ドアを開けたら妻(アリス)が倒れていた――――。
まず目に入って来たのが、うつ伏せに倒れた背中に突き刺さった包丁。
次いで血まみれになった床。
これは中々にショッキングな光景と言えるのではないだろうか?
少なくとも、知らない人が見たら気絶するくらいには。
けれども僕は、慌てず騒がず、こう言って笑うのだ。
「今日のは掃除が大変そうだね」
――――と。
するとアリスはうつ伏せのまま満足そうにクククと笑っていた。
――――やれやれ。
家に帰ると妻(アリス)が必ず死んだふりをしています。
明日はどんな死に方をしているのか?
それは僕には到底予想しえない事柄である。
なにせ、ある日は頭に矢が刺さっていたり、別の日には軍服で銃を抱えたままというのもあった。(ちなみに、この時アリスが着ていたのは鈴仙・優曇華院・イナバが着ているブレザーと同じものだった。鈴仙が言うには、あの服は月の使者をやっている玉兎達が着る制服だそうなので、軍服と言ってもあながち間違いではないだろう)
マンボウの着ぐるみが死んでいたときは、さすがにドアを閉めようかと思ったものだ。
海の無い幻想郷で何故海魚なのか。しかも、この着ぐるみ無駄に凝った作りしてるなぁ、流石はアリスだ。とか、いろいろ複雑な感情の動きがあったのだ。そこは察してもらいたい。
でもまあ、そんなアリスもたまらなく可愛いのだけどね。
後片付けは僕も手伝うのだけれど、床の血糊を落とすのは結構大変である。
それでも、そういうのは慣れてくれば何でも無い。と言うのは問題があるのかもしれないが、僕にはあまり重要なことではない。
だけど、矢とか包丁だとかの凶器が刺さったまま晩御飯を作るのは正直勘弁してもらいたいものだ。
そう見えるだけで、実際に刺さっている訳ではないと分かってはいるが、そこは気分の問題である。
だが、どんな格好をしていようと、アリスが作る料理は最高に美味しいのだけどね。
家に帰ると妻(アリス)が死んだふりをしています。
毎回演出や使う小道具などが妙に凝っている上に、アリスも芸達者なものだから、何回も流石は七色の人形遣いアリスだと感心してしまう場面もあったが、ちょっと褒めるとすぐ調子に乗るので、今ではできるだけスルーするようにしている。
結婚前は幻想郷のいろんな場所に二人で出かけたものだ。
一緒に霧の湖にピクニックに行ったり、紅魔館地下の大図書館に本を読みに行ったり。その時にパチュリーから「あなた達、ここを茶店と勘違いしてるんじゃないでしょうね」なんてジト目で言われたのは良い思い出だ。
あと、博麗神社で見た初日の出はとても美しかった。
――――まあ、アリスの方がもっと綺麗だけどね。
実際にそう言ったらアリスは顔を真っ赤にしてうつむいてしまったけど、そんなところも可愛い……と言うか、アリスは全部可愛い。反対意見は認めない。
結婚直後仕事が忙しくなった為に、必然的に二人一緒の時間は少なくなって行った。
これは別に香霖堂が大繁盛したからではない……って、自分で言ってて悲しくなるが事実なので仕方ない。
アリスと結婚した後すぐに、僕はかつて世話になった人里の霧雨店で再度修行し直す事にした。
お世辞にも流行っているとは言えない香霖堂。
収入も微々たるものだ。僕一人がやっていくのなら、それでも問題は無いのだけど、そこに扶養家族が増えるなら話は別だ。
…………実際、まだこれから増えていく予定だしね。
実際問題として、アリスは種族魔法使いだから生命維持の為の食事を必要としないし、僕とて半分妖怪だからほとんど食事を取らなくても生きていける。
とは言え、生きて行くのに必要なものは食事だけではないし、そういったものを手に入れる為には、先立つものが必要だ。
裕福で何不自由無い暮らしを……とまでは行かなくても、それなりの暮らしを家族にさせてやりたいと思うのは家庭の大黒柱たる男としては当然だし、そうするのが男の甲斐性だと思ったのだ。
だから僕は頑張った。もともと大商人になるのは僕の夢だったから、これがいい機会だったのだと思って霧雨店で仕事に打ち込んだ。
すると、そんな僕の働き振りが親父さんに認められたのだろう。次第に大きな仕事を任されるようになり、部下も増えた。
その分さらに忙しくなったが、僕はとても充実していた。
だから、一番大事なことに思いが至らなかったのだ。
そう――――家で一人で待つ妻(アリス)の気持ちを考えていなかった。
家に帰ると妻(アリス)が必ず死んだふりをしているのは、あの頃の二人に戻りたいと言うアリスの意思表示なのか、それは僕には分からない。
でも一つ言えるのは、死んだふりをするようになってからのアリスはなんだかとても楽しそうだ。と言うことだ。充実していると言っても良いだろう。
だから、もしこれが僕達夫婦の愛の形だと言うのならば、それはそれでありなのではないだろうか。
結局のところ、アリスが幸せそうに笑ってくれれば、それだけで僕も幸せだし、笑顔になれる。
そんな単純で当たり前な、とうの昔に分かっていた事実を再確認させてくれたアリスの死んだふりは、ぼくにとってはとても意義のある行為だったと言えよう。そう思うとそれがたまらなく愛おしく感じるのだ。
だから――――――――
家に帰ると妻(アリス)が必ず死んだふりをしています。
今日はどんな死に方をしているのだろうと、期待して開けるドア。
まず目に入って来たのが、うつ伏せに倒れた背中に突き刺さった包丁。
次いで血まみれになった床。
これは中々にショッキングな光景と言えるのではないだろうか?
少なくとも、知らない人が見たら気絶するくらいには。
けれども僕は、慌てず騒がず、こう言って笑うのだ。
「今日のは掃除が大変そうだね」
――――と。
するとアリスはうつ伏せのまま満足そうにクククと笑っていた。
――――やれやれ。
家に帰ると妻(アリス)が必ず死んだふりをしています。
明日はどんな死に方をしているのか?
それは僕には到底予想しえない事柄である。
なにせ、ある日は頭に矢が刺さっていたり、別の日には軍服で銃を抱えたままというのもあった。(ちなみに、この時アリスが着ていたのは鈴仙・優曇華院・イナバが着ているブレザーと同じものだった。鈴仙が言うには、あの服は月の使者をやっている玉兎達が着る制服だそうなので、軍服と言ってもあながち間違いではないだろう)
マンボウの着ぐるみが死んでいたときは、さすがにドアを閉めようかと思ったものだ。
海の無い幻想郷で何故海魚なのか。しかも、この着ぐるみ無駄に凝った作りしてるなぁ、流石はアリスだ。とか、いろいろ複雑な感情の動きがあったのだ。そこは察してもらいたい。
でもまあ、そんなアリスもたまらなく可愛いのだけどね。
後片付けは僕も手伝うのだけれど、床の血糊を落とすのは結構大変である。
それでも、そういうのは慣れてくれば何でも無い。と言うのは問題があるのかもしれないが、僕にはあまり重要なことではない。
だけど、矢とか包丁だとかの凶器が刺さったまま晩御飯を作るのは正直勘弁してもらいたいものだ。
そう見えるだけで、実際に刺さっている訳ではないと分かってはいるが、そこは気分の問題である。
だが、どんな格好をしていようと、アリスが作る料理は最高に美味しいのだけどね。
家に帰ると妻(アリス)が死んだふりをしています。
毎回演出や使う小道具などが妙に凝っている上に、アリスも芸達者なものだから、何回も流石は七色の人形遣いアリスだと感心してしまう場面もあったが、ちょっと褒めるとすぐ調子に乗るので、今ではできるだけスルーするようにしている。
結婚前は幻想郷のいろんな場所に二人で出かけたものだ。
一緒に霧の湖にピクニックに行ったり、紅魔館地下の大図書館に本を読みに行ったり。その時にパチュリーから「あなた達、ここを茶店と勘違いしてるんじゃないでしょうね」なんてジト目で言われたのは良い思い出だ。
あと、博麗神社で見た初日の出はとても美しかった。
――――まあ、アリスの方がもっと綺麗だけどね。
実際にそう言ったらアリスは顔を真っ赤にしてうつむいてしまったけど、そんなところも可愛い……と言うか、アリスは全部可愛い。反対意見は認めない。
結婚直後仕事が忙しくなった為に、必然的に二人一緒の時間は少なくなって行った。
これは別に香霖堂が大繁盛したからではない……って、自分で言ってて悲しくなるが事実なので仕方ない。
アリスと結婚した後すぐに、僕はかつて世話になった人里の霧雨店で再度修行し直す事にした。
お世辞にも流行っているとは言えない香霖堂。
収入も微々たるものだ。僕一人がやっていくのなら、それでも問題は無いのだけど、そこに扶養家族が増えるなら話は別だ。
…………実際、まだこれから増えていく予定だしね。
実際問題として、アリスは種族魔法使いだから生命維持の為の食事を必要としないし、僕とて半分妖怪だからほとんど食事を取らなくても生きていける。
とは言え、生きて行くのに必要なものは食事だけではないし、そういったものを手に入れる為には、先立つものが必要だ。
裕福で何不自由無い暮らしを……とまでは行かなくても、それなりの暮らしを家族にさせてやりたいと思うのは家庭の大黒柱たる男としては当然だし、そうするのが男の甲斐性だと思ったのだ。
だから僕は頑張った。もともと大商人になるのは僕の夢だったから、これがいい機会だったのだと思って霧雨店で仕事に打ち込んだ。
すると、そんな僕の働き振りが親父さんに認められたのだろう。次第に大きな仕事を任されるようになり、部下も増えた。
その分さらに忙しくなったが、僕はとても充実していた。
だから、一番大事なことに思いが至らなかったのだ。
そう――――家で一人で待つ妻(アリス)の気持ちを考えていなかった。
家に帰ると妻(アリス)が必ず死んだふりをしているのは、あの頃の二人に戻りたいと言うアリスの意思表示なのか、それは僕には分からない。
でも一つ言えるのは、死んだふりをするようになってからのアリスはなんだかとても楽しそうだ。と言うことだ。充実していると言っても良いだろう。
だから、もしこれが僕達夫婦の愛の形だと言うのならば、それはそれでありなのではないだろうか。
結局のところ、アリスが幸せそうに笑ってくれれば、それだけで僕も幸せだし、笑顔になれる。
そんな単純で当たり前な、とうの昔に分かっていた事実を再確認させてくれたアリスの死んだふりは、ぼくにとってはとても意義のある行為だったと言えよう。そう思うとそれがたまらなく愛おしく感じるのだ。
だから――――――――
家に帰ると妻(アリス)が必ず死んだふりをしています。
今日はどんな死に方をしているのだろうと、期待して開けるドア。
ただの惚気かちくしょー!羨ましぞコラ
せっかくのアリ霖なので、もうちょい妻がアリスであるところを活かして話を展開してほしかったかな
そういえば流行ってましたね
オマージュが悪いとは言わんが、殆ど同一なのが残念。
もっと話を膨らませたり、東方ならではの設定を盛り込まないと、これでは元ネタの丸パクでしょ。
でも面白かった。