「霊夢と魔理沙はどっちがつよいの?」
場所は紅魔館食堂。晩飯にお呼ばれした私と霊夢の顔を交互に見比べて、フランがそんなことを聞いてきた。
「魔理沙でしょ」
「霊夢だろ」
私の言葉と霊夢の言葉が重なる。ユニゾンといかなかったのがとても残念だ。
「ちょっと、何即答してるのよ」
霊夢が小声で私にだけ聞こえるように不満を漏らしてくる。
「その言葉、そっくり返すぜ」
私だってひくわけには行かない。おそらくここでフランに強いと判定された方は、半ば命がけで食後の運動につきあわされる。せっかく久々にうまいものを食べたというのに、それは避けたい。ついでにいえば、この勝負に勝てばフラン対霊夢という見世物が起きるということだ。それは見たい。
「謙遜なんて似合わないことしてないで、正直なところを教えてよ」
フランは私たちの返答が意外だったのか、すこし首をひねりながら、重ねて聞いてくる。
「普通に考えたら、考えなしの魔理沙が先に息切れして、そこを霊夢がズドン・・・・・・ってところかしら」
食堂にいるだけで特に何も食べずに本を読んでいたパチュリーがボソリとつぶやく。
いつもの私なら否定してひとつやふたつ言い返すところだが、いまはパチュリーの嫌味がむしろありがたい。
「いやー、やっぱりパチュリーもそう思うか? 参ったなぁ」
少しうさんくさかっただろうか。いや、フランにはこれくらいの方がわかりやすいだろう。とはいえ、パチュリーの意見だけでは押しが弱い。ここはひとつ、お姉さまの意見も加えておくことにする。どうやらレミリアは霊夢がお気に入りのようだし、悪いようにはならないはずだ。
「レミリアはどう思う? 私と霊夢、どっちが強いか」
レミリアは動かしていたフォークとナイフを止めると、私たちの顔をじっとみる。
「さてね。お互いに手の内は知り尽くしてるだろうし、地力が強い方がやっぱり有利でしょ」
お姉さん、それは答えになってないです。まぁ、レミリアが中途半端な物言いを好むのは今に始まったことではないので気にしないことにする。
「地力でいえば霊夢より魔理沙の方が上かしらね。 まぁ、地力というよりは戦闘向き、といった方が近いかもしれないけれど」
レミリアの言葉は気にしないことにしようと思ったら咲夜がいらぬフォローを付け加えた。いい主従だ。ツーカーってやつか。勘弁してくれ。
「じゃ、魔理沙の方がつよいってこと?」
フランがスプーンを口に当てて遊びながら、結論を出そうとする。
「いや、ちょっとまて、ここは平等に美鈴の意見も聞くべきだ」
「わ、私ですか?」
意外に食べるのが遅い美鈴が、驚いたようにこちらを見る。
「ううん、そうですねぇ。勝負というのは時の運も絡みますから、ここは実際に戦ってみた方が・・・・・」
「その口はなんのためについてるの?」
途中でさえぎったのは霊夢。その顔には曇りなき笑顔が浮かんでいる。
まぁ、霊夢がうっかり笑顔で毒舌を出してしまうのも無理はない。フランのおもちゃになるのが面倒でこんな話をしているのに、わざわざ力比べをしてしまうことになったら意味が無い。そう、ここは口で雌雄を決するところなのだ。
「す・・・・・・すいません」
当の美鈴は何がいけなかったのかわからないのだろう、とりあえず謝って再び自分の食事に集中し始める。気を遣う程度の能力も大変だ。おっと、『使う』だったかしら。まぁ、どっちにしても大差はないだろう。
「美鈴だって私と霊夢の両方と手合わせは済ませてるわけだし、その時の印象でいいから言ってみろよ」
そうはいっても、状況が不利なことに変わりないので、美鈴にもう一押ししてもらうことにする。
「そうですねぇ、私はどちらかというと相手の動きを読むタイプですから、そういう意味で霊夢さんの方がやりづらかったですね。なんというか、足が3本ある人間を相手にするような、そんな違和感がありました」
それ、私のことを遠まわしに単純でわかりやすいって言ってるよなとか、霊夢のことはもはや人間扱いしてないよなとか言いたいことは色々あるが、まぁ、こっちが有利になる意見には変わりない。ツッコまずに、気遣い屋という設定を頭のなかから削除するだけにとどめておく。
「でも、それはフラン相手には関係ないわね」
ところが、意外にも霊夢は美鈴の言葉を冷静に分析できたらしい。言われてみれば確かにそうかもしれない。霊夢とは違った意味合いで、フランに駆け引きなんて概念は存在も通用もしない。フランは私以上に真正面からぶつかっていくだけだ。当人としては遊んでいるだけなのだから、当然といえば当然だが。
「なんで私には関係ないのさ」
なんとなく馬鹿にされたような気がしたのか、フランがすこし唇をとがらせる。
「フラン、ジャンケンしましょう。私はグーを出します。ジャンケンポン」
霊夢はおもむろにフランをジャンケンに誘い、いきなり手を宣言して、その通りにグーを出す。
そしてフランが出したのは・・・・・・グー。
「・・・・・・これだもの」
「あいこ! あいこでしょ!」
「ああ、はいはいジャンケンパー、ほい、私の勝ち」
自分の拳を見て首をひねるフランに、私もジャンケンをすることにしてみる。
「おいフラン、ジャンケンしようぜ。ジャンケンポン」
もちろん出すのはチョキ。フランはグーしか出し方を知らないのだろう。
「おお、フランはつよいな。しかし、これでハッキリしたぜ、つよいのは霊夢だ」
「なっ・・・・・・」
「おお!」
フランは納得がいったのか、目を輝かせる。
「霊夢、ご飯食べたおわったら遊んでね!」
「・・・・・・やられた」
ためいきを隠さない霊夢を尻目に、ご飯の続きを楽しむ。うまい。
「で、フランと霊夢の弾幕ごっこを眺めながら酒を飲む、と。風流だねぇ」
「風流というにはいささか刺激が強すぎる気がするけれど」
洗い物を済ませたらしい咲夜がこちらにやってくる。
「おお、咲夜ものむかい?」
「私は仕事中」
「おカタイねぇ」
「古臭い言葉つかうわね。・・・・・・ところで」
「んー?」
「正直なところ、あなたと霊夢はどっちが強いのかしら?」
「んー、霊夢だろ。あいつは試合には絶対勝つからな。反則だよ」
「・・・・・・なるほど。試合で負けることを前提に勝負しないといけないってことね」
「そゆこと」
弾幕ごっこの決着がついた。
立っているのは霊夢。フランが倒れたのを見て、とくに感慨もなさそうにフン、とひとつ鼻を鳴らす。
フランは満足気な顔で、真紅の廊下のど真ん中で大の字に。
どちらがこの弾幕ごっこの『勝者』なのかは、もはや一目瞭然だった。
場所は紅魔館食堂。晩飯にお呼ばれした私と霊夢の顔を交互に見比べて、フランがそんなことを聞いてきた。
「魔理沙でしょ」
「霊夢だろ」
私の言葉と霊夢の言葉が重なる。ユニゾンといかなかったのがとても残念だ。
「ちょっと、何即答してるのよ」
霊夢が小声で私にだけ聞こえるように不満を漏らしてくる。
「その言葉、そっくり返すぜ」
私だってひくわけには行かない。おそらくここでフランに強いと判定された方は、半ば命がけで食後の運動につきあわされる。せっかく久々にうまいものを食べたというのに、それは避けたい。ついでにいえば、この勝負に勝てばフラン対霊夢という見世物が起きるということだ。それは見たい。
「謙遜なんて似合わないことしてないで、正直なところを教えてよ」
フランは私たちの返答が意外だったのか、すこし首をひねりながら、重ねて聞いてくる。
「普通に考えたら、考えなしの魔理沙が先に息切れして、そこを霊夢がズドン・・・・・・ってところかしら」
食堂にいるだけで特に何も食べずに本を読んでいたパチュリーがボソリとつぶやく。
いつもの私なら否定してひとつやふたつ言い返すところだが、いまはパチュリーの嫌味がむしろありがたい。
「いやー、やっぱりパチュリーもそう思うか? 参ったなぁ」
少しうさんくさかっただろうか。いや、フランにはこれくらいの方がわかりやすいだろう。とはいえ、パチュリーの意見だけでは押しが弱い。ここはひとつ、お姉さまの意見も加えておくことにする。どうやらレミリアは霊夢がお気に入りのようだし、悪いようにはならないはずだ。
「レミリアはどう思う? 私と霊夢、どっちが強いか」
レミリアは動かしていたフォークとナイフを止めると、私たちの顔をじっとみる。
「さてね。お互いに手の内は知り尽くしてるだろうし、地力が強い方がやっぱり有利でしょ」
お姉さん、それは答えになってないです。まぁ、レミリアが中途半端な物言いを好むのは今に始まったことではないので気にしないことにする。
「地力でいえば霊夢より魔理沙の方が上かしらね。 まぁ、地力というよりは戦闘向き、といった方が近いかもしれないけれど」
レミリアの言葉は気にしないことにしようと思ったら咲夜がいらぬフォローを付け加えた。いい主従だ。ツーカーってやつか。勘弁してくれ。
「じゃ、魔理沙の方がつよいってこと?」
フランがスプーンを口に当てて遊びながら、結論を出そうとする。
「いや、ちょっとまて、ここは平等に美鈴の意見も聞くべきだ」
「わ、私ですか?」
意外に食べるのが遅い美鈴が、驚いたようにこちらを見る。
「ううん、そうですねぇ。勝負というのは時の運も絡みますから、ここは実際に戦ってみた方が・・・・・」
「その口はなんのためについてるの?」
途中でさえぎったのは霊夢。その顔には曇りなき笑顔が浮かんでいる。
まぁ、霊夢がうっかり笑顔で毒舌を出してしまうのも無理はない。フランのおもちゃになるのが面倒でこんな話をしているのに、わざわざ力比べをしてしまうことになったら意味が無い。そう、ここは口で雌雄を決するところなのだ。
「す・・・・・・すいません」
当の美鈴は何がいけなかったのかわからないのだろう、とりあえず謝って再び自分の食事に集中し始める。気を遣う程度の能力も大変だ。おっと、『使う』だったかしら。まぁ、どっちにしても大差はないだろう。
「美鈴だって私と霊夢の両方と手合わせは済ませてるわけだし、その時の印象でいいから言ってみろよ」
そうはいっても、状況が不利なことに変わりないので、美鈴にもう一押ししてもらうことにする。
「そうですねぇ、私はどちらかというと相手の動きを読むタイプですから、そういう意味で霊夢さんの方がやりづらかったですね。なんというか、足が3本ある人間を相手にするような、そんな違和感がありました」
それ、私のことを遠まわしに単純でわかりやすいって言ってるよなとか、霊夢のことはもはや人間扱いしてないよなとか言いたいことは色々あるが、まぁ、こっちが有利になる意見には変わりない。ツッコまずに、気遣い屋という設定を頭のなかから削除するだけにとどめておく。
「でも、それはフラン相手には関係ないわね」
ところが、意外にも霊夢は美鈴の言葉を冷静に分析できたらしい。言われてみれば確かにそうかもしれない。霊夢とは違った意味合いで、フランに駆け引きなんて概念は存在も通用もしない。フランは私以上に真正面からぶつかっていくだけだ。当人としては遊んでいるだけなのだから、当然といえば当然だが。
「なんで私には関係ないのさ」
なんとなく馬鹿にされたような気がしたのか、フランがすこし唇をとがらせる。
「フラン、ジャンケンしましょう。私はグーを出します。ジャンケンポン」
霊夢はおもむろにフランをジャンケンに誘い、いきなり手を宣言して、その通りにグーを出す。
そしてフランが出したのは・・・・・・グー。
「・・・・・・これだもの」
「あいこ! あいこでしょ!」
「ああ、はいはいジャンケンパー、ほい、私の勝ち」
自分の拳を見て首をひねるフランに、私もジャンケンをすることにしてみる。
「おいフラン、ジャンケンしようぜ。ジャンケンポン」
もちろん出すのはチョキ。フランはグーしか出し方を知らないのだろう。
「おお、フランはつよいな。しかし、これでハッキリしたぜ、つよいのは霊夢だ」
「なっ・・・・・・」
「おお!」
フランは納得がいったのか、目を輝かせる。
「霊夢、ご飯食べたおわったら遊んでね!」
「・・・・・・やられた」
ためいきを隠さない霊夢を尻目に、ご飯の続きを楽しむ。うまい。
「で、フランと霊夢の弾幕ごっこを眺めながら酒を飲む、と。風流だねぇ」
「風流というにはいささか刺激が強すぎる気がするけれど」
洗い物を済ませたらしい咲夜がこちらにやってくる。
「おお、咲夜ものむかい?」
「私は仕事中」
「おカタイねぇ」
「古臭い言葉つかうわね。・・・・・・ところで」
「んー?」
「正直なところ、あなたと霊夢はどっちが強いのかしら?」
「んー、霊夢だろ。あいつは試合には絶対勝つからな。反則だよ」
「・・・・・・なるほど。試合で負けることを前提に勝負しないといけないってことね」
「そゆこと」
弾幕ごっこの決着がついた。
立っているのは霊夢。フランが倒れたのを見て、とくに感慨もなさそうにフン、とひとつ鼻を鳴らす。
フランは満足気な顔で、真紅の廊下のど真ん中で大の字に。
どちらがこの弾幕ごっこの『勝者』なのかは、もはや一目瞭然だった。
もう少し山がほしかった
良くも悪くも「キャラを適当に喋らせてみた」感が出てましたね。
個人的には地をもっと増やして、ストーリーに起伏を持たせればもっと面白くなるかな、と。
キャラの個性がよく出ていて読みやすかったです。
欲を言ってみればもう少しストーリー性がほしかったです。
日常の中の一幕みたいで俺は結構好きです
読み終えたあと、ああナルホド。と納得しました。
確かに量は少ないですが、これはこれでいいと思いますぜ。
読んでて面白かったです
次に書いてくださるときはもう少し文の量が多いと読む側としては嬉しいです
話のテンポが良くて、読みやすかったです。
次回作も頑張って下さい。
喋らせてみた感じを、もっと広いパターンで読んでみたいと思いやした。
初投稿おつかれさんです!
面白かったです。