白と黒が特徴の衣装を見に纏い、箒を持った魔理沙がため息混じりに、
「まさかこんな所にいたとはなぁ・・・・・・・・・・・・こりゃパチュリーに場所聞いてよかったぜ。大体この館は広すぎるんだ、なんで外からの見た目と中身が違うんだよ」
両手を腰に当て自慢げに、館に対しての不満を口から放つ。
「あなたは一回『時空』と言う言葉の意味を辞書で調べたほうが良いわよ…?」
そう言うとレミリアは魔理沙の後ろに立っている紫色の装束を着た少女に気がついた。
レミリアは驚異的身体能力を持つ吸血鬼の視力でその少女を凝視した。
少女は少しばかりか息が荒くなっていたようだが、恐らく爆発した際に生じた砂埃ではなく、喘息が原因だったのだろう。
体は貧弱な女の子そのもので、恐らく魔理沙たちと戦ったとして長期戦に持ち込まれたりされれば一発でダウンするほどだ。
というより、ダウンしたからここに居るのだと確信した。
レミリアは彼女を知っている。
知っているというより、自分の部下だからという言い回しが正しい。
レミリアは彼女が喘息持ちで、身体が弱いと知っていた。
運動することを極端に嫌い、引き篭もり気味で常に動かず、茶を淹れるだけで気だるい雰囲気を漏らす。
そんな少女をレミリアは一番良く知っている。
目を細くするレミリア。
「パチェ・・・・・・・・・・よくもまぁ敵の側についたわねぇ?」
口を開けば嫌味を言うレミリアに対して魔理沙の後ろに居たパチュリーが、
「だって、私、体力無いから戦うと喘息が出るもん。だから戦わずして負けを潔く認め、コイツらの言うことを聴いただけなんですけども・・・・」
レミリアは唖然とした。
パチュリーは戦ってすらいなかったのだ、せめてでも主人を気遣い戦闘をしていたと思ったが全然まったく違っていた。
そうではなかった。
本人は負けを最初から悟っていた、というより戦闘する気は毛頭無かった。
せめて、小悪魔が何とかしてくれるかと期待していたが、今日は有給で不在ということをたった今、咲夜からの耳打ちで報告された。
そんなことよりレミリアは身の回りの部下が咲夜以外役に立たないというものが現実なのか、はたまた幻想なのかを誰かに問い詰めたかった。
「はぁ…………仕方がないわ、それより何か用?魔理沙と霊夢」
身の回りで常識というものを知っているのは自分だけなのか、とため息をつく。
しかしそこが幻想郷。
常識など存在しない、むしろあってはならない、作ってはならない、持ち込ませてはならない。
まるで外の世界に存在する核的な何かの三原則のように、本来無くていい物を創りだしたところでなんの意味も用途も持たないからだ。
そこへ本題に戻ろうと目の前でニンマリと口を曲げた笑顔(?)の霊夢と、割とどうでもよさそうな空気をぶちまけている魔理沙の二人に問いかけた。
大幣で肩をポンポンと叩き今にも臨界点が突破しそうな霊夢がレミリアに指を指し、
「レミリア!貴方を止める!」
単刀直入すぎるセリフにレミリア困惑。
「はぁ!?いや、ちょちょちょ!なんで!?私何もやましいことはしてないわよッ!?」
「嘘をつけい!博麗神社から陥れようとはまったく良く考えたものねぇ…だがそんなものではこの霊夢は倒せん!」
大幣を持ちながらも世紀末救世主的の天破的な何かの構えを取り、スッとした顔で言い切った。
レミリアは霊夢の目から素晴らしい程の殺意と怒りを垣間見た。
ところが背後で箒をバット代わりにし、某野球選手のように左手で振っていた魔理沙が、
「結構やばそうなところをギリギリ私が助けたんだけどなぁー…」
と、口ずさむ。
すると、霊夢の気に触れたのか、霊夢はうっさい!と小声で怒鳴り、改めてレミリアの方を見る。
「一体貴方のところに何があったのか聞かせてもらいたいのだけれど?」
話が掴めないレミリアは喘息で苦しそうにしているパチェ、もといパチュリーをそっちのけで霊夢に聞き返した。
というよりレミリアは心底パチュリーを永遠亭に連れて行こうかと思った。
結構重症だ。
霊夢がレミリアを疑うのに本人は納得がいかなかった。
第一、何も行動を起こしていず日々平凡に生きているレミリアが何をするかといえば散歩くらいであり。
それなのに、真っ先に目を付けられ疑われては一体何が起きたのかすら理解できないし、その問題が何かを聞くことすら出来ない。
そういうことを踏まえてとっとと霊夢に何が発生したのかを頭に入れなければならないので、もう負けても良いので頭の中に入れておきたかったのだ。
「…いいわよ?聞いてあげる!」
威圧的な態度を取り、上から目線でレミリアを見下す。
「あんた……本当は誰でも良かったんでしょ!?」
#######################
この館のどこかに、規則正しく少し年代を感じさせるような音を鳴り響かせる大きな振り子時計がある。その時計からは常に老いたような気さえ感じさせる音が耳に届くそうだ。
その老いた音は耳には届くわけだが、なぜだか心には届かない。心地良いはずの無機質な音であるというのに。
普段から館に住んでいるので、聞き慣れてしまった所為だろうか?
わからない、わからない、わからない。なぜ?
鬱陶しいというごく普通の感情すら当たり前のように出てこない。ただ、ただただ、気にも留めていないからだろうか。きっとそうだ。
意味のわからない構想の連続を頭の中でループするかのように考え続けるレミリア。自分の中では意味の分からない謎の記憶として認識しているが流石にここまで来ると、意味不明。
きっとそれは、咲夜が宙を舞いながら湖の妖精たちと昨日の出来事なのか明日の出来事なのかもわからない世間話をするのと同じ事だと考える。
(意味不明…………)
声には出さず、呆れ顔として感情を表示した。口をポカーンっと。
霊夢の言っていることがあまりにも意味不明すぎる。何が言いたい?だからどうした?それと私には何か関係があるとでも言いたいのだろうか。いや、そういうことなのだ。関係は、ある。
ここまで来れば大体の話は予想がつく。
つまり、私が犯人として見られているということ。疑われていることだ。
確かに霧が発生し、問題へと発展した場合は真っ先にこちらが疑われるのは当たり前といえば当たり前だった。
それは、レミリアが幻想郷にやってきたばかりの頃の話だ。
まだ土地慣れして間もない頃で、日差しが大の苦手だったレミリアにとって日差し、太陽は憎むべき最大の敵なのであった。そこで霧(しかも血のように赤い)を散布させることで日差しを遮り、自らの行動範囲を広げようと考えた。というより実行に移した。
しかし意外にも散布した霧の範囲が予想以上に広範囲だったためか、人里にまで影響が出始め、遂には博麗神社の目の敵されてしまい、結果的には成敗された。
(というよりか、霊夢ってこんな横暴な人間だったかしら…?)
まさに、ジャイアニズムとでも言っておこう。そうだ、これから霊夢にはジャイアンの肩書きをつけよう。
レミリアはそうやって、心に誓った。
霊夢は一から最後まできちんとこと細かく丁寧に自分の身に起きた事の全てをレミリアに伝えた。魔理沙が自分に手を貸したことも含めて。
具体的に解釈してもなんだか面倒なので、考えない。
「……って聞いてる?つまり私をね、陥れようとするお馬鹿さんがいるのよッ!そいつを私は貴方だと思っているのよッ!というより貴方であるべきなの!もう貴方なの!」
どれだけ霊夢は私が嫌いなんだと、大きなため息を今にも出しそうな様子で、心中にてレミリアは思った。
いやね、まぁ確かに迷惑はかけましたともさ。でもね、流石にここまで疑われてしまってはこの女王レミリア様である私でも我慢はできませんのよ?
怒りを堪えたレミリアは遂に堪忍袋の緒が切れたのか、隣で棒立ちしたままの咲夜に耳打ちをする。
「もういいわ、レミィの生まれて最初で最後の殺人依頼よ。聞いて。今私の目の前にいる霊夢を重点的に血祭りにしておやりさい。時間停止でもどんな手段でも使って構わないわ。私が許す!」
途中からだんだん声が大きくなっていったが霊夢には聞こえていなかったらしいので、それを確認し安心したレミリアは最期に咲夜に対して行ってお殺り!というサインを出した。
しかし、
「お嬢様、申し訳ございません。懐中時計はただいま故障中でして、霊夢を惨殺という依頼はお受けできません。実行不可能です」
「アンタの懐中時計は頻繁に壊れる青猫の万能道具ですかっ!?」
「いえもうそれ以上に……」
「いやいやいや、別に聞いてないからッ!!しかもそれ以上って、ナイフは何で生成されとるんじゃい!ナイフ投げの技術も不良品ですかッ!?」
直後に、レミリアは顎をガッシリと掴まれた。咲夜に。
「んぎゃッ!!」
そこには目を赤く光らせ、冷酷無慈悲の残酷な表情に突如変貌した咲夜がいた。
すると、レミリアの耳元で静かに周囲に聞こえないよう囁く。
「あんまりおしゃべりが過ぎますと私の技術が不良品かどうかお嬢様から最初に確かめますが、よろしいですか?……嫌ですよね?私だって嫌ですよ?ね」
ゆっくりと手をレミリアの顎から離す。
レミリアは突然の恐怖に頭の回転が働かず、動転。
目の前には『恐怖の化身』その物である咲夜がにこやかといつもの立ち振る舞いを主人に見せていた。
レミリアはぎこちない動きで咲夜のほうに首を回した
「あ……え、え…ぇあ。うっ…あ、はい」
あまりにも異質すぎる光景に霊夢と魔理沙は何があったのかと心配をする。心配するとはいっても、目が不安でいっぱいになっているということであり、別にレミリアがどうとか全然頭にはなかった。
よくある風景だと後ろで座っているパチュリーが勝手に、小さく頷いた。
しかしあまりにも話が進まないので、とっとと紅魔館から撤収をしようとしと時だった。
ビキリッ
と、何かを踏みつけてしまい砕いた音が霊夢の足元から聞こえた。
足を上げて目を凝らしてよく見てみるとそこにはレミリアが咲夜の為にと思い、角に掃いておいた割れた贋作の花瓶の破片があった。
恐らく先ほどの爆撃的な何かで扉の破片とともに吹き飛ばされてきたのだろう。
「何よコレ…うーん…破片?ガラス製ねぇ。花瓶だったりして!?あははー」
「正解よ、というかなんでわかるの?どういう頭の構造したらその破片から的確に花瓶って分かるのよ」
「………ゃ、やーい当たりぃー。私ってやっぱり勘が凄いわ」
ため息混じりにレミリアが霊夢にどつく。
「本人が真面目に驚いてどうするのよ?それに聞きなさいよ。私あの古道具屋で花瓶を購入したら最初は本物だったのに手元に置いたら偽者に摩り替わっていたのよ!?一体誰がやったのやら……」
「あら、お気の毒」
「…あら、酷い返事ね。そういうのは皆にいつか嫌われるわよ?」
「心遣いどうたしまして…っと」
「褒めていないし、気遣ってすらいないわよ。勘違いしないで欲しいわ」
そのやり取りを見て、聞いていた咲夜はニンマリと清々しい笑顔で見ていた。多分自分では気づいていないと思われる。
霊夢は花瓶の破片を人差し指と親指で摘みながらもう一方の手の指で鋭く尖った破片の先端をツンツンと突っつく。あ、痛いと小声でつぶやく。
その姿はまるで、川でザリガニを見つけ、自らの指をザリガニの鋏に故意に挟まれるという好奇心旺盛な子供そのものだった。
破片をじっくりと鑑定士であるかのように見つめながらそれを地面へゆっくりと置く。今度は人差し指の中手骨の部分をあごに添えながら、後ろで首の運動をしているレミリアに問いかけた。
「さぞ質の良い花瓶だったでしょう?」
「贋作なのにどうやったら本物が良い品だってわかるのよ。まぁそれほど精巧に作られてるってことは本来の物品もすごいでしょうね」
ゴリゴリと細い首を何度も同じ方向に動かして骨を気持ちよく鳴らしながら、答える。あまりやりすぎたのか、攣ってしまい、首が曲がったまま石像の様に動かなくなってしまった。
花瓶の破片をジッと見つめる霊夢。
すると突然何か思い立ったらしく、その場からサッと立ち上がり、自らの予測を簡潔に述べた。
「花瓶は香霖堂から購入したと言っていたわよね?」
「ええ…ですがそれがなにか?」
咲夜が疑問に思い、問う。
そして霊夢が続ける。
「恐らく…これは魔具の一種だと思うわね…特に花瓶の模様からして『封魔の刺繍』が施されている。というより模されてるというべきかしら」
「つまり、何かが花瓶の中に封印されていたってことね?」
レミリアが会話に割って入るように話を進める。会話はレミリア、咲夜、霊夢の三人を含めた一つの会議と化していて魔理沙とパチュリーの入る隙間はなかった。
「(私も関係あるよね?おかしいぜ、絶対おかしいぜ、こんなの絶対おかしいぜ)」
「(大丈夫よ、魔理沙。ハブられても魔理沙はわたしの、最高の友達だから)」
二人は目と目を合わせた。アイコンタクトである。
#######################
本来なら早急にこの事態を収束させるはずだった訳だが、せっかくこの大きいだけの他に何の取り柄もない貧相な館にわざわざ出向いてきたのだ、それ相応の見返りは無いのかしらと霊夢が偉そうにレミリアに歩み寄る。
確実に貶されている気がしてならないレミリア。というかそれはもう確信的だろう。邪魔しにきたわよなんてレベルではない。むしろ邪魔になっているといった方が合っていた。
霊夢が歩く。靴からは引きずる時の様な擦れる音は無く。踵からコッと地面に立て、テンポ良く歩いてくる。その姿は宛ら、外の世界での60年代初期の悪徳警官に見えなくもなかった。
ゴーン、と館に備え付けられている又は象徴とも言える大きく古ぼけた時計から鈍く甲高い鐘の音が鳴り響く。館中に回っていくその鐘の音には妙な粘り気を感じさせるくらいに程よい間隔を保ち、やがて館全体をやんわりと包み込んだ。
犯人を捕まえる為の貴重な情報を教えてあげたんだからとセリフの最後に付け加え、普段からレミリアが愛用しているであろう薔薇のレリーフが掘り込まれ、金の装飾をなされた自慢の椅子に腰を下ろす。
「一度座ってみたかったのよねぇ、これ。アンタがいっちも気持ちよさそーに座って我が物顔でメイドさんに命令しているんだもの。私もアンタに命令してもいいかしら?」
そう言うと椅子に我が物顔で座っていた霊夢が目の前で柔軟体操をし始めていたレミリアに人差し指を向け、クイクイっと動かした。
・・・・・・・・・・・・呼んでいるらしい、
とレミリアが腰をバキバキと鳴らしながらも悟った。
嫌味全開の視線で睨むも、気づく気配が全くない。というようりも気にしていない風にも見えた。
「何よ?用があるならそこで言いなさい。あと4分座ったらおしまいよ」
どんなにメンチ切っても一向に見向きしない霊夢にいい加減何の話なのか尋ねた。あまり長く自分の椅子に座って欲しくないので適当な条件も増やして退かそうと試みる。
「かぁー血も涙もないわねぇ!それは強欲というものじゃないのかしら?これだから困るわ」
割と理不尽な条件に椅子に心地良く座っていた少女の不満が口から溢れた。
「うるさい。どの口が言うか!?」
心外な言い掛かりにレミリアの反感を買う霊夢。
「お黙り。この口が言うの!」
自分の指を口に向けて。
二人の言い合いは子供の口喧嘩を沸騰させるかの様につまらない返事を繰り返した。
例えば、一人が、
「子供かっ!!?」
と言えばもう一人が、
「誠に残念ながら私は子供よ、これだからアマちゃんは困るわ」
と返す。
滑稽とも思える言い合いの最中、レミリアはさらに悟る。このままではいずれ霊夢のペースに流されて、言い負かされる。そうなればコイツの言いなりになるのは間違いない。それだけはどうしても避けたい。
あれこれ考えている内に時間が経過していく。
すると、何時の間にか姿を消していた咲夜が突然目の前に現れる。瞬きがどうこう等とは全然関係ないとさえ思えてくるほど、瞬間的だった。
だが、これは日常的なことだとある程度慣れているレミリアはそんなに驚かず、チラッと見ただけで直ぐに視線を霊夢に戻した。
「・・・・・・・・・・・じゃぁもう4分経過したから休憩はおしまい!!ほら、そっから立ち上がって退きなさい、この貧乏巫女!!!」
「今度余計な口聞いたらその口縫い合わすわよ?」
「はい、すいません」
嘘は一切口にしていないはずだった。なぜだろう。
「アンタの4分は何秒なのよ、これだから幼女は困るわ」
「いや、ちょっとまて、あんた人生に何回困ってんのよ!?困りすぎでしょ・・・・・・・・・諭吉かよ。それと私はこう見えてもね、五百歳のお姉さんですからッ!!!!!」
そのあまりの渾身のボケなのか本音なのか理解に苦しむ言葉に魔理沙ですらレミリアを凝視した。相手の霊夢は口を開いたまま、は?と無意識に声を漏らす。
構わず続けるレミリアは人差し指を上げ、霊夢に向け、言い放つ。
「アンタなんぞ赤子同然なのよ!!」
「それただのババァじゃない」
唐突すぎた文句に返事の反応が1テンポ遅れる。
「え?」
ため息混じりに前髪を掻き上げる霊夢。相手を小馬鹿にした表情で、
「ババァと言ったのよ。だって、私から言わせてみれば480くらいも離れてればアンタ……立派なババァよ」
場の空気が一気に、一直線凍てつく。冷気は感じないが、この場に居る全ての知的生命体。つまり、魔理沙とパチュリーと咲夜の三人の体温が確実に5は下がった感覚がした。
3人の恐怖心が生んだ一体感とも感じ取れる何かは一つのある言葉を心の内で共鳴した。
それは、
(((最悪だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!)))
どちらかと言えば災厄である。
顔は眉一つ微動だにさせていない3人。しかし精神の方は叫ぶムンクのように嘆いている。
最悪だ、これは非常に不味い。どれくらい不味いかというと、青少年がドヤ顔したままヤクザのボスにアッパーカット入れたくらいに不味い。追い打ちに脇腹フックも足したと考えればなお良い。
レミリアは確実に頭に来ている。
冷や汗が止まらない3人はレミリアが次に喋る台詞が容易に想像できた。
それは、某科学と魔術が交差する小説に登場するビームの女が耐え切れぬ程の屈辱の末に放った宣告だ。
だが、そうしている間にレミリアが体を小刻みに震わせながら聞こえる大きさで呟いた。
『ブチコロシ確定ね☆この脇女♪』
ニッコリとこの世に存在しないと考えられるくらいに可愛気のある少女の笑顔が"具現"する。
(((うわぁぁぁぁん!!!誰か助けてくださいぃぃぃぃい!!!!だれかこのバカ女を止めてくださいィイイイ)))
「ゴッボォ!!ゴッホエッホォ!!」
血を吐いてしまうパチュリー。手で口を抑えようとするも間に合わず血霧が床へ飛散する。
なぜ台詞の中に星と音符マークが入っているのだろうか。その不気味で可愛らしい笑顔はなんだろうか。
考えてはいけない。
「ぶっちゃけちゃうと、私たち一緒に探せばいいじゃない。事が早く収まるかもしれないわよ?」
何をどうぶっちゃけちゃうとこんな会話になるんだろうか。咲夜の小さい背中からは冷や汗が止まらない。その手には懐中時計が握られていてずっと親指で開いたり閉じたりを繰り返している。
(うわぁ………完璧に動揺してるなこりゃ…)
引きが止まらない魔理沙。呆れ驚き一歩下がる。
悪く言えば、自滅行為。良く言えば、挑戦。霊夢にはそんな言葉が似合う。似合いすぎて目も合わせられない。
魔理沙の傍には吐血が止まらないパチュリー、隣にはビビりすぎて震えが止まらず今にも泣きそうな咲夜。三人が願ったのは第三者である、もちろん全く現状を理解していないという前提の。あ、フランは除外。かえって状況を悪化しかねない。
誰もが(三人組が)そう願った時だった。
バァーン!!!ドシャァァアアン!!!!!
とテラスに続く大きな窓ガラスとガラス扉諸共が狂騒し合い豪快に吹き飛んだ。
雨のようにザーっと煌びやかにレミリアの方へ。
誰もが(三人組が)望んだ第三者(現状を知らない者)が現れたと焦った。降臨したと、一度感極まった。
が、
「あややややー……やっちまったなぁー、まさかテラスごと持ってくと思わなんだぁー」
頭のガラス片をせっせと叩き落とすと、そこには清く正しい妖怪が降臨していた。
「ほんと、やっちまったなー」
何十もの意味を含んだ言葉をパチュリーが。
「「お前かよ」」
魔理沙と咲夜が。
(((あ~ぁー、やっちまったなー)))
次も待ってください(まだ書いていないです)
「まさかこんな所にいたとはなぁ・・・・・・・・・・・・こりゃパチュリーに場所聞いてよかったぜ。大体この館は広すぎるんだ、なんで外からの見た目と中身が違うんだよ」
両手を腰に当て自慢げに、館に対しての不満を口から放つ。
「あなたは一回『時空』と言う言葉の意味を辞書で調べたほうが良いわよ…?」
そう言うとレミリアは魔理沙の後ろに立っている紫色の装束を着た少女に気がついた。
レミリアは驚異的身体能力を持つ吸血鬼の視力でその少女を凝視した。
少女は少しばかりか息が荒くなっていたようだが、恐らく爆発した際に生じた砂埃ではなく、喘息が原因だったのだろう。
体は貧弱な女の子そのもので、恐らく魔理沙たちと戦ったとして長期戦に持ち込まれたりされれば一発でダウンするほどだ。
というより、ダウンしたからここに居るのだと確信した。
レミリアは彼女を知っている。
知っているというより、自分の部下だからという言い回しが正しい。
レミリアは彼女が喘息持ちで、身体が弱いと知っていた。
運動することを極端に嫌い、引き篭もり気味で常に動かず、茶を淹れるだけで気だるい雰囲気を漏らす。
そんな少女をレミリアは一番良く知っている。
目を細くするレミリア。
「パチェ・・・・・・・・・・よくもまぁ敵の側についたわねぇ?」
口を開けば嫌味を言うレミリアに対して魔理沙の後ろに居たパチュリーが、
「だって、私、体力無いから戦うと喘息が出るもん。だから戦わずして負けを潔く認め、コイツらの言うことを聴いただけなんですけども・・・・」
レミリアは唖然とした。
パチュリーは戦ってすらいなかったのだ、せめてでも主人を気遣い戦闘をしていたと思ったが全然まったく違っていた。
そうではなかった。
本人は負けを最初から悟っていた、というより戦闘する気は毛頭無かった。
せめて、小悪魔が何とかしてくれるかと期待していたが、今日は有給で不在ということをたった今、咲夜からの耳打ちで報告された。
そんなことよりレミリアは身の回りの部下が咲夜以外役に立たないというものが現実なのか、はたまた幻想なのかを誰かに問い詰めたかった。
「はぁ…………仕方がないわ、それより何か用?魔理沙と霊夢」
身の回りで常識というものを知っているのは自分だけなのか、とため息をつく。
しかしそこが幻想郷。
常識など存在しない、むしろあってはならない、作ってはならない、持ち込ませてはならない。
まるで外の世界に存在する核的な何かの三原則のように、本来無くていい物を創りだしたところでなんの意味も用途も持たないからだ。
そこへ本題に戻ろうと目の前でニンマリと口を曲げた笑顔(?)の霊夢と、割とどうでもよさそうな空気をぶちまけている魔理沙の二人に問いかけた。
大幣で肩をポンポンと叩き今にも臨界点が突破しそうな霊夢がレミリアに指を指し、
「レミリア!貴方を止める!」
単刀直入すぎるセリフにレミリア困惑。
「はぁ!?いや、ちょちょちょ!なんで!?私何もやましいことはしてないわよッ!?」
「嘘をつけい!博麗神社から陥れようとはまったく良く考えたものねぇ…だがそんなものではこの霊夢は倒せん!」
大幣を持ちながらも世紀末救世主的の天破的な何かの構えを取り、スッとした顔で言い切った。
レミリアは霊夢の目から素晴らしい程の殺意と怒りを垣間見た。
ところが背後で箒をバット代わりにし、某野球選手のように左手で振っていた魔理沙が、
「結構やばそうなところをギリギリ私が助けたんだけどなぁー…」
と、口ずさむ。
すると、霊夢の気に触れたのか、霊夢はうっさい!と小声で怒鳴り、改めてレミリアの方を見る。
「一体貴方のところに何があったのか聞かせてもらいたいのだけれど?」
話が掴めないレミリアは喘息で苦しそうにしているパチェ、もといパチュリーをそっちのけで霊夢に聞き返した。
というよりレミリアは心底パチュリーを永遠亭に連れて行こうかと思った。
結構重症だ。
霊夢がレミリアを疑うのに本人は納得がいかなかった。
第一、何も行動を起こしていず日々平凡に生きているレミリアが何をするかといえば散歩くらいであり。
それなのに、真っ先に目を付けられ疑われては一体何が起きたのかすら理解できないし、その問題が何かを聞くことすら出来ない。
そういうことを踏まえてとっとと霊夢に何が発生したのかを頭に入れなければならないので、もう負けても良いので頭の中に入れておきたかったのだ。
「…いいわよ?聞いてあげる!」
威圧的な態度を取り、上から目線でレミリアを見下す。
「あんた……本当は誰でも良かったんでしょ!?」
#######################
この館のどこかに、規則正しく少し年代を感じさせるような音を鳴り響かせる大きな振り子時計がある。その時計からは常に老いたような気さえ感じさせる音が耳に届くそうだ。
その老いた音は耳には届くわけだが、なぜだか心には届かない。心地良いはずの無機質な音であるというのに。
普段から館に住んでいるので、聞き慣れてしまった所為だろうか?
わからない、わからない、わからない。なぜ?
鬱陶しいというごく普通の感情すら当たり前のように出てこない。ただ、ただただ、気にも留めていないからだろうか。きっとそうだ。
意味のわからない構想の連続を頭の中でループするかのように考え続けるレミリア。自分の中では意味の分からない謎の記憶として認識しているが流石にここまで来ると、意味不明。
きっとそれは、咲夜が宙を舞いながら湖の妖精たちと昨日の出来事なのか明日の出来事なのかもわからない世間話をするのと同じ事だと考える。
(意味不明…………)
声には出さず、呆れ顔として感情を表示した。口をポカーンっと。
霊夢の言っていることがあまりにも意味不明すぎる。何が言いたい?だからどうした?それと私には何か関係があるとでも言いたいのだろうか。いや、そういうことなのだ。関係は、ある。
ここまで来れば大体の話は予想がつく。
つまり、私が犯人として見られているということ。疑われていることだ。
確かに霧が発生し、問題へと発展した場合は真っ先にこちらが疑われるのは当たり前といえば当たり前だった。
それは、レミリアが幻想郷にやってきたばかりの頃の話だ。
まだ土地慣れして間もない頃で、日差しが大の苦手だったレミリアにとって日差し、太陽は憎むべき最大の敵なのであった。そこで霧(しかも血のように赤い)を散布させることで日差しを遮り、自らの行動範囲を広げようと考えた。というより実行に移した。
しかし意外にも散布した霧の範囲が予想以上に広範囲だったためか、人里にまで影響が出始め、遂には博麗神社の目の敵されてしまい、結果的には成敗された。
(というよりか、霊夢ってこんな横暴な人間だったかしら…?)
まさに、ジャイアニズムとでも言っておこう。そうだ、これから霊夢にはジャイアンの肩書きをつけよう。
レミリアはそうやって、心に誓った。
霊夢は一から最後まできちんとこと細かく丁寧に自分の身に起きた事の全てをレミリアに伝えた。魔理沙が自分に手を貸したことも含めて。
具体的に解釈してもなんだか面倒なので、考えない。
「……って聞いてる?つまり私をね、陥れようとするお馬鹿さんがいるのよッ!そいつを私は貴方だと思っているのよッ!というより貴方であるべきなの!もう貴方なの!」
どれだけ霊夢は私が嫌いなんだと、大きなため息を今にも出しそうな様子で、心中にてレミリアは思った。
いやね、まぁ確かに迷惑はかけましたともさ。でもね、流石にここまで疑われてしまってはこの女王レミリア様である私でも我慢はできませんのよ?
怒りを堪えたレミリアは遂に堪忍袋の緒が切れたのか、隣で棒立ちしたままの咲夜に耳打ちをする。
「もういいわ、レミィの生まれて最初で最後の殺人依頼よ。聞いて。今私の目の前にいる霊夢を重点的に血祭りにしておやりさい。時間停止でもどんな手段でも使って構わないわ。私が許す!」
途中からだんだん声が大きくなっていったが霊夢には聞こえていなかったらしいので、それを確認し安心したレミリアは最期に咲夜に対して行ってお殺り!というサインを出した。
しかし、
「お嬢様、申し訳ございません。懐中時計はただいま故障中でして、霊夢を惨殺という依頼はお受けできません。実行不可能です」
「アンタの懐中時計は頻繁に壊れる青猫の万能道具ですかっ!?」
「いえもうそれ以上に……」
「いやいやいや、別に聞いてないからッ!!しかもそれ以上って、ナイフは何で生成されとるんじゃい!ナイフ投げの技術も不良品ですかッ!?」
直後に、レミリアは顎をガッシリと掴まれた。咲夜に。
「んぎゃッ!!」
そこには目を赤く光らせ、冷酷無慈悲の残酷な表情に突如変貌した咲夜がいた。
すると、レミリアの耳元で静かに周囲に聞こえないよう囁く。
「あんまりおしゃべりが過ぎますと私の技術が不良品かどうかお嬢様から最初に確かめますが、よろしいですか?……嫌ですよね?私だって嫌ですよ?ね」
ゆっくりと手をレミリアの顎から離す。
レミリアは突然の恐怖に頭の回転が働かず、動転。
目の前には『恐怖の化身』その物である咲夜がにこやかといつもの立ち振る舞いを主人に見せていた。
レミリアはぎこちない動きで咲夜のほうに首を回した
「あ……え、え…ぇあ。うっ…あ、はい」
あまりにも異質すぎる光景に霊夢と魔理沙は何があったのかと心配をする。心配するとはいっても、目が不安でいっぱいになっているということであり、別にレミリアがどうとか全然頭にはなかった。
よくある風景だと後ろで座っているパチュリーが勝手に、小さく頷いた。
しかしあまりにも話が進まないので、とっとと紅魔館から撤収をしようとしと時だった。
ビキリッ
と、何かを踏みつけてしまい砕いた音が霊夢の足元から聞こえた。
足を上げて目を凝らしてよく見てみるとそこにはレミリアが咲夜の為にと思い、角に掃いておいた割れた贋作の花瓶の破片があった。
恐らく先ほどの爆撃的な何かで扉の破片とともに吹き飛ばされてきたのだろう。
「何よコレ…うーん…破片?ガラス製ねぇ。花瓶だったりして!?あははー」
「正解よ、というかなんでわかるの?どういう頭の構造したらその破片から的確に花瓶って分かるのよ」
「………ゃ、やーい当たりぃー。私ってやっぱり勘が凄いわ」
ため息混じりにレミリアが霊夢にどつく。
「本人が真面目に驚いてどうするのよ?それに聞きなさいよ。私あの古道具屋で花瓶を購入したら最初は本物だったのに手元に置いたら偽者に摩り替わっていたのよ!?一体誰がやったのやら……」
「あら、お気の毒」
「…あら、酷い返事ね。そういうのは皆にいつか嫌われるわよ?」
「心遣いどうたしまして…っと」
「褒めていないし、気遣ってすらいないわよ。勘違いしないで欲しいわ」
そのやり取りを見て、聞いていた咲夜はニンマリと清々しい笑顔で見ていた。多分自分では気づいていないと思われる。
霊夢は花瓶の破片を人差し指と親指で摘みながらもう一方の手の指で鋭く尖った破片の先端をツンツンと突っつく。あ、痛いと小声でつぶやく。
その姿はまるで、川でザリガニを見つけ、自らの指をザリガニの鋏に故意に挟まれるという好奇心旺盛な子供そのものだった。
破片をじっくりと鑑定士であるかのように見つめながらそれを地面へゆっくりと置く。今度は人差し指の中手骨の部分をあごに添えながら、後ろで首の運動をしているレミリアに問いかけた。
「さぞ質の良い花瓶だったでしょう?」
「贋作なのにどうやったら本物が良い品だってわかるのよ。まぁそれほど精巧に作られてるってことは本来の物品もすごいでしょうね」
ゴリゴリと細い首を何度も同じ方向に動かして骨を気持ちよく鳴らしながら、答える。あまりやりすぎたのか、攣ってしまい、首が曲がったまま石像の様に動かなくなってしまった。
花瓶の破片をジッと見つめる霊夢。
すると突然何か思い立ったらしく、その場からサッと立ち上がり、自らの予測を簡潔に述べた。
「花瓶は香霖堂から購入したと言っていたわよね?」
「ええ…ですがそれがなにか?」
咲夜が疑問に思い、問う。
そして霊夢が続ける。
「恐らく…これは魔具の一種だと思うわね…特に花瓶の模様からして『封魔の刺繍』が施されている。というより模されてるというべきかしら」
「つまり、何かが花瓶の中に封印されていたってことね?」
レミリアが会話に割って入るように話を進める。会話はレミリア、咲夜、霊夢の三人を含めた一つの会議と化していて魔理沙とパチュリーの入る隙間はなかった。
「(私も関係あるよね?おかしいぜ、絶対おかしいぜ、こんなの絶対おかしいぜ)」
「(大丈夫よ、魔理沙。ハブられても魔理沙はわたしの、最高の友達だから)」
二人は目と目を合わせた。アイコンタクトである。
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本来なら早急にこの事態を収束させるはずだった訳だが、せっかくこの大きいだけの他に何の取り柄もない貧相な館にわざわざ出向いてきたのだ、それ相応の見返りは無いのかしらと霊夢が偉そうにレミリアに歩み寄る。
確実に貶されている気がしてならないレミリア。というかそれはもう確信的だろう。邪魔しにきたわよなんてレベルではない。むしろ邪魔になっているといった方が合っていた。
霊夢が歩く。靴からは引きずる時の様な擦れる音は無く。踵からコッと地面に立て、テンポ良く歩いてくる。その姿は宛ら、外の世界での60年代初期の悪徳警官に見えなくもなかった。
ゴーン、と館に備え付けられている又は象徴とも言える大きく古ぼけた時計から鈍く甲高い鐘の音が鳴り響く。館中に回っていくその鐘の音には妙な粘り気を感じさせるくらいに程よい間隔を保ち、やがて館全体をやんわりと包み込んだ。
犯人を捕まえる為の貴重な情報を教えてあげたんだからとセリフの最後に付け加え、普段からレミリアが愛用しているであろう薔薇のレリーフが掘り込まれ、金の装飾をなされた自慢の椅子に腰を下ろす。
「一度座ってみたかったのよねぇ、これ。アンタがいっちも気持ちよさそーに座って我が物顔でメイドさんに命令しているんだもの。私もアンタに命令してもいいかしら?」
そう言うと椅子に我が物顔で座っていた霊夢が目の前で柔軟体操をし始めていたレミリアに人差し指を向け、クイクイっと動かした。
・・・・・・・・・・・・呼んでいるらしい、
とレミリアが腰をバキバキと鳴らしながらも悟った。
嫌味全開の視線で睨むも、気づく気配が全くない。というようりも気にしていない風にも見えた。
「何よ?用があるならそこで言いなさい。あと4分座ったらおしまいよ」
どんなにメンチ切っても一向に見向きしない霊夢にいい加減何の話なのか尋ねた。あまり長く自分の椅子に座って欲しくないので適当な条件も増やして退かそうと試みる。
「かぁー血も涙もないわねぇ!それは強欲というものじゃないのかしら?これだから困るわ」
割と理不尽な条件に椅子に心地良く座っていた少女の不満が口から溢れた。
「うるさい。どの口が言うか!?」
心外な言い掛かりにレミリアの反感を買う霊夢。
「お黙り。この口が言うの!」
自分の指を口に向けて。
二人の言い合いは子供の口喧嘩を沸騰させるかの様につまらない返事を繰り返した。
例えば、一人が、
「子供かっ!!?」
と言えばもう一人が、
「誠に残念ながら私は子供よ、これだからアマちゃんは困るわ」
と返す。
滑稽とも思える言い合いの最中、レミリアはさらに悟る。このままではいずれ霊夢のペースに流されて、言い負かされる。そうなればコイツの言いなりになるのは間違いない。それだけはどうしても避けたい。
あれこれ考えている内に時間が経過していく。
すると、何時の間にか姿を消していた咲夜が突然目の前に現れる。瞬きがどうこう等とは全然関係ないとさえ思えてくるほど、瞬間的だった。
だが、これは日常的なことだとある程度慣れているレミリアはそんなに驚かず、チラッと見ただけで直ぐに視線を霊夢に戻した。
「・・・・・・・・・・・じゃぁもう4分経過したから休憩はおしまい!!ほら、そっから立ち上がって退きなさい、この貧乏巫女!!!」
「今度余計な口聞いたらその口縫い合わすわよ?」
「はい、すいません」
嘘は一切口にしていないはずだった。なぜだろう。
「アンタの4分は何秒なのよ、これだから幼女は困るわ」
「いや、ちょっとまて、あんた人生に何回困ってんのよ!?困りすぎでしょ・・・・・・・・・諭吉かよ。それと私はこう見えてもね、五百歳のお姉さんですからッ!!!!!」
そのあまりの渾身のボケなのか本音なのか理解に苦しむ言葉に魔理沙ですらレミリアを凝視した。相手の霊夢は口を開いたまま、は?と無意識に声を漏らす。
構わず続けるレミリアは人差し指を上げ、霊夢に向け、言い放つ。
「アンタなんぞ赤子同然なのよ!!」
「それただのババァじゃない」
唐突すぎた文句に返事の反応が1テンポ遅れる。
「え?」
ため息混じりに前髪を掻き上げる霊夢。相手を小馬鹿にした表情で、
「ババァと言ったのよ。だって、私から言わせてみれば480くらいも離れてればアンタ……立派なババァよ」
場の空気が一気に、一直線凍てつく。冷気は感じないが、この場に居る全ての知的生命体。つまり、魔理沙とパチュリーと咲夜の三人の体温が確実に5は下がった感覚がした。
3人の恐怖心が生んだ一体感とも感じ取れる何かは一つのある言葉を心の内で共鳴した。
それは、
(((最悪だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!)))
どちらかと言えば災厄である。
顔は眉一つ微動だにさせていない3人。しかし精神の方は叫ぶムンクのように嘆いている。
最悪だ、これは非常に不味い。どれくらい不味いかというと、青少年がドヤ顔したままヤクザのボスにアッパーカット入れたくらいに不味い。追い打ちに脇腹フックも足したと考えればなお良い。
レミリアは確実に頭に来ている。
冷や汗が止まらない3人はレミリアが次に喋る台詞が容易に想像できた。
それは、某科学と魔術が交差する小説に登場するビームの女が耐え切れぬ程の屈辱の末に放った宣告だ。
だが、そうしている間にレミリアが体を小刻みに震わせながら聞こえる大きさで呟いた。
『ブチコロシ確定ね☆この脇女♪』
ニッコリとこの世に存在しないと考えられるくらいに可愛気のある少女の笑顔が"具現"する。
(((うわぁぁぁぁん!!!誰か助けてくださいぃぃぃぃい!!!!だれかこのバカ女を止めてくださいィイイイ)))
「ゴッボォ!!ゴッホエッホォ!!」
血を吐いてしまうパチュリー。手で口を抑えようとするも間に合わず血霧が床へ飛散する。
なぜ台詞の中に星と音符マークが入っているのだろうか。その不気味で可愛らしい笑顔はなんだろうか。
考えてはいけない。
「ぶっちゃけちゃうと、私たち一緒に探せばいいじゃない。事が早く収まるかもしれないわよ?」
何をどうぶっちゃけちゃうとこんな会話になるんだろうか。咲夜の小さい背中からは冷や汗が止まらない。その手には懐中時計が握られていてずっと親指で開いたり閉じたりを繰り返している。
(うわぁ………完璧に動揺してるなこりゃ…)
引きが止まらない魔理沙。呆れ驚き一歩下がる。
悪く言えば、自滅行為。良く言えば、挑戦。霊夢にはそんな言葉が似合う。似合いすぎて目も合わせられない。
魔理沙の傍には吐血が止まらないパチュリー、隣にはビビりすぎて震えが止まらず今にも泣きそうな咲夜。三人が願ったのは第三者である、もちろん全く現状を理解していないという前提の。あ、フランは除外。かえって状況を悪化しかねない。
誰もが(三人組が)そう願った時だった。
バァーン!!!ドシャァァアアン!!!!!
とテラスに続く大きな窓ガラスとガラス扉諸共が狂騒し合い豪快に吹き飛んだ。
雨のようにザーっと煌びやかにレミリアの方へ。
誰もが(三人組が)望んだ第三者(現状を知らない者)が現れたと焦った。降臨したと、一度感極まった。
が、
「あややややー……やっちまったなぁー、まさかテラスごと持ってくと思わなんだぁー」
頭のガラス片をせっせと叩き落とすと、そこには清く正しい妖怪が降臨していた。
「ほんと、やっちまったなー」
何十もの意味を含んだ言葉をパチュリーが。
「「お前かよ」」
魔理沙と咲夜が。
(((あ~ぁー、やっちまったなー)))
次も待ってください(まだ書いていないです)
前者、三点リーダは偶数個使用すると良い印象を与えますよ、私はそう教えられました。
驚異的身体能力を持つ吸血鬼の視力 ちょっとこの描写引っかかりました。
なんだか引っかかりました、何かわかんないから困るんだけど。
私なら 吸血鬼の驚異的身体能力の一つであるその視力 という感じにしますかね。
まぁどう描写されるかは作者様次第なのでとやかくは言いません。
個人的にはスペース、間があったほうが見やすいことと、先程のをあわせて、この点数で
あと、吸血鬼が~どうたらの描写ですが、全くもってその通りです、わざわざすいません!
あとは、文章が長いのと、無駄が多いところですね。了解!
指摘ありがたい、ではなくご指摘ありがとうございます、などのように最低限の最後まで読んでくださった読者様への敬意を示してください
なんだか偉そうです
指摘だけなのでフリーレスで
作品制作頑張って下さい
そう思わせる具合でした。以下、具体例。
なぜ「?」が半角なのか。パチェはレミリアの友人ではなかったのか。「口を開けば」というのは日常的な行為・癖を指す言葉のはず。「核的な何かの三原則」と故意にぼやかした意図が不明である、リトルボーイじゃあるまいし。「スッとした顔」とはどんな顔か、スッとした、とは表情ではなく顔つきに対して用いる表現ではないだろうか。「口ずさむ」のは詩・歌・噂であり、通常の会話では用いない。「気が狂(ふ)れる」「気に障る」はあるが、「気に触れる」は初耳である。「小さな声で怒鳴る(=大声で怒る)」のは難しそうだ。「聞いてあげる!」と言われても困ります、どうかお話を「聞かせて」ください。「霧が出た」から来たんじゃないんですか、「陥れる」って何の陰謀論ですか。「上から目線で」「見下す」同じことを二回も言わんでよろしい。
冒頭だけでこれぐらいですかね。
しばらく読んでいたんですが、
「目と目を合わせた。」の直後の「アイコンタクトである。」で堪忍袋の緒が切れてしまいました。
んなこと言われんでも分かるわい!!!!
かえって笑えてきてしまった。そういう路線なんですかね?
指摘ばっかり、かつ、長文のコメントで申し訳ありませんでした。
それに付きましては誠に失礼致しました、文章指摘される上に礼儀も指摘されてありがたい事この上ないです。申し訳ない。
作品頑張ります!
路線ではありませんでした、気を害して申し訳ない。
完全に作者の私のミスです。
作品内で矛盾を起こしてしまいました。
続きはいつごろになるのでしょう。