朝、目を覚ましたら私は犬だった。
金色のフサフサした尻尾、それから犬耳も付いていた。お姉様の話では、耳も金色らしい。
原因は、昨日図書館を訪れパチュリーが行っていた魔法の実験に失敗に巻き込まれたから。昨日の時点では何の異常も無かったのに、どうやら効果の発現が遅かっただけの様だった。
「今日中には効果も切れるわ」
自身の髪と同じ色をした犬耳と尻尾を生やしたパチュリーは、私にそう説明した。
かくして、私は今日一日犬のような姿で過ごす事となった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「フランドールお嬢様の尻尾もふもふですー」
「この肌触りは癖になりそうだわ」
「私にももふもふさせなさいフラン」
廊下を歩く度に飴玉に群がる蟻が如く私の後ろを付いて歩くメイド妖精達プラス姉に辟易しながら、自身の部屋を目指す。
今日は大人しく部屋でパチュリーの所で借りた本でも読んで過ごすわ。いい加減尻尾を放しなさいあんたたち。
群がるメイド妖精達を追い払うように、私はスカートの間から出る尻尾を振る。
「さて、これでいいわ」
自室の扉を閉めたところで息を吐いた。
そうして、椅子に腰かけて私は本を開く。
「フランドールお嬢様」
しばらくして、扉を叩く音と、大ちゃんの声が聞こえた。
「何、あなたも私の尻尾をもふりに来たの?」
「いいえ、ただ紅茶をお持ちしただけですよ」
扉を開くと、カートを押して紺色のメイド服に身を包む大ちゃんが部屋に入ってきた。
「よかった、部屋でもあんなことされちゃたまったものじゃないわ」
「今回は災難でしたね」
テーブルの上にソーサーと紅茶の注がれたティーカップが置かれる。
今日はスコーンのようだ。
「大ちゃんは興味無さそうね」
「愛らしいとは思いますが、私は眺めているだけで構いません」
言って大ちゃんは微笑む。
「あ、そういえば先ほどレミリアお嬢様が伝書コウモリを何処かに飛ばしていましたよ。霊夢にもどうのって言っていましたが」
「げ、それってどう考えても霊夢を呼んでんじゃない」
お姉様、余計なことを……。
「霊夢さんの事ですから来るでしょうね」
「今日は一日ひとりで過ごそうと思っていたのに、これじゃ計画がパーだわ……」
「……せめて、もう少し身だしなみを整えましょうか」
「……そうね、お願いするわ」
私は深々とため息を吐いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「調子はどうかしら、フランドール」
「特に問題も無いわ」
大ちゃんの案内で霊夢が私の部屋に来た。
「本当に犬みたいになっているのね」
「どうして来たのよ」
「なんとなく、あんたの様子を見に来たのよ」
「お姉様に呼ばれたからでしょう」
「まあ、それもあるわね」
用意した椅子に座る霊夢に私は緑茶を霊夢に差し出す。
「ありがとう。見たところ特に異常も無さそうね」
「そうだけど?」
「ほら、こう、発情期真っ盛りかと思ったんだけど、特にそんなこともなさそうだったから」
「当たり前じゃない!」
そこまで犬になっちゃ堪らないわ!
この前押し倒したこと根に持ってるのかしら。
「まあそうよね」
呟いてお茶を啜る霊夢。
何でちょっと残念そうなのよ。
「しかし、随分と可愛くなったじゃない」
「むー」
「なんだか不満そうね」
可愛いと言われるより、綺麗と言われたいというのが最近の私の心情である。可愛いと言われて悪い気がしないのは確かだけど。
「今のこの状況で綺麗と言うには無理があるわね」
「まあいいわ。それで、霊夢はいつまでここにいるの」
「さっさと帰れととでも言いたげね」
「できればこんな状態、見せたくなかったんだもの」
「あら、私はもう少し見ていたいわね」
「むー」
「身体は正直ね」
指されて後ろを見ると、尻尾が左右に振られていた。とりあえず手で掴んで押さえておいた。
今日は霊夢にいいようにされてばかりね。
ニヤリと彼女が意地の悪い笑みを浮かべた。
「今日は元に戻るまでいようかしら」
「ええ!?」
「こんなこと滅多にないんだし、面白いじゃない」
面白くない。こんなことそうそうあっても困るわ。主に私が。
「……じゃあ、条件が一つあるわ」
「何かしら」
「今日は私と一日一緒にいること」
私の言葉に少し驚いた表情をして見せた霊夢は、次いで椅子から立ち上がって私の頭をワシワシと撫でまわした。
「それじゃ、一緒にいてあげるわ」
「ん、じゃあ一緒にいさせてあげる」
そっぽを向いて答える。
今顔を見られるのは恥ずかしいわ。
「約束したからには覚悟してもらうわよ、霊夢」
「お手柔らかに頼むわ」
余裕の表情で答える霊夢に、私はなんだか腹が立ったので「ワン!」と一つ吠えてやった。
END
金色のフサフサした尻尾、それから犬耳も付いていた。お姉様の話では、耳も金色らしい。
原因は、昨日図書館を訪れパチュリーが行っていた魔法の実験に失敗に巻き込まれたから。昨日の時点では何の異常も無かったのに、どうやら効果の発現が遅かっただけの様だった。
「今日中には効果も切れるわ」
自身の髪と同じ色をした犬耳と尻尾を生やしたパチュリーは、私にそう説明した。
かくして、私は今日一日犬のような姿で過ごす事となった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「フランドールお嬢様の尻尾もふもふですー」
「この肌触りは癖になりそうだわ」
「私にももふもふさせなさいフラン」
廊下を歩く度に飴玉に群がる蟻が如く私の後ろを付いて歩くメイド妖精達プラス姉に辟易しながら、自身の部屋を目指す。
今日は大人しく部屋でパチュリーの所で借りた本でも読んで過ごすわ。いい加減尻尾を放しなさいあんたたち。
群がるメイド妖精達を追い払うように、私はスカートの間から出る尻尾を振る。
「さて、これでいいわ」
自室の扉を閉めたところで息を吐いた。
そうして、椅子に腰かけて私は本を開く。
「フランドールお嬢様」
しばらくして、扉を叩く音と、大ちゃんの声が聞こえた。
「何、あなたも私の尻尾をもふりに来たの?」
「いいえ、ただ紅茶をお持ちしただけですよ」
扉を開くと、カートを押して紺色のメイド服に身を包む大ちゃんが部屋に入ってきた。
「よかった、部屋でもあんなことされちゃたまったものじゃないわ」
「今回は災難でしたね」
テーブルの上にソーサーと紅茶の注がれたティーカップが置かれる。
今日はスコーンのようだ。
「大ちゃんは興味無さそうね」
「愛らしいとは思いますが、私は眺めているだけで構いません」
言って大ちゃんは微笑む。
「あ、そういえば先ほどレミリアお嬢様が伝書コウモリを何処かに飛ばしていましたよ。霊夢にもどうのって言っていましたが」
「げ、それってどう考えても霊夢を呼んでんじゃない」
お姉様、余計なことを……。
「霊夢さんの事ですから来るでしょうね」
「今日は一日ひとりで過ごそうと思っていたのに、これじゃ計画がパーだわ……」
「……せめて、もう少し身だしなみを整えましょうか」
「……そうね、お願いするわ」
私は深々とため息を吐いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「調子はどうかしら、フランドール」
「特に問題も無いわ」
大ちゃんの案内で霊夢が私の部屋に来た。
「本当に犬みたいになっているのね」
「どうして来たのよ」
「なんとなく、あんたの様子を見に来たのよ」
「お姉様に呼ばれたからでしょう」
「まあ、それもあるわね」
用意した椅子に座る霊夢に私は緑茶を霊夢に差し出す。
「ありがとう。見たところ特に異常も無さそうね」
「そうだけど?」
「ほら、こう、発情期真っ盛りかと思ったんだけど、特にそんなこともなさそうだったから」
「当たり前じゃない!」
そこまで犬になっちゃ堪らないわ!
この前押し倒したこと根に持ってるのかしら。
「まあそうよね」
呟いてお茶を啜る霊夢。
何でちょっと残念そうなのよ。
「しかし、随分と可愛くなったじゃない」
「むー」
「なんだか不満そうね」
可愛いと言われるより、綺麗と言われたいというのが最近の私の心情である。可愛いと言われて悪い気がしないのは確かだけど。
「今のこの状況で綺麗と言うには無理があるわね」
「まあいいわ。それで、霊夢はいつまでここにいるの」
「さっさと帰れととでも言いたげね」
「できればこんな状態、見せたくなかったんだもの」
「あら、私はもう少し見ていたいわね」
「むー」
「身体は正直ね」
指されて後ろを見ると、尻尾が左右に振られていた。とりあえず手で掴んで押さえておいた。
今日は霊夢にいいようにされてばかりね。
ニヤリと彼女が意地の悪い笑みを浮かべた。
「今日は元に戻るまでいようかしら」
「ええ!?」
「こんなこと滅多にないんだし、面白いじゃない」
面白くない。こんなことそうそうあっても困るわ。主に私が。
「……じゃあ、条件が一つあるわ」
「何かしら」
「今日は私と一日一緒にいること」
私の言葉に少し驚いた表情をして見せた霊夢は、次いで椅子から立ち上がって私の頭をワシワシと撫でまわした。
「それじゃ、一緒にいてあげるわ」
「ん、じゃあ一緒にいさせてあげる」
そっぽを向いて答える。
今顔を見られるのは恥ずかしいわ。
「約束したからには覚悟してもらうわよ、霊夢」
「お手柔らかに頼むわ」
余裕の表情で答える霊夢に、私はなんだか腹が立ったので「ワン!」と一つ吠えてやった。
END
紅魔館のメイド妖精になってモフモフしたいw
霊夢が来て嬉しいのが体に現れてる様とかね!
少し文章が短かったと思いましたか、楽しく読めました。