Coolier - 新生・東方創想話

花盗人

2011/08/19 07:39:37
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 そもそも私が何を信じ、何を確信するか、それが私の思い通りになるだろうか――ウィトゲンシュタイン「確実性の問題」より



 1


 妖怪の山とは反対側の奥地に位置する《太陽の畑》には、人々に恐れられる一人の妖怪の姿がある。
 ――風見幽香。
 その強大な力と、人間に対して決して友好的ではないその性格。自ら積極的に人間を襲うことはないが、その気分を害する相手であれば容赦なく攻撃する性質から、いつしか人間は彼女との関わり合いを避けるようになった。
 関わり合いさえしなければ、実質的には彼女が無害であることを人間は学んだのだ。
 それゆえに今日も一人、幽香は誰と関わり合うこともなく花々に囲まれて一日を過ごしている。
 きっと今日も誰一人として幽香に関わろうとは考えないだろう。何故ならそれは文字通り、命がけの行動なのだから。そして幽香は、人間が命をかけてまで求めるべきものなど、ここには何一つとして存在しないと思っている。
 だからこそ、おそらくは誰もここを訪れることはないはずだった。
 そんなことを思いながら幽香は行き交う雲を見上げ、ただのんびりと寝転がりながらその時を過ごしていた。
 ふと、柔らかな風が吹く。
 その風が花々を揺らし、心地よい香りを幽香の元へと運んできた。
 けれどその些細な違和感に、幽香は確かに気付く。
 花の香りと共に運ばれてきた、その一つの匂い。
 それは間違いなく――。

「――人間」

 幽香はそう小さく呟いた。
 人間の匂い。
 幽香がそれを嗅いだのは久しぶりのことだった。以前それを嗅いだのが一体いつのことなのか、幽香は正確に思い出すことすら出来ない。それほどに幽香は人間に対して興味が無かった。
 そしてこんな花と幽香以外存在しない場所に用事のある人間に、幽香は心当たりも無い。
 しいて挙げるとすれば、それは疑心に駆られて妖怪である幽香を退治しようとする者たち、といったところだろうか。
 幽香は関わり合わなければ基本的には無害である。しかし――。
 ――幽香が一体いつまで無害であり続けるのか。
 それは結局のところ人間には分からないことだった。
 幽香の妖怪としての力は強大である。その幽香がいつ気まぐれで人を襲うとも分からない。それはつまり幽香が存在する限りにおいて、人々は決して心の底から安心することは出来ないということだった。
 ともすれば、幽香を退治しようとする人間も少ないながら確かに存在していた。
 そんな自分を殺そうと考える相手に幽香が気分を害されないはずもない。当然幽香はそれらの人間をことごとく排斥した。
 今回のこの匂いの主も、あるいはそういった目的でここを訪れたのだろう。
 幽香はそう思い、少しの警戒心を持ちながらゆっくりと身体を起こす。
 たとえ幽香が気を抜いていたとしても、それで人間に対して遅れを取ることは考えづらい。しかし人間側からすれば、本来勝てるはずのない相手に挑もうというのである。まさか無策というはずもなければ、当然ながら何が起こるかは幽香にも分からないのだ。
 だからこそ悠久の時を生きてきたその経験から、たかが人間と侮ることを幽香は決してしない。
 けれど――。

 ――そこに現れたのは、一人の小さな少女だった。


 2


 幽香の前に姿を現した少女はひどく怯えていた。最近噂の博麗の巫女などとは違う、それは人間の里に住む、本当にただの少女らしい。
 けれど幽香はその少女を見ても警戒を解くことはしない。むしろ逆に、より警戒を強めた。何故なら、何の事情もない「本当にただの少女」ならば、この太陽の畑に近づいたりはしないはずなのだから。
 幽香はまずその少女をつぶさに観察する。服装はどこにでもいる、普通の人間の格好。その肌は蜜色に日焼けしており、活動的な印象を受ける。この少女はどうやら働き者らしい。そしてその手には植物のつるを編んだ籠を持っているが、しかしその中身は空だった。
 その少女が武器らしいものを持っていないこととその怯えた様子から幽香は、少女が自分に敵意を持ってここに来たのではないと判断した。
 幽香は警戒を緩めながら少女に尋ねる。
「こんな危ないところに何の用事かしら、お嬢さん」
 びくりと、少女はその身体を震わせる。
 それほどに妖怪というものは、少女にとって絶望的な存在だったのだろう。出会えば問答無用で襲われ、そして助かることなど到底叶わない、そんな存在。
 そんな妖怪から話かけられることなど考えてもいなかったらしい少女は、その強張った表情のまま、一歩後ずさりをする。
 そんな少女を見て、幽香は少し呆れたように嘆息する。
「ただ用件を尋ねただけじゃない。別に取って食ったりなんてしないわ。……まあ逃げたいというなら私は追わないから、好きにするといいけど」
 幽香はそう言ったが、しかしこの少女はその言葉を信じはしないだろうと思っていた。
 何故なら少女は人間であり、そして幽香は妖怪なのだから。
 人間にとって妖怪は畏怖すべき存在であり、忌避すべき災厄である。それは人間にとって、あるいは地震や大雨にも似た存在なのかも知れない。
 どちらにせよ、人間と妖怪は相容れることのない存在だった。人間に生まれた以上、妖怪とは恐ろしいもので、決して信用に足る存在ではないと教えられて育つ。そしてそう教えられた人間にはその教えを疑うことは出来ない。疑うことは信じることの後に来る。疑いえないものに支えられてこそ疑いは成立するのだから。
 その少女も人間である以上、妖怪を信じることなど出来るはずがない。
 だからこそ少女が逃げ出さずに幽香の質問に答えたとしても、それは幽香を信じたというよりは「腹をくくった」といった方がいくらか正確なのだろう。
「あ、あの、私のお母さんが病気で、それで……」
「……? ……それで?」
 幽香が続きを促すと、少女はまた恐る恐る口を開く。
「それで、お母さんのお見舞いのために、花を……」
 少女はまたそこで口をつぐむが、そこまでで幽香にも少女の目的は理解することが出来た。
 どうやら病床に臥した母親のために、少女は花を摘みに来たらしい。
 ただそれだけのために人里から遠く離れたこの奥地まで、危険を冒してまで少女は来たのだ、と。
 それは、どうにも――。
「――馬鹿げているわ。花なんて、里の周りにだっていくらでも咲いているでしょうに」
 幽香はあくまでも冷静にそう言った。
 しかしそれを聞いて少女は、どうやら幽香が機嫌を悪くしたと感じたらしい。
「ご、ごめんなさい……」
 怯えた様子でただ謝る少女。
 しかし幽香が言ったようなことなど、少女だって最初から分かっているはずである。
 それでもあえてこの場所へと来たことには、何か明確な理由があるのだろうと幽香は思った。
「別に私に謝らなくてもいいわ。それは結局あなたの問題なのだから。――それで、どうしてここの花なのかしら?」
 幽香が訊くと、ふと少女は何かを思い出したように悲しそうな顔をする。
 それを見たが幽香は何も言わず、ただ少女が語るのを静かに待った。
「お母さんの病気が全然良くならなくて、お医者様はもう長くないだろうって……。でも私に出来ることなんて、毎日お見舞いの花を持っていくくらいしかなくて、それで――」
 少女は続ける。
「――この太陽の畑の花を持っていけば、お母さんもきっと良くなるって思ったから」
 人間は自分の手の届かないものに対して、時に伝説を作り上げる。
 道中に妖怪が沢山いて、人間には近寄ることも出来ないとされる太陽の畑。しかしそこには不思議な力を持った花が咲いているのだ――などという伝説を人間は作り上げてしまう。
 当然そんなものは迷信に過ぎない。ここに咲いている花は確かに生育状態も良く、綺麗な花を咲かせてはいるが、しかしそれだけだった。太陽の畑に咲いている花は、どこにでもある何の変哲もないただの花であることを幽香は知っている。
 しかしこの少女は、その迷信を信じてしまった。
 命を落とす危険を冒してまで、このどこにでもある花を摘みに来てしまった。
 それがこの少女の純粋さの結果ならば、現実はあまりにも残酷である。
「……そう」
 少女の言葉を聞いた幽香は、ただ静かにそれだけを呟いた。
 そして、もう何も言うことはないとばかりに少女に対して背を向けてしまう。
「あ、あの」
 少女はそれに戸惑った様子で、慌てて幽香を呼び止める。
「……何?」
「いえ、あの……あなたの花を摘みに来た私を、殺さないんですか?」
 奇妙なことを訊く人間だと幽香は思った。それではまるで、殺して欲しいみたいではないか。
 しかし幽香はその少女が、妖怪である自分と出会った時点で全てを諦めて覚悟を決めていたのだろうと、そう思い直した。そんな少女からすれば、幽香の行動はどうにも肩透かしであったに違いない。
「別に。そもそもここの花は私のものじゃないわ。そりゃ確かにお気に入りの場所だから無闇やたらに荒らすというのならそれは許さないでしょうけど、あなたのその籠が一杯になるくらい花を摘むことを咎めるつもりはないわよ」
 それは幽香の正直な気持ちだった。
 しかしそんな幽香の言葉を聞いてさえ、少女はどこか不安そうにしている。
 ――果たして目の前の妖怪の言葉は信用に足るのだろうか。
 もしかしたら自分が花を摘んだ瞬間に妖怪は襲い掛かってくるのかも知れないと、そんなことを考えているような雰囲気である。
 それは人間である以上、仕方のないことではあった。
 だから何を言っても意味はないと思いながら、それでも幽香はもう一度だけ口を開く。
「それにもし仮にここの花が私のものだったとしても、こういう言葉があるわ。『花盗人は罪にならない』――ってね」
 ただそれだけを言い残し、今度こそ幽香は少女に背を向けてその場から立ち去った。
 ――花盗人は罪にならない。
 その花の美しさと風流を解する相手なら大目に見ようという、そんな意味を持つ言葉。
 幽香はその言葉に、あるいは幽香と少女が同じ花を愛する仲間だという意味を込めたのかも知れない。


 3


 それから幽香はまた花々に囲まれるようにして地面に寝転がり、何をするでもなくただ雲を眺めていた。
 そこに、またも小さな違和感。
「……今日は珍しく、来客の多い日ね」
 幽香はそんな独り言を呟きながら、ゆっくりと身体を起こす。
 こんなところに用事のある人間は少ない。ここには花と、あとは幽香しか存在しないのだから。
 幽香はやはり警戒心を持ちながら、その気配のした方へと歩いていく。
 今度の来客こそは自分に用があるのだろう。根拠はないけれど、幽香はただそう思うのであった。
 少し歩くと、向こうから歩いてくる人間の姿が見えてきた。
 その人間は紅白の巫女服をその身にまとっていた。
 ――おそらくはあれが、《博麗の巫女》なのだろう。
 見ようによってはまだ幼いとさえ言える年齢の彼女は、しかしその身に大きな力と責任を持たされていた。
 その力をして、人々は彼女を「妖怪退治の専門家」などと呼ぶほどである。
 そんな彼女が、まさかどこにでもある花を摘みに来るはずもなく――。
 ――だからこそ彼女が幽香に用事があってここを訪れたことに疑いの余地はなかった。
 幽香の存在に、巫女の方も気付いたらしい。
 それでも巫女はただゆっくりと歩を進め、幽香はそれをただ待っていた。
 そうして話が出来るほどの距離まで近づいたところで、巫女は単刀直入に口を開いた。
「あんた、小さな人間の女の子に心当たりはない?」
 小さな人間の女の子と言われて、幽香はすぐに一人の少女を思い浮かべた。
「ええ、あるわよ。さっきここに花を摘みに来たからね」
「……そう」
 幽香が正直に答えると、巫女は小さくそう呟いて一度言葉を切る。
 そうして一呼吸置いてから、言った。
「さっきその子を見たわ――妖怪に襲われて、無残に死んでいたけれど」
 幽香は一瞬その言葉の意味が理解出来なかったが、しかし次の瞬間には冷静になってその意味を正しく理解する。
 ――あの少女が死んだ。
「……それで?」
 幽香は落ち着いた様子で、ただそう訊き返した。
「あれ、あんたがやったの?」
 巫女はただ真っ直ぐに尋ねる。
 当然ながら、幽香は少女を襲ったりなどはしていない。しかし、だからといってどうだというのだろう。
 人間にとっては、妖怪に襲われて少女が一人死んだことこそが重要だった。
 ここで幽香がその少女を殺したのは自分ではないと言ったところで、誰がそれを信じるというのだろう。目の前の彼女だって、博麗の巫女とはいえ人間には違いない。
 人間が妖怪を信じることなど、あるはずがないのだから。
「もしそうだとしたら、何だっていうの?」
 だから幽香はどこか挑発するような、そんな返事を返した。
 しかし巫女はあくまでも落ち着いた様子で言う。
「もう一度だけ訊いてあげる。あれをやったのは、あんた?」
 そう言って巫女は真っ直ぐに幽香の瞳を見据える。
 だから幽香もその巫女の瞳を真っ直ぐに見返して、そして言った。
「……私じゃないわ」
 その言葉に意味があるなどと、幽香は決して思わない。
 信じてもらえるなどとは思わないし、信じてもらおうとさえ思ってはいない。
 それは幽香にとって、ただ訊かれたから答えただけでしかない言葉。
 その言葉に対して、しかし巫女は静かに言う。
「そう」
 ただそれだけの言葉を残してこの場を去ろうとする巫女。
 思わずそれを幽香は呼び止める。
「ちょっと、私の言葉を信じるの?」
 それは奇妙な質問だと自分でも思いながら、それでも幽香は尋ねてしまう。
「ん、そうよ? そもそも最初からあんたのことはあまり疑ってなかったし。手口からして、もっと低俗な名も無いような妖怪の仕業だとは思っていたから、あんたに訊いたのはあくまで念のためよ」
 巫女は淡々とそんなことを言ったが、しかしそれは幽香の問いに対する答えにはなっていなかった。どうして幽香の言葉を信じるのか、その根拠を幽香は尋ねていたのだから。
「根拠って、そんなの……勘よ」
「勘って、あなたはそんなものを信じるというの?」
「私の勘はよく当たるのよ。それに、私が何を信じるかは私の勝手でしょ? 何を信じるかなんて、そんなのは私が決めるわよ」
 巫女はやはり淡々とそう言った。
 そんな巫女の物言いを、やはり幽香はどうにも理解することが出来なかった。しかしこれ以上尋ねたところで意味があるとも思えず、だから幽香は別のことを彼女に尋ねた。
「……まあいいわ。それよりも、あなたには訊きたいことがあるのよ」
「訊きたいこと?」
「あの少女は、一度あなたのところを訪ねた――違うかしら?」
「ええ、確かに訪ねてきたわ。それが何?」
「そのとき、少女はあなたに頼んだんじゃないかしら。……私を退治してほしいって」
 それは巫女の様子からくる、幽香なりの推測であった。
「……そのとおりよ。まあ断ったんだけど。聞くところによるとあんたはこちらから関わらない限りは無害らしいし、積極的に退治する理由はないのよ。それにあの子の目的は花だって言うし、花ならそこら辺にいっぱい咲いているんだから、わざわざあんたに関わりに行く必要なんてないじゃない」
 幽香の問いかけに、巫女はそう答えた。
「……それであなたは、そうあの子に言ったのね」
 霊夢が首肯する。それで幽香の推測は一本に繋がった。
「……つまりあなたがここに来た理由は、私の退治を断ったことが本当に正しかったのか、それを確かめたかったということね」
 幽香がそういうと、霊夢は少し睨むような表情で幽香を見た。
「あなたは言ってから気付いた。あの子が求めているのはただの花ではないこと。そして、あの子が何を信じてしまっていたのか」
 あの少女が求めていたものは、ありもしない幻想だった。
 しかしあの少女はもう、その幻想を信じることしか出来なかった。ただすがるようにして迷信であるその伝説を信じる以外には、もうどうすることも出来なかった。
 この太陽の畑の花を持ち帰れば、母親は助かるのだ。
 そんなありえないことを、少女はただ純粋に信じてしまった。
 それを信じたことが、果たして少女の意思によるものだったのか、それはきっと少女自身にさえ分からないことだったのだろう。
 それを疑うことが、果たして少女には可能だったのかどうか――。
「あんたの言うとおりよ。私がどれだけここの花はただの花だと言っても信じてはくれなかった。危ないからやめなさいと言っても、行くと言って聞かなかった。そんなあの子を止める権利は、あの子の信念を否定する権利は、私には無かったわ。だから結局あの子はここに来た。そして花を摘んで、その帰り道に妖怪に襲われて――死んだ」
 巫女は心配になって少女の後を追いかけたのだろう。そして死んだ少女を見た。
 もし自分が少女の妖怪退治の依頼を断らなければ、もしかしたら少女は死ななかったかも知れない。そんなことを巫女は思っていた。
 もし太陽の畑にいる妖怪が、人間にとって積極的に退治しなければならない存在だったとしたら――それは少女を見殺しにしたのと同じではないだろうか。
 そう考えて、だから巫女はここを訪ねてきた。
 それはまるで、幽香という妖怪を値踏みするかのように。
 だから幽香は言った。
「あなたって、嫌な人間ね」
 そんな風に、全てを見透かされたからだろうか。
 だから霊夢も言った。
「あんただって、嫌な妖怪じゃない」
 巫女は不機嫌そうに、頬をふくらせていた。
 そんな巫女の様子を見て、幽香はその存在に少しだけ興味が出てきた。
 だから尋ねる。
「あなた、名前は?」
「名前? 私は霊夢。博麗霊夢よ……あんたは?」
「風見幽香」
 幽香はただそれだけを答える。
 そしてそれ以上は何も話すことなく、二人はどちらからともなくその場を後にする。


 4


 霊夢が去った後、幽香は太陽の畑のある場所に来ていた。
 それは花を摘みに来たあの少女と、ほんの少しだけ会話をしたあの場所だった。
 今思えば、あれが会話といえるのかも怪しいものだと幽香は思う。ただ幽香が訊きたいことを訊いて、言いたいことを言っていただけだったのだから。
「……そう。あの子、死んだの」
 幽香は小さな声でそう呟いた。
 それはどうにも悲しそうな声だった。
 人間に対して興味のないはずの幽香。だからこそ人間が一人死んだところで、幽香の心には何も生まれないはずだった。
 けれど今、幽香の心はやりきれない思いでいっぱいだった。
 その感情をどのようにすればコントロール出来るのか、それは幽香にさえ分からない。
 しかしただ感情に任せて声を上げて泣くようなことは決してしない。
 それは幽香の強大な力を持つ妖怪としての矜持がそうさせていた。
 嘆き悲しむことは幽香には許されない。そんな弱さを持つことを幽香は認められない。少なくとも幽香自身はそう信じていた。
 ふと幽香はそれを見上げる。
 晴れ渡る空を、白い雲が優雅に流れていった。
 そんな青空の下、太陽の畑に一粒の小さな雨が、ぽつりと落ちる。

 それはまるで、涙のような――。
二度目の投稿となりました。鈴木々々(すずききき)です。
このあとがきでまた筆が止まるのは困りものです。
まあ語るべきことは語るべき場所である作中で語ったつもりです。だから伝わらなかったらそれは単純に力不足でしたということで。
そんなわけで、今回も楽しんでいただけたなら幸いです。
鈴木々々
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コメント



0.2160簡易評価
5.80奇声を発する程度の能力削除
切ないなぁ…
6.80過剰削除
切ない……
7.80YSM削除
博麗の巫女は夢幻館の戦いでお互いをしっていたはず・・・
12.100名前が無い程度の能力削除
感想はともかく、この作品に対するコメントとしては「切ない」と一言の方が良さそうですね。
13.100名前が無い程度の能力削除
前作、今作と作者さんの筆力、堪能させて頂きました。
次作以降も期待しています。

我侭を言わせて頂ければ、よりスケールの大きな作品を
切望する次第です。
18.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです
20.100名前が無い程度の能力削除
悲しいなぁ
31.100名前が無い程度の能力削除
ちょうどいい感じに決まった長さで大変読みやすかった。
しかし、切なくて良いね。
46.80名前が無い程度の能力削除
幻想郷の人間も幻想にすがらざるを得ない、ってのは皮肉ですよね…