まえがき
・この話は「秋、60%」の続編ですが、前作をご覧にならなくても十分楽しめる内容となっております。
・この作品を作成するにあたって前回コメントし、貴重なアドバイスを下さった方々にこの場を借りて感謝します。
(一応)前回のあらすじ
幽香に秋を奪われた秋姉妹。
秋を取り戻すため、姉妹は幽香と立ち向かうこととなった。
穣子「野郎・オブ・クラッシャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
その刹那、閃光が走った。
・・・かくして、秋姉妹は生き残ったのだろうか!?それとも幽香の勝利に終わってしまったのだろうか!?
_____________________茶番終了______________________
長月 一日
幻想郷の東の端の端、そこに博麗神社があった。
神社というだけあってその周辺にはそれなりの木々が生い茂っていた。
博麗神社はいわゆる幻想郷と外の世界との境界に存在しており、そこには外の世界の木々も交じっていた。
この外の世界の木々が入り込んだ理由としてはかつて神社にはミズナラの木という境内の境界を構成するものが存在していたが、落雷による影響でそのミズナラの木が消滅し、それによって境界に穴が空いたことによって外の世界の木々が入り込んだからである。
さて、これら神社の周辺にある木々は秋になると紅葉となるものが殆どであり、秋の博麗神社は紅一色の色鮮やかな空間に包まれるのである。
しかし、今年は暦上ではもう既に長月。秋分の日までまだ日数があるが、それにしても真夏の如くひどく暑かった。
~外の世界・京都~
「オハロ、メリー」
「あ、うん。おはよ」
「暑いね」
「うん」
「昨日夜見たニュースによるとこの国ってどんどん亜熱帯気候になっているらしいよ」
「うへぇ・・・ねぇ、蓮子。学校行く前に冷たいものでも買って行かない?」
「あぁうん・・・今私金欠なんだ」
「ありゃま」
~幻想郷・博麗神社~
そのイロハカエデは鳥居のすぐ側にあった。
あちこちへと枝を伸ばしているその楓の葉はまだ青かった。
その楓は周囲の楓と比べると丈が大きかったが、その枝の中には一本だけまるで糸のような太さの枝があり、そしてその枝は細かったものの他の枝と比べるとそれなりに長さはあった。
その枝には先端に一つだけ、葉が付いていた。
葉はまだ青い色をしていた。
「暑い…」
博麗神社の巫女、博麗霊夢は一通り境内の掃除を終え、神社の屋根の下の日陰、お賽銭箱のすぐ側で寝転がっていた。
「早く涼しくなってくれないかしら…ったく。秋の神様は何をしてるのよ」
霊夢は独りごと(主に秋の神様に対する不平・不満)をぼやきながら賽銭箱のすぐ側をごろごろ転げまわっていた。
ゴ~ロゴ~~~ロゴゴロ~ロゴ~ロロロゴロゴロ・・・・・・・・・・・
いつの間にか地べたまで転がっていたので巫女服が砂だらけになっていた。
「あ~~もう!汚れたじゃないの!誰のせいで…って私のせいよね…」
…ため息。
「あぁ…暑すぎて頭がやられてしまったのかしら…」
霊夢はその場から立ち上がり、とりあえず水を飲みに神社の中へと入って行った。
……その楓の葉は先ほどの巫女の行動の一部始終を見ていた。
楓の葉は風に煽られ、先ほどの巫女の様に前へ、後ろへ、左へ、右へと、踊るように動いた。
風が止んでも葉はしばらくの間動き続けていた。
葉が枝から離れることはなかった。
長月 九日
~幻想郷・霧の湖~
「ねぇリグル、まだ暑いね…」
「うん…そういえばチルノはどこへいったの?」
「みんな~たいへんなのだ~!!」
「あ、ルーミアちゃんだ……どうしたの?」
「チルノちゃんが…チルノちゃんがが暑すぎてペースト状になってるのだ~~~!!」
「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
~幻想郷・博麗神社~
違和感に気付いたのは辰の刻、掃除をしていた時であった。
箒を取り出し、いつも通り手始めに賽銭箱の周辺を掃除しようとしたところ賽銭箱の中から寝息の様な奇妙な音が聞こえてきたのだ。
注意深く賽銭箱の中を覗いてみると、そこにはいつしか守矢神社で見た妖怪、古明地こいしが眠っていた。
なんでこんな所で寝るの…と内心思いつつ霊夢は賽銭箱を何度も蹴り、中にいる小さな妖怪を起こした。
「ふにぇ…おはよ」
「おはようじゃないわよ。なんであんたがこんな所にいるのよ」
「痛ででででで……話すから!話すから耳引っ張らないでよ…」
こいしによると彼女はいつも通り姉に黙ってふらふらと地霊殿を出て幻想郷中を彷徨っていたが、彼女が気が付いた頃にはいつの間にか幻想郷でない世界に流れ着いたらしい。
一つの世界ではなく、様々な世界に流れ着いたらしいが、彼女からすれば今まで見たこともない世界に対して恐怖心よりも好奇心が湧いてきたため、それぞれの世界で彼女は彼女なりにその世界を楽しんでいった。
ある世界では中年の筋骨隆々としたバンダナをつけた男の幽霊にその世界独自の玉ころ遊びを教えてもらい、
またある世界ではそこらへんの落ち葉を拾ったところなぜか狸に変身したり、
またある世界ではガスマスクを付けた超能力者と世間話をしたり…
色々な事を楽しんだ所ある日、気が付いたらまた幻想郷に戻っていたそうである。
地霊殿を出発してから一週間後のことであった。
「いやぁ、たったの一週間だったけどありゃもう充実した日々だったわ。私って一週間ほどの旅でもあまり疲れないけど、今回ばかりは身体に疲れが貯まってて…」
「それで地霊殿に戻るのが面倒臭くなって近くにあった私の神社で休もうとしたわけ?」
「そそ、そゆこと。丁度いい寝床になりそうな箱があったからそこで休ませてもらったわ」
「私の賽銭箱は寝床じゃないわ!!お金を入れる所よ!あんた金もってるの!?一日ここで休んだんなら金ぐらい払ってよね!」
「けちんぼ…(小声) わかったわよ…」
そう言うとこいしは賽銭箱の中に金貨を数十枚投げ入れた。
「け…結構な数入れたわね…」
「少ない方がよかったかしら?」
「いやいや」
そう言うと霊夢は奇妙な笑みを浮かべながら手を横に振った。
「じゃあ私はこれで失礼するわ。お姉ちゃんたちが心配してるだろうし」
そう言うとこいしはその場を去った。
霊夢はこいしの姿が見えなくなったの確認するとすぐさま賽銭箱の中身を確認し、愕然とした。
それは霊夢が見たことのない金の板の様なもので、真ん中に縦線の溝があるだけの硬貨と呼べるかどうかでさえ怪しい代物であった。
コイーン。
……楓の葉は少し離れたところにいる巫女に同調するかのようにだらんとその身を垂らした。
長月 十三日
~幻想郷・紅魔館門前~
「暑い…しかし、こんな暑さで倒れるようなら門番は務まらない!今日もいつも通りのメニューを実行するぞ!」
一時間後
「はぁ…門番が熱中症で倒れるなんて…世も末ね。…ん?なんか屋敷の中が騒がしいわ」
~幻想郷・博麗神社~
突然の爆音に巫女は飛び起きるのであった。
寝起きで音の方向がよく分からなかったので、勘で賽銭箱の方向へ向かうとその賽銭箱は大破していた。
今日は風がそれほど強くないのかまだ辺りに砂埃が舞っていたが、その粉塵の中、元々賽銭箱のあった所の辺りに人らしきものが一人伸びていた。
霊夢はその人物を確認したところよく知る人物だったらしく、わざとらしく大きなため息をついた。
その人物とは言うまでもなく、友人の霧雨魔理沙であった。
どうやら魔理沙は気絶してるらしく、霊夢は魔理沙の脇腹を蹴って起こそうとした。
それにしてもこの巫女、人が寝ているのを起こす時は必ず蹴り技で起こすのだろうか。
「ひぐぅ…まずったぜ…」
「なにをまずったらわたしの賽銭箱を壊すはめになるのよ。壊したんなら直して頂戴」
「はいはい、命の次に大切な箱だろ?直しますって…」
そう皮肉っぽく言った後、魔理沙は賽銭箱の前で手をかざすと粉々になった賽銭箱は見る見るうちに元通りになっていった。
前に賽銭箱を直してもらったときには何か呪文みたいなことを言ったような気がするけど、とふと霊夢は思った。
日々の研究の甲斐があったのか、少しは成長したのだろうか。
「ふむ…まだちょっと微妙だな…」
魔理沙は呟いた。
「え、微妙って…どっか欠けていたとか…」
「げ、もしかして今の聞こえたか!?」
どうやら魔理沙は喋ってないつもりだったらしい。
「えぇっとまあ、あれだ、欠けたというか何というか…」
「じゃあどこがおかしいん?」
「わー怒るな怒るな。ここ、ここだよ!」
魔理沙が指差した所は賽銭箱の側面の部分で、本来なら「奉納」という文字が書かれてある所だが、復元した後、文字がかすれて読みにくくなっていた。
「ああ、確かに文字がかすれているわね…まぁ後で書きなおすからいいわ」
「え、許してくれるのか?」
魔理沙はきょとんとした。それもそのはず、いつもの霊夢なら賽銭関係のいざこざとなるとかなり腹を立てるタイプで、許してくれることが殆どなかったからだ。
「許したわけじゃないわ。なにをまずってこうなったかをちゃんと説明して頂戴」
「あーそうか…」
やっぱ許してもらえそうにないな。魔理沙は思った。
「まぁあれだ。俗に言う瞬間移動の魔術の練習だ」
「なるほどね、大体察したわ。瞬間移動しようとして着地地点を誤ったわけ?」
「鋭いな…まさしくそれだぜ」
「まったく…どうゆう風の吹きまわしでそんな難しそうな技を習得しようとしたのよ」
「ああ、最近こーりんの所に『ハ○ー・○ッター』とかいう面白い小説が並べてあってな、その登場人物の双子の兄弟が楽しそうに使うのを見て…」
「自分も使ってみたくなったわけ?」
「お前、さっきから人が話そうとしたことを先に言うなよ。どっかの覚り妖怪じゃあるまいし…」
「ああ、ごめんごめん」
その後魔理沙は霊夢から煎餅を少しもらい、帰る準備に取り掛かった。
「はぁ…箒持ってないから帰りは徒歩だぜ…」
「ん、まぁ頑張って」
「人ごとだと思いやがって…お前空飛べるだろ?背中に乗せてってくれよ」
「嫌よ。重いから」
その後、魔理沙はとぼとぼと一人で魔法の森へと帰って行った。
……楓の葉はその疲れ切った様子で帰っていく彼女を見て、自らもその身を干からびさせてしまったようである。
長月 十四日
~幻想郷・妖怪の山麓~
あれからどれほどの日数が経ったのだろうか。
姉妹と花の妖怪の戦争は依然として続いていた。
「穣子!カバーして!」
「よーし分かった! 焼芋『スイートポテトルーム』!」
バラバラバラ……
「こんなの弾幕じゃないわ!土のついた食物よ!」
「だったら喰えばいいだろ!」
まさに第惨事大戦である。
~幻想郷・妖怪の山の近くの人里(農村)~
バラバラバラ……
「おお!空からよぉ肥えた芋が!」
「この不作の時に!神様に感謝せねば!」
「ありがたや~ありがたや~」
~幻想郷・博麗神社~
く~…く~…
…またあの音だ。
霊夢は賽銭箱を睨みながらそう思った。
朝起きていつも通り賽銭箱周辺の掃除をしようとした時、また中から寝息の様な音が聞こえてきてのだ。
…またあの無意識妖怪かしら、と思いつつ賽銭箱の中身を覗くとそこには霊夢の予想してなかった人物がそこにいた。
そこで寝ていたのは本来なら紅魔館に籠っているはずの吸血鬼、フランドール・スカーレットであった。
…なんでこんなところにいるのよ!!
霊夢は例の如く賽銭箱を蹴飛ばし、中にいる悪魔の妹を起こした。
「…で何でこんな所にいるの?レミリアの奴は何も言わなかったの?」
「ん~それがね…」
フランは持ち込んでいたらしい日傘をくるくる回しながら話した。
「お姉さまと喧嘩して家出したの」
「家出って…」
霊夢は呆れるしかなかった。
495年以上生きていた者でも喧嘩して家出することがあるのか。
…まぁ年齢と精神年齢が必ずしも釣り合うとは限らないけど。
とりあえず聞いてみた。
「何で喧嘩したの?」
「あ~やっぱりそれ聞くの?」
「そりゃ気になるわよ。まぁあなたたちの事だから大方想像がつくけど…」
「う~んそうね、えっとね…昨日私誤って家のシャンデリアを壊してしまったの」
やっぱりそうか。
この娘のことだから恐らく「…を壊してしまった」というタイプのやつだと思った。
しかしよりによってシャンデリアか。そりゃあの姉も怒るわな。
「…というかどうやって壊したのよ」
「うん。昨日ね、何となくお人形を天井に叩きつけたくなったの」
「何でよ」
「だから何となくだって…もぅ。貴方だって特に理由もなく地面を寝転がってごろごろしたい時だってあるでしょ?あれと一緒よ」
確かに。
…というかつい最近地べたをごろごろしていたから何も文句は言えない。
「…で無意識にお人形を天井に投げつけながら歩き回っていたけど、そのうち人形がシャンデリアに当たっちゃったの。で、それれ、」
舌がもつれたらしい。
「…えー…それでシャンデリアが壊れちゃったの」
「全く、あんたどんだけ腕力あるのよ」
霊夢はため息をついた。
「…でも、それってどう考えてもあんたが悪いんじゃないの?それで家出っていうのも考えものだとおもうけど」
「うん…でも…お姉さま…酷いんだよ…?」
霊夢は驚いた。
急にフランが泣き出しそうな表情をしたのだ。
「私ね…謝ったのよ?自分がしたことは悪いことだって、ちゃんとわかってるのに……許してくれなかったの……何言っても聞いてくれなくって…ビンタもいっぱいされて…うぅ…ぐぅ……」
ついには本当に泣きだしたので霊夢は戸惑うことしかできなかった。
とりあえずフランの頭を撫でてあげた。
「あ~もう、ここで泣かれちゃ困るのよ…ねぇ、もう紅魔館に戻る気はないの?」
「ぐず…だっで…戻ってもお姉ざまが……」
「今は多分反省してるはずよ」
「…え?」
…そりゃフランとレミリアはそれほど年が離れていないから精神年齢も多分似たようなもんなんだろう。
フラン位の精神年齢ならその内自分がしたことを認めて反省しだすに違いない。
それに、向こうにはしっかり者の咲夜がいるはずだ。彼女が今回の事態を見逃すはずがない。
「…ねぇ、もうこんな所で燻ぶってないで早く屋敷に戻った方がいいわよ?あいつ多分あんたのことを心配しているはずだから…」
「ねぇ、本当に心配してると思うの?」
「そりゃまぁ…ねぇ」
「ふーん…じゃあ…戻ってみようかしら」
やっと帰る気になったらしい。
フランは足早に霊夢の元から離れ、そして霊夢の方に顔を向けた。
さっきまでの泣き顔はどこへやら。彼女は満面の笑みを霊夢に見せた。
まだ目の周りは赤く腫れ、涙が残っていたが、それを感じさせないほどの明るい、輝くような笑顔だった。
「…ありがとね。 じゃぁ、またね。たまには遊びに来てね」
そう言うと彼女は日傘をさしたままゆっくりと空を飛んで行った。
…このまま誰かに見つからなきゃいいけど。
ゆっくりと彼方へと飛んで行く彼女を眺めながら霊夢は思った。
……楓の葉は先ほどいた少女の輝くような笑みに惹かれ、萎びたその身の淵が僅かに紅潮していった。
…それは彼女が身に纏った服の色の様に、血の様な紅い色をしていた。
長月 十七日
~幻想郷・マーガトロイド邸~
「私の名は、魔法少女アリス!! とってもきゃわいい魔界少女なのよ!!(ビシィ!)←キメポーズ 」
「…こうした所で肌のシミが消えるはずないわよね。あ~恥ずかし。…まったく、これだから夏なんて(略)」
~幻想郷・博麗神社~
すー…すー…
…また、寝息である。
「……はぁ~…」
霊夢は朝早くから大きなため息をついた。
流石にこう連日賽銭箱の中に何者かが入り込むとなると例え神に仕える巫女であってもため息をつかざるを得ないだろう。
…今度から賽銭箱を階段の下に置こうかしら。もしかしたら階段を上る手間が省けて神社に参拝に来ない人でもお金を入れてくれるかも。
と、こんなことも考えだしたのである。
霊夢は賽銭箱を中身を見ずに何度も蹴飛ばし、中にいる者を起こした。
中から出てきたのは少し前に顔を合わせた古明地こいしだった。
「痛でぃえでででぇ、ちょ、ひっぴゃらないでお!!」
霊夢はこいしの頬を両方おもいっきり引っ張った。
「なんでまたここで寝てるの!」
「いいきゃら、はなひて!」
このままだと話せそうにないのでとりあえず手を離した。
「…で、ここに来た理由が聞きたいのね?」
「そうよ」
「んーここに来た理由はね…前にこの賽銭箱に入った時に思ったけど、ここってすごく居心地がよかったのよね。だからまた入ってみたくなっちゃったの」
………。
霊夢は何も言わずそっとこいしの側に近寄り、さっきより強い力で再びこいしの頬を引っ張った。
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!!!やめ、痛でぃえ!離しぃてぇ!!」
「何よ!前の時だってあれ結構迷惑だったのよ!!それに、あの後出したお金!あんなの使いものにならないわよ!!」
いい加減霊夢も疲れてきたのでこいしから手を離した。
「ふぇ~ん…ちょっと伸びた」
「はぁ…。いい?今度こそちゃんと払ってくれないと許さないわよ!」
「あぁ、分かった分かった…これね」
するとこいしは懐から巾着袋を取り出し、その中から銅貨を十数枚取り出し、霊夢の手に直接渡した。
「これで満足かしら?」
「ああ…うん…」
「あ、あとこれもあげるわ」
こいしは懐からさっきの巾着袋とは別の袋を取り出し、今度は袋ごと霊夢に渡した。
「何これ」
「そうね…これは私からのプレゼントよ。本当は賽銭箱の中にこれを置いて帰ろうとしたんだけど…貴方予想以上に怒っていたから…」
ありゃま。この娘意外と良い子だ。思えば前回(使えないものとはいえ)硬貨を賽銭箱に入れようとした時点でそう思うべきだった。何しろ神社の賽銭には殆どお金が入らないから…
「…そう。ありがとね。あと、さっきは強くつねって悪かったわね」
「ううん、いいよ。私が悪かった訳だし…」
その後、古明地こいしは再び神社を後にした。
霊夢は早速ずっと手に持っていた銅貨の枚数を確認しようとして愕然とした。
確かにその銅貨は硬貨らしく何らかの模様が刻まれてあったが、自分の知っている銅貨とは明らかに違う模様が刻まれていて、真ん中には「GIL」という文字が書かれてあった。
…くっそ、あの子今回も間違えて入れたわね!!
霊夢はその硬貨を近くの草むらに投げ捨て、もう一つこいしから貰った巾着袋を開け、中身を取り出した。
中身は碁石だった。
白4つ、黒6つ。
……楓の葉は全身に血が通ったかのようにますます紅の色を帯び、そして目の前にいる跪いて動けなくなった巫女のようにさらにその身を萎びさせた。
____後章へ続く
前回の何が評価されて何が悪かったのか、見直す余地はまだあると思います。