すぅ…… すぅ……
すぅ…… ん……
だれ……? わたしをみてるのは……
あ…… おでこに手が触れて……
やさしく…… わたしをなでてくれてる……
あたたかい……
おかあさま……?
なんだか…… あんしんできる……
きれいな手……
白くて…… つやつやしてて…… 絹のような……
あれ……? これは…… てぶくろ……?
きゃあぁぁぁっ!
なんであなたがここにいるのよ!
た、確かにまた明日来なさいとは言ったけど、何もこんなに早く来ることはないでしょう?
なんで不思議そうな顔してるのよ。今は朝なのよ。おはようございますの時間なのよ。
いや、おはようございますって挨拶を要求したわけじゃないわよ。普通に考えて早すぎるでしょう? なんで寝起きドッキリみたいなことしてるのよ?
あぁ…… 看板持ってないことはどうだっていいのよ。そこで、うわぁ、失敗したぁ、みたいな顔しないでよ。わたしが指摘したいのはそこじゃないんだってば。
それより、なに?
あ、いや、さっきの「おかあさま」っていうのは、寝ぼけてたからで、ちょっと、かんちがいしちゃっただけで。
やだ! もう言わないで!
そ、それは、確かに、少しは安心できたわよ。やさしく頭をなでてくれて、なんだか、また眠っちゃおうとか思ったりして……
だから! その安心感は、おかあさまだと思ったからであって、あんただとわかってたら、振り払うか噛みつくかしてたわよ。
恥ずかしいんじゃない! 怒ってるのよ! 怒ってるから頭に血が上って赤くなってるのよ!
え? お布団がいいにおい? ……って、なにを言い出すのよ! 別に、いいじゃない、そんなこと。
何の香りかって? ……これは桃の香りなのよ。外には桃園があるでしょう?お布団を外に干してると、その香りがうつるのよ。まぁ、私はこの香りが好きなんだけどね。
って、ちょっと、なにしてるのよ? 眠くなってきちゃった、って、だったら帰って寝なさいよ。もう、慣れない早起きなんてするからよ。って、言ってるうちにお布団の中に入っちゃったし……
ちょっと、狭いんだけど。このお布団は、一人なら充分だけど、二人で寝るには充分じゃないのよ。え? だったらこうしましょう、って、ちょっと、まって、うわっ!
あ…… ごめんなさい。思わず突き飛ばしちゃった。
でも、あなただって悪いのよ。急に、その…… ぎゅってされたら、びっくりするじゃない。そりゃあ、狭いって言ったのは私だけど、もっと他にやりようがあったでしょう。
例えば、そう、ぎゅってするにしたって、いきなりじゃなくて、こう、少しずつ、やさしく、包んでくれるような感じで、抱きしめてくれたら、私も、悪い気は、しない、というか。
なんでにやにやしてるのよ! もう、ばか! ばかばか! こんなこと言うの、恥ずかしいにきまってるでしょう? ……そうよ、今顔が赤いのは、怒ってるんじゃなくて、恥ずかしいから。いちいち確認しないでよ。
そうよ。私なりに、ちょっとデレてみてるのよ。早起きしてきたことだって、あなたのことだから、昨日の約束を早く実行してほしいってとこなんでしょう? さすがに寝起きに来るとは思わなかったけど。
はい。
なにキョトンとした顔してるのよ。お布団に入ってきなさいってことよ。眠くなってきたんでしょう。結構安眠できるのよ、このお布団。
な、なによ。急におとなしくなったわね。さっきまでは積極的だったのに。いいから、早く入ってきなさいよ。狭いんじゃないかって? いいから。おとなしく、言うことを聞きなさい。そうそう、それでいいの。
やっぱり狭いんじゃないかって? もう、大丈夫よ。とっておきの方法があるから。ほら、もうちょっと、こっちに寄って。そう、そうしたら……
……ぎゅっ!
どう? 驚いた? さっきのお返しよ。
あ、ごめんなさい。ちょっと、ちから入りすぎたかな。こういう加減って、難しいわね。これくらい、かな? あれ? え? あ……
もう…… ちゃんと、やればできるじゃないの。あなたの方から抱きしめてくれるなんて。えぇ、さっきよりも、やさしくて、なんだか、安心しちゃう。
そっか。あなたはこういう経験が豊富だったわね。自分の式だったり、式の式だったり、こんな風に抱きながら、一緒に添い寝してたんでしょうね。え? 今でもしてるって? 一昨日は三人で添い寝してたですって?
……いいなぁ。
な、なんでもないわよ。ちょっとだけ、おかあさまのことを思い出しちゃっただけで、羨ましいなんて、ぜんっぜん思ってないからね。いい? 羨ましいだなんて、思ってなんかいないんだからね。
あ…… 手、離しちゃうの……?
いや、いいのよ、離しちゃっても。けど、もうちょっと、ぎゅってしててくれても、いいじゃない。
ん……
ん! 眩しい!
お日様がおはようございますって言ってるわね。そろそろ起きないと。でも、どうしよう。動けない。
ほんとに眠かったのね。すぅすぅと寝息をたてて寝ちゃってるなんて。まぁ、寝てるのはどうでもいいんだけど、問題は私を抱きしめたまま寝てるってことよね。わざわざ起こすのも悪い気がするし。でもこのままじゃ、私も動けない。
せっかくだから、観察してみようかしら。寝起きを見られたことのお返しよ。
それにしても…… 綺麗な髪。金色で、長くて、さらさらしてて。私も結構長い方だけど、なんだか妬けちゃうくらい綺麗。
それから、そうね。手袋で隠さなくても、白くて綺麗な肌をしてる。真っ白ってわけじゃなくて、なんていうか、絶妙な、健康的な、そんな肌。
ちょっとだけ、突っついてみようかしら。ほっぺのあたりを……
あ…… やわらかい。
やだ。なに、このぷにぷに。くせになっちゃいそう。
おっと。ちょっと調子に乗りすぎたかしら。……うん、大丈夫。まだ起きてないみたい。
じゃあ、次は、おでこを撫でてみましょうか。おかえしおかえし。
あぁ、もう、なんでこんなに安らかな寝顔なのかしら。私はこれで起きたわけだけど、まだ起きないみたいね。……どこまでいけるのかしら。
眠りから覚ます手段といえば、やっぱり、あれが最上級かしら。
そうよ。どうせ、相手は眠ってるわけだし。気付かれても、すぐに離れれば済むことよ。それに、ここには私たち二人しかいないし、仮にばれちゃったとしても、二人だけの秘密にするってことで、いいわよね。
それから、そう、今日は私がデレてあげる日なのよ。感謝しなさいよ。私の最大最高のデレをみせてあげるから。あ、眠ってるから見れないのか。ふふ、残念でした。
……でも、よくよく考えてみると、これってデレなのかな。あれからずっと考えてたけど、結局デレってよくわからない。甘えること? 尽くすこと? まぁ、なんでもいいか。相手がいい気分になれば、幸せだって思えれば、なんだっていいのよ。
あ…… もう少し。もう少しで、その時が来る。嬉しいって思ってくれるかな。笑顔になってくれるかな。……あれ? 私、いたずらしてびっくりさせようとしてたんじゃなかったっけ? まぁ、どうでもいっか。そろそろ、目を閉じよう。
今は、もうすぐ触れあう肌の感覚に、意識を集中して……
ん……
まぶし……
あ……
おはよう。
やっと起きたわね。
眠りから覚ます、とっておきの方法。これで起きないって方がおかしいわよね。
どうしたの? かお、赤いわよ。
私も?
そ、そうよね。私だって、その、たくさん言い訳しながら、その、してあげたんだから。
ほら、早く離しなさい。さすがにもう起きないと。
え? これから?
残念でした。もう一日分のデレは使いきっちゃったわ。あなたは寝てたから気付けなかったんでしょうけど。
もう、そんな悲しそうな顔しないでよ。こっちはちゃんと約束を守ってあげたのよ。寝てたから無効だって? まったく……
とにかく、まずは身支度をしましょう。そして、そうね……
せっかくだから、今日一日、一緒にいてあげてもいいわよ。たまに、その、私が気を抜いたときに、そうなっちゃうかもしれないけど、その時はちゃんと起きてなさいよ。
もう、寝てたから、なんて言い訳は許さないんだから。
はい、これは約束……
ん……
後、やっぱりタイトル口ずさんじゃうw
いつかデレの内容がバレて、紫にドぎついお返しをされればいいと思う
素晴らしい!グレートォ!
ヒャッハー
クソッ 可愛いなこいつら!