◆
じりりりりりり……
目覚まし時計の音で目が覚めた。手探りでボタンを押してベルを止める。
布団から這い出すと、身体に纏わりつく外気の冷たさに、途端に目が冴えた。
枕元の眼鏡を持ち、水場へ向かう。顔を洗って眼鏡をかける。鏡(名称:洗面台付鏡/用途:光を反射する)を確認しながら
櫛(名称:男性用鼈甲櫛/用途:髪を梳かす)で寝癖を整えた。ドライヤーという、そのために使うはずの道具もあるが、残念ながら
動かすことは叶っていない。寝室に戻り、普段着に着替えた。時計(名称:壁掛型時計/用途:時刻を表す)を確認する。
もうすぐ開店の時間だ。客が来なくても時間には正確に行動するようにしている。霧雨の親父さんのもとで僕が学んだ、最も大切な
事のうちの一つだ。
寝室の隣に移れば、そこが僕の仕事場となっている。商品や商品以外が、ところせましと並んでいるこの空間が、僕は好きだ。
カーテン(名称:菊松葉の文様デザイン/用途:遮光)を開くと、朝の陽光が差し込んできた。思わず目を細める。
湯沸かし器(名称:電熱器/用途:物を熱する/備考:何故か働く)に薬缶(名称:ホイッスルケトル/用途:湯を沸かす)を乗せておいて、
戸をくぐって外へと出た。玄関先を掃除している間に、湯が沸くはずだ。
一通り小奇麗にした頃、笛のような音が聞こえてきた。あの薬缶は、湯が沸いたときに音で知らせてくれる。
店内に戻り、食器棚(名称:ガラスキャビネット/用途:食器等を収納する)からコーヒーの粉(名称:ぶれんでぃ?/用途:湯で溶いて飲む)と
マグカップ(名称:ダブルステンレスマグ/用途:飲料を保持する)を取り出した。普通のマグカップよりも保温性が高いので、重宝している。
仕組みを理解したときには来店する者する者に素晴らしさを説明しようとしたが、最後まで聞いてくれた者は一人もいなかった。
用意したコーヒーを机(名称:机/用途:作業台)に置き、アームチェア(名称:リラックス レザーチェア OAチェア 革張り/用途:座る)に
腰掛ける。伏せて置いた読みかけの本(名称:経営戦略―論理性・創造性・社会性の追求/用途:自己啓発)を取り上げ、マグカップに手を伸ばす。
と、ドアが静かに開かれた。魔理沙だろうか? いつもは騒がしく入ってくるのに、珍しい。あの子もいい加減年頃の少女らしくなってくれたらいいのだが。
本から目を上げて魔理沙(名称:森近魔理沙/用途:霖之助の嫁)を見、口に含んでいたコーヒーを思い切り吹き出した。
◆
「……その、すまない」
「びっくりしたぜ」
大急ぎで取ってきたタオルで魔理沙の顔を拭いてやりながら、さっきから平謝りしている。僕としたことが、取り乱してしまった。
……しかし、なんなんださっきのは。ちらりと魔理沙を視ると、やはり(名称:森近魔理沙/用途:霖之助の嫁)という言葉が脳内に浮かぶ。
他の物体は正しく認識されている。どうやら、本当に信じられないことだが、これが真実らしい。真実と分かったところで、真実と分かったからこそというか、
さっきから魔理沙を直視できない。
「? なんでこっちを見てくれないんだ?」
魔理沙の声が不満げな響きを帯びる。いや、
「……その、朝早くから訪ねて悪いとは思ってるんだぜ?」
不安げ、か。……いつの間にこんな気遣いができるようになったのだろう。
「いや、それは全然構わないんだが」
「でも……早く霖之助さんに会いたくt」「ちょっと待ってくれ何の冗談だそれは」
思わず直視してしまった。よく見れば、普段と雰囲気が違う。
「……化粧、してるのか?」
なんというか、いつもより……いやいや、僕は何を考えている?
それは確かにいつもより綺麗でいい匂いがするような気はするけれどもだってこの子は霧雨さんの娘さんだぞ?
「変、かな?」
変ではないが。色々変だ。おかしくない所がない。
とりあえず、現状の把握に努めようか。軽く痛みを覚え、頭を押さえながら一番訊きたかったことを訪ねてみる。
「ええと、魔理沙、どうして今日はここに?」
「どうしてって……そんな、意地悪……」
泣かれそうだ。僕が何をしたというんだ……。そうは言っても、僕のほうが大人だ。ここは年長者らしく落ち着いて、
「あ、ああ、すまない。ちょっとぼんやりしていてね。それじゃあ……ええと?」
魔理沙に丸投げした。どうしろっていうんだ!
「だから、今日は私の番だろ? だから……」
……はあ?
「ほら、昨日は霊夢だったし……」
……え?
「ああ、もう!」
「うわっ!?」
ちょっ、なんで押し倒――
「いい加減に、しろ!」
仕方なく僕は拳を固めて、
◆
◇
「……ちょっと待ってくれよ香霖。お前、さっきから何を言ってるんだ?」
最初からなんか違和感はあったが、今日のこいつは何かおかしい。
用事があって来てみたら、いきなり「茶を淹れろ」とか言うし。いつもは自分で淹れてるじゃないか。
そう言って断ったら、本気で意外に思ってる顔をしやがった。しかもその後「熱でもあるのか」って……ああもう、さっさと忘れよう!
「何もおかしいことは言っていないだろう。大体、なんで朝に来ないんだ」
「っ……だから、何のことだよ!? 約束もしてないだろう!」
「約束? お前は約束がないと来ないのか?」
やっぱり熱でもあるんじゃないのか。そう言って手を伸ばしてくる。
「やっ、やめろよ! おかしいのは私じゃなくて香霖だろ!」
咄嗟に手を弾いてしまった。左手が勝手に八卦炉に伸びる。
「痛いな……一体どうしたんだ魔理沙。いつの間にそんな反抗的になったんだい」
ああもう、埒が明かない!
「そんないけない魔理沙には、お仕置きしないといけないな……」
香霖らしき何かが立ち上がり、ゆっくりと近づいてくる。
私は左手に握り締めた八卦炉を――
◇
◆
ガツン!!
◆
◇
「ますたあああああああああああああ、すぱあああああああああああああああく!!」
◇
◆◇
「「「「夢か……」」」」
◇◆
じりりりりりり……
目覚まし時計の音で目が覚めた。手探りでボタンを押してベルを止める。
布団から這い出すと、身体に纏わりつく外気の冷たさに、途端に目が冴えた。
枕元の眼鏡を持ち、水場へ向かう。顔を洗って眼鏡をかける。鏡(名称:洗面台付鏡/用途:光を反射する)を確認しながら
櫛(名称:男性用鼈甲櫛/用途:髪を梳かす)で寝癖を整えた。ドライヤーという、そのために使うはずの道具もあるが、残念ながら
動かすことは叶っていない。寝室に戻り、普段着に着替えた。時計(名称:壁掛型時計/用途:時刻を表す)を確認する。
もうすぐ開店の時間だ。客が来なくても時間には正確に行動するようにしている。霧雨の親父さんのもとで僕が学んだ、最も大切な
事のうちの一つだ。
寝室の隣に移れば、そこが僕の仕事場となっている。商品や商品以外が、ところせましと並んでいるこの空間が、僕は好きだ。
カーテン(名称:菊松葉の文様デザイン/用途:遮光)を開くと、朝の陽光が差し込んできた。思わず目を細める。
湯沸かし器(名称:電熱器/用途:物を熱する/備考:何故か働く)に薬缶(名称:ホイッスルケトル/用途:湯を沸かす)を乗せておいて、
戸をくぐって外へと出た。玄関先を掃除している間に、湯が沸くはずだ。
一通り小奇麗にした頃、笛のような音が聞こえてきた。あの薬缶は、湯が沸いたときに音で知らせてくれる。
店内に戻り、食器棚(名称:ガラスキャビネット/用途:食器等を収納する)からコーヒーの粉(名称:ぶれんでぃ?/用途:湯で溶いて飲む)と
マグカップ(名称:ダブルステンレスマグ/用途:飲料を保持する)を取り出した。普通のマグカップよりも保温性が高いので、重宝している。
仕組みを理解したときには来店する者する者に素晴らしさを説明しようとしたが、最後まで聞いてくれた者は一人もいなかった。
用意したコーヒーを机(名称:机/用途:作業台)に置き、アームチェア(名称:リラックス レザーチェア OAチェア 革張り/用途:座る)に
腰掛ける。伏せて置いた読みかけの本(名称:経営戦略―論理性・創造性・社会性の追求/用途:自己啓発)を取り上げ、マグカップに手を伸ばす。
と、ドアが静かに開かれた。魔理沙だろうか? いつもは騒がしく入ってくるのに、珍しい。あの子もいい加減年頃の少女らしくなってくれたらいいのだが。
本から目を上げて魔理沙(名称:森近魔理沙/用途:霖之助の嫁)を見、口に含んでいたコーヒーを思い切り吹き出した。
◆
「……その、すまない」
「びっくりしたぜ」
大急ぎで取ってきたタオルで魔理沙の顔を拭いてやりながら、さっきから平謝りしている。僕としたことが、取り乱してしまった。
……しかし、なんなんださっきのは。ちらりと魔理沙を視ると、やはり(名称:森近魔理沙/用途:霖之助の嫁)という言葉が脳内に浮かぶ。
他の物体は正しく認識されている。どうやら、本当に信じられないことだが、これが真実らしい。真実と分かったところで、真実と分かったからこそというか、
さっきから魔理沙を直視できない。
「? なんでこっちを見てくれないんだ?」
魔理沙の声が不満げな響きを帯びる。いや、
「……その、朝早くから訪ねて悪いとは思ってるんだぜ?」
不安げ、か。……いつの間にこんな気遣いができるようになったのだろう。
「いや、それは全然構わないんだが」
「でも……早く霖之助さんに会いたくt」「ちょっと待ってくれ何の冗談だそれは」
思わず直視してしまった。よく見れば、普段と雰囲気が違う。
「……化粧、してるのか?」
なんというか、いつもより……いやいや、僕は何を考えている?
それは確かにいつもより綺麗でいい匂いがするような気はするけれどもだってこの子は霧雨さんの娘さんだぞ?
「変、かな?」
変ではないが。色々変だ。おかしくない所がない。
とりあえず、現状の把握に努めようか。軽く痛みを覚え、頭を押さえながら一番訊きたかったことを訪ねてみる。
「ええと、魔理沙、どうして今日はここに?」
「どうしてって……そんな、意地悪……」
泣かれそうだ。僕が何をしたというんだ……。そうは言っても、僕のほうが大人だ。ここは年長者らしく落ち着いて、
「あ、ああ、すまない。ちょっとぼんやりしていてね。それじゃあ……ええと?」
魔理沙に丸投げした。どうしろっていうんだ!
「だから、今日は私の番だろ? だから……」
……はあ?
「ほら、昨日は霊夢だったし……」
……え?
「ああ、もう!」
「うわっ!?」
ちょっ、なんで押し倒――
「いい加減に、しろ!」
仕方なく僕は拳を固めて、
◆
◇
「……ちょっと待ってくれよ香霖。お前、さっきから何を言ってるんだ?」
最初からなんか違和感はあったが、今日のこいつは何かおかしい。
用事があって来てみたら、いきなり「茶を淹れろ」とか言うし。いつもは自分で淹れてるじゃないか。
そう言って断ったら、本気で意外に思ってる顔をしやがった。しかもその後「熱でもあるのか」って……ああもう、さっさと忘れよう!
「何もおかしいことは言っていないだろう。大体、なんで朝に来ないんだ」
「っ……だから、何のことだよ!? 約束もしてないだろう!」
「約束? お前は約束がないと来ないのか?」
やっぱり熱でもあるんじゃないのか。そう言って手を伸ばしてくる。
「やっ、やめろよ! おかしいのは私じゃなくて香霖だろ!」
咄嗟に手を弾いてしまった。左手が勝手に八卦炉に伸びる。
「痛いな……一体どうしたんだ魔理沙。いつの間にそんな反抗的になったんだい」
ああもう、埒が明かない!
「そんないけない魔理沙には、お仕置きしないといけないな……」
香霖らしき何かが立ち上がり、ゆっくりと近づいてくる。
私は左手に握り締めた八卦炉を――
◇
◆
ガツン!!
◆
◇
「ますたあああああああああああああ、すぱあああああああああああああああく!!」
◇
◆◇
「「「「夢か……」」」」
◇◆
なにせ、そのドタバタ加減を読者がしっかり分かるように表現しないといけません。
作者の頭の中ではキャラクターの行動・心理などがちゃんと把握されていても、文章に表現出来ておらず読者の理解を得られない。
この現象は普通に小説を書いていても起こりますが、キャラクターの行動や心理がころころと移り変わるドタバタしたストーリーではそれが顕著になります。
また、その描写というのは行動や心理を逐一克明に書き込むことがベストというわけではありません。
何故ならそれは、文章のテンポこそがギャグに置いて最も重要な要素であるためです。(※持論です)
テンポの速い小説というのは、動的な描写をしっかりと表現しています。
ですがこの小説は、逆に静的な描写が丁寧に行われていました。
部屋の入口に立って隅々まで部屋を見渡すような描写です。推理モノなどには合うと思います。
対して、テンポの良し悪しに関わる動的部分の描写は結構な割合で省かれています。
その割に、ドタバタギャグの表現として場面の移り変わりがササッと行われていました。
結果、読者に対して「いったい何がどうなったのか」を全く伝え切れていないということになっています。
……と、私は感じました。
長々と私見を振り回しましたが、まあギャグってこんなものじゃないかなぁーという一物書きの独り言のようなものでした。
点数は笑った回数×10です。どうぞよしなに。
魔理沙パートもう少し頑張ってほしかったなぁ、というのが正直なところ。あと霖之助パートも、もう少し終わりのとこらへん頑張ってほしいけど、不覚にも森近魔理沙で笑ったので(ry