ちゅっ。
重ねられた霊夢の唇は柔らかかった。
瞬間的に私の身体が強張った。……まあ、仕方ない。不意打ちなのだから。ポッキーゲームをしようと言ったらいきなりキスをして来たのだ。
霊夢が身じろぎした。
すると、ふんわりとした優しい香りがした。石鹸の香りだ。この子の髪からだろう。石鹸で洗うとは女の子らしくない。けども……良い香りだった。
そのうち、だんだんと身体の中をくすぐるような仄かな興奮が私の中に生まれて来た。柔らかい唇と霊夢の香りに興奮したのもある
でも一番は、私は大好きな人と唇を重ねていると言う事実にだろう。
未開封のポッキーの袋を握る手に力が籠って、その中でポッキー達が「ポキポキ」と音を立てて折れた。
「ん」
ゆっくりと霊夢の唇が離れていく。その温もりがさぁっと波のように退いて行く。それが名残惜しくって、ぼぅっとした目で彼女の薄紅色の唇を見つめた。
「なに? 」
霊夢はそう言って、飄々とした顔でそんな私を眺めた。……自分からキスして来た癖に。こう言う素っ気なさが、いじらしくてまた好きなんだけども。
その視線に少しドキドキしてしまった。頬とおでこが熱かった。
……なにか言わないと。
口元だけが何とか緩んでくれて、私は笑顔を繕う。
「……驚いちゃったわ」
「そ」
不意打ちのキスをしておいて「そ」。
人をときめかせ、ドキドキさせておいて「そ」。
ちょっとだけムッとしてしまった。
そもそも私はポッキーゲームがしたかったのだ。スイートで甘いキスをしたかったのだ。なのに霊夢がいきなり唇を重ねてそれをさせてくれなかったのだ。なのに「そ」って。酷い。不満だ。せめてキスの後はもっと優しい言葉を掛けて欲しい。笑顔を浮かべて欲しい。甘い台詞が欲しい。
私は口を尖らせた。
「キスをしておいてそれだけ? と言うか、私はポッキーゲームをしたかったのに何で不意打ちするのよ。私は霊夢とあまーい、スイートなキスをしたかったんだけど? 」
まるで撫で撫でされたがってる犬みたい。
でも仕方ない。恋は人を盲目にするだけじゃなくて、我儘にもするのだから。
「どーせ両側からポキポキしてって最後にはキスするだけでしょ? なら最初からキスしてもなんら変わりないわ」
そう言って私に背中を預けて来る霊夢。私はその身体を両手で抱き締めて受け止める。
もう……。ホントにこの子には、ロマンの欠片も、恋人を喜ばせるスキルもない。そう言う子だと知ってても、そこだけは本当にどうにかして欲しい。
ささやかな仕返しにと、右手で霊夢のつるつるとしたをほっぺを摘んでむにむにと指先で引っ張って玩ぶ。
「ロマンが無いわ」
そして不満さをトーンの低い声で表す。
「じれったいの、嫌いなの」
すると霊夢は溜息混じりにそう言った。霊夢の性格がそう言うのを好まないのは私も分かってる。けれど、せめて私のささやかなおねだりくらいには答えて欲しいのだ。
「それは分かってるわよ。……でも」
その時、霊夢は私を見上げた。その瞳を見た時、瞬間的にキスしようとしてるのが分かった。案の定、霊夢は顔を寄せて来る。私はキスをするために、霊夢のほっぺを摘んでいた指を離した。
なのに―――――止まった。
口元から立ち昇る吐息の熱に、背筋がじんじんとした。電流が流れたって感じだろうか。
なのに霊夢はびくともしない。
じゅくり。
いつの間にか、袋の中のポッキーが私の体温に蕩けていた。
もやもやした。
キスするの? しないの? どっちなの?
ふと、霊夢が意地悪く笑った。
―――――ほら、ね。なんだかんだ言っても、私とのキスが欲しいんでしょ?
その瞳が、そう言っている気がした。
……ああ。
そうよ、好きだから。貴女を好きだからね。
「……この意地悪さん」
私は呟いて、自ら唇を重ねた。今度は霊夢も答えてくれて、お互いの口内をまさぐる様な濃厚なキスをした。思考が蕩けて、感覚がじんじんと麻痺した。
悔しいけど、そのキスは嬉しかった。
彼女になら堕されても良いかも。めちゃくちゃに自分を犯されても良いかも。妖怪の賢者としての自身を破壊されても良いかも。
そう思えてしまうほどだった。
妖怪と人間の超えられない種族の差、寿命のことをふと考えてしまってちょっぴりおセンチ
それともかく甘甘なゆかれいむ大変おいしゅうございました
俺もだ、霊夢の飄々とした感じがたまらん
ゆかれいむを甘くするとかえってゆかりがお母さん化してしまうことが多い中、この作品ではむしろゆかりが手玉に取られていてよい。
>>16は評価に値する
紫受けってのも乙だなあ。
えろいな!
>>16
貴様ッ
♭