○月◎日
お姉さまが私を幽閉した。
私はお姉さまを恨んではいなかった。きっと、お姉さまも悩んだ末にこの結論を出したのだろう。
私だって、気が付いたら目の前に血まみれの妖精メイドがいるなんて生活をするぐらいなら、だれも傷つけずにひっそり暮らしていたほうがいい。
そう思って、地下室に入った。
数時間後、私はお姉さまを恨んでいた。
扉をたたき、ここを開けろと叫んだ。もちろん何も起こらなかった。
私は真っ暗なこの部屋で、ずっと扉を壊そうとしていた。
そう、真っ暗なのである。
お姉さまは運命を操る能力を持つ。だから、先のことを見据えて行動をする。
そのためか、身近のことには配慮が欠ける。
例えば、お姉さまがここの地下室を作ったとき、最初は排気口がなかった。私を窒息死させるつもりかい。
部下が気づいて、慌てて作ったそうだ。
ちょっと考えれば気が付くことだろう。蝋燭なんて数時間しかもたない。
当然この部屋に備えの蝋燭があるはずがない。お姉さま…むかつくからあいつでいいや…あいつがそこまで気が利くはずがない。
そう、また言うが、真っ暗なのである。
これでは、唯一の暇つぶしである本が読めない。
確かに吸血鬼は夜でも目が利くが、全く光がないのでは何も見えない。
だから私は無駄な抵抗をしていたのであった。
そしてその時、扉を壊そうとしていて、ふと閃いた。
そして、私はレーヴァテインを召還した。
これはまあ、言わば炎の剣だから、明るいのだ。
レーヴァテインを地面に刺し、私は本を手に取って読み始めた。
数時間後、私は倒れた。
だって、レーヴァテインは魔力の塊のような剣だ。エネルギーが半端ではない。
そんなのをずっと出しているんだから、魔力が尽きるのも当然だ。
○月◎日
今日は悲しい日だ。
私はフランを幽閉することを決心した。
きっとフランは私を恨むのであろう。当然だ。
妖精メイドの報告によると、ご飯を届けたとき、フランはレーヴァテイン片手に倒れていたとか。
やはり、地下室を壊そうとしたのか…。
○月△日
目が覚めたら目の前にご飯があった。一応お姉さまもそれくらいは配慮があったっぽい。
…ってことは、メイドか誰かが、この部屋の中に入ったってことだろう。
その人に蝋燭を頼めばいい!
と喜んだのもつかの間、ご飯を届けに来たメイドに、蝋燭を持ってきてと頼んだら、必要最小限しか持ってこなかった。これ1回分じゃん。
どうやらメイド長が徹底的に管理して、節約を呼びかけているらしく、大量に持ってこれないのこと。
メイドどもはランタンを持って来るから、私が暗さに苦しんでいることなんて気が付きゃしない。
ちきしょうめ。でも、メイドに当たってはいけない。
怖がられてご飯を運んでくれなくなったら餓死するもん。
○月△日
メイドからの報告では、フランは特に何もなく、普通に振る舞っていたのこと。
抵抗するのはやめたか…。
だが、いつフランが爆発するのかがわからない。地下で一人暮らしではストレスがたまるであろう。
メイドたちも今はフランへの仕事をしてくれるが、死傷者が出ると、怖がってやらなくなるだろうし…。
いつまでも、このままでいけないのはちゃんと分かっている。いるのだが…。
○月×日
さて、どうにかして、灯りを確保しないと。
私はレーヴァテインでしか火を熾せない。魔法とかあまり興味なかったし。
本のなかに魔導書があるか探したけど、まあ、そんな危険なものを私の部屋に置いておくはずもないか。
火は作れるから、何か燃えるものがあればいいのだが…。
考えていると、いいものがあった。それは本棚だ。木製だから、ばらせば燃える。
本?ないない。本は私とこれから数百年あまりの暇を付き合ってもらうんだから。
おお!これで、ゆっくり本を読むことができる。
○月×日
メイドからの報告によると、フランの部屋の本棚が木端微塵になっていたそうだ。
物に当たり始めたか…。メイドに手を出すのも時間の問題であろう。
◎月▲日
まずい、そろそろ本棚の木屑が尽きそうだ。
なんとかして燃えるものを見つけないと…と部屋を探したが、狭いこの部屋、何もないことに気が付くのはそう遅くなかった。
燃えるものがないのなら、作ればいいじゃない!
幸い、部屋の奥のほうの床の石と石の繋ぎ目にスキマがあったので、石を持ち上げると、ドジョウが出てきた。
間違えた、土壌が出てきた。土から魚が出てきたらそれはミステリーだ。
ご飯を運んできたメイドに、とりあえずの数本の蝋燭と、この暗闇でも育つ植物を頂戴と頼んだ。
さて、明日から農作業だ。楽しみだ。
◎月▲日
フランが植物がほしいと言ってきたそうだ。これは嬉しい。生物を大切にする気持ちを持ってくれれば、フランの解放も早まるであろう。
早速、最近知り合った魔女に頼んでみた。持つべきものは知識人である。
彼女は数輪の花を持ってきた。彼女の魔法のおかげで、光も水も養分もなくても育つそうだ。
さて、フランは喜んでくれるだろうか。
◎月◆日
期待はずれだった。
メイドはご飯と一緒に花を持ってきた。花なんて火をつけたら一瞬で燃えてしまう。
「こんなんじゃない!」と私が叫んで花を床に叩き付けた。メイドは怯えていた。
やばい、感情的になってしまったと反省。
落ち着いた声で「出来るだけ早く杉のような大木に生長するような物をお願い。」と頼むと、メイドは逃げるように去って行った。
床に落ちた花を植えてみたが、きっともう死んでいた。
◎月◆日
どうやら、だめだっだようだ。
報告を聞こうにも、メイドは怯えて何も言えない様子。ただ「早く…大木に…生長する…。」とつぶやいている。
よく分からないが、注文通りの物をあの魔法使いに頼んだ。やはり光も水も養分もなくても育つそうだ。
フランが何をしようとしているのか、私には分からない。
◎月●日
今度のメイドは木の苗を持ってきた。ビクビクしながら。
やはり怯えていたのだろう。ごめんなさいとお詫びをすると、そのメイドは私は昨日のメイドとは別人だと言った。
どうやら昨日のメイドはノイローゼになったそうだ。お大事にと伝えておいてと今日のメイドに言っておいた。
とりあえずこの苗を土に植えた。育ってくれることを祈る。
◎月●日
フランは今回は満足したらしかった。まあ、花でなくても、植物には変わりがないからな。
無事フランがあれを育てきってほしい。といっても、オーダー通りに1週間ばかりで育てきってしまうのだが。
あと、今までのの代わりに入ったメイドのことだが、仕事を辞めたいと言い出すか心配だったが、続けますと言ってくれた。
よかった、どうやらフランとうまくいったらしい。
▽月○日
木はみるみる大きくなって種を付けた。種が取れたので、もう潮時であろうと思い、収穫してみた。
ちょうど本棚の木屑が切れたので、ためしに自家製の木屑に火をつけると、確かに灯りの役割をしてくれた。
うん、なんとかなりそうだ。
種も取れたので、これをまた植えれば、永久機関の完成だ!いや、意味違うってことは知ってるけどね。
▽月○日
今日の報告によると、フランは上機嫌だったようだ。
何があったかわからないが、まあ、良いことだ。
ところで、フランはあの木の苗をどうしたんだろうか、今度こっそり様子を覗いてみようか、あの子が寝ている隙にでも。
▽月☆日
絶対殺す!あいつ殺す!ふざけるな!あの野郎!ぶち壊す!なんでなんだ!畜生!
あいつが部屋に来たのだろう。メイドはきっと部屋の奥まで入ってこない。
部屋の奥の農地スペースに最初のように石が敷かれ、しかもなんか取れないように強化しやがった。
せっかく木が育っていたのに!これからも育てていくつもりだったのに!
怒りのあまり種を床にぶちまけた。気は晴れなかった。
今日はメイドと目を合わせなかった。勢い余って殺すかもしれなかったから…。
▽月☆日
どうやらフランは脱出しようとしていたようだ。穴を掘って、そこから地上へ出るつもりだったのだろう。
もし計画を実行していたら、外に出ると同時に灰になっていただろう。
きっとまたフランは私を恨んでいるだろうが、愛しきフランの命のためだ。別に構わない。
メイドの報告によると、やはりフランは不機嫌で、目も合わせてくれなかったようだ。
メイドに当たらなくて、一安心。だいぶ自制心がついたのだろうか。
少しづつ機嫌を直してくれるといいのだが。
ところで、結局フランはあの木の苗をどうしたんだろう。
▽月×日
驚いた。昨日種をぶちまけたところから、なんと芽が出ていた。
こいつらの生命力は素晴らしいものだ。石の僅かなスキマに、根を伸ばしている。
よかった。ほんとうによかった。
▽月×日
メイドによると、今日のフランはもう上機嫌だったようだ。
フランの心は読めない。もう少し心が落ち着いていると嬉しいのだがなぁ。
まあ、機嫌はいいにこしたことはないが。
だけど、まだ私と会うのはだめだろうな。きっと。
★月△日
だいぶこいつらを育てるのに慣れてきた。うんうん。
木が育ちすぎて、余るようになってきたので、自分で本棚を作ってみようと思い、やってみた。
が、これがなかなか難しい。釘なしで組み立てる方法がなかなか思いつかなかった。
今日は、自分の背丈サイズのやつを一つ完成させた。これから、すべての本が入るような棚を作っていきたい。
★月△日
最近のフランは大人しい。なにも事件を起こさない。
メイドの報告も「ないです。それじゃ。」といい加減になってきた。
それと、幻想郷の件について、美鈴やパチュリーと話し合った。
人間どもも、小賢しい知恵を身に着けてきた。そろそろ、この地も危ないかもしれない。
紅魔館の仲間や、フランのために、引っ越すことにした。
このこともフランに伝えないといけない。会うのは気が引けるが、大切なことだ。
★月○日
今日、お姉さまが会いに来た。きっとお姉さまは何度か私に会いに来たのだろうが、私がお姉さまを見るのは久しぶりだった。
お姉さまは幻想郷が云々という小難しい話をしていた。そんなことわざわざ私に伝えなくてもいいのに。
どうせこの地下室の景色は変わらないし、私の生活が変わるわけでもないのにね。
まぁ、お姉さまが私のことを少しでも気にかけてくれたってことは嬉しいけど。
それと、本棚が完成した。しきつめられた本の背表紙を見て、すごく達成感があった。
★月○日
久しぶりにフランと話した。フランはとても落ち着いていて、私を殺そうともしなかった。
幻想郷については興味がなさそうだった。まあ、そうだろう。
ただ、驚いたことがあった。フランの部屋の本棚が復活していたのだ。復活というか、新しく作られていたと言うべきか。
フランも創造する喜びを知ってくれれば、破壊することもなくなるだろう。
きっと、フランは、私が思っているより、成長しているのかもしれない。
さて、明日は大仕事だ。自分が幻想の存在になるのかと思うと、寂しい様で、でも、気持ちは高ぶる様で。
さあ、大魔法を遂行させようではないか。いざ、幻想の地へ。
ところで、フランは本棚の材料を何処から用意したんだろうか。
★月◎日
どうやら、幻想郷とやらの場所へ引っ越しが完了したっぽい。実感はないが。
でも、よかった。幻想郷が熱帯や寒帯じゃなくて。そうだったらこいつら枯れちゃうもん、きっと。
さて、次はどんな家具を作ろうかな。そろそろベッドが壊れそうだから、作ってみようかな。
★月◎日
素晴らしい、ここが幻想郷か。あの胡散臭い妖怪の言うとうり楽園なのかもしれない。
ただ、ここには面倒な決まりがあって、スペルカードルールなどという遊戯方法があって、人間も妖怪もこのルールにのっとって戦うらしい。
それで、そのルールがややこしすぎて、理解できん…。
パチュリーなんかはさっさとルール覚えてスペカというやつをたくさん作ろうとしている。ちきしょうめ。
しばらく私は美鈴と一緒にこのルールと格闘することになりそうだ。
★月◇日
お姉さまがまた、部屋に来た。こんどはスペルカードルールについて言ってた。
お姉さまの説明じゃよく分からなかったが、お姉さまの友人らしき人の説明で理解することができた。
これは面白そうだ。どうせベッドも完成して暇だったから、丁度いい暇つぶしになる。
なんか、今日のお姉さまは、ずいぶん萎れていたが、なにか嫌なことでもあったのだろうか。
★月◇日
フランに負けた…。ぐすん。
×月■日
今日、最近メイド長になったという人を、お姉さまが紹介してくれた。
銀髪で、すらっとしてて、きれいな人だった。
紅魔館には結構前からいたそうだけど、私にすぐに殺されないぐらいまで成長するまで会わせてもらえなかったらしい。
まったく、お姉さまはわたしを信用していないんだから。
まあ、私に会った奴がむかつくやつなら殺してたかもしれないけど…
あと、なんだか上の階がバタバタと忙しそうにしてたけど、パーティでもするのかなぁ。
それにしても、この木々どもを使ったスペルカードが思いつかない…。
×月■日
さて、今夜は一番忙しい夜のようだ。
ここでは異変を起こすもルールがいるらしく、いろんな書類を書かされたり、メイドたちを訓練させたり、舞台をセットさせたりと、やることが山積みである。
正直、こんな茶番になるぐらいなら、霧なんて出さなくてもいいかなと思い始めたんだけど、“異変を起こす”という行動をとれば、なぜかいい運命に巡り合えそうな気がするのよね。
まあ、私もマンネリ化してきたこの日常にも飽きてきたしね。
さて、何時かの夜は楽しくなりそうだ。
×月▲日
あいつめ…霧を出すなんて余計なことしやがって。
おかげでこの木々たちがしけって枯れそうじゃないの。
まったく、あいつなんて誰かにさっさと退治されてしまえばいいのに。
×月▲日
フハハハハ、最高だ!私の広げた術に、何も知らない愚かな者どもは慌てふためいているわ!ああ、愉快ね。
って、書いてみたけど、そこまでハイテンションじゃないのよね。
農作物に影響がないようにって霧を広げる範囲は限られたし、それなりの妖怪や権力者たちは事前に八雲のやつから私のことを説明されてるし。
だから、あんまり大騒ぎになっているって感じがしないのよね。
さっさと、なんだっけ、はくさいの巫女だっけ、あいつが来てこの茶番を終わらせてくれないかしら。
あ、でも、さっさと異変解決されても癪に触るわね。
×月▽日
信じられないことが起こった。
お姉さまが出した霧の影響か、木々が突然変異をしたっぽい。生長が早い分、突然変異も一瞬、一晩のうちだった。
木の幹は細くなり、まるで鞭のようにしなやかになった。そして、甘い甘い実をつけるようになった。
このNEW木をみているうちに、一つスペルカードが思いついた。甘いあまーい罠である。
×月▽日
あのレタスの巫女、ありえん。
きっとあの巫女は様子見でEASYでも行こうかな♪とか思ったんだろう。
そしたら、ノーミスノーボム、そしてパチェにノーショットで勝ちやがった。しまいにはさらに上下封印で咲夜を倒したし。
このまま異変解決してはあまりにはあっけないと、咲夜が巫女に頼み込んで今日は帰ってもらったが、こりゃ明日負けるな。
×月☆日
ずいぶんボロボロになったお姉さまから、明日はあなたの出番よと言われた。
何のかしら?
あと、霧は止んだらしいが、無事NEW木は育っているようだ。よかった、よかった。
×月☆日
キャベツの巫女に負けた…。ぐすん。Lunaticだったのに…。
×月○日
異様に強い人がやってきて、私を倒していった。
あいつ、只者じゃないわ。それに、彼女がばら撒いていたお札、吸血鬼にもダメージを与えるなんて、いったいどんな木から作った紙で出来ているのかしら。
私の栽培の腕もまだまだってことね…。
×月○日
なんだろう、フランの運命の向こうに光が見えるような気がする…。
昨日巫女にやられたせいで、目がおかしくなったかしら。なんだっけ、フラッシュバック現象だっけ、こういうの。
そういえば、あの巫女、はくれいの、だったのね。なんでキャベツのだなんて思っていたのかしら。
「わーい!」
私は今日、解放された。といっても、この屋敷内だけだが。だが、それで十分だ。なぜなら…図書館に行ける!
早速初歩的な魔導書を読んでみる、えーと木の魔法、木の魔法っと。
そういえば、薪にしていた木が全部変異してしまったから、すこしピンチなのよね。
えーなになに、
『金の魔法 ~錬金術師気分があなたにも!~』 金なんて興味ないわ。
『水の魔法 ~海外旅行先でもきれいな水が飲める!~』 どうせ旅行なんて行かないし。
『土の魔法 ~一瞬にして砂場で天守閣が作れます!~』 砂場って、どこよ。
『火の魔法 ~長時間火をつけれるので煮物などに最適!~』 料理なんてしないわ。
『木の魔法 ~森林浴を自宅でするロマン!~』 これよ!これ!
さて、部屋に戻ってやってみますかな。ところで森林浴ってなんだろう。
あれ、なにか基本的なことを忘れているような気が…
お姉さまが私を幽閉した。
私はお姉さまを恨んではいなかった。きっと、お姉さまも悩んだ末にこの結論を出したのだろう。
私だって、気が付いたら目の前に血まみれの妖精メイドがいるなんて生活をするぐらいなら、だれも傷つけずにひっそり暮らしていたほうがいい。
そう思って、地下室に入った。
数時間後、私はお姉さまを恨んでいた。
扉をたたき、ここを開けろと叫んだ。もちろん何も起こらなかった。
私は真っ暗なこの部屋で、ずっと扉を壊そうとしていた。
そう、真っ暗なのである。
お姉さまは運命を操る能力を持つ。だから、先のことを見据えて行動をする。
そのためか、身近のことには配慮が欠ける。
例えば、お姉さまがここの地下室を作ったとき、最初は排気口がなかった。私を窒息死させるつもりかい。
部下が気づいて、慌てて作ったそうだ。
ちょっと考えれば気が付くことだろう。蝋燭なんて数時間しかもたない。
当然この部屋に備えの蝋燭があるはずがない。お姉さま…むかつくからあいつでいいや…あいつがそこまで気が利くはずがない。
そう、また言うが、真っ暗なのである。
これでは、唯一の暇つぶしである本が読めない。
確かに吸血鬼は夜でも目が利くが、全く光がないのでは何も見えない。
だから私は無駄な抵抗をしていたのであった。
そしてその時、扉を壊そうとしていて、ふと閃いた。
そして、私はレーヴァテインを召還した。
これはまあ、言わば炎の剣だから、明るいのだ。
レーヴァテインを地面に刺し、私は本を手に取って読み始めた。
数時間後、私は倒れた。
だって、レーヴァテインは魔力の塊のような剣だ。エネルギーが半端ではない。
そんなのをずっと出しているんだから、魔力が尽きるのも当然だ。
○月◎日
今日は悲しい日だ。
私はフランを幽閉することを決心した。
きっとフランは私を恨むのであろう。当然だ。
妖精メイドの報告によると、ご飯を届けたとき、フランはレーヴァテイン片手に倒れていたとか。
やはり、地下室を壊そうとしたのか…。
○月△日
目が覚めたら目の前にご飯があった。一応お姉さまもそれくらいは配慮があったっぽい。
…ってことは、メイドか誰かが、この部屋の中に入ったってことだろう。
その人に蝋燭を頼めばいい!
と喜んだのもつかの間、ご飯を届けに来たメイドに、蝋燭を持ってきてと頼んだら、必要最小限しか持ってこなかった。これ1回分じゃん。
どうやらメイド長が徹底的に管理して、節約を呼びかけているらしく、大量に持ってこれないのこと。
メイドどもはランタンを持って来るから、私が暗さに苦しんでいることなんて気が付きゃしない。
ちきしょうめ。でも、メイドに当たってはいけない。
怖がられてご飯を運んでくれなくなったら餓死するもん。
○月△日
メイドからの報告では、フランは特に何もなく、普通に振る舞っていたのこと。
抵抗するのはやめたか…。
だが、いつフランが爆発するのかがわからない。地下で一人暮らしではストレスがたまるであろう。
メイドたちも今はフランへの仕事をしてくれるが、死傷者が出ると、怖がってやらなくなるだろうし…。
いつまでも、このままでいけないのはちゃんと分かっている。いるのだが…。
○月×日
さて、どうにかして、灯りを確保しないと。
私はレーヴァテインでしか火を熾せない。魔法とかあまり興味なかったし。
本のなかに魔導書があるか探したけど、まあ、そんな危険なものを私の部屋に置いておくはずもないか。
火は作れるから、何か燃えるものがあればいいのだが…。
考えていると、いいものがあった。それは本棚だ。木製だから、ばらせば燃える。
本?ないない。本は私とこれから数百年あまりの暇を付き合ってもらうんだから。
おお!これで、ゆっくり本を読むことができる。
○月×日
メイドからの報告によると、フランの部屋の本棚が木端微塵になっていたそうだ。
物に当たり始めたか…。メイドに手を出すのも時間の問題であろう。
◎月▲日
まずい、そろそろ本棚の木屑が尽きそうだ。
なんとかして燃えるものを見つけないと…と部屋を探したが、狭いこの部屋、何もないことに気が付くのはそう遅くなかった。
燃えるものがないのなら、作ればいいじゃない!
幸い、部屋の奥のほうの床の石と石の繋ぎ目にスキマがあったので、石を持ち上げると、ドジョウが出てきた。
間違えた、土壌が出てきた。土から魚が出てきたらそれはミステリーだ。
ご飯を運んできたメイドに、とりあえずの数本の蝋燭と、この暗闇でも育つ植物を頂戴と頼んだ。
さて、明日から農作業だ。楽しみだ。
◎月▲日
フランが植物がほしいと言ってきたそうだ。これは嬉しい。生物を大切にする気持ちを持ってくれれば、フランの解放も早まるであろう。
早速、最近知り合った魔女に頼んでみた。持つべきものは知識人である。
彼女は数輪の花を持ってきた。彼女の魔法のおかげで、光も水も養分もなくても育つそうだ。
さて、フランは喜んでくれるだろうか。
◎月◆日
期待はずれだった。
メイドはご飯と一緒に花を持ってきた。花なんて火をつけたら一瞬で燃えてしまう。
「こんなんじゃない!」と私が叫んで花を床に叩き付けた。メイドは怯えていた。
やばい、感情的になってしまったと反省。
落ち着いた声で「出来るだけ早く杉のような大木に生長するような物をお願い。」と頼むと、メイドは逃げるように去って行った。
床に落ちた花を植えてみたが、きっともう死んでいた。
◎月◆日
どうやら、だめだっだようだ。
報告を聞こうにも、メイドは怯えて何も言えない様子。ただ「早く…大木に…生長する…。」とつぶやいている。
よく分からないが、注文通りの物をあの魔法使いに頼んだ。やはり光も水も養分もなくても育つそうだ。
フランが何をしようとしているのか、私には分からない。
◎月●日
今度のメイドは木の苗を持ってきた。ビクビクしながら。
やはり怯えていたのだろう。ごめんなさいとお詫びをすると、そのメイドは私は昨日のメイドとは別人だと言った。
どうやら昨日のメイドはノイローゼになったそうだ。お大事にと伝えておいてと今日のメイドに言っておいた。
とりあえずこの苗を土に植えた。育ってくれることを祈る。
◎月●日
フランは今回は満足したらしかった。まあ、花でなくても、植物には変わりがないからな。
無事フランがあれを育てきってほしい。といっても、オーダー通りに1週間ばかりで育てきってしまうのだが。
あと、今までのの代わりに入ったメイドのことだが、仕事を辞めたいと言い出すか心配だったが、続けますと言ってくれた。
よかった、どうやらフランとうまくいったらしい。
▽月○日
木はみるみる大きくなって種を付けた。種が取れたので、もう潮時であろうと思い、収穫してみた。
ちょうど本棚の木屑が切れたので、ためしに自家製の木屑に火をつけると、確かに灯りの役割をしてくれた。
うん、なんとかなりそうだ。
種も取れたので、これをまた植えれば、永久機関の完成だ!いや、意味違うってことは知ってるけどね。
▽月○日
今日の報告によると、フランは上機嫌だったようだ。
何があったかわからないが、まあ、良いことだ。
ところで、フランはあの木の苗をどうしたんだろうか、今度こっそり様子を覗いてみようか、あの子が寝ている隙にでも。
▽月☆日
絶対殺す!あいつ殺す!ふざけるな!あの野郎!ぶち壊す!なんでなんだ!畜生!
あいつが部屋に来たのだろう。メイドはきっと部屋の奥まで入ってこない。
部屋の奥の農地スペースに最初のように石が敷かれ、しかもなんか取れないように強化しやがった。
せっかく木が育っていたのに!これからも育てていくつもりだったのに!
怒りのあまり種を床にぶちまけた。気は晴れなかった。
今日はメイドと目を合わせなかった。勢い余って殺すかもしれなかったから…。
▽月☆日
どうやらフランは脱出しようとしていたようだ。穴を掘って、そこから地上へ出るつもりだったのだろう。
もし計画を実行していたら、外に出ると同時に灰になっていただろう。
きっとまたフランは私を恨んでいるだろうが、愛しきフランの命のためだ。別に構わない。
メイドの報告によると、やはりフランは不機嫌で、目も合わせてくれなかったようだ。
メイドに当たらなくて、一安心。だいぶ自制心がついたのだろうか。
少しづつ機嫌を直してくれるといいのだが。
ところで、結局フランはあの木の苗をどうしたんだろう。
▽月×日
驚いた。昨日種をぶちまけたところから、なんと芽が出ていた。
こいつらの生命力は素晴らしいものだ。石の僅かなスキマに、根を伸ばしている。
よかった。ほんとうによかった。
▽月×日
メイドによると、今日のフランはもう上機嫌だったようだ。
フランの心は読めない。もう少し心が落ち着いていると嬉しいのだがなぁ。
まあ、機嫌はいいにこしたことはないが。
だけど、まだ私と会うのはだめだろうな。きっと。
★月△日
だいぶこいつらを育てるのに慣れてきた。うんうん。
木が育ちすぎて、余るようになってきたので、自分で本棚を作ってみようと思い、やってみた。
が、これがなかなか難しい。釘なしで組み立てる方法がなかなか思いつかなかった。
今日は、自分の背丈サイズのやつを一つ完成させた。これから、すべての本が入るような棚を作っていきたい。
★月△日
最近のフランは大人しい。なにも事件を起こさない。
メイドの報告も「ないです。それじゃ。」といい加減になってきた。
それと、幻想郷の件について、美鈴やパチュリーと話し合った。
人間どもも、小賢しい知恵を身に着けてきた。そろそろ、この地も危ないかもしれない。
紅魔館の仲間や、フランのために、引っ越すことにした。
このこともフランに伝えないといけない。会うのは気が引けるが、大切なことだ。
★月○日
今日、お姉さまが会いに来た。きっとお姉さまは何度か私に会いに来たのだろうが、私がお姉さまを見るのは久しぶりだった。
お姉さまは幻想郷が云々という小難しい話をしていた。そんなことわざわざ私に伝えなくてもいいのに。
どうせこの地下室の景色は変わらないし、私の生活が変わるわけでもないのにね。
まぁ、お姉さまが私のことを少しでも気にかけてくれたってことは嬉しいけど。
それと、本棚が完成した。しきつめられた本の背表紙を見て、すごく達成感があった。
★月○日
久しぶりにフランと話した。フランはとても落ち着いていて、私を殺そうともしなかった。
幻想郷については興味がなさそうだった。まあ、そうだろう。
ただ、驚いたことがあった。フランの部屋の本棚が復活していたのだ。復活というか、新しく作られていたと言うべきか。
フランも創造する喜びを知ってくれれば、破壊することもなくなるだろう。
きっと、フランは、私が思っているより、成長しているのかもしれない。
さて、明日は大仕事だ。自分が幻想の存在になるのかと思うと、寂しい様で、でも、気持ちは高ぶる様で。
さあ、大魔法を遂行させようではないか。いざ、幻想の地へ。
ところで、フランは本棚の材料を何処から用意したんだろうか。
★月◎日
どうやら、幻想郷とやらの場所へ引っ越しが完了したっぽい。実感はないが。
でも、よかった。幻想郷が熱帯や寒帯じゃなくて。そうだったらこいつら枯れちゃうもん、きっと。
さて、次はどんな家具を作ろうかな。そろそろベッドが壊れそうだから、作ってみようかな。
★月◎日
素晴らしい、ここが幻想郷か。あの胡散臭い妖怪の言うとうり楽園なのかもしれない。
ただ、ここには面倒な決まりがあって、スペルカードルールなどという遊戯方法があって、人間も妖怪もこのルールにのっとって戦うらしい。
それで、そのルールがややこしすぎて、理解できん…。
パチュリーなんかはさっさとルール覚えてスペカというやつをたくさん作ろうとしている。ちきしょうめ。
しばらく私は美鈴と一緒にこのルールと格闘することになりそうだ。
★月◇日
お姉さまがまた、部屋に来た。こんどはスペルカードルールについて言ってた。
お姉さまの説明じゃよく分からなかったが、お姉さまの友人らしき人の説明で理解することができた。
これは面白そうだ。どうせベッドも完成して暇だったから、丁度いい暇つぶしになる。
なんか、今日のお姉さまは、ずいぶん萎れていたが、なにか嫌なことでもあったのだろうか。
★月◇日
フランに負けた…。ぐすん。
×月■日
今日、最近メイド長になったという人を、お姉さまが紹介してくれた。
銀髪で、すらっとしてて、きれいな人だった。
紅魔館には結構前からいたそうだけど、私にすぐに殺されないぐらいまで成長するまで会わせてもらえなかったらしい。
まったく、お姉さまはわたしを信用していないんだから。
まあ、私に会った奴がむかつくやつなら殺してたかもしれないけど…
あと、なんだか上の階がバタバタと忙しそうにしてたけど、パーティでもするのかなぁ。
それにしても、この木々どもを使ったスペルカードが思いつかない…。
×月■日
さて、今夜は一番忙しい夜のようだ。
ここでは異変を起こすもルールがいるらしく、いろんな書類を書かされたり、メイドたちを訓練させたり、舞台をセットさせたりと、やることが山積みである。
正直、こんな茶番になるぐらいなら、霧なんて出さなくてもいいかなと思い始めたんだけど、“異変を起こす”という行動をとれば、なぜかいい運命に巡り合えそうな気がするのよね。
まあ、私もマンネリ化してきたこの日常にも飽きてきたしね。
さて、何時かの夜は楽しくなりそうだ。
×月▲日
あいつめ…霧を出すなんて余計なことしやがって。
おかげでこの木々たちがしけって枯れそうじゃないの。
まったく、あいつなんて誰かにさっさと退治されてしまえばいいのに。
×月▲日
フハハハハ、最高だ!私の広げた術に、何も知らない愚かな者どもは慌てふためいているわ!ああ、愉快ね。
って、書いてみたけど、そこまでハイテンションじゃないのよね。
農作物に影響がないようにって霧を広げる範囲は限られたし、それなりの妖怪や権力者たちは事前に八雲のやつから私のことを説明されてるし。
だから、あんまり大騒ぎになっているって感じがしないのよね。
さっさと、なんだっけ、はくさいの巫女だっけ、あいつが来てこの茶番を終わらせてくれないかしら。
あ、でも、さっさと異変解決されても癪に触るわね。
×月▽日
信じられないことが起こった。
お姉さまが出した霧の影響か、木々が突然変異をしたっぽい。生長が早い分、突然変異も一瞬、一晩のうちだった。
木の幹は細くなり、まるで鞭のようにしなやかになった。そして、甘い甘い実をつけるようになった。
このNEW木をみているうちに、一つスペルカードが思いついた。甘いあまーい罠である。
×月▽日
あのレタスの巫女、ありえん。
きっとあの巫女は様子見でEASYでも行こうかな♪とか思ったんだろう。
そしたら、ノーミスノーボム、そしてパチェにノーショットで勝ちやがった。しまいにはさらに上下封印で咲夜を倒したし。
このまま異変解決してはあまりにはあっけないと、咲夜が巫女に頼み込んで今日は帰ってもらったが、こりゃ明日負けるな。
×月☆日
ずいぶんボロボロになったお姉さまから、明日はあなたの出番よと言われた。
何のかしら?
あと、霧は止んだらしいが、無事NEW木は育っているようだ。よかった、よかった。
×月☆日
キャベツの巫女に負けた…。ぐすん。Lunaticだったのに…。
×月○日
異様に強い人がやってきて、私を倒していった。
あいつ、只者じゃないわ。それに、彼女がばら撒いていたお札、吸血鬼にもダメージを与えるなんて、いったいどんな木から作った紙で出来ているのかしら。
私の栽培の腕もまだまだってことね…。
×月○日
なんだろう、フランの運命の向こうに光が見えるような気がする…。
昨日巫女にやられたせいで、目がおかしくなったかしら。なんだっけ、フラッシュバック現象だっけ、こういうの。
そういえば、あの巫女、はくれいの、だったのね。なんでキャベツのだなんて思っていたのかしら。
「わーい!」
私は今日、解放された。といっても、この屋敷内だけだが。だが、それで十分だ。なぜなら…図書館に行ける!
早速初歩的な魔導書を読んでみる、えーと木の魔法、木の魔法っと。
そういえば、薪にしていた木が全部変異してしまったから、すこしピンチなのよね。
えーなになに、
『金の魔法 ~錬金術師気分があなたにも!~』 金なんて興味ないわ。
『水の魔法 ~海外旅行先でもきれいな水が飲める!~』 どうせ旅行なんて行かないし。
『土の魔法 ~一瞬にして砂場で天守閣が作れます!~』 砂場って、どこよ。
『火の魔法 ~長時間火をつけれるので煮物などに最適!~』 料理なんてしないわ。
『木の魔法 ~森林浴を自宅でするロマン!~』 これよ!これ!
さて、部屋に戻ってやってみますかな。ところで森林浴ってなんだろう。
あれ、なにか基本的なことを忘れているような気が…
フランちゃんとっても楽しそう!
立派な木の魔法使いになってくださいね。
発想も展開も小ネタも大好き。
庭には花畑、地下には森林……その内紅魔館が植物園になるねwww
でも正直、数百年も閉じ込められてたらすっかり自分の部屋になってると思うww
ただ途中面白かった分、終盤が何だか…
それにしてもこのフランちゃん可愛いww
これだから妹様は大好きだ。