Coolier - 新生・東方創想話

もこたんのころし方

2011/07/01 20:19:58
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「というわけで、妹紅を捕まえてきたわよ」

 輝夜が妹紅を縄でふん縛ってやってきたのは、珍しくも博麗神社だった。
 そこに居合わせた人物は二人。一人はこの神社の巫女である博麗霊夢。もう一人はたまたま神社に遊びに来ていたアリス・マーガトロイドだ。アリスはこの神社に足を運ぶこともあまりないので、珍しいと言えば珍しい組み合わせだった。

「で、どういうことよ」

 面倒ごとを嫌う霊夢は、犯罪臭漂うこの組み合わせを嫌そうな表情で出迎えた。
 猿ぐつわを噛まされているせいで妹紅は喋ることが出来ないが、憤った様子で何かを叫んでいる。縄を焼き切ってしまえばいいのに……とも思ったが、おそらく輝夜の能力か月の技術とかでそれを出来ないよう加工されているのだろう。

「言ったでしょ? 妹紅を殺すにはどうしたらいいかって聞きに来たのよ。この子ったら切っても焼いても薬を盛っても断崖絶壁から突き落としてもしなないんだもの。で、かの高名な博麗の巫女なら良い方法を知ってるんじゃないかと思って来たわけ」

 予想を上回る厄介ごとに、霊夢はあからさまなため息をついた。

「あんたら、よっぽど退治されたいみたいね……」
「『退治』じゃなくて『殺害』よ。もう二度と生き返らないよう、徹底的にね」
「ふごー! ふごー!」

 妹紅は何かを抗議しているようだが、残念ながら言葉にはならなかった。

「いいんじゃない? 手伝ってあげても」

 しかし、そんな輝夜の妄言に賛同したのはアリスだった。

「ちょっとアリス、適当なこと言わないでよ」
「だってこいつら、どうせ私達が断っても他の所に行くだけでしょ? だったらここで手を尽くしてあげた方が異変が拡大しなくて済むじゃない」

 アリスはそう言いながら、囚われの身である妹紅を舐めるように観察し始めた。

「……それに、ちょっと興味があったのよね。死んでも死んでも巡り廻り還ってくる蓬莱人形。人形遣いとしてどれだけ操れるものなのかって」

 とても可笑しげに微笑んで妹紅を見つめるアリスの瞳は、まるで玩具に興味を持った子供のように純真で薄暗かった。

「あら、趣味が合うじゃない」
「貴女に言われてもいい気はしないけどね」

 ふふっ、と微笑み合う二人。その二人の面立ちに、妹紅は僅かに怯え、霊夢はあきれかえっていた。

「結局あんたがやりたいだけじゃない……で、言うからにはアリスには何か案でもあるの?」
「ふご! ふごごっ?」

 この時の妹紅の叫びは口が塞がっていても伝わった気がした――おそらく霊夢までやる気になってしまった事への驚愕の叫び――が、三人ともガン無視した。

「ええ、もちろん。……要するに、妹紅を本物の人形にしてしまえばいいのよ」
「本物の人形?」

 二人同時に声をあげた。一方でずっと何かを叫んでいる一人もいるのだが、最早蚊帳の外である。

「ええ。これを使うの」

 そう言って鞄の中から取りだしたのは、普段アリスが作っている人形とはサイズの異なる実寸大の手だった。

「ただの……人形の手よねぇ」

 精巧に作られたそれはまるで本物のようなリアリティがあったが、よく見てみると作り物であることが分かる。

「そうよ。まず彼女の手を切り落とすの」

 すぱっとまな板の上の大根を切り分けるようなジェスチャーを手で表現する。生々しい仕草に思わず妹紅は小さな悲鳴をあげた。

「で、切った手が再生しないうちにこの義手を埋め込んじゃうわけ。手が死んでも別の物に変わっちゃったら生き返ることなんて出来ないでしょ?……それを繰り返して、徐々に人形の部分を増やしていくわけ。身体と人形の境界の部分がじくじくと痛むかもしれないけど……まあ死んじゃうんだったら関係ないものね。それで最後に頭と心臓まで人形にすげ替えていけば、本物の蓬莱人形の完成ってわけ。妹紅っていう存在は生きてるかもしれないけど、動くことも考えることもできない人形になるんだから、死んでるも同然ってわけ」

 得意げに解説するアリスを、霊夢はうげーといった顔で見つめ、妹紅はこれから自分の身に起こるかもしれない災厄にがたがたと震えていた。

「あんた……やっぱりいい性格してるわね……」

 霊夢のどん引きじみた言葉に、人形遣いとしてのアリスは「褒め言葉として受け取っておくわ」と満更でもない様子で答えた。
 だが一方の輝夜は何やら思案顔を作って考えており、やがて諦めたように首を振った。

「悪いけど、没ね」
「えっ……どうしてよ?」

 自分のセンスを否定されたと思ったアリスは抗議しようとしたが、輝夜は別の理由で説明した。

「面白そうな案だけど、たぶん無理よ。髪の毛一本でも残ってれば蘇る蓬莱の薬だもの。たぶん人形の体積がもとの肉体の量を超えちゃえば別の所から生き返っちゃうわ。……苦しませるのが目的なら別だけどね」

 つまり当初の目的からずれてしまう、というわけだ。

「うーん、いい考えだと思ったんだけどなぁ……」
「というかあんた発想が暗いのよ……そんな細かいことちまちまやってたらこっちまで気が滅入っちゃうじゃない」

 霊夢のはっきりとした物言いに、少なからずむっとするアリス。

「じゃあ霊夢はどうするって言うのよ」
「そんなの簡単じゃない。このままにしておけばいいのよ」
「このままって……」

 一瞬、妹紅は自分をいたわってくれる存在がいることに瞳を輝かせ霊夢に一途な眼差しを向けた……が。

「このままにしておけば何も食べられなくって勝手に飢え死にするでしょ?」

 妹紅の瞳からハイライトが消えた。

「蓬莱人といっても人間なんだから、食べなきゃ死ぬんでしょ。水分も与えない状態にしておけば生き返ってもまたすぐに死ぬだろうし、ミイラみたいになればほとんど死んでる状態だし。その間の扱いに困ったら大きな瓶にでも入れて土の中に埋めとけば臭いとかも気にならないし、後処理も楽でしょ?」
「なるほど……合理的かもね」

 ふむふむと一応の納得を見せたアリスと、やっぱり顔面蒼白でガタガタ震えている妹紅。
 だが肝心の輝夜は、やはりしっくりこない様子で首を傾げていた。

「うーん、でもそれだと『死んだ』って感じで『殺した』って感じにならないかしら」
「そんな所にまでこだわるか……」

 妹紅のころし方のあまりの徹底ぶりに、霊夢は呆れたように息を吐いた。

「それに自分の血や肉はいくらでも作り出せるから、いざとなったら自分の身体を食べて生きながらえちゃうかも……うーん、やっぱりそれも駄目ね」
「そもそも、蓬莱人を殺すだなんてやっぱり無茶よ。幻想郷にまでそんな無理難題を持ち込まれても誰も答えてなんかくれないわよ」
「あら、だから頼んでるんじゃない。『命令』じゃなくて『お願い』としてね」
「一度でもあんたがお願いするような態度をとったか!」

 輝夜のあまりに横柄な態度に、ついに霊夢がぶち切れそうになったその時。

「お、お前らいい加減にしろ!」

 遂に、と言うか、やっとと言うか、とうとう縛られた縄を振りほどいた妹紅が顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。

「あら妹紅、いたの?」
「いたのじゃないよ! お前が連れてきたんだろうが!」

 ぜーぜーと息を荒げながら輝夜に恨み言をぶちまける妹紅。

「だいたいアリスと霊夢もだよ! どうして助けようって発想が出てこないんだよ!」
「だってあなたの身体に興味あったし……」
「それ人形としてって意味だろ!」
「いちいち助けるのも面倒くさいじゃない」
「霊夢、お前はもうちょっと人間をいたわる心を取り戻してくれ……」

 この場に味方がいてくれないことに気を落としている妹紅の肩を、ぽんと輝夜が叩いた。

「いいじゃないの。それだけ皆妹紅の事が好きってことなんだから」

 もはや半泣き状態でその手を振り払うと、妹紅は大きな声で。

「うるさい! お前らに好かれるぐらいなら死んだ方がマシだ!」
「あっ」
「あっ」
「あっ」
「えっ」

 この討論の答えを出してしまったのだった。


     ○○○


 永遠亭の中にある、とても贅を凝らして作られた檜の温泉。
 湯気の向こうにうっすらと見えるのは、長い髪を湯で注ぐ輝夜と、バスタオル姿の妹紅だった。

「ほら、妹紅。こっちにいらっしゃい」
「な……や、やだよ! どうして私が輝夜なんかと一緒に風呂に入らなきゃいけないんだよ!」
「どうして、って……私が妹紅のこと好きだからよ」
「こ、答えになってない! わ、私は輝夜のことなんか好きじゃないぞ!」
「いいからいいから。髪洗ってあげるわね」
「嫌だって言ってるだろ……うわ、ちょ、勝手にシャンプーつけるな!」
「普段から手入れしてないから枝毛出来ちゃってるじゃない。……ほら、目閉じなさい」
「そんなごしごしやられても気持ちよくなんか……や、やめろぉ……へ、ヘンな所触るなって……」
「ふふっ。でも妹紅の肌って本当綺麗よね。すべすべしてて、赤ちゃんみたいで……ちょっと舐めてみていい?」
「駄目に決まって……ひゃっ、そ、そんなトコ……」
「やっぱり女の子なんだから、身体は綺麗にしておかないと。身体の隅々まで……ね」
「も、もう好きにしてくれぇー……」
 



「結局、何がしたかったのよあの二人」
「さあ。見せびらかしたかっただけなんじゃないの」

 二人の行う穏やかな殺し合いを、湯船の中でアリスと霊夢は呆れたように見つめていた。
もこたんと輝夜たちの何気ない日常を書いてみました。

特に意味もオチもない話ですが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
桜井土星
http://helgaprison.zatunen.com/
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コメント



0.2400点簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力 削除
良い。
微かに霊アリなおもなお良い。
5.100点シンフー 削除
もこたんかわいそう、と半泣きで作品を読んでいたら、いつの間にかほのぼのてるもこを読んでいた。
テンションがやばいことになった。
6.20点名前が無い程度の能力 削除
えーと?一気に急展開になりすぎて正直付いていけないんですが…
最後の方が無理やりすぎる…
これは自分の勝手な予測ですが、作者様自身も自分で何がしたいのか分からなくなっているのではありませんか?
それでこんな急展開な結末になったのでは?
できればもうちょっと構想を練って欲しかったです
8.100点名前が無い程度の能力 削除
心を殺す
9.無評価名前が無い程度の能力 削除
アルパカ
16.80点名前が無い程度の能力 削除
ひゃっはー
17.100点名前が無い程度の能力 削除
のろけ乙
25.90点名前が無い程度の能力 削除
スタート時点で結末がなんとなく分かっちゃうのが残念です。
ちょっと違いましたけど、最終的には褒め殺しとかそっち方面になるんだろうなぁ、と。
多分タイトルがやわらかいせいだと思うので、ここは思い切って「もこたんの殺し方」にしちゃっても良いんじゃないかなぁと思います。

それ以外は楽しく拝見させていただきました。
26.100点名前が無い程度の能力 削除
もこたんころす
37.100点名前が無い程度の能力 削除
リア充ェ…
44.10点名前が無い程度の能力 削除
最後が唐突すぎ。いきなりカプ話になるのが意味不明です。
58.70点ヤマカン 削除
ああサクッと読めてそこそこ楽しかったな
さんくす
59.100点名前が無い程度の能力 削除
楽しめた
60.100点名前が無い程度の能力 削除
おもしろかったw
62.無評価ひまこ 削除
優良作品
66.100点名前が無い程度の能力 削除
面白かったよ。
69.90点名前が無い程度の能力 削除
この二人はいろいろといじれるな
しかしアリスが黒い…
75.100点名前が無い程度の能力 削除
死んだ方がマシというありがちなセリフからこのラブラブちゅっちゅ……たまらん!