すっかり日の落ちた博麗神社の境内で、魔理沙の立案で宴会が行われ、人妖が集まって大いに盛り上がっていた。
そんな様子を眺めながら、考え事をするために私は一人縁側でお酒を飲んでいた。
なんて言えばいいものか。いい言葉が思いつかないわ。
つい漏れそうになるため息を、猪口を煽ることで飲み込んだ。
「そんなところで何を寂しく飲んでいるのかしら、霊夢」
声の主は紅魔館の主、レミリアだった。
「相手が欲しいなら、付き合ってあげるわよ」
「いらないわ。ただ一人で飲んでいたいだけよ」
「あら、連れないわね」
特に気にした様子も無く、ワインの注がれたグラスを片手にレミリアは笑う。
「で、何か用?」
「あなた、銀を持っているわね」
「……よく分かったわね」
私が懐から取り出したのは、鎖の通された一つの指輪。
「銀っていうのは、私達吸血鬼が外にいた頃から魔除けとして使われていたからね。これだけ近ければその気配は分かるわ」
「その割には、あんたは平気そうね」
「低級な悪霊や妖怪ならいざ知らず、私やフランの様な強い妖怪には銀なんてものはよほど曰くのある物でもなければ、武器という形でもって、傷つけない限りほとんど効果は無いわ。せいぜい、ほんの少し違和感がある、といった程度ね」
「それなら大丈夫そうね」
銀がダメだったらどうしようかと少し心配していたから、平気で良かった。
指輪を再び懐にしまう。
「で、どうしたの、それ」
「霖之助さんの所で見つけて、譲ってもらったのよ」
「あの店主がよく譲ってくれたわね」
「当然対価は払ったわよ。しばらく無縁塚通いだったわ」
「ははは、それはあの店主らしいな」
笑って、レミリアはワイングラスに口を付ける。
「まあ、霊夢からの物ならフランなら何であろうと喜んで受けとるよ。心配しなくても大丈夫よ」
「別にフランドールに渡すなんて……」
「あの子が笑っていてくれるなら、私はそれで構わないわ」
私の言葉を遮るように、言葉を紡ぎ、レミリアは私を見る。
「でも、あの子を泣かせるようなことはしないでちょうだい」
「……解ってるわ」
真っ直ぐに見つめる視線を見つめ返して、私は素直に頷いた。
「その言葉、信じてるわよ。じゃ、私は皆の所に戻るわ」
軽くヒラヒラと手を振りながら、レミリアは戻っていった。
『あれ、お姉様。霊夢と何話してたの?』
『何でも無いわ。ただの世間話よ。私は大妖精と飲んでいるわ』
『大ちゃんなら、さっきルーミアと何か話してたよ』
『そう、ありがとう』
パタパタと軽い足音が聞こえる。
「霊夢、何でこんなところでひとりで寂しくお酒飲んでるのよ」
「……やっぱり、姉妹ね」
妙なところで似ている。
「なに?」
「なんでもない」
フランドールの手には、様々な料理の乗せられた皿が二枚あった。
少女が私の隣に座る。
「一緒に食べましょう、霊夢」
そう言うと、彼女は笑みを浮かべた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「霊夢にはさ、もっとデレ成分が必要だと思うの」
フランドールの持ってきた料理が尽きかけてきた頃、彼女は突然そんなことをのたまった。
「なにそれ」
「つまり、もっと私に甘えるくらいしても良いと思うの」
「酔ってるの?」
「別に酔ってなんていないわ」
既に私たちの周りには中身が空になった酒瓶が数本転がっている。
この娘、顔に出ないから酔っていても解らないのよね。
「とりゃ!」
抱き付いて、私の背中に顔を埋めてきた。
「何してるのよ」
「霊夢の代わりに私がデレてるの」
「わけが分からないわ」
やっぱり酔ってるのかしら。
「ん、へへ……れーむ」
「……大人しく私の膝の上ででも寝ていなさい」
後ろから抱き付かれていたんじゃ動きづらいわ。
「わーい、霊夢の膝枕」
嬉しそうに私の膝に頭を乗せるフランドール。
さて、そろそろいいかしら。
「フランドール」
「なあに霊夢」
「あんたに渡したい物があるの」
「え、なあに?」
「ちょっと、目をつむっていてちょうだい」
「いいよー」
素直に目を閉じるフランドール。
私は、懐から指輪を取り出すと、それをそっとフランドールの首にかける。
「目、開いて良いわよ」
けれど、フランドールに反応は無い。
「フランドール?」
「んにゅ……れーむ……」
どうやら寝てしまっているようだった。
このタイミングで寝るか。
「困ったものね」
やれやれと私は苦笑する。
とりあえず、このままのもできないので、起こさないように慎重にフランドールの身体を持ち上げた。
見た目相応に軽い身体を抱え上げる。
寝室に向かいながら、私に身体を預けるフランドールに視線を落とす。
何て言って渡そうかと考えていたセリフが無駄になっちゃったわね。でもまあ、このくらいは言ってしまってもいいかしら。
「……私に恋して、愛してくれて、ありがとう、フランドール」
その頬に、私は触れるだけのキスを落とした。
まったく、これでは締まらないものね……。日を改めた方がよかったかしら?
「失敗したかしら」
一人呟いて、見る者もいない縁側で私は小さく息を吐き出した。
END
そんな様子を眺めながら、考え事をするために私は一人縁側でお酒を飲んでいた。
なんて言えばいいものか。いい言葉が思いつかないわ。
つい漏れそうになるため息を、猪口を煽ることで飲み込んだ。
「そんなところで何を寂しく飲んでいるのかしら、霊夢」
声の主は紅魔館の主、レミリアだった。
「相手が欲しいなら、付き合ってあげるわよ」
「いらないわ。ただ一人で飲んでいたいだけよ」
「あら、連れないわね」
特に気にした様子も無く、ワインの注がれたグラスを片手にレミリアは笑う。
「で、何か用?」
「あなた、銀を持っているわね」
「……よく分かったわね」
私が懐から取り出したのは、鎖の通された一つの指輪。
「銀っていうのは、私達吸血鬼が外にいた頃から魔除けとして使われていたからね。これだけ近ければその気配は分かるわ」
「その割には、あんたは平気そうね」
「低級な悪霊や妖怪ならいざ知らず、私やフランの様な強い妖怪には銀なんてものはよほど曰くのある物でもなければ、武器という形でもって、傷つけない限りほとんど効果は無いわ。せいぜい、ほんの少し違和感がある、といった程度ね」
「それなら大丈夫そうね」
銀がダメだったらどうしようかと少し心配していたから、平気で良かった。
指輪を再び懐にしまう。
「で、どうしたの、それ」
「霖之助さんの所で見つけて、譲ってもらったのよ」
「あの店主がよく譲ってくれたわね」
「当然対価は払ったわよ。しばらく無縁塚通いだったわ」
「ははは、それはあの店主らしいな」
笑って、レミリアはワイングラスに口を付ける。
「まあ、霊夢からの物ならフランなら何であろうと喜んで受けとるよ。心配しなくても大丈夫よ」
「別にフランドールに渡すなんて……」
「あの子が笑っていてくれるなら、私はそれで構わないわ」
私の言葉を遮るように、言葉を紡ぎ、レミリアは私を見る。
「でも、あの子を泣かせるようなことはしないでちょうだい」
「……解ってるわ」
真っ直ぐに見つめる視線を見つめ返して、私は素直に頷いた。
「その言葉、信じてるわよ。じゃ、私は皆の所に戻るわ」
軽くヒラヒラと手を振りながら、レミリアは戻っていった。
『あれ、お姉様。霊夢と何話してたの?』
『何でも無いわ。ただの世間話よ。私は大妖精と飲んでいるわ』
『大ちゃんなら、さっきルーミアと何か話してたよ』
『そう、ありがとう』
パタパタと軽い足音が聞こえる。
「霊夢、何でこんなところでひとりで寂しくお酒飲んでるのよ」
「……やっぱり、姉妹ね」
妙なところで似ている。
「なに?」
「なんでもない」
フランドールの手には、様々な料理の乗せられた皿が二枚あった。
少女が私の隣に座る。
「一緒に食べましょう、霊夢」
そう言うと、彼女は笑みを浮かべた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「霊夢にはさ、もっとデレ成分が必要だと思うの」
フランドールの持ってきた料理が尽きかけてきた頃、彼女は突然そんなことをのたまった。
「なにそれ」
「つまり、もっと私に甘えるくらいしても良いと思うの」
「酔ってるの?」
「別に酔ってなんていないわ」
既に私たちの周りには中身が空になった酒瓶が数本転がっている。
この娘、顔に出ないから酔っていても解らないのよね。
「とりゃ!」
抱き付いて、私の背中に顔を埋めてきた。
「何してるのよ」
「霊夢の代わりに私がデレてるの」
「わけが分からないわ」
やっぱり酔ってるのかしら。
「ん、へへ……れーむ」
「……大人しく私の膝の上ででも寝ていなさい」
後ろから抱き付かれていたんじゃ動きづらいわ。
「わーい、霊夢の膝枕」
嬉しそうに私の膝に頭を乗せるフランドール。
さて、そろそろいいかしら。
「フランドール」
「なあに霊夢」
「あんたに渡したい物があるの」
「え、なあに?」
「ちょっと、目をつむっていてちょうだい」
「いいよー」
素直に目を閉じるフランドール。
私は、懐から指輪を取り出すと、それをそっとフランドールの首にかける。
「目、開いて良いわよ」
けれど、フランドールに反応は無い。
「フランドール?」
「んにゅ……れーむ……」
どうやら寝てしまっているようだった。
このタイミングで寝るか。
「困ったものね」
やれやれと私は苦笑する。
とりあえず、このままのもできないので、起こさないように慎重にフランドールの身体を持ち上げた。
見た目相応に軽い身体を抱え上げる。
寝室に向かいながら、私に身体を預けるフランドールに視線を落とす。
何て言って渡そうかと考えていたセリフが無駄になっちゃったわね。でもまあ、このくらいは言ってしまってもいいかしら。
「……私に恋して、愛してくれて、ありがとう、フランドール」
その頬に、私は触れるだけのキスを落とした。
まったく、これでは締まらないものね……。日を改めた方がよかったかしら?
「失敗したかしら」
一人呟いて、見る者もいない縁側で私は小さく息を吐き出した。
END
これは言えない。恥ずかしいもんね霊夢さん!
でもいつかはちゃんと面と向かって言ってあげてね。フラン喜ぶよ!
二人共可愛いなぁ
霊夢がデレれば無問題。
頑張って伝えてあげて欲しいね。
もっと広がれ、霊フラの輪!