Coolier - 新生・東方創想話

秋の味覚の有効活用

2011/10/07 00:14:09
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梨に葡萄、林檎に甘栗。甘く香る果物は秋そのものの彩りを持っている。
縁側に置かれた平籠いっぱいに盛られたそれらから柿をひとつ手に取り
すんと鼻を近付けると皮を剥かずとも芳醇な香りがした。
自分で皮を剥くつもりはないのでそっと元の場所に戻すと
果物の持ち主ははぁ、と盛大に溜息をついた。

「参っちゃうのよね、全く」
「どうして?あなた果物は嫌いだったかしら。」
「そんなことはないけど…」

どうやらこの秋の味覚の盛り合わせは芋の香りのする神様が力を奮った結果らしい。

「秋の味覚は美味しいけど、果物は飽きちゃうの」
「それは同意するわ」

そういえば、うちの猫もその辺から栗だの葡萄だの無闇に採っては来るけど
果物なんて数口食べればお腹も膨れるし飽きてしまう。藍は橙の頑張りも無下にできないと
レーズンやら甘栗やら保存が効くよう工夫をしているようだったが結局は余りそうだ。
この様子では我が家で持て余した秋の味覚をお裾分けしても
この子は喜んではくれないだろう。

「紫も少しでいいから消化していってよ、
 もらったものを腐らせたんじゃもったいないおばけに憑かれちゃう」
「ずいぶんとピンポイントに出るお化けもいるものね」

霊夢が皮を剥いた梨に爪楊枝を刺して頂く。
一口齧れば口の中は瑞々しい甘さに満たされる。
だが、ひと切れ食べたらもう十分に満足してしまった。
秋の味覚を持て余しているのは何も霊夢だけではないのだから。

「…そういえば、さっきから葡萄ばかり食べてるのね」
「…ん」

先程からずっと気になっていた。霊夢は葡萄ばかり食べていたが、
その指摘を受けた霊夢は何故か視線を雲ひとつない秋空へと泳がせた。

「それは何か特別な葡萄なのかしら」
「いや、そんなことはないんだけ…ど…」
「そう言われたら気になるのが生き物の性ね」

そう言って身を乗り出し、うろたえた霊夢の隙を突いて葡萄を一粒奪った。
食べてみると至って普通の、芳醇な葡萄の味。

「…普通の葡萄じゃない」
「…普通の葡萄よ、でも」

霊夢は、そっぽを向いたままか細くつぶやいた。


「………むらさき色、だったから」


そう聞いただけでは、正直意味なんて判らなかったと思う。
だが、霊夢の染まった頬と私自身の名前さえ判っていれば簡単に推理は成り立つのだ。
自惚れているとでも、なんとでも。

「…ふふ」

私は無意識に、口元を相当だらしなく緩めていたようだった。


「…ああもう!違う!今はなんとなく無心で葡萄をつまんでいたい気分だったの!それだけよ!」
「そうね、そういう気分になる時もあるわよね」
「ええそうよ、そうなの、そうなんだってば」


苛めているつもりなど全くないのだが、どんどん顔を赤らめていく霊夢を見ていると
申し訳なく思う気持ちと同時に更に嗜虐心を刺激されていく自分がいることに気付く。
ああ、可愛い。でもあなたがこんなことをしていたというのに
自分は何もせずにいるだなんて私は満足できない。

それに自分でも思いつかなかったのだ、
こんな方法で秋の味覚を飽きずに消化するだなんて。


「じゃあ私も」
「へ」


延々と言い訳めいたことを並べ立てる霊夢を横目に
平籠に積まれた果物のひとつを手に取ったとき、
霊夢はその意味を一瞬で理解したようだった。



手に取ったそれに、音を立てて口付ける。

「ね、可愛いわよね。すべすべで、張りもある。新鮮な証だわ」
「な、なに…」

鼻を近づけ、その香りを鼻腔いっぱいに満たす。

「甘くて、良い香り。」
「……」

ぺろりと、舐め上げる。飽くまでも噛んだりはしない。

「食べちゃいたい」
「………ッッ」



ねえ、どうしてそんな顔をするの?
私がこうしているのは、ただの―――――あかい林檎じゃない。



「でも、中は白いのよね」
この時の私は自分でも相当に意地の悪い顔をしていたと思う。



ああ、またやってしまった。可愛いものは苛めたくなってしまう私の悪い癖。
霊夢は、涙目になりながら林檎と同じくらいに顔を赤くしていた。

「どうしたの?霊夢。それともこれは食べちゃいけない林檎だったのかしら。」

なんとも安っぽい禁じられた果実だ。私はわざとらしく霊夢に尋ねた。
霊夢は最初口ごもったが顔を赤らめたまま言い放った。


「………さいよ」
「…なぁに、もっとはっきり言って頂戴な」


「…さっさと食べればいいじゃない!」



私は口の端を吊り上げて、弄んだ林檎をそっと平籠に戻した。


「言われなくとも。」


そう告げて私は柔らかく霊夢にくちづける。彼女からの抵抗はない。
葡萄の味はまだ残っていた。


味わうは秋の味覚。林檎に葡萄、紅白の巫女。
使用後の林檎と霊夢は紫が美味しくいただきました。


梨とゆかれいむが美味しい季節になりましたね。
ひさしぶりの投稿になりますっていうかまた投稿すると思ってませんでした。
またヘンなノリと勢いで書いたのですが前回よりは短いです。
そして相変わらずおかしい所が有りそうでびくんびくん。
なんかまたはずかしい感じになってしまいましたが秋だから仕方ないね。
冬になる前にいちゃいちゃするゆかれいむが書きたかったんだと思います…
塩八
http://saltyyard.blog10.fc2.com/
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コメント



0.2300簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむ2828
5.100名前が無い程度の能力削除
奥ゆかしさがあると艶かしさも比例して増す法則
6.無評価名前が無い程度の能力削除
じゃあ俺は橙色の柿を頂いて行きますね。
7.100名前が無い程度の能力削除
お互いに食べあうゆかれいむ・・・
やばい、妄想が止まらない
10.100名前が無い程度の能力削除
サインだった訳ですね、お誘いの
12.90奇声を発する程度の能力削除
とても良いゆかれいむのお話でした
13.100名前が無い程度の能力削除
霊夢可愛いですわ!
17.100名前が無い程度の能力削除
あンまァ~い!説明不要!

もっとゆかれいむしてもいいんじゃよ?
24.100名前が無い程度の能力削除
甘い、口から砂糖が出る!
文章も読みやすくてサラっと読めました。
25.100名前が無い程度の能力削除
うむ、豊穣なゆかれいむだ!
29.100名前が無い程度の能力削除
変な笑い声が出た
30.70名前が無い程度の能力削除
可愛らしい
31.100名前が無い程度の能力削除
流石のクオリティのゆかれいむ。ごちそうさまでした。
32.100名前が無い程度の能力削除
良いね
36.100名前が無い程度の能力削除
(^p^)砂糖ゴバァ
39.100名前が無い程度の能力削除
なにこの林檎、糖度高い!
素晴らしいゆかれいむ、ごちそうさまでした。

ところで、藍色の果物を探しているのですが……
42.80洋菓子削除
甘いですね!
44.100がま口削除
フルーツ大好きな私にとって、これは食欲とゆかれいむ成分を補うのに最適でした。
巨峰が食べたいです。あとジョナゴールド。
49.100名前が無い程度の能力削除
冬になる前に、ゆかれいむ分補充!
55.100吾妻削除
あなたの作品を見て、少なからぬ影響を受けた者です
是非とも、この作品を動画化して、ニコ動にあげて欲しいものです。

今後のゆかれいむ作品を楽しみにしています。
59.80名前が無い程度の能力削除
季節を感じるよいゆかれいむでした。
61.90名前が無い程度の能力削除
これは美味しいゆかれいむ。
69.100名前が無い程度の能力削除
ムッハー!これは美味しいゆかれいむ!
70.100名前が無い程度の能力削除
「使用後の林檎と霊夢は紫が美味しくいただきました。」
に過剰に反応してしまったのは私だけでいい……