夏半ばの幻想郷の夜空は、妖怪と魔法使いによって華やかに彩られていた。これは幻想郷の少女達によって繰り広げられる美しくも壮絶な弾幕だった。
激しく強大な弾幕になる程、力の無い人間や妖怪は挙ってそれに介入しない。ましてや今宵繰り広げられている場所、『太陽の畑』に近付く者など皆無に等しい。
ここには危険な妖怪がとても多く、無慈悲で躊躇や手加減と言うものを知らない妖怪もいる。近付いた者には容赦せず叩きのめす。愛し惚れ込む花を穢す者などその場にいれば、一瞬で木端微塵にするだろう。
しかし、訪れる者には変わり者もおり、彼女達が夏の夜空に飾る花火を見に来る人妖も少なからず現れる。もちろん彼等は花畑には入らずに遠くからそれを見る事を徹底する。見つかったらそれこそ自らが花火となって散ってしまう。
今宵も夜空に広がる美しい景色を見にきている人妖はいる。花畑から少しばかり離れた位置で。
その半刻ばかり続いた『遊び』はどうやら終了したようで、夜空はまたいつものように静かになった。観衆もぞろぞろと住処へ戻って行った。
その遊び場の跡地には勝ち誇った顔の妖怪と、屈服している魔法使いの姿があった。どうやら妖怪に軍配があがったようだ。まあ、これはいつもの結果であった。常識的に考えて必然。あくまで現状での常識範囲では。
ここ最近花畑に度々現れては勝負を仕掛ける魔法使い、霧雨魔理沙にとって、まだ碌に一度も勝った事の無い相手、風見幽香は、今の段階では勝つ事はできないと本人も疾うに自覚していた。
そして遊びの後に幽香はいつも魔理沙にこう言うのだ。
「貴女の弾幕、とても綺麗だったわよ」
この言葉は魔理沙にとってかなり癪に障った。自分を見下しているようで。この言葉を言われた後は必ず魔理沙はムスッとするのであった。
そんなに私が弱いか? そんなに私を弄ぶのが楽しいか? 魔理沙はいつも悔やみ、悩んだ。
どうやったら幽香に勝てるか。どうやったら強くなれるか。今の自分に何が必要か。
努力? 努力はしている。恐らく幻想郷で一、二を争うぐらいに。アリスや霊夢は知らないが、魔理沙の努力は随一であった。一つの魔法を作り出すのに数週間或いは数ヶ月を要する時もある。それが失敗作だったらまた一からの繰り返し。これを魔理沙はずっとやってきた。もちろん影で。誰にも見られず、見つからないところで。
そんな彼女の姿を知っているのは幻想郷でも本人しかいない。魔理沙は恥じるのが嫌いなのだ。
そして、努力も虚しく今日も負けてしまった。正確には昨日だ。もう午前零時を回った。
魔理沙は家に帰って早々、ベッドの枕に顔をうずめ、試行錯誤した。
その結果、明日、ではなく今日の朝早く、命蓮寺の僧侶、詳しくは大魔法使いのもとへ行く事に決めた。
それが正しい選択だったのか、或いは間違った選択なのか判らずに、魔理沙は眠りに落ちた。
「ララララ マスタースパーク ラララ マスタースパーク ラララ マスタースパーク ララララララ マスタースパーク♬」
翌朝、魔理沙は既に幻想郷の清い空を箒に跨って、自作曲を歌いながら暢気に目的地を目指していた。
目的地は命蓮寺。最近幻想郷入りした新参である。魔理沙はまだそこをよく知らない。噂によると、長年封印されていた大魔法使い、聖白蓮がそこに身を鎮めているとのことだ。いわゆる魔理沙の大先輩にあたる白蓮は、人間も妖怪も全て平等に、何の差別の無い理想的な世界を試みているらしい。
その超プラス思考な魔法使いさんを訪ねて吉と出るか、凶と出るか、大凶と出るか、そんな事は誰も判らない。ただ、鍵を握っている事は間違いなく、魔理沙が期待する大きな存在だ。
命蓮寺目指して、魔理沙は一段とスピードを上げた。
「なるほど判りました。つまりその無慈悲な心の概念を平等の心の概念に置き換えてくれと申しているのですね」
「いやいや違う違う。無慈悲のままでいいんだ。それが幽香って妖怪だ。私がそいつに勝てるにはどうしたらいいのかと聞いていたんだぜ」
「なるほど。強くなるためには、と言う事ですね」
「そう言う事だぜ。僧侶なんだからその道標を私に掲げてくれ」
白蓮は「ちょっとお待ち下さい」と言って奥へ戻って行った。
魔理沙は初っ端から不安でしかたがなかった。どうもあの魔法使いは考え方が曲がっている。平等を愛する世界選手権があったら、間違い無く優勝するだろう。
しかし、魔理沙の周りにいる人達(霊夢、アリス、パチュリーなどなど)よりかはずっと常識人である。内部へ連れて来られた途中に、ネズミとどっかの船の船長らしき者達が正座して何やらブツブツと唱えている光景を目にした。あれは白蓮が全て行っているのだろうと魔理沙は憶測した。
漸く戻ってきた白蓮の手には巻物の様なモノを持っていた。
するとそれを開き、中身を黙読した。
「ふむふむ。んーなるほどですね。あーはいはい。うんうん。全把握しました。了解です」
読み終えたかと思うとそれを突然空中に放った。そして、消えた。跡形も無く。
「あの~」
「はい。何でしょう?」
「今のヤツはどこ行っちゃったんだぜ?」
「もとの場所に戻しました」
「あ、やっぱり?」
「さて、神の言葉を差し上げましょう」
ついにこの時が来た。魔理沙の心臓がドクドクと鳴る。魔理沙は手のひらに『勝』と言う字を書いて飲み込んだ。緊張解しである。
「強くなるために必要なもの。それは人並み以上の努力。魔女をも凌駕する知識。人を思いやる人情。何者も省く事のない平等心。卓越した適応力。そして何より必要なのは相手に対する敬意。努力の末に培った実力、知識、適応力。これらを成す事ができなければ、人情も敬意も身を隠したままに貴女の前には現れないでしょう。真の実力者はこれら全てを持ち合わせているのです」
魔理沙は魔女をも凌駕する知識と聞いて意気消沈した。
パチュリー以上の知識は魔理沙にとって鼻でアボカドを砕くより難しい。
「つまり、先に何をすれば良いんだぜ?」
「修行中は巫山戯てはなりません。争いもしてはなりません。清い心に穢れが入るからです。まずは周りを十分に認識し、意思疎通を心懸けるべきです。そうですね……働いたりして努力を知りましょう」
努力など、魔理沙には釈迦に説法だった。だがそんなことは誰も知る由もない。
「努力は十分に知ってるぜ。って事はどこか都合の良い所はないか……」
「あそこなんてどうですか? え~と、何でしたっけ? あの吸血鬼が住んでる……」
「紅魔館! 了解だぜ! 早速バイトだ!」
「あ、ちょっと待ってくだ……」
白蓮の助言も聞かず、魔理沙は壁を突き破って外へ行ってしまった。壁の残骸が辺りに散らばり、崩れ落ちた。煙がもくもく立ち上がり、視界が乏しくなる。
魔理沙は遥か彼方へ行ってしまい、やがて見えなくなった。
「何ですか今の?」
白蓮が声のする方を見ると、修行中だったはずのナズーリンと村紗が壁が壊れる音に反応してやって来た。正座をずっとやっていたからなのか、足元が覚束ない。下手に足を庇って顔を歪めている。
そんな二人に白蓮は内心で笑いつつ、最高のスマイルで言った。
「修行の者がお帰りになられたのです。さあ、貴女達も修行に戻りなさい」
それに白蓮は付け加えた。
「あ、忘れてました。ナズーリンは河童を呼んでおいて下さい。どう言うわけか壁が崩れてしまったのです」
あと改行とか。
ともあれ次回に期待。
物凄く天然な間違いでした。
ご指摘ありがとうごさいます。
桶氏はもう少し読者の視線というのも養った方がいい。
桶氏が読者として作品を求めている時に、探しているのはいつもこんな内容の作品なのですか。
これは本当に「面白い」と思って書き上げた作品なのですか。
桶氏が生きてきた中で見てきた「面白い作品」って、こんな話だったのですか。
多数の作品を投稿する意欲と情熱を持っていることは分かりますが、読者を想定して書いているとは思えない一方通行的なものしか感じられません。
ただでさえ素人が書いているのに出来合いの物を出されたって、満足する人なんているわけがないでしょうよ。
そんな事を続けてる内は、点数が伸びることはですよ。一度自分の好きな本でも漫画でも読んで、どうしてこんなに面白いのか研究することをお勧めします。
「穢れ」は神道では?というのと、これは規約と照らし合わせて、
>作品を複数に分ける時は、
>「それぞれで完結している・話の展開上そこで区切りがつく」事を基準にして下さい。
とありますが、これは展開上の区切りではなく起承転結の起こりだけを投げているように思えます。
また勢いだけで、とありますが書ききる気はあるのでしょうか?
起こりだけを投稿し反応如何によって続ける云々というように感じました。
完結は当然させる!というのでしたら、余計な口出しにもほどがあるので、それは申し訳ありません。
話の評価については、完結後に。長々と失礼しました。
ここまででは何とも言えないのでフリーレスで
かなり心に響くお言葉でした。
読者の視点。絶対忘れません。
>>愚迂多良童子様
すみません。
それは魔理沙のことだから、というジョークです。
>>11様
反応を伺うなんてことはありません。
皆様の批判はアドバイスです。
言葉は悪いですが(皆様の批判ではなく次の私の言葉が)、今後の糧とさせていただく貴重な資源です。
どこが悪いのか気付かせてくれるのです。
>>12様
iPhoneで書いてるので編集ができなかったのです。
オマケに今はパソコンがぶっ壊れているので直すのは先のことになるかと。
せっかくのご指摘なのに利用できないのは辛いです。
すべて勢いの言われるのは、悪いですけどいただけないお言葉です。
書く度に精進しようと努力しております(私の場合はだんだんと評価が下がっているのですが)。
皆様アドバイスありがとうございます。
もう創想話に来なくていいよ
これからも、貴方の作品は全部読んでいくと思います。
今後も頑張ってください。
文章は下手じゃないんだ。
設定を飲み込め。
頑張れよ。