Coolier - 新生・東方創想話

「東方恥晒し」

2011/06/21 14:17:22
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 博麗霊夢の朝は早い。
 というのも、最近天狗が持ってくる「文々。新聞」がおもしろいからである。この春から連載されている小説、「私は巫女である」にすっかり心を奪われてしまっていた。
 「私は巫女である」は、「妖怪を退治しに来た巫女が妖怪の正体をじろじろ観察しつつ善か悪かを見極める」という単純なプロットに沿った、いわば妖怪を紹介する物語である。一話目は天狗の紹介、二話目は河童の紹介と、山に近いところからどんどん紹介されていき、今週からは地底に下りて、もっとおどろおどろしい妖怪たちを特集するらしい。
 いつも異変のたびにちょっと話してはやっつけている霊夢は、妖怪が普段何をしているのかさっぱり知らない。特に知りたいとも思わなかったが、向こうからおもしろおかしく教えてくれる分には話が別である。
 縁側にきちんと畳まれて置いてある最新号を、女の子座りしながらパラパラめくる。
「ふうん、あの角が生えた鬼、こうやって服を着てたのね……。なるほど。おもしろいわねぇ」
「お褒めいただいて光栄です」
 霊夢の背後に柔らかな風が吹く。振り返るまでもない、射命丸文だった。新聞を売りつけるのを趣味にしている天狗で、文字が通じる生き物なら誰でも顧客にしたいそうである。
 儲けるためではなく、種族を越えた生命の連帯こそが幻想郷を次のステージへ導くのだといういささか抽象的な考えから、相互理解を深めようとしているらしい。その割にはくだらないゴシップで紙面が埋めつくされているのだが、このほどようやく建前通りのまともな記事が載ったのである。
「ええ! 私の記事は毎回まともじゃないですか」
 と文は不満げにそう言って、霊夢の背中にだらりともたれかかった。あまり嗅いだことのない、不思議な香水の匂いがした。あえて言うなら夜のすすき野原に花の雨を散らしたような、爽やかな匂いだ。
「相変わらずあなたの比喩はさっぱりわかりませんね、霊夢さん」
「いいのよ。わからない言葉の方が、うんちくがあるでしょう」
「がんちく、ですか」
「そうとも言うわ」
 霊夢は文のなれなれしさを咎めようとはせず、むしろだらりと体重をもたせかけた。文のレズっ気は今に始まったことではない。進歩的な天狗は、言葉が通じさえすれば誰にでも愛を注ぐのだそうだ。性愛も注ぐあたりが妖怪である。
「で、今日はどうしたの?」
「実は霊夢さんにお願いがあって来たんです」
「お願い?」
「はい」
 文は耳元でささやくようにして言った。
「ネタ切れなんです」
「うん?」
「ネタ切れなんですよぉ」
「……ふん」
 ――聞くに。
 「私は巫女である」の原作者は山に住む天狗らしい。天狗のくせに出不精で、山に住んでる妖怪のことならともかく、山に住まない他の地域のことはさっぱりわからないのだそうだ。
「だからネタ切れで、このままじゃ連載が危うくなってしまうんです」
「あなたが教えてあげればいいじゃないの」と霊夢は首をかしげた。
「それに、この号に載ってる、体操着着た鬼は山にいないでしょう。理屈に合わないじゃないの」
「彼女はたまたま天狗の里に酒を飲みに来ていたんです」
「……服を着替えてるところ隠し撮りしたとか?」
「それは聞かないお約束です」と文はにっこり笑った。
「私は自分のネタを人にあげるほどお人好しではないですし、ここは作品の元ネタである霊夢さんに人肌脱いでもらいたいと思うのです」
「一肌でしょ。人肌脱いだらすごく気持ち悪いことになるわよ。……で、何をしろって?」
「ですから、妖怪退治です」と、文はあらかじめ書いてきたらしい説明文を霊夢に見せた。

一、霊夢、妖怪と「負けたら恥ずかしい秘密を一つ語る」という賭けをする。
二、勝負する。
三、恥ずかしい秘密を手に入れる。

「どうです、この完璧な三段論法。どんなあほでも理解できると思いませんか?」
「清々しい慇懃無礼ね。……で、恥ずかしい秘密を手に入れて、それを原作者に横流しするのね」
「はい」
「それを幻想郷中の文字が通じる生き物に晒し上げるのね」
「っはい!」

 霊夢はしばらくぼうっとしてから、言った。
「おもしろい」
「ありがとうございます」

 そうして霊夢と文による「東方恥晒し」が始まった。
 主旨が微妙にずれていることは、誰も気にしなかった。
 
 思いつくままに。
 誰に恥をかかせようか……。
 
 
 
せみだるま
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コメント



0.1220簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
ふむ、まずはめーりんを頼もうか
5.70奇声を発する程度の能力削除
咲夜さんに一票
8.80名前が無い程度の能力削除
これは楽しみだ
11.無評価玖爾削除
終わってねえし!?
SSのネタ構想法をそのままSSにしてしまったような作品ですよね。プロット作成以前の段階のものを投稿してしまったように感じます。
シリーズ化にも連載にも異存はありませんが、せめて一人でも被害者を出してから投稿してほしかった。
12.80名前が無い程度の能力削除
美鈴で頼む
15.80名無し程度の能力削除
霊夢さんノリノリですね
18.80名前が無い程度の能力削除
これは序章でいいのかな?
しかしこの巫女ノリノリである
24.60名前が無い程度の能力削除
めーりんに倍プッシュだ
28.70名前が無い程度の能力削除
>「ええ! 私の記事は毎回まともじゃないですか」
一人称と三人称の使い分けが……プロローグならもっと力を入れるべきでは?