※百合表現注意
もう気温も大分暑くなり所謂春夏秋冬の夏が訪れる。結界の外ではなんだか温暖化、という現象が起きて夏が非常に暑いらしい。幻想郷は影響はないらしいがこれ以上に続くとなんらかの対策が幻想郷にも必要になってくると紫が言っていた。
何故ここでこんな情報を知っているかというと、それは全てこの幻想郷の管理者である、八雲紫によって与えられた情報である。何故かしょっちゅう私の所にきてはお茶と私の新作のお菓子をおいしそうに頬張って帰っていく。
1週間に1回、酷いときには3日に一回の頻度で紫は私の前へと姿を現す。
しかし紫が毎回訪れてくれるのを悪い気はしなかった。一時期避けていた時もあったのだが、今では少し楽しみにしている自分がいたりもする。新作のお菓子を紫の好みに合わせて作ってみたり、たまには和菓子にも手を出してみたり。
そんなある夏の日である。たまたま魔理沙と霊夢に見つかって誘われたのだが次の日曜日に花火大会があるらしい。見に行かないか、とのことである。勿論全員浴衣で行こうとのこと。その花火大会の日には里のほうでちょうど祭りもあるらしいのでたまには3人で遊ぼうとのこと。
まぁたまには息抜きもいいかと私は承諾した。
そんなこんなで、私は今浴衣を作ろうと思っている。勿論浴衣は持っていなかったし、実はこの前ちょうど紫からいい具合の布地を貰っていたのだ。図書館に行って浴衣という着物の情報を集め、とりあえず作ってみた。
水色で刺繍には金魚を入れるといいということで足元に控え目にいれてみた。
とりあえずこんなものだろうか。
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そしてそお祭りの日の当日。私は浴衣に着替えて博麗神社にいた。変なところがないか聞いてみたが霊夢達はよく似合っていると言っていた。今回は薄い水色の浴衣に髪の毛は後ろで縛り、簡単な手提げ。
「いい加減でてきたら?」
霊夢がどことなく言葉を発するとスキマから紫が出てきた。一体いつから覗いていたのだろうか。
「はぁい」
紫はいつもの服で私達の前へと姿をあらわした。そして3人の姿を見て、ふふと笑った。
「何よ?」
「いえ、いつもの面子が浴衣というのも新鮮だな、と思いまして」
扇子で口元を隠しながらクスクスと笑っている。さて、周辺も大分薄暗くなった。そろそろ里へと行くことにしよう。今日は大きな祭りもあるし、たまには羽を伸ばしてもいいだろう。
みんなで里へと移動する。その時紫も一緒についてきたようで、後ろでスキマから上半身を出して後ろから見守っている。
そして里へとたどり着くとすでに祭りが始まっていた。太鼓が鳴り響き、そして大勢の人。たまに妖怪の姿も見えるがみんな楽しんでいるようだ。
「アリスはお祭りは初めて?」
「ええ、浴衣を着るのも始めてよ」
そういうと3人は屋台が並ぶ道を行く。そして一つの屋台に興味を示すアリス。それは所謂綿菓子、だった。綿菓子は砂糖を細く、まるで糸のように割り箸にくくりつける砂糖の塊。
「何・・・?これ」
「それは綿菓子っていってね。砂糖の塊よ」
アリスには理解できなかった。何故、砂糖をこのように変化させて食べるのか。何故、砂糖を食べるのか。
すると霊夢が屋台のおっちゃんに、綿菓子を頼んでいる姿が。とりあえず2つ。片方を私に渡して、食べてみなさいよと霊夢が促す。言われるがままにアリスはそのお菓子に恐る恐る口をつけてみる。
感想としては甘かった。ただただ只管甘い。そんな感想。しかし、ただの砂糖の塊のはずなのだけれど何故か美味しく感じる。不思議だった。
すると横からすっと顔を出して、紫が私のもっていた綿菓子にかぷと噛み付いた。
「スパイスもついておいしいですわ」
と言った。スパイス?何の事だろうか。とりあえずまぁ、この量を一人で食べるのは流石に難しいので紫にも食べてもらおう。
魔理沙と霊夢がものすごく怖い視線で紫を睨んでいるのだが何か悪い事をしたのだろうか。紫はスキマからいつの間にか出て私の隣でふわふわと浮かんでいてニコニコしている。
この笑みはなにかをたくらんでいる笑みだと予想するが、何を考えているかはわからない。
ふと、霊夢と魔理沙が太鼓に気を取られていたときである。アリスに次へいこうと言ったと思ったら、アリスはその場から消え去っていた。同時に紫も。
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「どういうつもりかしら、と一応聞いておこうかな」
ふと私はいつの間にか紫に拉致されて、里の中なのだが人目が付かないところにいた。そして押し倒されていた。
「かわいいかわいいアリスを見ていたらいてもたっていられなくなったのです」
ふふふ、と紫は笑った。浴衣は肌蹴ており肌の露出が多い。寒くはないのだがなんせ場所が場所だ。誰かが来てしまいそうで怖い。
「私は非常に我侭な妖怪ですわ」
「そうね」
私は紫の顔を見ながら答える。背中の石が冷たくて気持ちがいい。
「だから、ほしいものは手に入れます」
そして面妖に笑うとこちらへと顔を近づける。
「どんな手を使っても」
鼻息がかかるような距離で私にそう告げた。そしてその距離は一層近づく。気が付けば紫の唇とアリスの唇はお互いに触れ合っていた。紫は目を閉じ、私は空けたままで。あけたままなのは紫が少し顔に変化ができたら面白いかな、と思っていたのだが一切変化はなかった。頬を染めるぐらいの変化があってもいいと思うのだが。
「私は本気です。この美しい体、なんどめちゃくちゃにして誰もが目を背けるような体にして私だけのものにしようと思ったか数えるのも億劫です」
アリスの首から形のよい胸、そして腰、足へと紫の手がすべる。アリスは特におびえた表情などはしていなかった。しかし、アリスは半分諦めもしていた。実力ではかなうはずもない相手。そんな相手に心臓を簡単に貫かれてしまうような距離にいるのだ。変な行動は示すべきではない。
「で?貴女は何を求めているのかしら?」
「温もりですわ」
何を言い出すんだこいつは。
「なら抱きしめでもすればいいのかしら」
そういってアリスは紫に抱きつこうとする。しかしその手を紫はたくみにスキマを使って止める。
「ほしいのは私の体?」
紫はすぐに顔を横に振る。そして再びアリスに顔を近づけ、
「訂正しましょう。ほしいものは全てですわ。貴女の体、思い、愛、哀れみ、思い出、思いやり、ありとあらゆるもの全てを」
アリスは笑いながら紫を見る。まるで哀れむような目で、そして軽蔑するかのような目で。
「体だけならばあなただったら簡単に手に入るでしょう。でも他のものは無理ね」
「言ったでしょう?どんな手を使っても手に入れると。神が邪魔というならば神をも殺しましょう」
その言葉を聞いてふとお母様の事が頭に浮かんだ。まさか、紫は。お母様がそう簡単に殺されるとは思えない。しかし相手はあの八雲紫だ。簡単にこの世を滅ぼしてしまえるほどの力を持っている。
「一つ質問があるわ。・・・何故?」
「ずいぶんと漠然な質問ですね」
すると紫はその質問の意味を初めから知っていたかのように答え始めた。
「最初は本当に貴女のことはなんとも思っていませんでした。ただの妖怪。しかしいつからでしょうか。貴女を少しずつ知り始めて、私はもっと貴女を知りたいと思うようになり始めたのです。しかしそれから暫くして貴女は私を避けるようになっていきました。同時に心が張り裂けそうになったのです。愛おしさで狂いそうになったこともありました。私も妖怪である以前に女です。好意を持った相手に避けられるのがどれだけ苦痛か貴女はよく知っているでしょう?死の少女という肩書きを背負った事のある貴女なら」
昔の事を蒸し返され、アリスは少し嫌な顔をした。でも同時に紫の言っている事に心理を感じた。私が死の少女と呼ばれたとき、私は避けられ、嫌味嫌われた。そのことを経験しているアリスは若干だが紫の気持ちが分かる気がしたのだ。
紫は私の唇にもう一度軽いキスをすると私から離れる。
「さぁ、祭りに戻りましょう。霊夢達も探しているはずですわ」
そうして私達は祭りへと戻った。そしてふと見てみると紫も浴衣に着替えていた。綺麗で長い金髪がよく栄えて美しい。
そして案の定すぐに霊夢達に見つかり、何処へ行っていたのかと問いただされたが、紫に浴衣を着付けていたと言い訳をしてなんとか難を逃れた。まさかここで口付けを2回もされてしかも告白をされたといったら霊夢達はどういう反応をするだろうか。
紫はふふ、と笑いながら私に横に立つ。そして霊夢達に見えないようにアリスの手を握った。
まだ大分花火の時間まで時間があるので、それまでもう少しお店を回る事にしよう。とりあえず金魚すくいやらをやってみたが、難しくて一匹も取る事は出来なかった。どれもこれもが新鮮で楽しい。たこ焼きと言うものも買ってみたりした。丸くて中にタコが入っているらしい。たこ焼きというのだから。一つ口に含んでみると紫はあっ、と言う顔をした。そして数秒後その顔の意味がすぐに分かった。熱い。とてつもなく。思わず口を押さえ、涙ぐむ。そうしたらすぐに紫がスキマから何か飲み物を渡してくれてすぐに口に含んだ。
「た、助かった・・・」
なんでも私が口に含んだものはラムネというものらしい。とりあえず紫にもたこ焼きを分けてあげた。おいしそうに食べていたけれど熱くはないのだろうか。私の口の中は焼けどでひりひりだと言うのに。
「ほら、口周り汚れてるわよ」
そういって私は紫の口周りを拭いてあげる。その姿を見て霊夢達は丸い目をする。
「なんか、最近あんたら仲いいわよね」
そういわれてふと気が付く。確かに、そう取られてもおかしくないかもしれない。
しかし紫はこれからどう行動するのだろうか。どんな手を使っても私を物にすると言っていた。紫だったら本当に何をしでかすかわからない。
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そして花火の時間である。私達は里の外れの丘の上にいた。ここは特等席。里の人間は里の外なので近づくことはない。外に出てしまえば妖怪に襲われてしまう危険があるから。
前には霊夢と魔理沙が並んで座っていて、リンゴあめをぺろぺろと舐めている。その後ろに私達。
そして花火が始まった。霊夢達は花火に気を取られていて後ろを振り向く様子はない。
すると紫は私の方へとより、押し倒してくる。押し倒した時にする草の音は花火の音が消してくれる。
霊夢達に気がつかれないか心配だったが紫はそんなのお構い無しだ。
「これからどうするのか、と考えているのではないですか?」
相変わらず私の思考を読むのがお好きなようで。
「決まっていますわ」
更に体重をかけ、私に顔を近づける。
「押して押して押しまくるのですわ」
霊夢たちが花火に気を取られているうちに行われた後ろでの動き。
「アリスが私無しでは生きれなくなるほどに」
そうして紫とアリスは本日3度目となる口づけを交わしたのである。
これから毎日紫に口付けされることになるのだろうか。
でも不思議と悪い気持ちはしない。
だが私はここで見栄を張って否定の言葉を出しておく。
「私にとってソレは困るわね。だって貴女は冬、冬眠するじゃない?一番寒い時期に隣に居ないのは困るわ」
む、と紫は困った顔をした。確かにそうだ。紫は冬に冬眠して一切人前に姿を現さない。痛い所を突かれてしまった、と紫は久しぶりに困った顔をした。私は紫ごと起き上がると霊夢達を見る。2人はまだ花火に夢中で私達の動きには気が付いていなかった。私は紫の耳元に近づきそっとささやく。
「そうね、冬もずっと一緒にいてくれるというならばあなたの話考えてあげる」
と。
勿論私の家で冬眠は論外ね、と追撃を忘れない。さらに紫は困った顔をした。そんな紫の困った顔がついつい面白くて、私はクスクスと笑っていた。
「お返事待ってるわ」
そういってアリスは花火へと目をやる。夜目が利いているためアリスを顔を見失うことはないが時々花火の発する光で明るくなるアリスの顔は美しかった。誰もがうらやむ美貌、して太ってはいない、程よい肉つき、それでいてスレンダーな体。そして手先の器用さに料理の上手さ、几帳面さ。アリスは女性に必要な部分を全て持っていた。
里に顔を出せば妖怪だというのに色々な人に話しかけられ、子供からは人気のまなざしを受けている。
「ふふ」
とアリスは余裕の笑みを浮かべた。一方紫は珍しすぎる困った顔。すると霊夢が後ろを振り返った。紫が困った顔をしているからか変な顔をしているからか不思議な顔をした。
「たまには紫にも困ってもらわないとね」
そう、私が言って、さらに不思議そうな顔をしていた。確かにそうだ。紫は冬に冬眠をする。理由はしらないが冬には一切姿を見せないのだ。しかしアリスは冬眠を一切はしない。そう考えれば紫の言っている事は身勝手な我侭となるだろう。アリスの事を一切考えていない自分の我侭。
アリスはそんな困っている紫の顔を見てもう一度笑った。それと同時に巨大な花火が花開き、アリスの笑顔を照らす。その表情は紫が見とれてしまうほど、美しかった。
もっとこまらせちゃえばいいよ。
確か言われて読み直すと酷いですね…。
次回作(があれば)気をつけて書いてみようと思います。
貴重な意見をありがとうございました!
これからここでもまれて上達していくてんさんを楽しみにさせてもらいますよ。
これは続きに期待が持てますね、うん(え)
普段困った顔をしなさそうな人が困った顔するの良いですね
最近新境地の作品が多くて楽しいです。
続編期待です!