るのもはばかられる。数ヶ月に一度、どうしてもいりようなものをまとめて買い出しに来るだけだった。今はまだ、それほどものが足りないこともないはずだが、と思って手元を見ると、炒り豆を買っているみたいだった。
時節柄、用途ははっきりとわかった。萃香はちょっと、意地悪をしてやりたくなった。ちび萃香をひとりつくりだして、魔理沙の肩の上にぽんと出現させた。
「わっ」
びっくりした声を出す。ぎゅっと首を曲げて、手乗りサイズの萃香をみとめると、魔理沙は無言で、手に持った炒り豆をひとつぶ、指ではじいてぶつけた。
「わっ」
今度は萃香が、びっくりする番だった。ちび萃香からすると握りこぶしほどもある大きさの炒り豆が、顔にくっついて、じゅっと音を立てて肌を焼いた。焼けた皮膚は黒くなって、ぼろぼろと崩れ落ち、下にある赤い肉が見えた。血がにじみ出てくる。
鬼としてはそう重い怪我でもないが、痛いものは痛い。萃香は文句を言った。
「何するんだ」
「こっちの台詞だ。お前また、覗き見みたいなことしてんのか。趣味が悪いぜ。……今から神社で、節分やるけど来るか?」
「冗談」
萃香はぱっと、また疎の状態に戻って消えた。魔理沙はむ、と声を出して、そのへんにてきとうに豆をばら撒いたが、当たった様子はなかった。
ただ魔理沙の肩に、ちび萃香が流した血の一滴が、跡になって残った。魔理沙がそれに気づいたのは、数日後、洗濯しても落ちない汚れを見つけたときだった。
◆
服についたごくわずかな一滴の血を、魔理沙はきのこパワーで抽出し、虫めがねで見なければいけないほどの小さな結晶のかたちに固めた。鬼の血。言葉にして考えただけで、とても興味をそそるしろものだった。実験材料としてはかりしれない価値をもっているし、単純に希少価値があって、魔理沙の収集欲を満たすことができた。どのようにして使うかは、まだ考えついていなかったから、ひとまず散逸しないよう、固体にしておいたまでのことだった。
けれど、その血の色はとても赤く、美しくて――この世でもっとも美しいとうがらしの色を、同じくもっとも美しいいちごとあわせて、すばらしく純度の高い透明な湖の水でまわりをおおったものを、夕陽で透かしたような――魔理沙はいっぺんで大変に気に入ってしまった。石になった血を核に、いくつかの装飾をくわえて、アクセサリーとして身につけることにした。
その片方だけのイヤリングをつけはじめて、最初の日だった。目ざといアリスが、
「あら、ちょっと都会的ね」
と、魔理沙を褒めた。アリスは専門用語でいうところのツンデレで、素直に相手を褒めることがなかなかなかったから、魔理沙はうれしくなってしまった。調子に乗って、毎日つけて出かけた。パチュリーや、ほかの紅魔館の面々も、血のイヤリングに気付いていろいろと肯定的な評価をくれたし、神社に行けば、あの霊夢までが、ちょっとびっくりしたような顔をして興味をしめした。
「ちょっと、見せてくれない」
「なあんだ、なあんだ。霊夢も、これが好きか。しょうがないなー」
「冷奴には?」
「しょうががほしいなー」
霊夢が石を手にとって、しげしげとながめているときだった。神社の居間に、煙のように白く見えるくらいに濃くなった霧がとつぜんに立ち込めて、ふたりが見ている前で一点に固まり、小鬼になった。
萃香は腰に手を当て、魔理沙と石の両方を睨みつけている。
「返せよ」
「ひさしぶりだな。お前のお豆さんの血、霊夢にも大好評だぞ」
「えっ」
「ほんと、油断も隙もない奴だな。ちょっとした火傷が何やら面倒事だ。気を許せない奴だ……ふん」
「何だ。うれしいか?」
「まあ、いらいらしてるわけじゃないね。……ねえ、返しておくれよ」
「返すったって、これもうただのイヤリングだぜ」
「馬鹿。鬼が体の一部をとられて、預けっぱなしにしておくなんて、大変な屈辱なんだぞ。取り戻せなきゃ、仙人にでもなるしかないんだ。それにこれじゃあ、私がお前に負けたみたいだろ」
「大仰なことだな。鬼の流儀もくたびれるもんだ。でも、ただじゃあ返してやらないぜ」
「わかってる。鬼と人間は、勝負をするのが習わしだ」
「萃香のお豆さんの血……」
「霊夢、あとで説明してやる。とりあえず黙っとけ」
何で勝負する、花札か、七ならべか、と魔理沙が言うと、そんなんじゃつまらない、と言って萃香はにやりと笑った。
お前がまだ経験したことのないような勝負だよ。まいったさせてやるからね。
萃香は血の石から視線を切ると、魔理沙をまっすぐ見据えた。酒を飲んでゲロを吐いているときと根本的には同じ表情だったが、それよりもいくぶんかは、好戦的で、目的に向けて能動的な様子に見えた。
こたつに入っていた魔理沙が立ち上がり、帽子をかぶり直すのを見届けると、萃香は魔理沙につつつと近寄り、手を握った。
握られたところから、魔理沙の体がほどけていき、あっという間に、萃香と同じような霧になってしまった。
◆
赤く色づいた空気の、多面体の空間の中に魔理沙はいた。視界の全体が赤いが透明度が高く、ずっと遠くまで見えるようだった。空間の中に、さまざまな光線が満ちていた。体を動かすと、その光線が複雑な角度で反射したり、屈折したりして、いたるところに赤いだんだら模様ができあがった。
むっとするにおいがした。これは血のにおい。
萃香が飛びかかってきて、すぐに魔理沙はねじ伏せられた。
のしかかられて、両手を相手の手で封じられると、小さな萃香の小さな顔が目の前にあって、ぎょっとするほど大きな目と、口があるのがわかった。腕や足や、体ぜんたいは細く、子どもにしか見えないのに、筋力が凄い。魔理沙はほとんど抵抗できなかった。
口が開く。歯と舌が見えた。萃香のそれを、こんなに間近で見たのははじめてだった。
お前に血を流してもらおう
萃香がそう言ったと思った。他のことに気を取られていて、言葉の半分をきちんと聞きとることができなかった。萃香の角が、ぱちぱちと火花を立てて、赤い空気を燃やしているように見えた。
「これか。何、心配することないよ。私の角と、空気が擦れ合って、摩擦で燃えてしまうんだ。物理学的にありえることなんだよ」
今度は、はっきりと聞こえた。大きく見開かれた萃香の目の中にも炎が灯っているようだった。角と瞳の炎が、たゆみなくずっと燃えている。
萃香の意思だけがここにある。太古の鬼の記憶が、合わせた肌と視線を通して、魔理沙に流れ込んできた。鬼と人間の関わりを、魔理沙は知らない。だから知識によってではなく、魔理沙は思い出した。
慧音ならどう言うだろうか。「歴史とは、ある総合されたものの本質的な部分への接近だ」とかなんとか、そういうことを言っていた気がする。パチュリーならどうだろうか。「すでに過去のことになっていて、そのために現在という持続の状態の中へ組み込まれて生きているものがある。それを見ることは、解体を許さないような確かで動かしがたい総体を示す」とかなんとか、そういうことを読んで聞かせてくれた。
鬼のことだ。鬼はいつかの時点で、幻想郷からいなくなった。それを人間が思い出さなくなったころに、萃香は戻ってきた。
たぶん鬼は、思い出されることではじめて鬼となれる。
魔理沙はそう考えた。
「そして私が熱くなると。魔理沙。お前は溶けてしまうんだ」
体から力が抜けた。多面体の屈折した空間の中で、赤く透明な、四角いようでやや丸みを帯びた、光のあらゆる様相を、魔理沙は見た。手と足が伸びきって、波にさらわれていくようだった。手をつないで、体がほどけたときのように、魔理沙の体のどこかが破れて、血が流れ出した。それはしだいに太い流れになって、空間を満たし、魔理沙の肌のすべてをひたしていった。
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目を覚ますと、博麗神社のこたつにいた。夢を見たと思った。向かいに座っている霊夢を見ると、つまらなそうな顔をして背を丸め、こたつの天板にあごを乗せている。気が抜けているにもほどがある表情だった。
「萃香、どっか行っちゃったわよ」
「何」
「知らないけどさあ。なんか、あんたはなかなかやるから、ツバつけといてやった、って言ってたわよ。何かされたの?」
「ん……ああ」
魔理沙は恥ずかしくなって、真っ赤になってしまった。
イヤリングはどうした、と訊くと、私が勝ったから、と言って、萃香が持って行ってしまったという。
負けたとは認めていないが、何だか悔しくて、恥ずかしいのは確かだった。魔理沙は肩をすくめた。あの血。
自分はたぶん、萃香の血の中にいた。そこで自分自身の血を流したから、萃香の血と、魔理沙の血は今では混じり合っている。人間の血と、鬼の血が混じり合ったとき、何が起きるんだろうか。学術的にものすごく興味深いことだった。けれど、すぐに動く気にはなれなかったから、魔理沙はこたつにより深く潜り込んで、霊夢と同じような格好になった。
背中が寒い。火鉢が霊夢の側にあって、頼んでも動かしてくれない。家主の権限を、これでもかと行使しているのだ。黙って座っていると、霊夢がパチュリーみたいなジト目になった。
「鬼の血」
「ん。ああ」
「ねえ、その、萃香のお豆さんの血って、どういうことなのよ」
「そのまんまの意味だぜ。あいつの血は美しかった」
「ふ、不潔。下ネタ」
「何がだ」
何だかあたふたしている霊夢をよそ目にして、魔理沙は服の内ポケットから、小さな巾着袋を取り出した。忘れていたわけではないが、思い出すこともなかった。これを知れば、萃香はまた、ツバをつけにやってくるだろうか。
巾着袋を開き、魔理沙はその中から、豆をひとつぶ取り出した。節分の豆撒きのときに使った豆で、霊夢にも見覚えがあったが、よく見ると、豆の片側に赤黒い染みができていた。
古い豆? と霊夢が訝しげに問うのに、これが萃香のお豆さんだ、と投げやりにこたえる。
魔理沙はその豆を、ぽいと口に放り込み、舌と歯を使って口の中でくちゅくちゅとしごいた。
三姉妹の血の話については、血を見るのは痛いことだけど、そうすると生きていることを感じられて、騒霊としての自己が曖昧になるのかな、とか思いました。血への憧憬というか恐れというか、そういうルナサの感情は、夢の中で見た救急箱の場所の記憶と同じで、既に置いてきたものを見ているような、そんな気分になりました。
節分ネタの方は。血の混じりというか、種族的人間から言えば、要は子作りですよね。そういうのを間接的にやっちゃうというか。恋愛要素的なものは読み取れなかったので、そうではないのだろうな、とは思うのですけれど。萃香から奪った血を見せびらかして歩くというのは、萃香からすればそういう関係で、女性的羞恥心を煽られるのかな、とか作者的に意図していないだろう部分を邪推したりしました。
邪推ついでに言えば。萃香がああいう方法を取ったのは、外で血を流す姿を見られるのが嫌だろうと思ったとか、外で魔理沙の身体に傷をつけるのが悪い気持ちになったとか、そういう優しさなのかな。とか考えたりしながら読んでました。
とても良かったです。
ルナサ姉さんに関して言えば問題は"さめている"ことにあったのだと思います。血液というアツいものを流しながらどこまでもさめた目で事態を受け入れる。そのさめ具合はおそらく環境と一緒になった時点でオシマイで、無意識下でそれを感じ取っている、ようにも読み取れます。しかしながらやはり寒いものは寒い、と(アミノ酸で構成されているかどうかはともかく外界と自己を別つ意味での)「肉体」から断言する・できるのは妹×2という同じ気質ながら異なる存在という、目に見える異質物があるから・比較対象があるからなのではないかな、と思いました。早い話が姉妹一緒がいちばん良いということですね。
長くなったので萃香・魔理沙のほうは省略。短いながら読み応えがありました。
次も期待しとるけぇ
>10 様
萃香の羞恥心や、魔理沙への気遣いについては、ほんとに作者的に意図していない部分でしたね。驚きました。
けれどそう言われると、成る程そうなんだろうな、というふうに思えてしまいます。
鬼にしても騒霊にしても、原作設定がけっこうあいまいで(というかあんまり無い)、そのため二次創作者としての解釈が必要であり、ウデの見せ所になると思うんですが、なかなかつかみづらく、書いてるうちに流れができていったような感じの作品になりました。
なのでちょっと、コメントいただいて、気後れしている部分もあるんですがw……下の保冷剤さんのコメントについてもそうですけど、作者が思いもよらなかった点を指摘されるということで、作品としては出来がよく、成功しているといえるのかな? と、逆向きな感じですが、思ってしまいました。
ありがとうございました。
>保冷剤さん
基本的に、血を大事にした作品になりました。ルナサ姉さんが冷めていて、それが問題になっている、というのは、これも言われて納得したところです。それでこれにかぎった話ではなく、僕の作品についてはなんとなくぜんぶに共通してそんなところがあるかな、と考えてしまいました。
そこでカウンターとしての妹たちがいて、これがシンプルに実感として肉体をとらえている、というのも、成る程と思うところでして……なんだか作品解題をしていただいて、いろいろなことに気付かされる感じです。
萃香・魔理沙は話の必然性はともかくとして、シチュエーション的に言うと、レミリア・咲夜さんのペアで書いたほうが似合ってるような場面だったかな? とちょっと反省したりもしましたけど、どんなもんでしょうかね。
ありがとうございました。
不思議な感じになりました
それが存在証明となるのか、または存在がある為に血があるのか。
血ネタでありながら、割りと血と縁がなさそうなグループを選択している点に、面白みを感じる。
そして、すいかのおまめさんれr(ry
マジックアイテムでの妹が生み出した騒霊にどのくらい記憶が反映されるのか。
なかなか考えさせられた。
おまめの話はとかく興奮した!!おまめ!!