~まえがき~
このお話はオリキャラが活躍します。
それが好きではない方はブラウザバックをする事をお勧めします、それらを踏まえた上でお読みください。
幻想郷、紅魔陸軍第一広域訓練場、通称グリーンガーデン。
本日、ここでは年に一度の紅魔陸軍と白狼天狗警邏隊の合同訓練が行われていた。
市街戦を主眼に置いたここでは白狼天狗側が守備、紅魔門番隊が攻勢に分かれている。
「……三分後に第一小隊が突撃、第二第三がそれに続く。良いですね?」
紅魔陸軍第総指揮官紅美鈴の言葉に頷く各隊員。
目の前、攻め落とそうとする家屋群には精強を以て知られた白狼天狗の犬走隊が防御陣を敷いている。
「攻撃開始」
「第一小隊、行くぞ」
第一小隊長ハーバート・ランドルマン少尉が先頭で走り出す。
目標は50メートル先のT字路、第一小隊が全員丘から身を出した瞬間
「撃て!」
敵方の号令と共に目標から傲然と銃声が響いた。
筋肉を一時的に硬化させ動きを止める特殊模擬弾が放たれ隊員に突き刺さる。
「敵襲!」
「溝に隠れろ!」
後の続くはずの第二第三は隠れていた丘の横の溝へ入り込み、銃弾から逃れようとする。
第一小隊の隊員達も走りを止め、丘の影へ撤退してきた。
しかし第一は前線に二人の隊員を置き去りにしていた。
「畜生!みんなは何処へ行ったんだ!」
「知りませんよ!」
コンプトン二等兵とタスクマン無線兵である。
二人は納屋の影に隠れ応戦はしているが白狼天狗は愈々彼ら二人に機関銃の照準を合わせ始めていた。
このままでは二人ともやられる。美鈴は溝から飛び出し狂ったように叫んだ。
「出なさい!出るんだ!」
溝から隊員を引っ張り出しながら指揮をする
「第二小隊は左翼から周り機関銃で応戦、第一第三は私に続け!」
美鈴の声が通り始めた時、隊員達も取り直し、孤立した二人を助けるために動き出した。
ここからの行動は迅速を極めた。
「MG42だ!」
叫んだ瞬間、第三小隊のジョージ・マックウェル一等兵は足に被弾し、同行していたシフティ・パワード一等兵はビルの陰に隠れる。
連続しない単発に区切った銃声、狙撃兵だ。
「狙撃兵!左の土倉」
美鈴からの指示を聞き、階段から飛び出し狙いを付け、撃つ。
銃弾は白狼天狗の狙撃兵のわき腹に命中し、白狼天狗は仰向けになり動かなくなった。
次いでシフティは目標の機関銃補佐手に狙いを付け、撃った。
見事に命中し彼は機関銃手から手痛い反撃を喰らったが、幸い一発も貰わずに済んだ。
「タスクマン、援護しろ」
合図をし筋肉硬化剤が充填された特殊手榴弾のピンを抜きながらコンプトンは言った。
「何時でも良いぜコンプトン」
タスクマンの合図を受けコンプトンは機関銃補佐手を失った敵機関銃陣地へ走り寄り目前で手榴弾のセフティ・レバーを外し中に投げ入れる。
『ボーン』と言う腹に響く音を聞きながら薬剤は室内に充満しまともに動ける天狗は無い。
「シフティ!大丈夫?」
美鈴の問いに親指を上げ応えたシフティは駆け寄り美鈴と共の行動に移る。
この間も左翼からの攻勢運動を展開していた第二小隊が全身を開始し、目標し外部への圧迫を開始していた。反攻の開始である。
「各住居、土倉を制圧しろ!二名ずつ!」
指示を聞き飛ぶように走って往く隊員達。
手際良く各家に手榴弾を投げ込み、爆発直後に飛び込み制圧、しかしここでもまた事件が起きた。
潜伏しているであろう住居にハリー・ウェルシュ上等兵とカール・フォン・パウエル伍長が取りついた時だった。ウェルシュは抜いた手榴弾のピンを押し戻しながら家のドアに耳を付ける。
「何してるハリー、何やってんだ」
「ちょっと待て」
そしてウェルシュは手榴弾を投げ込まずにドアを開け破り、中に突入した瞬間、唖然とした。
「チルノちゃん……怖いよぅ」
「大丈夫だよ大ちゃん、あたいがついてるよ」
「お前らここで何してるんだ」
何故か演習場の模擬施設で暮らしていたチルノと大妖精。
二人はそれぞれ抱え、走り出した。
「門番長!この子たちを安全圏へ運び出してきます!」
「なんでチルノちゃんと大妖精ちゃんらがいるの?」
距離は離れる事紅魔館本館、ここではレミリア・スカーレットと射命丸文が茶を飲みながら戦況報告に耳を傾けていた。
「……つまり、出鼻はくじかれたけど持ち直したってことね」
「左様です、お嬢様」
「美鈴さんはやりますねぇ。あ、咲夜さん紅茶お替わり下さい」
聞こえてくる威勢のよい銃声、戦闘は愈々激しさを増す。
咲夜からのお代りの紅茶を一口飲み、文は口を開いた。
「まぁレミリアさん、今年は少々汚い手を使わせて貰いますよ」
「あら、そんな事言うとこっちもやっちゃうわよ?」
両者とも笑ってはいるが腹の奥底にどす黒い何かを仕込んでいるようだ。
そして、一段と大きな砲声が幻想郷の空に響き始める。
戦況は、芳しくない。白狼天狗側において、だが。
最初こそ優位に立てた天狗側だったが指揮官紅美鈴の指揮に敵は次第に調子を戻しつつある。
「……犬走隊長、第四機関銃陣地が落とされました」
「第六第五に続いて第四も………」
頭を撫でつつ地図にバツ印を書き加えた。
鉛筆を咥え、椅子にもたれかかりながら指示を出す。
「本部に訓練弾での砲撃支援を要請して下さい、一気に戦況を変えます」
「はっ!了解です!」
補佐官がその姿を消すと椛は呟いた。
「流石は紅魔全軍に支持されている将官、紅美鈴、か。一筋縄じゃいかないなぁ」
今回の演習ではこの第一広域演習場、グリーンガーデンを守り切らない事には勝利とはならない。
しかしその瞬間、風を斬る音と共に轟音が響き渡り、椛の気を軽くした。
「砲兵の支援砲撃だ」
調子よく攻勢に転じた門番隊にとってこの砲撃はまさに冷水だった。
いち早く敵の砲撃に気付いたのは土倉の屋根に上り狙撃を開始していたフレデリック・マーソン中尉。
「敵が砲撃を始めた!散開しろ!散開!」
砂埃が巻き起こり薬液を飛び散らせ、隊員を宙へ放り上げる。
「退避!退避!」
「負傷者を見捨てるな!誰も残すな」
耐砲撃塹壕へ皆が一斉に飛び込み、止むのを待つが一向にやまない。
「妖怪の山の天狗どもはこの演習で砲弾を使いきるつもりですかね、門番長」
「使い切ってからになったらこっちのものよ、心配する事は無いわ伍長」
しかしこうしていても埒が明かない、美鈴は無線兵に命令して本館からも砲撃支援を要請した。
すると数秒して白狼天狗の陣地に向けて訓練用の模擬弾頭が轟音を上げて着弾し始める。
「敵の砲弾の音は気味悪いのになんで味方の砲弾の音は心強いんでしょうね、門番長」
「さぁ、わからないわねぇ、一等兵」
甘酸っぱい硝煙の匂いと砲煙が辺りを包み込み始め、さながら第一次世界大戦の映画のセットに潜り込んだような気にさせた。
「これで敵の着剣突撃があったら映画のまんまですね、門番長」
「そう、だから今から映画の中に完全に入り込むのよ、准尉」
「…あぁ、成る程」
美鈴や隊員達はライフルに銃剣の替わりのスタンロッドを装着し始める。
目の前は今まさに砲弾が飛び交う戦場。そこに飛び込むなんて狂気の沙汰のように思えた。
皆が準備を終えた頃、俄かに戦場は静けさを取り戻し始めた。双方の砲弾が付き始めている。
そして美鈴の凛とした声が退避している壕に響き渡った。
「一歩目は!」
『立ちあがれ!』
全隊員が唱和と共に立ちあがり
「二歩目は!」
『恐怖を殺してつき進め!』
塹壕から身を乗り出し
「三歩目は!」
『銃剣を敵に突き立てろ!』
「紅き旗の下に!」
『敵を滅せよ!』
紅魔陸軍の総攻撃が開始した。
少なくなってきたとはいえ砲撃は続いている、その中を突撃してくるなんて思ってもいないであろう敵の迎撃は当然無かった、が味方の砲弾の効果範囲に入った隊員は少なからず出る。
意外にもこの紅魔館の突撃を予想していたのは本館の射命丸文だった。
「やっぱり突撃を開始しましたか、うぅん、これじゃあ今年もそちら側ですかねぇ」
「まだ終わっちゃいないわよ、気を抜かない方が良いわよ、文」
そう言うがレミリアの顔は緩み始め、自らの部下達の勝利を疑う顔は無い。
この二人が館で茶を飲んでいる時も、戦場は進んでいる。
総攻撃で泡食った天狗は各々這う這うの体で退却を開始し始め、戦線は崩れ始めていた。
「進め!勝利は目の前だ」
白狼天狗の指令所が置かれている建物につくと、流石にここはそれなりの抵抗が行われている。
犬走椛直属の第九武装警邏隊が頑強なバリケードを築きあげていた。
「機関砲まである、まるで要塞だぜ門番長」
「これを陥落させない限りは終わりません、やりますよ」
「……マジですか?」
「大マジ」
全隊員は身を隠していた遮蔽物を捨て、一斉に走り出した。
そしてバリケードを乗り越え、屋内へ侵入。
「敵が侵入した!応戦しろ」
訓練とはいえ鬼の形相を浮かべた門番隊に白兵戦闘では幻想郷随一と名高い白狼天狗は次第に押されていった。
「敵が引き始めた、押し込むわよ!」
美鈴が電気ショック式の指揮刀を抜き放ち、斬り込んだ。
「突撃!」
バリケードを越えれば後は屋内の掃討戦へと移る。
美鈴は単身で敵方の指揮官、つまりは椛がいる部屋まで強引に押し入った。
部屋のドアを開けるとそこには刀を今まさに取り上げんとする椛。
「……白狼天狗警邏隊、犬走椛さんですね?」
「聞くまででも無いでしょう美鈴さん」
美鈴は折れ曲がり使えなくなった指揮刀を打ち捨て、腰の拳銃に手をかけ構えた。
「いやしかし、紅魔館は強いですねぇ」
「白狼天狗も相当に手ごわい、先程の砲撃支援、貴方方の砲兵の優秀さを痛感しました」
依然として階下では銃声が響き怒号が飛び交っている、がここは茶飲み話でもしているような呑気さであった。
「さて椛さん、この演習を終わらせるには貴方が私を倒すか私が貴方を倒すかしなければなりません、御覚悟を」
言って美鈴は銃を構え、椛の胸に狙いづける。
「美鈴さん、腹ァ、減りましたねぇ」
椛のその一言を最後に、妖怪の山側の指揮所は粉々になった。
それから数時間後の紅魔館。あっけない決着にレミリアと文は驚いていた。
「これは………」
「………引き分けかしら」
モニターに映し出されたのは粉々になった白狼天狗指揮所、とたがいに目を回して倒れている美鈴と椛。
そう、美鈴が銃を撃つより早く、椛が身をかわすより早く、紅魔館が放った砲弾は天狗の指揮所に着弾したのだった。
「でも序盤は椛が貴方がたを止めました、こっちの勝ちですよね?」
「あら?それはないわよ、こっちは途中から盛り返したんだもの」
二人の口論はしだいに熱くなる。当然だろう賭けごとをしていたのだから。
そんな二人を戒めるがごとく咲夜は金が入ったバスケットを持ち上げながら言う。
「まぁまぁお嬢様、記者さん。勝負はドロー、親の総取りですわ」
咲夜に抗議する文とレミリアだが、その後の咲夜の一言を聞くと、先程までの言い争いをぴたりを止めた。
「それならあと腐れないわね、良いんじゃない?文」
「私も同感です、レミリアさん」
この日、紅魔館では演習の無事終了を祝い、打ち上げが開かれた。
このお話はオリキャラが活躍します。
それが好きではない方はブラウザバックをする事をお勧めします、それらを踏まえた上でお読みください。
幻想郷、紅魔陸軍第一広域訓練場、通称グリーンガーデン。
本日、ここでは年に一度の紅魔陸軍と白狼天狗警邏隊の合同訓練が行われていた。
市街戦を主眼に置いたここでは白狼天狗側が守備、紅魔門番隊が攻勢に分かれている。
「……三分後に第一小隊が突撃、第二第三がそれに続く。良いですね?」
紅魔陸軍第総指揮官紅美鈴の言葉に頷く各隊員。
目の前、攻め落とそうとする家屋群には精強を以て知られた白狼天狗の犬走隊が防御陣を敷いている。
「攻撃開始」
「第一小隊、行くぞ」
第一小隊長ハーバート・ランドルマン少尉が先頭で走り出す。
目標は50メートル先のT字路、第一小隊が全員丘から身を出した瞬間
「撃て!」
敵方の号令と共に目標から傲然と銃声が響いた。
筋肉を一時的に硬化させ動きを止める特殊模擬弾が放たれ隊員に突き刺さる。
「敵襲!」
「溝に隠れろ!」
後の続くはずの第二第三は隠れていた丘の横の溝へ入り込み、銃弾から逃れようとする。
第一小隊の隊員達も走りを止め、丘の影へ撤退してきた。
しかし第一は前線に二人の隊員を置き去りにしていた。
「畜生!みんなは何処へ行ったんだ!」
「知りませんよ!」
コンプトン二等兵とタスクマン無線兵である。
二人は納屋の影に隠れ応戦はしているが白狼天狗は愈々彼ら二人に機関銃の照準を合わせ始めていた。
このままでは二人ともやられる。美鈴は溝から飛び出し狂ったように叫んだ。
「出なさい!出るんだ!」
溝から隊員を引っ張り出しながら指揮をする
「第二小隊は左翼から周り機関銃で応戦、第一第三は私に続け!」
美鈴の声が通り始めた時、隊員達も取り直し、孤立した二人を助けるために動き出した。
ここからの行動は迅速を極めた。
「MG42だ!」
叫んだ瞬間、第三小隊のジョージ・マックウェル一等兵は足に被弾し、同行していたシフティ・パワード一等兵はビルの陰に隠れる。
連続しない単発に区切った銃声、狙撃兵だ。
「狙撃兵!左の土倉」
美鈴からの指示を聞き、階段から飛び出し狙いを付け、撃つ。
銃弾は白狼天狗の狙撃兵のわき腹に命中し、白狼天狗は仰向けになり動かなくなった。
次いでシフティは目標の機関銃補佐手に狙いを付け、撃った。
見事に命中し彼は機関銃手から手痛い反撃を喰らったが、幸い一発も貰わずに済んだ。
「タスクマン、援護しろ」
合図をし筋肉硬化剤が充填された特殊手榴弾のピンを抜きながらコンプトンは言った。
「何時でも良いぜコンプトン」
タスクマンの合図を受けコンプトンは機関銃補佐手を失った敵機関銃陣地へ走り寄り目前で手榴弾のセフティ・レバーを外し中に投げ入れる。
『ボーン』と言う腹に響く音を聞きながら薬剤は室内に充満しまともに動ける天狗は無い。
「シフティ!大丈夫?」
美鈴の問いに親指を上げ応えたシフティは駆け寄り美鈴と共の行動に移る。
この間も左翼からの攻勢運動を展開していた第二小隊が全身を開始し、目標し外部への圧迫を開始していた。反攻の開始である。
「各住居、土倉を制圧しろ!二名ずつ!」
指示を聞き飛ぶように走って往く隊員達。
手際良く各家に手榴弾を投げ込み、爆発直後に飛び込み制圧、しかしここでもまた事件が起きた。
潜伏しているであろう住居にハリー・ウェルシュ上等兵とカール・フォン・パウエル伍長が取りついた時だった。ウェルシュは抜いた手榴弾のピンを押し戻しながら家のドアに耳を付ける。
「何してるハリー、何やってんだ」
「ちょっと待て」
そしてウェルシュは手榴弾を投げ込まずにドアを開け破り、中に突入した瞬間、唖然とした。
「チルノちゃん……怖いよぅ」
「大丈夫だよ大ちゃん、あたいがついてるよ」
「お前らここで何してるんだ」
何故か演習場の模擬施設で暮らしていたチルノと大妖精。
二人はそれぞれ抱え、走り出した。
「門番長!この子たちを安全圏へ運び出してきます!」
「なんでチルノちゃんと大妖精ちゃんらがいるの?」
距離は離れる事紅魔館本館、ここではレミリア・スカーレットと射命丸文が茶を飲みながら戦況報告に耳を傾けていた。
「……つまり、出鼻はくじかれたけど持ち直したってことね」
「左様です、お嬢様」
「美鈴さんはやりますねぇ。あ、咲夜さん紅茶お替わり下さい」
聞こえてくる威勢のよい銃声、戦闘は愈々激しさを増す。
咲夜からのお代りの紅茶を一口飲み、文は口を開いた。
「まぁレミリアさん、今年は少々汚い手を使わせて貰いますよ」
「あら、そんな事言うとこっちもやっちゃうわよ?」
両者とも笑ってはいるが腹の奥底にどす黒い何かを仕込んでいるようだ。
そして、一段と大きな砲声が幻想郷の空に響き始める。
戦況は、芳しくない。白狼天狗側において、だが。
最初こそ優位に立てた天狗側だったが指揮官紅美鈴の指揮に敵は次第に調子を戻しつつある。
「……犬走隊長、第四機関銃陣地が落とされました」
「第六第五に続いて第四も………」
頭を撫でつつ地図にバツ印を書き加えた。
鉛筆を咥え、椅子にもたれかかりながら指示を出す。
「本部に訓練弾での砲撃支援を要請して下さい、一気に戦況を変えます」
「はっ!了解です!」
補佐官がその姿を消すと椛は呟いた。
「流石は紅魔全軍に支持されている将官、紅美鈴、か。一筋縄じゃいかないなぁ」
今回の演習ではこの第一広域演習場、グリーンガーデンを守り切らない事には勝利とはならない。
しかしその瞬間、風を斬る音と共に轟音が響き渡り、椛の気を軽くした。
「砲兵の支援砲撃だ」
調子よく攻勢に転じた門番隊にとってこの砲撃はまさに冷水だった。
いち早く敵の砲撃に気付いたのは土倉の屋根に上り狙撃を開始していたフレデリック・マーソン中尉。
「敵が砲撃を始めた!散開しろ!散開!」
砂埃が巻き起こり薬液を飛び散らせ、隊員を宙へ放り上げる。
「退避!退避!」
「負傷者を見捨てるな!誰も残すな」
耐砲撃塹壕へ皆が一斉に飛び込み、止むのを待つが一向にやまない。
「妖怪の山の天狗どもはこの演習で砲弾を使いきるつもりですかね、門番長」
「使い切ってからになったらこっちのものよ、心配する事は無いわ伍長」
しかしこうしていても埒が明かない、美鈴は無線兵に命令して本館からも砲撃支援を要請した。
すると数秒して白狼天狗の陣地に向けて訓練用の模擬弾頭が轟音を上げて着弾し始める。
「敵の砲弾の音は気味悪いのになんで味方の砲弾の音は心強いんでしょうね、門番長」
「さぁ、わからないわねぇ、一等兵」
甘酸っぱい硝煙の匂いと砲煙が辺りを包み込み始め、さながら第一次世界大戦の映画のセットに潜り込んだような気にさせた。
「これで敵の着剣突撃があったら映画のまんまですね、門番長」
「そう、だから今から映画の中に完全に入り込むのよ、准尉」
「…あぁ、成る程」
美鈴や隊員達はライフルに銃剣の替わりのスタンロッドを装着し始める。
目の前は今まさに砲弾が飛び交う戦場。そこに飛び込むなんて狂気の沙汰のように思えた。
皆が準備を終えた頃、俄かに戦場は静けさを取り戻し始めた。双方の砲弾が付き始めている。
そして美鈴の凛とした声が退避している壕に響き渡った。
「一歩目は!」
『立ちあがれ!』
全隊員が唱和と共に立ちあがり
「二歩目は!」
『恐怖を殺してつき進め!』
塹壕から身を乗り出し
「三歩目は!」
『銃剣を敵に突き立てろ!』
「紅き旗の下に!」
『敵を滅せよ!』
紅魔陸軍の総攻撃が開始した。
少なくなってきたとはいえ砲撃は続いている、その中を突撃してくるなんて思ってもいないであろう敵の迎撃は当然無かった、が味方の砲弾の効果範囲に入った隊員は少なからず出る。
意外にもこの紅魔館の突撃を予想していたのは本館の射命丸文だった。
「やっぱり突撃を開始しましたか、うぅん、これじゃあ今年もそちら側ですかねぇ」
「まだ終わっちゃいないわよ、気を抜かない方が良いわよ、文」
そう言うがレミリアの顔は緩み始め、自らの部下達の勝利を疑う顔は無い。
この二人が館で茶を飲んでいる時も、戦場は進んでいる。
総攻撃で泡食った天狗は各々這う這うの体で退却を開始し始め、戦線は崩れ始めていた。
「進め!勝利は目の前だ」
白狼天狗の指令所が置かれている建物につくと、流石にここはそれなりの抵抗が行われている。
犬走椛直属の第九武装警邏隊が頑強なバリケードを築きあげていた。
「機関砲まである、まるで要塞だぜ門番長」
「これを陥落させない限りは終わりません、やりますよ」
「……マジですか?」
「大マジ」
全隊員は身を隠していた遮蔽物を捨て、一斉に走り出した。
そしてバリケードを乗り越え、屋内へ侵入。
「敵が侵入した!応戦しろ」
訓練とはいえ鬼の形相を浮かべた門番隊に白兵戦闘では幻想郷随一と名高い白狼天狗は次第に押されていった。
「敵が引き始めた、押し込むわよ!」
美鈴が電気ショック式の指揮刀を抜き放ち、斬り込んだ。
「突撃!」
バリケードを越えれば後は屋内の掃討戦へと移る。
美鈴は単身で敵方の指揮官、つまりは椛がいる部屋まで強引に押し入った。
部屋のドアを開けるとそこには刀を今まさに取り上げんとする椛。
「……白狼天狗警邏隊、犬走椛さんですね?」
「聞くまででも無いでしょう美鈴さん」
美鈴は折れ曲がり使えなくなった指揮刀を打ち捨て、腰の拳銃に手をかけ構えた。
「いやしかし、紅魔館は強いですねぇ」
「白狼天狗も相当に手ごわい、先程の砲撃支援、貴方方の砲兵の優秀さを痛感しました」
依然として階下では銃声が響き怒号が飛び交っている、がここは茶飲み話でもしているような呑気さであった。
「さて椛さん、この演習を終わらせるには貴方が私を倒すか私が貴方を倒すかしなければなりません、御覚悟を」
言って美鈴は銃を構え、椛の胸に狙いづける。
「美鈴さん、腹ァ、減りましたねぇ」
椛のその一言を最後に、妖怪の山側の指揮所は粉々になった。
それから数時間後の紅魔館。あっけない決着にレミリアと文は驚いていた。
「これは………」
「………引き分けかしら」
モニターに映し出されたのは粉々になった白狼天狗指揮所、とたがいに目を回して倒れている美鈴と椛。
そう、美鈴が銃を撃つより早く、椛が身をかわすより早く、紅魔館が放った砲弾は天狗の指揮所に着弾したのだった。
「でも序盤は椛が貴方がたを止めました、こっちの勝ちですよね?」
「あら?それはないわよ、こっちは途中から盛り返したんだもの」
二人の口論はしだいに熱くなる。当然だろう賭けごとをしていたのだから。
そんな二人を戒めるがごとく咲夜は金が入ったバスケットを持ち上げながら言う。
「まぁまぁお嬢様、記者さん。勝負はドロー、親の総取りですわ」
咲夜に抗議する文とレミリアだが、その後の咲夜の一言を聞くと、先程までの言い争いをぴたりを止めた。
「それならあと腐れないわね、良いんじゃない?文」
「私も同感です、レミリアさん」
この日、紅魔館では演習の無事終了を祝い、打ち上げが開かれた。
美鈴が有能将軍っていいですねぇ。
ちょっと皇国の守護者読み直してくる!
一昨日来るか、東方ファンサイトじゃない二次創作系のサイトに投稿し直すべし。
東方でやるならせめて銃じゃなくて弾幕にすれば?
美鈴や椛、レミリア等東方キャラの視点で書けば十分東方の内容になったかもしれませんね
弾幕使わないで行う為の理由、ルール決めるなどの話を足したり
少し東方成分を織り交ぜていけばいいかもしれませんね~
お嬢様の気まぐれなり何かの条件で、なりいれてくといいですよ・・
オリジナルの部分と東方の部分混ぜるの頑張ってくだしあ;