Coolier - 新生・東方創想話

SOUND(聴こえたもの)

2011/11/25 20:07:20
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 忘れられないのは、誰かと話をしているときに私は別にそいつが嫌いじゃないし、友だちになりたいとさえ思っているのに、でも、話をしていることが退屈でしょうがないときがあって、それはなぜなんだろう、と考えてみると、私というのは基本的に退屈な人間なんじゃないだろうか、ということが頭に浮かんできて、それならどんなに楽しい人がいようと、それでどんなに楽しいことがあっても、私は退屈なままなんじゃないだろうか、ということを考えていた。
 でも、最初に忘れられないのは、と言ったのはこのことじゃなくって(もう一度言い直す)、忘れられないのは、その瞬間に突然の心地よさが全身をおそって、新しい世界がひらけていくように感じられたことで、それは宴会のための追加の買い出しを終えて神社に帰る途中のことだったんだけど、私はその、なんとも言えない心地よさを全身で感じながら境内で行われている宴会の席に向かったの。

 けれどそんな気持ちでいられたのも神社に帰るまでのことで、さっきまでいっしょに飲んでいた相手だけど、そこに集まっているたくさんの人妖を見て、私は愕然としたんだった。
 こいつらは私のことを知っていて、けれど今、私の頭の中を満たしているこの心地よさのことは知らない。それで、それでね、誰かにこのことを伝えたいと思うのはくだらないことだろうか、なんて考えて、そうするとまた、自分は退屈な人間なんじゃないか、っていう思いにとらわれた。それで下を向いて自分の席に座った。みんな忙しそうに、話しをしたりものを食べたり、酔っ払ったりしていて、何があるのかわからないけど、とにかくそういうふうにしていて、だから私はうつむいてしまって、ときおり平気なふりを装ってあたりを眺めても、楽しそうにしている奴らを見るとなんだかめんどくさくなってきて、眠ったふりをしてしまう。

 楽しいことは待っていても来ないから、自分から見つけにいかなければ。誰かがそう言うのが聞こえた。だから後ろを振り向いたけどそこには誰もいなくて、そんなことは誰もが言いそうなことだし、私には関係がないのかもしれない。退屈なんて言っている暇があったら行動しなさいよ、という声も聞こえてきて、私は薄目を開けて自分の膝を見つめる。

 めんどくさいのはなぜだろう。あのときの心地よさは私だけのもので、ほかの誰にも関係がないことなのに。誰かが私にめんどくさいことをさせようとしていて、躊躇することがそのまま私の憂鬱の種になる。酔っぱらいの胴間声の隙間からまた誰かの声が聞こえてきて、あなた自身が動かなければ、と私を脅す。なんでもない当たり前のこととして聞こえてくるその声に私は怯えて、それでも、めんどくさいのよ、なんてつぶやいて眠ったふりをしていると、そのめんどくさいに心が痛んで、引き裂かれそうになってしまう。いてもたってもいられなくなって、なんだか悔しくてわけがわからない。でも億劫さと、それから内気が、私をここに引き留める。

 それで私は退屈なまま、騒がしい宴会の席の中で時間が過ぎていくのを眺めていて、そうすると、その時間が過ぎていくということの確かさが私を助けてくれるような気がしてきた。その時間はほかの誰とも無関係に私のものであって、私だけの心地よさはここにあるはずのものにちがいない。そう考えると、憂鬱な気分が紛れていく。ここにいてずっと退屈なままでもかまわないし、誰かが退屈から逃れるために楽しいことを見つけに出かけても、それは私に関係のあることじゃない。誰かが、あなた自身が動かなければ、と脅しても私に関係のあることじゃない。ただ時間が過ぎていって、私はここにいる。

 それで、忘れられないのは、眠ったふりをやめて目を開けると神社から見える夕陽がとても綺麗だったということで、私はそれを見てがんばって感動しようとしたけどめんどくさくなってやめた。それで少し笑うと、あのときの心地よさが戻ってきているのに気がついた。


「そんなことより弾幕しようぜ」
「うん」
アン・シャーリー
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コメント



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1.80奇声を発する程度の能力削除
これはこれで何だか良いですね
5.100名前が無い程度の能力削除
言葉ではなく心で理解…出来たんだろうか
9.100名前が正体不明である程度の能力削除
雰囲気いいなぁ…