湖のほとりに立つ洋館、紅魔館。
ここではたくさんの妖精たちがメイドとして働いています。
そして、その頂点には「メイド長」と呼ばれるお方がいるのです。
これから話すのは、そんな妖精メイドの一人である私とメイド長の恋の物語。
どうか最後までお付き合いください。
「シエラー、起きなさいよー!」
「うーん、あと5分……」
「もう、また咲夜さんに怒られても知らないわよ?」
「それでも眠いんだもん……」
そんな友人の声がする。
起きなきゃいけないのはわかってるんだけど、まだ眠いよぉ……
「もう……ほら、起きろー!」
「うにゃー!?」
いきなりベッドから落とされてしまいました。
どうやら、彼女に思いっきり押されたせいで落ちたみたいですね。
「これで起きたでしょ」
「もー! ジュリったら何するのよー!」
彼女はジュリ。私の無二の親友。
本当はジュリエットっていう名前らしいんだけど、皆縮めてジュリって呼んでます。
本人も「ジュリって呼んでね」なんて言ってますし。
「あんたがなかなか起きないからこうするしかなかったのよ。
さ、目は覚めた? ほら、さっさと着替えて」
「はいはい……」
寝ぼけ眼をこすりながら、パジャマからメイド服に着替えることにします。
うーん、今日もお仕事を頑張らないとなぁ。
紅魔館のメイドの仕事内容は日替わりとなっています。
大体のメイドは基本的な仕事を全部こなすことが出来るんですよ。
……流石に腕前はまちまちですけど。
「えーと、私たちは今日何をすればいいんだっけ?」
「今日は……買出しかしら?」
「買い出しかぁ。ちょっと大変ね」
買い出し要員は人間の里まで買い物に行くっていう単純な仕事をこなすだけ。
だけど、これがかなーり大変。
なにせ大所帯の紅魔館に必要な物を買ってこなきゃいけないんですからね。
量がとんでもないことになるんですよ……
4、5人で行って何とかなるかどうかの量だったりするんです。
まぁ、買出しさえ終われば今日の仕事は終わりなんだけれども。
「とりあえず、朝ごはんを食べて頑張りましょ」
「そうだねー。朝ごはんは一日の元気の源だもんね!」
とりあえず、朝ごはん食べに行こーっと。
そしてその道中、疑問を口にしてみました。
「皆揃ってるかしら?」
「もう揃ってると思うわよ。
もしかすると私たちが一番遅かったりするかも……」
「あー、それまずいなぁ……急ぎましょ!」
流石に遅れて食堂に入ったら気まずい……
どうか間に合いますように。
そう祈りながら、ジュリと二人で小走りをして、なんとか食堂にたどり着くことが出来ました。
さて、どうなってるかな。
ギィ、と小さな音を立てて、ドアを押し開けてみます。
お、何とか大丈夫かな?
見た感じ、大丈夫そうなんですけど。
「ふぅ、何とか間に合った……かな?」
「ねぇ、シエラ……あそこ」
「えっ?」
ジュリが耳打ちをしてきました。
何かあったの……あ。
軽く腕組みをしたこの館のメイド長、咲夜さんと目が合ってしまいました。
目が合った時、心臓がドクンと脈打ちました。
これは胸のときめき……のはずなのですが、同時に嫌な予感もします。
なぜなら、咲夜さんの目が不機嫌そうに見えたからです。
えと、これって……怒られる?
「遅刻よ、二人とも。一体何をしてたのかしら?」
咲夜さんはため息をつきながら、こちらを軽く睨んできます。
「す、すみませんでした!」
ジュリと二人で、咲夜さんに頭を下げました。
うぅ、また怒られちゃった……
「まぁ、また寝坊だとは思うけど……
シエラ、あなたは最近寝坊が多いわよ? 気をつけなさいね?」
「はい、申し訳ありません……」
頭を下げながら謝罪をする私とジュリ。
すると、咲夜さんは優しく声を掛けてくれました。
「よし、それじゃあ行ってよし。
さ、みんな待ってたんだから、早く席に着きなさい」
「は、はい!」
やっぱり咲夜さんは優しいですね。
私、咲夜さんのこういうところが……あ、いや、なんでもないです。
それよりも急いで席に着くことにしましょう。
このままじゃみんなを待たせることになっちゃいますし。
席に向かう途中、他のメイドたちは「仕方ないなぁ」とでも言わんばかりにくすくす笑っていました。
「それじゃ、皆揃ったし、いただきましょうか」
「いただきます!」
咲夜さんの声の後に、みんなでいただきますを唱和します。
さて、私も早速いただくことにしよっと。
「もう、シエラのせいで私まで怒られちゃったじゃない……」
「にゃあ……ごめん。次からは気をつけるよ……」
ジュリにぼそりと、そう言われてしまいました。
私は口癖でもある「にゃあ」などという言葉を無意識のうちに口に出してしまいます。
はぁ、私って周りに迷惑かけっぱなしだなぁ。
なんかつらいよ……
でも、落ち込む私にジュリは優しく声を掛けてくれました。
「次からしっかり起きなさいよ?」
「うん、気をつけるよ」
「わかってくれたならよし。さ、早く食べないと冷めちゃうわよ」
「あ、うん!」
ふふ、ジュリってば、やっぱり優しいなぁ。
うん、落ち込んでる場合じゃないですね。
前向きに考えないと!
よーし、朝ごはんしっかり食べて、お仕事頑張ろー!
「それじゃ、また今度なー!」
食事も終わり、軽く部屋の掃除を終わらせてから今日のお仕事である、買出しに出かけました。
店のおじさんとはいつの間にか仲良くなってて、結構世間話をしたりするんですよね。
これが買出しの時の恒例行事みたいになってるんですよ。
今日もいつものように、みんなでちょっと世間話をしてから帰ることに。
後ろからは店のおじさんの元気な声が聞こえてきました。
「ふぅ、今日も量が多いなぁ」
「ま、4人もいれば何とかなるけどね」
私とジュリのほかにも、同じ部屋で寝ているメイド二人が一緒に買い物に来ているんですよ。
ちなみにメイドは大体4~5人に一つの部屋が当てられていて、同じ部屋のメンバーで同じ仕事をしたりしてます。
咲夜さん曰く「そうしたら円滑に仕事が進むから」だそうで。
こちらとしても、このシステムはありがたいです。
楽しくお仕事が出来るし……
「ねぇ、お屋敷に帰ったら何する?」
「うーん、私は何も考えてないけど。シャーリーはどう?」
ジュリは私の問いかけを、シャーリーに流した。
「え? 私?」
シャーリーはメガネをかけた大人しい子。
いきなり話を振られて、少し驚いてますね。
「うーん、部屋で小悪魔さんに勧められた本でも読もうかなぁって思ってるけど」
「また借りてきたの? 今回はどんな本?」
「えと、なんかミステリー物。結構面白くて、気が付いたら夜遅くって事が結構あってさ……」
シャーリーは本を読むのが大好きな子なんです。
パチュリー様、小悪魔さんとはよく話したりしてるみたいです。
まぁ、彼女のほかにも図書館によく行く子は多いんですけどね。
私も気分転換のため、本を借りに行ったりしますし。
しょっちゅう借りに行ったりはしないですけど。
「へぇ、それって面白い? 面白かったら貸してよー」
そう突っ込んできたのはリマ。
彼女はいつでも前向きで、常に明るい子です。
まぁ、たまにその元気さが失敗を招いたりもするんですけどね。
この前は廊下を猛ダッシュしてて、咲夜さんに怒られてたし……
「リマには読みづらいんじゃないかしら?」
「なんでよー?」
「いや、まぁ、その、色々と、ね」
「む、あたしのことバカにしてない?」
目を逸らすシャーリーと、膨れっ面になるリマ。
なんだかんだで、この二人って相性いいんですよね。
さしずめ体とそれを動かす頭脳みたいな関係、と言ったところでしょうか?
「いやいや、馬鹿にはしてないよ。
でも、こないだ小説貸してあげたら『文字ばっかりでつまんない』って言って読むのやめちゃったじゃない」
「あれ、そうだっけー?」
「うん。すぐに投げてた」
私もそれ、見てたなぁ。
1時間も経たないうちに投げてた気がする。
たぶんリマには小説とか小難しい本は向かない。
「リマには絵本とかマンガがいいんじゃない?」
ジュリがリマに向けて問いかける。
「あたしゃ、そっちの方が好きだなー」
「マンガとか絵本なら図書館にも外の世界のものがたくさんあるけど……
今度一緒に行って見てみる?」
「あ、行く行くー」
私も今度面白い本でも探しに行ってみようかな?
何か掘り出し物が見つかるかもしれないですし。
ちなみに幻想郷にもマンガや絵本の類はあるんですけど、
やっぱり外の世界の本のほうが色々書いてあって新鮮なんですよね。
そんなわけで、幻想郷中から図書館目当てで来る人も少なくは無いんですよ。
「それにしても、今日もやっぱり量が多いなぁ」
私がため息をつきながらそう漏らすとみんなも「ほんとほんと」なんて苦笑しました。
「まだまだ備蓄はあるはずなんだけど、かなり早いペースで無くなっちゃうのよね」
「メイドの数も多いしねー」
「ま、これも大事なお仕事だし、我慢我慢」
うん、ジュリの言う通り。
買出しも大事なお仕事だし、頑張らなきゃね。
この仕事をしっかりしないと、紅魔館に住んでるみんなが苦労することになりますし。
「さて、帰ったら何しようかな。
あ、そうだ。シエラ、トランプでもしない?」
「私は別にいいよ。リマはどうする?」
「あ、あたしも混ざるー!」
やっぱりトランプが一番ですね。
みんなでわいわい盛り上がれますし。
「それじゃ、トランプに決まり!
シャーリーは……本読むよね?」
「え? 別に混ざってもいいけど……本ならいつでも読めるし」
それじゃ、4人でトランプかな。
「よーし、それじゃあ、今日は久々に賭けトランプでもしようかな!」
「おぉ、それはいいですなぁ。久々にジュリが賭けを持ちかけてきて、テンション上がってきたよー」
えー、賭けするのー……
ノリノリのジュリとリマには悪いんだけど、私は気が進まないなぁ……
「か、賭けって、あまり過激なのはやめてね……?」
シャーリーが怯えたような顔を見せます。
それもそのはず、彼女は過去に負けて大変な目にあったことがあるんですよ。
いえ、私たち、というべきでしょうか。
「大丈夫大丈夫。流石に今回は『咲夜さんの下着を盗んで来い』なんて奴はしないから。
……私も痛い目見て、懲りたし」
以前、酔った勢いでジュリは「ビリの人は咲夜さんの下着を盗んで来い」なんて大変な賭けをしちゃったんですよ。
で、その時はシャーリーが負けたんですけど……
当たり前ですが、咲夜さんにバレて、皆大目玉を食らいました。
あぁ、あれは怖かった……
「あ、あたしは賭けの内容思いついたよ!」
「はい、リマちゃん、発表してくださーい!」
どうでもいいけど、ジュリってばすごいノリノリね。
「ビリの人は1位の人に『今日の夕食のおかずを一品あげる』っていうのは?」
ん、それくらいならまだいいかな。
そこまで過激じゃないですし。
「んじゃ、それにしようかしらね」
「ふぅ、それくらいならまだ大丈夫……」
安堵の表情を見せるシャーリー。
でも、おかず一品がかかってるし、負けられない戦いになりますね。
「よーし、そうと決まれば急ぐわよ! 燃えてきたぁ!」
「あたしも燃えてきたよー!」
「あ、待ってよジュリー!」
駆け出すジュリとリマをシャーリーと二人で追いかける。
もちろん買った品物を落としたり、転んだりしないように気をつけながら。
はてさて、賭けトランプの結果はどうなるんでしょうね。
「はー、ごちそうさまでしたー」
「う、うぅ、私のハンバーグ……」
結局、私がビリになりました……
今日の夕食はよりにもよって、私の大好きなハンバーグ。
そのハンバーグは今、ジュリのお腹の中にあるわけで。
「まぁ、気を落とさないで。次頑張ればいいよ」
そう私を慰めてくれるリマ。
うぐ、悔しい……
「大丈夫? お腹が空いてるのなら軽く何か作ってくるけど?」
「お、お願い……」
ルームメイトの中で一番料理が得意なシャーリー。
彼女に任せれば何か美味しいものを作ってくれるはず。
「それじゃ、みんなの分も合わせて何か作ってくるね」
そう言って、シャーリーは部屋を出て行きました。
シャーリーが戻ってくるまで我慢しなきゃ。
「んー、でももう少しで勝てそうだったんだよねー。
まさかあそこでジュリがあのカードを持ってたなんて……」
「んふふ、大富豪は頭のいい人が勝つのよ」
「むきー! バカにしたね! あたしのことをバカにしたねー!」
ジュリとリマはいつものようなやり取りをしてますね。
あ、でも仲が悪いわけじゃないんですよ?
こういうのは日常茶飯事ですから。
「にゃー、お腹空いたよぉ……はんばーぐー……」
「あー、今思い出したけど、シエラはハンバーグが大好きだったわね。
まぁ、賭けに負けたんだから仕方ないわよ。
……ふふ、美味しく頂かせてもらいました」
くすくすと笑うジュリ。
その時、私の中の何かが切れた。
「ジュリー! 私のハンバーグ返せー!」
「わっ!? あ、暴れないでよー! 痛い! 痛いってばー!」
「わー、シエラが暴れ始めたー。逃げろー」
「ちょ、リマ! なんとかしてよ!」
「あたしは勝てない戦いはしないのです」
「言ってる場合かー! 助けろー!」
ジュリの肩を激しく揺さぶる私。
彼女はキャーキャー叫びながらリマに助けを求めましたが、リマは笑って見ているだけ。
「ただいまー……ってシエラ!? ちょ、落ち着いてー!」
「むがー!」
こうしてシャーリーが帰ってきたことによって、私は落ち着きを取り戻すのでした。
「ふぅ、何とか落ち着いたよ……ごめんね、ジュリ」
「あー、びっくりした……
あそこでシャーリーが止めてくれなかったらどうなってたことか……
食べ物の恨みは恐ろしいってことは理解したよ……あー、体が痛い」
空腹でちょっとイライラしてたから……
空腹の時って理性とか吹き飛んじゃいますね。
これから気をつけることにしましょう。
「とりあえず、これでも食べて落ち着いて。はい、どうぞ」
シャーリーが手渡してくれたのは、サンドイッチ。
うーん、流石は料理が得意なシャーリー。
美味しそうに出来てますね。
「ありがとう。それじゃ、頂きまーす!」
「みんなの分もあるからね」
「あ、それじゃ遠慮なく頂くねー」
「私ももらおうかな」
みんなもシャーリーが作ったサンドイッチを手に取って、口に運んでいます。
ん……やっぱり美味しい。
これだったらお腹も満足してくれますね。
いくらでも食べれちゃいますよ。
「ど、どうかな?」
「うん、美味しいよ。流石はシャーリーだね」
「そう言ってくれると嬉しいな……」
「うんうん、すごく美味しいよ。ね、ジュリ」
「うん。このチキンの焼き加減とか、シャキッとした野菜の歯ごたえとか……
これは花丸をあげられるわよ」
みんなからそう褒められて、シャーリーは「ありがと……」なんて呟きながら真赤になりました。
うふふ、真赤になるシャーリーって可愛いですね。
あ、彼女は珍しいメガネかけってこともあってか、色々と人気があるんですよ?
メイドたちや紅魔館の外の人たちにも彼女が好きな人がいるとかいないとか……
軽食が終わり、雑談やら読書やらで時間を潰していたらいつの間にか夜は更けて、寝る時間に。
でも、年頃の少女たちの話はとどまることを知りません。
いつの間にか話題は気になる人の話に。
「ねぇ、みんなは気になる人とかいる?」
ジュリの問いに対して、リマが真っ先に答えます。
「んー、あたしは美鈴さんかなぁ。優しいし、一緒に体動かしたら楽しそうだしね」
「へぇ、リマは美鈴さんなんだ。シャーリーは?」
「私? 私はやっぱり小悪魔さんとパチュリー様かしら。
話が合うし、二人とも優しいし……」
パチュリー様とシャーリーはお似合いな気がしますね。
文学カップルといった感じで仲良くなれそうな気がします。
「シャーリーとあの二人は間違いなく仲良くなれそうな気がするわ。
ちなみに私はお嬢様とフラン様かな。
あんな可愛い妹がいたら幸せだと思うのよね……
あとは魔理沙さんとか」
へぇ、ジュリはお嬢様か……
でも、二人みたいな妹がいたら楽しいだろうな。
面倒に巻き込まれるのは勘弁したいところですが。
そして魔理沙さんとは意外。
男らしい、って言ったら魔理沙さんは怒るだろうけど、その辺りが好きなのかも。
「で、シエラはどうなのかしら?」
「え、わ、私?」
「うん。あなたが気になる人について教えてよ。
私たちは言ったのに、あなただけだんまりってのは駄目だからね?」
う、ちょっと恥ずかしいなぁ……
「ぜ、絶対に笑わないでよ?」
「笑わない、笑わない」
そう言ったジュリを信じて、私はぼそりと呟くように言いました。
「……咲夜さん」
「え?」
「だから、咲夜さん……」
私の言葉を聞いた三人は「あー、なるほどねー」なんて言っています。
「咲夜さんかー。シエラは咲夜さんのどこが好きなの?」
「えと、細かい気遣いしてくれるし、綺麗で素敵だし……」
「わかるわかるー。瀟洒って言われるだけのことはあるよねー」
ここに来た時から密かな憧れだったんですよね。
厳しいように見えて優しいところとか、整った顔立ちとか……
素敵の一言に尽きます。
「でも、失敗だらけの私じゃ、咲夜さんは振り向いてくれないよね……」
「何言ってるのよ! そんなネガティブじゃ本当に振り向いてくれなくなるわよ!」
「そうよそうよ!」
う、ジュリとリマの言う通りですね。
こんな考えしてたら駄目。
もっと前向きに考えないと。
「ねぇ、そんなシエラがいきなり仕事できるようになったら、咲夜さんはどう思うかな?」
シャーリーが私に向かって、そう聞いてきました。
「えと、見直してくれ、る?」
「その通り!」
「なるほど。シャーリーが言いたいことがわかったわ。
つまり、仕事をしっかりこなせるようになったら咲夜さんが振り向いてくれるってことね!」
あぁ、なるほど。
つまり、咲夜さんの前で仕事が出来るところを見せろ、と。
「ということで、明日から私たちが協力してあげるから、頑張って」
「え、え?」
「シャーリーは料理、リマは掃除ね。私は洗濯のコツをしっかり教えてあげるわ」
あれ、なんかみんなから指導されるっぽいんですけど。
「りょーかい! あたしに任せてくれたら掃除の裏技までしっかり教えてあげるよー!」
「私の講義はきついわよ。 美味しく作れるまでしごくからね?」
「私も厳しいわよ? マスターするまできっちり指導するから!」
な、なんか怖い……
ものすごくしごかれそうな予感がするんですが。
でも三人はその道のプロと言っても差し支えない腕前を持ってるわけで。
三人に指導してもらったら完璧メイドになれるって言っても過言じゃないかも。
「それじゃ、明日からきっちり教えてあげるから覚悟してなさいね。
これも咲夜さんに振り向いてもらうためなんだから」
咲夜さんに振り向いてもらうため……そうだ。
頑張れば咲夜さんに認めてもらえる。
そうすれば私の想いが咲夜さんに……
「でも、何で私にここまでしてくれるの?」
疑問を口にしたら、三人は口をそろえてこう言いました。
「あなたが可愛くて、応援したくなるからに決まってるじゃない!」
か、可愛い……?
そうかなぁ?
でも悪い気はしませんね。
「三人とも、ありがとう!」
感謝の言葉を口にしたら「気にすること無いわよ」なんて笑われてしまいました。
「さーて、それじゃあ今日はこの辺で寝ましょうかね。おやすみ」
「あたしも寝るー。おやすみ!」
「みんなが寝るなら私も……おやすみなさーい」
あ、みんな寝始めちゃった。
うーん、私も寝ることにしましょうかね。
明日からしっかり仕事できるようにしなくちゃ!
こうして、次の日から私の修行が始まったのでした。
朝はしっかり時間通りに起床。
これはなんとかすることができました。
昨日「寝坊はしない!」って決めたのが効いたようですね。
そしてゆったりと朝食の時間を過ごし……
「そうじゃないって! こうするの!」
「わ、ご、ごめん!」
仕事が始まるとしごかれるのでありました。
今日のお仕事は洗濯。
先生はジュリですね。
「石鹸つけすぎ! これくらいでいいから! あとは、しっかり洗濯物を擦る!」
「よいしょ、よいしょ……こう?」
「うーん、なかなかいいけど……もうちょっと強くしてもいいかも」
それじゃあ、ジュリに言われたとおりに強く擦ってみよう。
「うん、その調子!」
「ち、力入れると結構体力使うね……」
「当たり前じゃない。この世に体力を使わないものなんてないわよ。
それじゃ、さっさと片付けるわよー!」
「つ、疲れるー……」
初日でこんな感じ……先が思いやられますね。
そして次の日はリマに掃除の仕方を習うことに。
リマの性格からして、そこまで厳しくはされないと思っていたんですが……
「まだホコリが残ってるー!」
「ひにゃあ! ごめんなさーい!」
かなり厳しいです。
うぅ、まるで嫁をいじめる姑みたいだよ……
ここまで厳しかったなんて……予想外です。
「ほら、早くしないと夕食抜きだよー!
シエラの分まで食べちゃうんだからねー?」
「そ、それだけは勘弁して……」
「それじゃあ、早く仕事する!
早く終わらせないと本当に夕食抜きだからねー!」
「ひえーん! 厳しいよぉ!」
こうして、今日は一日リマにいじめのようなしごきを受けたのでした。
うぅ、怖かった……
えーと、明日はシャーリーと料理かぁ。
ここら辺で優しくされたいものですけど……
あぁ、優しく面倒を見てくれないかなぁ。
そしてまたまた次の日。
「まだ! 味が少し濃い!」
「う、うにぃ……」
どうやら私に心癒される時間は無いようです。
リマに引き続いて、嫁をいじめる姑みたいなしごきを受けているのでありました。
「こ、今度はどう!?」
「今度は薄い! 何やってるのよ!」
「す、すみませーん……ぐすん」
こうして3日間、私は泣きそうになる寸前まで追い詰められたのでした。
……ちょっとだけ泣いちゃいましたけどね。
さて、明日の仕事は買出しですね。
流石に明日はしごかれることはないと思うんだけれど。
とりあえず、明日はゆっくりと体を休めましょう。
お休みなさいませ……
「ひー、この3日間はきつかったよ……」
人間の里から紅魔館への帰り道。
私は軽くため息をつきながら大量の荷物を持って歩いていました。
「結構しごいたからねー。体のほうは大丈夫?」
「うん。何とかね」
ジュリにそう返したけど……実はまだちょっときついんですよね。
今日ゆっくり休めば、すぐに治っちゃうと思いますけど。
「でも、3日間のしごきでちょっとは仕事のコツを覚えたんじゃない?」
「うーん、ちょっとはね」
ある程度は頭に入ったけど、まだまだ。
これからもしっかり仕事ができるようにならないと!
「シエラは全く仕事が出来ないわけじゃないんだから、すぐに紅魔館内有数の有能メイドになれるわよ」
「そうそう。シャーリーの言うとおり、シエラは筋がいいからねー。
掃除のコツもすぐに覚えてくれたし」
「あ、ありがと、二人とも……」
そ、そんなに筋いいかなぁ?
でも褒められて悪い気はしないです。
「でも覚悟してなさいよ? まだまだしばらくはしごきの毎日だからね?」
「う、まだやるの?」
「当たり前でしょ? 咲夜さんに振り向いてもらうならまだまだ努力しないと!」
「にゃ、お、お手柔らかにね?」
そんな私を見て、三人はニヤリと笑いました。
また大変な目に遭う気がしてきましたよ……
「シエラは可愛いから、ついつい意地悪したくなっちゃうのよねー」
「うんうん。というわけで、明日のお料理の時間もいじめてあげるからねー?」
「お掃除の時間も同じく!」
「ひーん、私に癒しの時間は無いのー!?」
「無い」
「う、うにゃ……」
そ、そこまでキッパリ言われちゃうと泣きたくなるんだけど。
それにしても可愛いから意地悪したくなるって……どういうことなんでしょう。
よく「好き子はいじめたくなるタイプ」って人がいますけど、そんな感じなんでしょうか?
「でも、たまには休憩も必要だし、今日はゆっくりしてればいいわよ」
「ええ。明日からのお仕事に備えて、今日はゆっくり休んでね」
「……うん」
少しだけ微笑んで、三人にそう返す。
「それじゃ、帰ったらマッサージでもしてあげようかな」
「あ、あたしも手伝うー」
「私は軽食でも作ろっと」
どうやら、私を気遣ってくれてるみたいですね。
ありがたいことです。
持つべきものは良き友、ですね。
「マッサージしてくれるのはありがたいけど、変なことだけはしないでよ?」
「しないしない」
「ねぇ、ちょーっとだけ、ダメ?」
「ダメ」
「ちぇー」
ジュリはいいとしても……リマには気をつけないといけませんね。
何されるかわかったものじゃないし。
ま、そこまでひどいことはされないでしょうけど。
……多分。
あれから数週間が過ぎて……
私は仕事の出来るパーフェクトメイドと化していました。
メイド仲間からも「シエラはすごいねー」なんて言われるようになったんですよ。
ここまで出来るようになったのは三人の指導のおかげですね。
三人に感謝しなくちゃ。
「見違えるように成長したわねー」
仕事の途中、ジュリにそう言われました。
「ここまで来れたのもあなたたちのおかげよ。ありがとね」
「いやいや、あなたの飲み込みの良さに驚くばかりよ。ねぇ、二人とも?」
「うん。あなたの飲み込みの良さには正直びっくりしたわよ。
いやー、教えがいがあったわ」
「シエラはすごいよねぇ。あたしたちが教えたことをスポンジみたいに吸収しちゃうんだから」
これだけ褒められると嬉しくなっちゃいますね。
自然に笑みがこぼれちゃいます。
「これで咲夜さんも振り向いてくれること間違いなし!」
あ……でもそれだけは自信ないんだよなぁ。
「それはわからないんだよね……流石にそれだけは自信が無いよ」
「何言ってんの!」
そうポツリと呟くと、ジュリに怒鳴られてしまいました。
「あなたが努力してるのは皆知ってる!
だから咲夜さんもきっとあなたのことを見てくれるわよ!
自分に自信を持ちなさい!」
ジュリの今の言葉で目が覚めた。
そうだ。自信を持たなきゃ!
「ごめん、私弱気だったよ。ジュリに言われて目が覚めた。
うん、私、前向きに考えることにする!」
「だったらよし! さ、まだ仕事は残ってるわよ!
4人で力を合わせて頑張りましょ!」
うん、残りの仕事を急いで片付けなきゃ!
よーし、頑張ろう!
そしてこの時の私は気づいていなかったのでした。
後ろから咲夜さんが私たちの様子を見ていたことを。
それから更に数日が経ったある日の夜。
「シエラー、まだ起きてるー?」
「まだ起きてるけど、どうかした?」
私とシャーリー、リマでトランプをしていると、ジュリが部屋に戻ってきました。
「トイレに行った帰りに咲夜さんに声を掛けられてね。
『シエラを呼んできて欲しい』って言われたのよ」
え? 咲夜さんが私を呼んでるの?
何か用かな?
「何か用があるみたいだったけど……
まぁ、何にせよ早く行ったほうがいいんじゃないかな」
「うん、わかった。それじゃ、私は抜けるよ。ごめんね」
トランプを中断して、咲夜さんの部屋に向かうことにしましょう。
うーん、それにしても用事って何だろう?
叱られるってことは流石に無いだろうけど。
「あのー、シエラです」
数分後、咲夜さんの部屋のドアを叩く私が居ました。
「あ、来たわね。入ってちょうだい」
「はい、失礼します」
部屋に入ると、咲夜さんが椅子に腰掛けながらこっちを見ていました。
その顔には微笑が。
「何か御用でしょうか?」
「特に用事はないわ」
はい? 用事はない?
どういうことなんでしょうか。
「ただ、あなたにご褒美をあげようと思ってね」
「ご褒美、ですか?」
「ええ。最近特に頑張ってるみたいだからね」
咲夜さんは静かに微笑んでいます。
えと、ご褒美って一体……
「影からしっかり見せてもらったわよ、あなたの頑張り。
よく頑張ったわね。
みんなから最近あなたが頑張ってるってよく聞いたりもしたわ」
「そ、そんな……私なんてまだまだですよ……」
「謙遜しなくていいわ。皆、あなたの頑張りを認めてるんだから」
咲夜さんに改めて言われると照れますね……えへへ。
「さ、ご褒美は何がいい?
何でもいいわよ。まぁ、物によっては出来ないのもあるでしょうけど」
えと、それじゃ何にしようかな。
そして、少し考えてから私はこう言いました。
一種の賭けでもあるけど……
「それじゃあ、今日だけでいいから……私と一緒に寝てもらえませんか?」
「へっ? あなたがそれでいいなら別にいいけど……」
やったー! たった一日でもいいから、一緒に寝てみたかったんですよね。
それにしてもこんなに呆気なく許してくれるなんて意外です。
「それはダメ」なんて断られると思っていたのに。
「そ、それじゃあ、準備をしてくるので、少し待っててもらえませんか?
着替えとか取って来たいので」
「え、ええ。わかった、待っておくわ」
「それでは失礼します!」
バタンと扉を閉めてから、ゆっくり深呼吸。
ふぅ、やっと落ち着いた。
さーて、急いで準備しなきゃ!
「ただいま!」
「あ、お帰りー。何だった?」
部屋に帰ると、三人はトランプをしていました。
私が抜けたところにジュリが入ったみたいですね。
「えとね! 咲夜さんが私の頑張りに対して、ご褒美くれるって!」
「おぉ! 良かったじゃん!」
「おめでとう!」
「咲夜さんはしっかり見てたんだねー!」
皆はトランプをしていた手を止めて、私を祝ってくれました。
「で、ご褒美って何?」
「何が欲しいかって聞かれたからその……
一晩でいいから一緒に寝て欲しいって言っちゃった……」
「おおおおお!」
赤くなりながらそう言うと、三人がどよめきました。
「シエラってば大胆ねー!」
「で、今から行くの!?」
「あ、うん。準備のために戻ってきたところだけど……」
「さっすがー! 頑張ってね!」
えと、何をどう頑張ればいいんでしょうか?
……咲夜さんと仲良くなれるように頑張れってこと?
と、とりあえず着替えをまとめないと。
「それじゃ、私は行ってくるね」
着替えといってもほんのちょっとしかないから、準備は早く終わりますけどね。
というわけで準備完了。
「行ってらっしゃい。帰ってきたらどうだったか感想聞かせてねー」
「あ、うん……わかった。それじゃあね」
「行ってらっしゃいー」
みんなに見送られながら、私は部屋を後にします。
さて、これからどうなることやら……
うぅ、ドキドキしてきましたよ。
「ただいま戻りました」
「あ、お帰りなさい」
咲夜さんの部屋に戻ると、咲夜さんはさっきと変わらない様子で待っていました。
「えと、本当にご褒美がこんなのでいいのかしら?」
「ええ。私にとってはこれ以上にないご褒美ですから」
「そ、そう。それじゃあ、寝る?」
「はい!」
憧れの咲夜さんと二人きりの夜……興奮してきちゃいましたよ。
「さ、いいわよ」
私をベッドの中に招き入れる咲夜さん。
「そ、それじゃあ失礼します……」
「どうぞ」
それではベッドの中に……
布団は暖かくなかったけど、すぐ横にいる咲夜さんの暖かさが伝わってきます。
「咲夜さんとこうやって一緒に寝れるなんて幸せですー……」
「喜んでくれるのなら、こちらとしても嬉しいわね」
この機会に、私の思いを伝えようかな。
でも恥ずかしいよ……
いや、恥ずかしがってないで思いをしっかり伝えないと!
シエラ、勇気を出して!
自分に活を入れ、咲夜さんに向かって思いを口にすることにしました。
ふぅ、一呼吸置いて……よし、今よ!
「あの、咲夜さん……笑わないで、聞いてもらえますか?」
「ん、どうしたの?」
「咲夜さん、私、ずっと、咲夜さんのことが……」
「私のことが?」
「好き、でした……」
い、言っちゃったよ。
ついに咲夜さんに好きって言っちゃったよ。
心臓がドキドキ言ってるのがはっきり分かります。
か、顔が熱くなってきた……
「えっと、それって冗談抜きで?」
「ええ、冗談抜きで、です」
咲夜さんの問いに、ゆっくりと大きく頷きました。
ど、どう答えてくれるかな……
「そう……好きって言ってくれて嬉しいわ、シエラ。
私もあなたのことが大好きよ」
そう言いながら、咲夜さんは私の体を優しく抱きしめてくれました。
えと、これは……両想いってことでいいんですか?
「ここに来た時は右も左も分からないって感じだったあなた……
でも今は見違えるように成長したわね。お疲れ様」
耳元でそうささやきながら、頭を撫でてくれました。
その優しさに涙が滲んできちゃいましたよ……
「あれ、何で泣いてるの? もしかして嫌だった?」
「い、いや、違います……
咲夜さんの優しさに感動しちゃっただけです」
目を擦りながら何とか笑うと、更に強く抱きしめられちゃいました。
「ふふ、ありがと。
ああもう、可愛いわねシエラは! よしよし……」
「ふにゅう……」
一緒に頭も撫でられてしまいました。
でも悪い気は、しませんね。
むしろ心地いいです。
「そういえば……咲夜さんは何で私なんかのことを好きに?」
「そりゃ、可愛いから」
うわ、即答ですか。
そ、そんなに可愛いかなぁ?
「それに頑張ってる姿もよく見かけたしね。
ドジをしながらも頑張ってるあなたは輝いて見えてたわよ?」
「あ、ありがとうございます……そこまで言われると嬉しくなっちゃいますよ」
「それじゃ、更にご褒美をあげましょうか。みんなには内緒よ?」
「へっ? わ、わかりました……」
みんなには内緒って、何をするつもりなんでしょうか?
「さ、目を閉じて」
「は、はい」
目を閉じてしばらくすると……唇に柔らかな感覚が。
あれ、これってもしかして!?
少しだけ目を開けると、咲夜さんが私に口付けをしているのがはっきりと見えました。
「にゃあっ!?」
びっくりして、そんな声が出ちゃいました。
声というか、もはや音?
「ん、こら、暴れないの! 大人しくしてなさい!」
「にゃ、にゃあ……」
うぅ、驚きすぎて一喝されちゃいました。
「さ、もう一度」
「うにゃ……」
深呼吸してから、咲夜さんに全てを委ねること数分。
やっと咲夜さんとの口付けが終わりました。
まだ唇に咲夜さんの唇の触感が残ってるよ……
少し唇を舐めてみると、僅かに甘い味がしました。
これが咲夜さんの味、でしょうか。
「それにしてもシエラは猫みたいねぇ。
基本的に大人しいし、よく『にゃあ』なんて猫みたいなことを言うし」
「あ、それよく言われるんですよ。
『あなたって猫みたいだよね』なんて。
『にゃあ』って言うのは悪い癖だと思うんですけど……」
「うーん、悪くは無いと思うわよ?」
「そ、そうですか?」
「可愛いじゃん」
「に、にゃ……」
か、可愛い、ですか……
そうなのかな?
「ま、その癖は直さないでもいいと思うわよ。可愛いし」
「は、はぁ……咲夜さんがそう言うなら……」
でも言われてみればこの口癖を「可愛い」って言ってくれる人は多かったですね。
みんながそう思うならそうなんだろうな。
「それじゃ、もう遅いし寝ましょ。
ほら、もっと近くに寄って」
「は、はい!」
言われたとおりに、体を咲夜さんのほうに寄せることにします。
あ、すごくあったかい……
「こうしたほうがあったかいでしょ?
それじゃ、おやすみ。また明日からも頑張ってね」
「はい! 頑張ります!」
「あと、これからも私の部屋に遊びに来ていいから。
たまには遊びに来なさいよ?」
「え、いいんですか?」
「もちろんよ」
「わかりました! 絶対に遊びに行きます!」
「絶対だからね? それじゃあ、また明日!」
「お休みなさいませ、咲夜さん!」
最後にお休みのキスをしてから、私たちは寝ることにしました。
ふふ、明日からの生活が楽しみです。
こうやって咲夜さんと親密な仲になることができたんですからね。
そしてあの夜から数週間が経った紅魔館。
咲夜さんと寝た次の日は大変でしたよ。
部屋に帰ったら三人に色々質問責めにあいましたし。
でも三人は私を祝福してくれましたよ。
「おめでとう!」とか「お幸せにね!」とか。
あれは嬉しかったなぁ……
三人とはこれからもこんな感じに、ずっと仲良くしたいです。
そして私と咲夜さんはというと……
「はい、シエラ、あーん」
「あーん……うーん、美味しいです!」
誰にも見られていないところではこんなことをしていたり。
そうそう、最近は一緒にお風呂に入ったりもしてるんですよ。
最初の方は流石に恥ずかしかったですけどね。
「ねぇ、今度二人きりで遊びにでも行かない?」
「いいですね。どこに行きます?」
「ピクニックもいいけど、温泉もいいなぁ。シエラはどっちがいい?」
「私は咲夜さんと一緒にいれればどこでも大丈夫です!」
「ふふ、うれしいこと言ってくれるじゃない」
「えへへ……」
他人からは「バカップル」とか言われそうですけど、私はとっても幸せです。
もっともーっと、咲夜さんと仲良くなりたいですね。
だから……
「咲夜さん、いつまでも私の側にいてくださいね?」
「当たり前じゃない。ずっとあなたの側にいるわ」
そう言って、ほっぺたに軽くキスをしてくれました。
「にゃっ!」
あまりにも嬉しかったので、ついいつものような声を出してしまいました。
咲夜さんが可愛いと言ってくれた、猫みたいな声を。
これで私と咲夜さんのお話は終わりです。
え? 今の私たちはどうなってるのかって?
ふふ、それは秘密……ですっ!
オリキャラたちがいきいきしててよかったです。
そして棘もナイフも無いメイド長素晴らしいィ・・・
妖精メイドさんたちの会話で、中学時代の修学旅行を思い出しました。
咲夜さんからは振られてしまうかと思っていたので、上手くいって吃驚。
スピンオフでもシリーズ化でも、楽しみにしております。
そして、皆様が今回の物語を楽しんでいただけたことに対して安堵と喜びを感じています。
修学旅行を思い出したというコメントがありますが・・・ある程度は意識しました。
「修学旅行の夜ってこんなこと話すよねー」などと考えながら書いてましたねw
そしてスピンオフ・シリーズ化についてですが、
近いうちにまた続編を書きたいと思っているので、その時はまたよろしくお願いします。
最後になりましたが、コメント・評価ありがとうございました。