Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷霊夢騙し大会 一話

2011/07/06 00:05:51
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■魔理沙■



 私はいつものように博麗神社の縁側で、霊夢と並んで座っている。

お茶を一口。やっぱり霊夢の淹れるお茶はうまい、自然と顔がにやける。

そんな私と違い、霊夢は雑談してるときも、ただボーっとしてるときも

こんなにうまいお茶を飲むときだって無表情だ。

だから私は霊夢が何を考えているのか分からない。

私の隣で、黙って庭を眺めている霊夢の目を、私はじっと見つめる。

目は口以上にものを言うらしいが、霊夢は顔と同じく目も無表情だ

やっぱり霊夢の考えていることは分からない。

この表情、私のずっと憧れてきた表情。

今まで色々な異変が起きた。その中でどんなに危険な状況にあっても

揺らがなかったこの表情。そしてその表情と同じく揺らがない強さ。

私はいつのまにかこの表情に惹かれていた…

 突然霊夢は、はぁ…と声の混ざったため息を吐いた。

何か悩みでもあるのだろうか?そういえばさっきからずっと黙ったままだ。

しかし、ため息は出ても、表情はいつもの霊夢。無表情だ。



「何?」



 急に話しかけられた。びっくりして少し体が跳ねた。

霊夢は庭を見つめたままだ、首も視線も動かない。ただ口だけが動く。



「さっきから私をじっと見てる」



 やばい。霊夢の顔に見とれすぎていた。そりゃあ、自分の顔をずっと

見つめ続ける奴が居たら気味悪がられるだろう。私は恥ずかしさで

顔が熱くなるのを感じた。きっと顔面は真っ赤だろう。

今だけは、霊夢にはこちらを見ないでもらいたい。



 …と、思った瞬間霊夢がこっちを向いた。こいつは私の心が読めるのだろうか。

私は霊夢の考えなんて全然分からないのに。



「ねぇ魔理沙…」



 霊夢が私の名を呼んだ。



「一緒にお金儲けしない?」



 一体霊夢は何をするつもりなのか…

ただ一つ分かったことは、霊夢の悩みは経済的に辛いという事だ。



■文■



 私の心は今、躍りに躍っている。

博麗霊夢、霧雨魔理沙、あらゆる異変を解決してきたこの二人の名は

幻想郷に住むほとんどの者が知っているだろう。

そんな有名人二人がイベントを開く。それも優勝者には賞金一億も出るという

ビッグイベントだ。しかし見かけによらず金持ってるなあの巫女…

 私の心を躍らせているのは、そのイベントが開かれるからという

単純な理由ではない。私は何と、そのイベントの審判に任命されたのだ。

私の判断一つで一億の行方が決まる…すばらしいではないか!!

こんな大役を任される日が来るとは夢にも思わなかった。

というわけで私は今、空に舞い上がってしまいそうな気分だ。

実際、今空を飛んでいるわけだが…



■チルノ■



「チルノちゃーん!」

 

 大ちゃんがあたいの名を叫びながらこっちに走ってくる。

なんだろう?なんだろう?



「これ一緒に出ようよ!」



 大ちゃんが紙を見せてくれた。色々絵とか字とかが書いてある。

その紙の中で一番おっきい字をあたいは読んでみた。



「げんそうきょう…れいむ…………?」



 そこまでは読めた。霊夢と幻想郷の漢字は

前に大ちゃんから教えてもらったからわかるけど、その先の漢字が読めない。

“騙し”って何?これあたい知らない。



「幻想郷霊夢騙し大会だよ!」



 大ちゃんが教えてくれた。さすが大ちゃん!

“げんそうきょうれいむだましたいかい”と読むのか。なるほど。

で、これは何だろうか?最後の二文字が“かい”だから貝の名前かな?これあたい知らない。



「参加者制限無し(妖怪でも人間でも可)参加費用一万円

 大会の内容は霊夢を一番先に騙した人が優勝だって。

 で、参加費用は高いけど優勝者には賞金一億円も出るんだって!

 これすごいよっ!一緒に出ようチルノちゃん!」



 大ちゃんが言ってる事は分からないけど、なんかすごいらしい

これは出ないと駄目だね!何が出るのか分からないけど。



「うん、出る!でもこれ何?」



 大ちゃんにそう聞いたら、大ちゃんは詳しく教えてくれた。

なるほど分かった。だが待ってほしい、一つだけ分からない事がある。

一億ってなに?これあたい知らない。



■魔理沙■



 いよいよ今日だ、『幻想郷霊夢騙し大会』。大会の開催期間は3日間

参加者は人間が約300人、人外が約500匹。合計約800人で集まった金は800万か…

しかしこの中の一人に一億払うことになるから、結局損するのは私たち。

…と、普通思うだろう。だが必ずそうなるとは限らない。

 ゲームのルールは一番最初に霊夢を騙した者が勝つ事。

参加者は誰よりも早く霊夢に嘘を仕掛けようと考えてる事だろう。

つまり参加者にとっての敵は、他の参加者達と思っている。

だが、実際は違う。本当の敵は、霊夢だ。この戦いは霊夢と参加者達との戦いだ。

 こちらに入ってきた額は800万、そこから一億引けば損失は9000万以上だ…

しかし、もしこの参加者の中で誰も霊夢を騙せる者がいなかったら?

そうなればこの金は私たちが総取り、結果この大会で益を得るのは私たちだ。

しかし負ければ9000の損…いや、そもそも一億なんて賞金すら霊夢には

用意出来ないはずだ。そんな額を貸してくれる所もおそらく幻想卿には無い…

霊夢は賞金を用意していないという考えが正しいだろう。

つまり霊夢は、確実に勝つつもりだ。

この戦いで800人の嘘を見抜き、金を得る。

当然簡単なことではないだろう、普通にやれば…の話だが。



■文■



 さあ、ついに始まる。私の目の前には、大勢の参加者が並んでいる。

よく見れば知っている顔もちらほら見える。私は大きく息を吸い込んだ。



「みなさんようこそ!!『幻想郷霊夢騙し大会』へ!!

 今回審判を務める射命丸文です!!

 賞金一億の行方を決める今回の大イベント

 私、抜かりない審査を行う事を約束します!!

 さぁ!一億という大金は一体誰の手に渡るのか!?

 それを決めるための、今大会のルールを説明します!

 あちらをごらん下さい!」



 ビシッと音が鳴るのではないかというほどの勢いで

私は会場にたてられているテントを指差した。



「今あのテントの中には、皆さんご存知大会の主催者、博麗霊夢&霧雨魔理沙さんが

 待機しております!皆さんには一人づつテントの中で霊夢さんと

 面会をしてもらいます。そこで霊夢さんに嘘をついて騙してください!

 制限時間は3分!騙す側がテントから出るまで霊夢さんを騙し通すことができれば

 その方が優勝です!

 ただし、たとえ騙し通せたとしてもその嘘をはっきりと証明できなければ

 意味がありません!

 例えば、『わたしは今日の朝にパンを食べた』こういった嘘をついたとしても

 本当にパンを食べなかったのか、その証明ができなければならないのです。

 そして、テントに入るタイミングは自由ですが、テントに入る回数は一人二回までと

 させていただきます。

 そして、大会終了の時刻は今から8時間後の午後7時です。その時刻になったら今日の

 大会は終了になります。続けて3日間行うので、今日中にテントに入れなかった人は

 明日頑張ってください!」



 さっきまでやる気で溢れていた参加者の顔が、今では不安そうな顔に

変わっていた。当然だろう、嘘が許されるのはわずか3分、しかも証明できる

嘘にかぎられる。そもそも、これから嘘をつかれると始めから知っている霊夢を

騙すことはかなり難しい。参加者のやる気が失せるのも納得がいく。

しかし私の次の言葉で、そのやる気は再び戻るだろう。



「霊夢さんが参加者の嘘を指摘すれば、それは霊夢さんに嘘を見破られた事になります

 しかし、もし嘘以外の事を霊夢さんが嘘だと指摘してしまった場合、

 その時点で参加者の勝利となります!」



 会場がざわつきはじめた。このルールは霊夢をかなり不利にするルールだ。

このルールにより霊夢は、参加者の発言が正しいか、嘘か、性格に見分けなくては

ならない。もし、判断を誤れば即、霊夢の負けだ。

 私自身、なぜこのようなルールを霊夢が決めたのかは分からないが…

とにかく私はやるべき事をやるだけ。私は手を上げて叫んだ。



「それでは『幻想郷霊夢騙し大会』…スタート!!』



■大妖精■



 私の横で、チルノちゃんが走り出す。

私は慌ててチルノちゃんの腕をつかんだ。



「うわっ… 大ちゃん?」



「待って、今は行かないほうがいい」



「どうして!?一番早いのが優勝でしょ!?

 みんな行ってるよ!はやくしないと誰かが…」



「駄目っ!今行ったら…」



 今行ったら間違いなく霊夢に負ける。

そもそもこのルール、霊夢があまりにも不利すぎる。

そしてこの参加人数…この人数からそれぞれ一万取っても

一億には届かない。ここは先走らないで様子を見るのが得策。



「大丈夫、私の言うとおりにして」



 その言葉に、チルノちゃんはこくりとうなずいた。

でも少し不機嫌な顔をしている。無理も無いか、もう皆

テントの前で行列を作っている。チルノちゃんから見れば私たちはとり残された

存在だ。でも、これでいい。この大会は、何か怪しい!



■アリス■



 ウィイイイイイイイイイイイイイイヤッホォオオオオウ!!!



 そう叫びたい気分だ!なんと取ったのだ!一位を!

ゲームが開始してすぐに、参加者はいっせいにテントに向かって走り出した。

そのレースで、私は一番になった!

 この大会のルールはだいたい分かった。明らかに霊夢に不利なルール…

悪いけど一億は貰ったわよ、霊夢!



 私は霊夢の前に腰掛けた。その様子を文が確認すると、「開始」といって

ストップウォッチを動かした。

 私は霊夢に向かって言った。



「私ね、昨日はパチュリーの図書館に本を読みに行ったの

もちろん手ぶらじゃないわ、家にあったスイカを持っていってあげたのよ

それでパチュリーと少し話をしてから帰ったわ」



 霊夢はスイカを持っていったという所を嘘だと思うはず。

なぜなら今はスイカのシーズンじゃないから。きっと霊夢は

これに気が付いて嘘だと思うはずだわ。でも実はスイカはミスリード

実際は本当にスイカを持っていった。魔法で強制的に成長させたスイカを。

本当の嘘はパチュリーと話をした事、これが嘘よ。

あの時偶然にもパチュリーは風邪で寝込んでて、話したのは小悪魔とだけ

スイカを渡した相手も小悪魔なのよ。さて、この嘘見破れるかな?



「終了」



 文が言った。よし、あとはテントを出れば私の勝ち。



「嘘ね」



 霊夢が言った。そらきた!さあ、スイカの事を指摘しなさい!



「パチュリーと話したって、あれ嘘でしょ?」



 !!?
誰か俺を止めてくれ
ゴルゴンの首
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コメント



0.510簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
続き…超期待してます!
5.無評価名前が無い程度の能力削除
>幻想卿に住むほとんどの者が知っているだろう。
9.60名前が無い程度の能力削除
オチが読めた
10.80名前が無い程度の能力削除
なにがなんでも続きを書いてください。
17.80名前が無い程度の能力削除
期待せざるをえないな……久々に続きが気になる話だぜ……