魔理沙には、昔からずっと欲しい物がありました。それは、ほのぼのと言う物です。何事にも活発な魔理沙は一生懸命にほのぼのを探しました。幻想郷を抜け出して、砂漠の荒野のような鳥取砂丘に行ったり、飛行機に乗ってエジプトに行って、ツタンカーメンの遺物からほのぼのを発掘しようともしました。ところが、ほのぼのを1つも見つけることはできませんでした。じゃあ、何処にあるんだろうかと考えた結果、寒い雪山にも行きました。
読者様の皆様は既にお気付きだと思いますがほのぼのは、そもそも探したり発掘する物では無いです。当然、物と表現すること自体がおかしいことなのです。
しかし、魔理沙は頑なにほのぼのは物理的に見つける物だと刷り込みのように頑なに信じていました。
そんな魔理沙のほのぼのを探す話を、楽しんで貰えましたら幸いです。
「霊夢今日こそ、ほのぼのを見つけるぜ」
ある日の博麗神社に魔理沙が訪ねてきました。縁側で一人でほのぼのしながら、お茶を飲む霊夢を見つけ話しかけました。霊夢は旅の仲間で今までの捜索に同行していました。
「……一人で頑張って魔理沙、ここで応援してるからね」
霊夢はさっきまでほのぼの緩んだ顔をしていましたが無表情になって話しました。今までほのぼの探しに付き合って、いつも酷い目に遭っています。そして、ほのぼのは見つける物では無い事を知っています。今まで仕方なく付き合っていましたが、いい加減嫌になっていました。
「おい、何言ってるんだ? お前も来なくちゃ駄目だろう?」
こいつは何を言っているんだという表情になって魔理沙は言いました。今回の冒険も頼りになるはずである旅の仲間が、予想外なことを言ったからです。
「アンタには悪いけど今日は、修行で忙しいの」
これから別に修行をする気はありません。でも何とかごまかしたいので嘘をつきました。人に無関心な霊夢も嘘をついてしまい先ほどまでほのぼのしていたのに、少しの罪悪感にかられてしまいました。
「そうかそうか修行ならしょうがないな、邪魔したな!」
魔理沙は笑顔でしょうがないと言いましたが話の語尾には怒気がこもっていました。何よりも本人は気付いて居ませんでしたが真っ赤な顔になっています。
魔理沙は霊夢に断られてしまったので、用が無くなった神社から出て行きました。最後に霊夢を未練がましい表情で一瞥していました。
「……いい加減、諦めないかしら。本当に迷惑なのよね」
魔理沙が出て行った後に霊夢は誰に言うでもなく独り言を言いました。その後は、お茶を片付けてお昼寝することにしました。霊夢は気まずい気分になってやる事は別にありませんが、やる気が無くなりました。
神社から出てきて程なくして魔理沙は、道に落ちている石の数を数えて遊ぶルーミアを見つけました。なんとなくその光景は微笑ましくありほのぼのしています。リボンが石を指差さして数える度にゆれています。
「お前ほのぼの持っていないか? 探してるんだ」
ルーミアがほのぼのを持っていたら、譲って貰おうと思い魔理沙は話しかけました。
「ほのぼの? それ美味しいの? 魔理沙よりも美味しいの?」
ルーミアのような妖怪には、そもそもほのぼのという概念がありません。食べられるか食べられないかという生存本能のみで生きているのです。正し都合の良いことに、遊びにの概念は持っているのです。
目の前に現れた魔理沙は人間であり食べられるように見えたのです。
「馬鹿いうなよ、私は食べられないぜ。駄目だなお前じゃはなしにならないぜ。そういうことを平気で言うようなやつがほのぼのを持ってる訳無い」
食べられては困るので否定しました。そして、こいつはほのぼのを持っていなさそうだぜと、魔理沙は思い始めました。こう思い始めるとルーミアにもう用はありません。お別れです。
「へぇそうなんだ。食べられないんだ。つまらないや、石の数を数えるほうが楽しいや」
ルーミアは特に感慨もなく答えました。魔理沙は食べられないらしいので、興味はもうありません。やはりお別れです。
二人はお互いに興味がなくなったのでそれきり無言で別れました。別れた時に魔理沙が道の石をいじわるで、蹴飛ばしてしまったのでルーミアはもう一度初めから石の数を数えなければなりませんでした。何となくさっきまでのほのぼのがどこかに行ってしまいました。
魔理沙はほのぼのが見つからずイライラしながらまた道を歩いていました。歩き続けていつの間にか湖に着きました。ほとりにはいかにも生きているだけでほのぼのしていそうな妖精がたくさんいます。そのなかでも、特にほのぼのしていそうな大妖精を見つけました。一人単独で行動しています。友達と待ち合わせでもしているのでしょうか?
人から奪ってでもほのぼのしたい魔理沙は隙見て、ほのぼのを奪い取ろうと考えました。そこでほとりを見渡せる木陰に隠れて様子を見ることにしました。しかし、大妖精にはまったく隙がありません。ちなみに大妖精の方は空気の中にある酸素を見ようとして一点に集中しています。良くわからないオーラと共にほのぼののような雰囲気が出ています。
沈黙とほのぼのがその場を支配しているとしばらくするとそこに、チルノがふらふらと飛んできました。
魔理沙のこだわりの中で問題が発生しました。好みの問題なのですが、たとえほのぼのでもチルノが持っていそうなほのぼのは魔理沙にとって、とても気に食わないことだったのです。理由は分かりませんが、同じほのぼのでも大妖精が持っていそうなほのぼのは例えるなら和食とします。そうするとチルノは洋食のような気がします。和三盆とクッキーの違いのような事です。このこだわりには、魔理沙本人しか分からない基準があります。99パーセントオフの大バーゲンでも買わないでしょう。 ……というのは言い過ぎで、多分売っていたら文句を言いつつも全て買いつくすでしょう。
ただ問題として今まで一度もお店でほのぼのを売っていたことがないのです。
イライラがとうとう怒りに変わりました。怒りに任せ弾幕を発射して魔理沙はその場を去ったのです。弾幕は妖精二人の脇をすり抜けていきました。その弾幕にチルノは驚いて、大妖精は凝視していた酸素がどこかにいってしまいとても悲しみました。湖は悲しみの渦に包まれました。
八つ当たりで怒りを発散していくらか、冷静さを取り戻した魔理沙は考えました。今まで気付かなかったが、そういえば郷にはほのぼの探しに行ったことがないぜ灯台元暗しという言葉があるなそうだなもしかしたら、近くにあって見逃していたのかもしれないぜ。と思い郷に行ってみることにしました。郷といえばやっぱり寺小屋です。寺小屋にいる子供達なら何となくほのぼのを持っているような気がします。カードゲームのようにたくさん集めているに違いありません。
程なく寺子屋に着きました。今は放課後のようで、校庭には子供達が遊んでいます。子供達の遊ぶ校庭のその風景を絵にすればきっとほのぼのした風景画が描けることでしょう。
そんな子供達に目を付けた魔理沙は、脅してほのぼのを持ってこさせそようと思いました。丁度いいことに子供達が遊びに使っているボールが魔理沙の所に転がってきました。これは使えそうです。ボールを拾い上げた所に一人の子供が来ました。
「霧雨のお姉ちゃんボール拾ってくれてありがとう。こっちに投げて」
子供は礼を言ってボールを返して貰おうとしました。
「それはできないぜ、これは私が拾ったんだ。私のだぜ」
ところが魔理沙はボールを返そうとしません。大事な取引の材料なのです。
「非道いよ返してよ!」
子供は少し感情的になって返して貰おうとします。するとそこに、ボールを拾いに行ったきり戻ってこないのを、心配した子供達が集まってきました。
「たくさん集まってきたな、これを返して欲しければほのぼのを持って来い。持ってきたら返してやるぜ」
魔理沙は大きな声で、理不尽なことを言いました。
「言うこと聞かないなら、お前達のせいでこのボールが慧音の頭に当たることになるがそれで良いのか?」
「やめてよ! 先生に酷いことしないで!」
「だったら、ほのぼの持って来い!」
子供達は脅されて、大急ぎでボールを返して貰うためほのぼのを探しにいきました。さっきまで遊んでいた遊具が悲しく放置されていました。魔理沙は近くにあった大きな庭石に座り込んで待ちました。しばらく待っていると、しょぼくれた子供達が戻ってきました。子供達の中で一番年長の少年が、申し訳そうな顔しながら魔理沙に話かけました。
「ごめんなさい、霧雨のお姉ちゃん。ほのぼの見つからなかった」
それぞれ、家に帰りほのぼのが無いかと親に聞いたり畑や田んぼを探したりしましたが当然見つかりませんでした。
「お前達はとんでもない大嘘つきだ。私はここでボールを持って待ってたのに」
「ごめんなさい」
「約束を守らない奴は、映姫に舌を抜かれるんだ。お前たちは約束を守らなかった」
出鱈目のような本当のような事を言って子供たちに説教を始めました。説教の中に映姫が出てくる辺り他力本願なのです。
「お前等の罪はそれだけじゃないぜ、これはきっと偽証罪っていう奴だな。きっと懲役刑は免れるとしても犯罪者として裁かれるんだぞ」
魔理沙自身も良くわからない言葉を使い子供達をさらに攻め立てます。
「そんなの嫌だよぉ。でも無いんだよぉ」
舌を抜かれ罪に問われると言われ怖くなった子供が青ざめ引きつったた表情で言いました。こういうことの積み重ねが、子供の人格形成に影響するのかは今回の話ではありませんが、とても可哀想でした。
魔理沙が村の子供達に怒っていると、騒ぎを聞きつけた慧音が何事かと寺小屋から駆けつけてきました。
「魔理沙じゃないか、なにをしているんだ?」
「見ればわかるだろ? 説教しているんだぜ、私との約束を破ったこいつ等にな」
「お前たち約束を破ったのか?」
見た目は子供達が魔理沙にいじめられいるように見えますが、もしかしたら悪いのは子供達なのかもしれないです。
子供達の中でもリーダー格の少年が少し涙目になりながら慧音に訴えかけました。
「先生違うよぉ、霧雨のお姉さんはおかしいんだ。僕たちにほのぼのを持って来いって言って勝手に約束させたんだよぉ」
慧音は、何を言っているのだろうという表情になりました。ほのぼのを持って来る?意味がわかりません。
「こいつ等は約束したのに、ほのぼのの一つも持ってこないんだぜ」
「……なあ、魔理沙ほのぼのは持って来るとかそういう事じゃないんだよ。その場の雰囲気とかそういう気持ちで自然に感じる事なんだ」
慧音は合点が行ったので冷静に魔理沙を諭しました。まだ子供とはいえもう、それ位の分別がつく位には成長していると思ったからです。
「そんなはず無いだろ! こいつ等は持っているのに嘘を吐いているんだぜ」
ところがそれは、駄目でした。魔理沙は頑なにほのぼのはあくまで物であると思い込んでいるのです。
「いい加減にしなさいこれ以上、おかしなことを言うならあなたの親を呼びますよ」
慧音は早くも見切りをつけて、絶縁状態である魔理沙の、親を呼ぶことにしました。会いたくない親を呼ばれると魔理沙は困ります。
「それはやめてくれ! 分かった。もういいよ」
魔理沙は郷でほのぼのを探すことを諦めました。郷の奴等はほのぼのを持っていないことを理解できました。ボールを放り投げ、全力疾走で逃げ出したのです。
辺りはもう夕方でそろそろ家に帰る時間です。今日も収穫はありませんでしたが、ほのぼのはやはり外の世界にあるような気がしました。今度は、ノルウェーの森辺りに的を絞って重点的に探してやると帰り道一人で考えました。
きっと、きれいな森の木ならほのぼのをたくさん吸い上げて養分にしているはずだからです。次こそほのぼのの結晶を手に入れたいのです。目指すはほのぼの世界一です。
魔理沙が郷を去った後、子供達は皆泣き出してしまいました。慧音が苦労して子供達を泣き止ませていました。
今日皆のほのぼのを壊してしまった事に、気付いていない魔理沙にほのぼのする権利が有るのでしょうか?
魔理沙のほのぼのを求める冒険は、ほのぼのが見つかるまで永遠に続きます。
博麗
随分と苛立つ魔理沙でした
こういうのもアリなんでしょうが個人的には苦手な内容でした
東方戦記のがマシ
なぜこっちであげたしwww
こういう場合は作風と言うのか分かりませんが、とにかくこういう作品でなければ僕は受け入れられるのでしょうか?
誤字の指摘ありがとうございます。
高橋源一郎を思い出しました。
慧音が苦労して子供達を泣き止ませるのに苦労しました。
苦労が多い?
点数はもう点けたので…
ゲームでの魔理沙は努力家の反面
泥棒であり閻魔様に平気でうそをつけるような嘘つきでもありますからね。
そこをストレートに読み取ったら、このような「ウザい魔理沙」という解釈が生まれたのも頷けます。
(というより自分はむしろこの性格の方がしっくりくるんですよねw)
そこを皮肉にしたあなたの作品、大変すばらしかったです。
作者さまには周りの目を気にせずに自分の書きたいものを書いて欲しいものです。
好みなのでしょうが、作風だけでなく自分の好きなキャラにこういうキャラ付けされたら
苛つく人が多いのもわかりますし。
自分には内容がひたすら不快でしたが。
何故こっちに!
大分抑えられてますけどやっぱりこっちじゃウケないかと……
いっそ、「優雅」も出張させては?責任はとりませんが←外道
だがこの評価はしかたがない。
魔理沙ファンのモンスターペアレンツたちは、原作の魔理沙の悪い部分を高い高い棚に上げて、良い部分にしか目を向けないのだからしかたがないしょうがない。
作者様ももう気が付いておられるだろう。
この作品の評価が「面白くない」ではなく「不快です」というコメントで埋まっていることを。
これを読んでイラッとした彼の者たちは知らないのだ。
地霊殿の魔理沙の評価は「背中を這う蚤のように生理的に気持ち悪い」だということを。
努力家と言いつつ持ち前のスペカにはパクリが多いことを。
あなたの敗因は、そんなモンスター達に媚びなかったこと。この一点に尽きます。
彼等は魔理沙の汚点は無かった物とし、良い部分のみをギュッと集めてニヤニヤ眺めるのが好きなのですから。
……私はそんな人間臭い魔理沙が大好きですから楽しめましたがね。
努力のベクトルが明後日の方に向かってますが、周りから否定されようと自分の信念を貫き、必死で足掻く彼女は最高だと思うんですよ。うん。
割とどうしょうも無いところに情熱を傾けるもんさね。
私の中ではこのキャラは、もうちょっと賢く、アリスほどじゃないけど
周りの空気を読んで立ち回ってるイメージがあるので
この作品の魔理沙は自分の持ってるイメージよりもっともっと幼い子という印象を受けましたね。
内容的な意味で魔理沙好きの私としては今回評価は
フリーという形をとらせていただきました。
ですが、この作風を旨味と感じられる方なら十分に楽しめるお話の構成だったと思います。
今後も創作がんばってください。
作品のテーマがしっかりとしているし、僕は面白いと思いました。
おかしな夢を見ているような感覚でした。
今日はありがとうございました。次回作期待しています。
1つだと思うし、魔理沙のキャラ付けも原作からそんなに大きく
外れていなかったと思うのですが。もう少しこの路線をみてみたかった。