「ゲームをしましょう」
紅魔館の当主であるレミリア・スカーレットは、館の主要人物たちを館内の一室に呼び集めると、高らかにそう宣言した。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
それに対する紅魔館メンバーの反応は様々だ。
レミリアの隣でニコニコと(若干引き攣った)笑みを浮かべている咲夜。
我関せずといった具合に本を読み続けるパチュリー。
ジトーとした目で自らの姉を見据えるフランドール。
どう反応したらいいか分からずに曖昧な表情をして固まっている美鈴。
それぞれが見せた反応に差異はあれど、ただ1つ共通して言えるのは“無言”であるということ。
「……何か言ったらどうなの?」
沈黙に耐え切れなくなったのか、その沈黙を作り出した元凶であるレミリアは不貞腐れたようにそう言った。
できることならこのまま沈黙を貫いて先のレミリアの発言をスルーしてしまいたい。
してしまいたいところだが、さすがに主の言葉を無視するわけにもいかない。
完全で瀟洒な従者を自負している咲夜はそう思い、嫌々ながらも(もちろん態度には出さずに)口を開く。
「お嬢様、ゲーム……と仰られましても、一体何のことだか分かりかねます」
「ん……それもそうね。いいわ、今から説明してあげる」
従者から反応を貰えたことで若干気を良くしたレミリアは、ふふんと得意げな顔付きで語り始める。
「咲夜、あなたは今の自分のポジションについて不満を持ったことはない?」
「ありませんわ」
清々しいまでの即答だった。
そもそも彼女は嫌々ながらメイド長という地位に就いているわけではない。
本心からレミリアに忠誠を誓っているからこそ、主の手となり足となり日々の膨大な量の仕事をこなしているのだ。
この地位に就けたことを光栄に思ってこそいれど、不満に思うことなどあろうはずがない。
「……そう、なら、いいけど……」
何だか納得できない、といった様子で渋々引き下がるレミリア。
咲夜の回答は従者としては満点でも、レミリアが今望んでいるものではなかった。
仕方無しにレミリアは質問の矛先を変えることにする。
「パチェ、あなたはどうなの? 今の地位に不満は――」
「ないわ」
これまた即答。
パチュリーはあくまでレミリアの友人であり、決して部下というわけではない。
そのため紅魔館内での地位もへったくれもありはしないのだ。
1日中図書館に引き篭もって好きなだけ本を読めればそれでいい、というのがパチュリーの考えである。
「……じゃ、じゃあフランはどう? もっと自由に外出したいとか、私も館の当主になってみたい! とか」
従者と親友の2人から望んだ返答を得られなかったレミリアは、縋るような目付きで妹の方を見つめる。
対するフランドールは実に鬱陶しそうな顔をして、
「別に」
と、一言で姉の言葉を切り捨てた。
以前までの――レミリアの手によって本格的に幽閉されていた頃ならば、不満の数は1つや2つでは済まなかっただろう。
しかしそれも既に過去の話だ。
多くの者は『フランドールは危険人物であるがため、姉たちによって紅魔館に幽閉されている』という認識を抱いているが、実のところそれは正しくない。
確かに自由な外出こそ禁止されてはいるが、レミリアの許可と誰かの同伴さえあれば外出すること自体は可能であるし、館の敷地内であれば自由に動き回ることも許されている。
今の境遇に満足しているかと言われれば微妙だが、少なくともこれといって大きな不満は抱いていないというのが正直な意見である。
「うう……美鈴はどうなの?」
「わ、私は……」
最後に残された美鈴は、レミリアとその他3人の顔を交互に見遣った。
これが最後の望みと言わんばかりに、期待と不安の入り混じった表情でこちらを見つめてくるレミリア。
『今までの流れを見てたら分かるよな? 空気読めよ』といった圧力を言外に投げ掛けてくるその他3人。
「私は、そのー……」
主の期待を裏切って命拾いするか、主を立ててその他3人から反感を買うか。
悩みに悩んだ挙句、美鈴は1つの答えを導き出す。
その答えとは『自分の正直な意見を言おう!』という、至極真っ当で立派なものであった。
「不満、というほどではないんですが……
たまには門番以外の仕事もしてみたいなーとか、もっと出世して待遇を向上させたいなーとか、そういったことでしたら思ったことがあります」
それを聞いたレミリアの顔がパッ、と輝きに満ち溢れる。
同時にどこからか「チッ」という舌打ちも聞こえたが。
『正直者が一番』と『正直者の死』という2つの単語が美鈴の脳裏を過ぎったが、今となってはもうどうしようもない。
「そうよね! ずっと同じ役職に就いていたんじゃ、やっぱり不満も出てくるわよね!」
ね、ね! と他の3人にも目配せするレミリア。
一度調子付いてしまったら相手をしてやるまで収まらないということを知っているため、美鈴以外の3人は仕方なくレミリアの話の続きを聞くことにした。
「それで、今の地位に不満があったらどうだっていうの? まさか役職を変更させるとか言うんじゃないでしょうね」
「そのまさかよ! さすがパチェは察しがいいわね。知識人と称されるだけはあるわ」
褒められても嬉しくねえよとパチュリーは思う。
こんなことで“知識人”と呼ばれるのなら、そんな称号はクソ食らえだ。
「役職の変更、と言っても心配する必要はないわ。最初に言ったようにこれはあくまでゲームだし、全てが終わったら元の役職に戻ってもらうから」
先も言ったように咲夜とパチュリーは今の自分のポジションに満足しているため、それを他の誰かに奪われるなど堪ったものではない。
そう危惧していた2人だったが、役職の変更はあくまで“ゲーム”とやらの期間中だけだと知り、とりあえずはホッと胸を撫で下ろした。
「それぞれ自分を除いて今この場にいるのは4人……すなわち、経験したことのない役職が4つあるということ。
それらを全て1日ずつ、明日から4日間かけて交代で回していこうというわけよ!」
要するに5つの役職を5人でローテーションしながら体験していこう、というわけである。(自分が普段就いている役職は除いて)
実に面倒くさいゲームだ、とその場にいる大半の者が思った。
しかしレミリアは腐っても館の当主、形式上は紅魔館のトップなのである。形式上は。
彼女の部下である咲夜と美鈴はもちろん、実妹であるフランドールにもあまり堂々と反対の声を上げることはできなかった。
フランドールは決して“姉に従順な妹”というわけではないが、表立っては言うことを聞くようにしているし、無駄に反発して喧嘩になる方が余計に面倒くさい。
それにフランドール自身も正直言って日常に退屈していたため、暇潰しになるなら参加してもいいかなー、ぐらいの気持ちでいた。
あとは……ほんの少し、ほんの少しだけ姉に対する尊敬の念と、妹として姉を立てようという殊勝な心がけを備えていたから、というのもある。
咲夜、美鈴、フランドールの3人が反対しないとなると、残るはパチュリーだけということになるが――
「私は嫌よ、面倒くさい」
さすが七曜の魔女。他の3人には言えないことを平然と言ってのける。
“動かない大図書館”はたとえ親友の頼みといえど、そう易々と心動かされることはないのだ。
「そう言わずに、きっと楽しいわよ?」
「楽しいのはレミィだけでしょ。私は楽しくないもの」
レミリアが何を言おうとも、パチュリーはそれを事も無げに一蹴する。
このままでは永遠にパチュリーの同意を得られない――そう判断したレミリアは、仕方なく“最後の手段”を持ち出すことにした。
その手段とは――
「ゲームに参加したくない人は手ー挙げて!」
民主主義の暴力、多数決。
パチュリーはその呼びかけに対しスッ、と音もなく手を挙げる。
しかし、挙がった手はパチュリーのものだけであった。
「あなたたち……」
パチュリーはジロリ、と他3人の顔を見遣る。
咲夜は申し訳なさそうに笑い、美鈴は気まずさのあまり顔を背けている。そしてフランドールは『諦めなよ』とでも言いたげに苦笑していた。
「4対1ね。以上の結果からゲームを執り行うことを決定します」
「異議あり。ゲーム自体は勝手に4人でやればいいじゃない。私が参加しなければならない理由はないわ」
「異議を却下します。私たちは家族も同然、何をするにも一緒でしょう……?」
「でしょう? じゃないわよこのお気楽コウモリ。私個人の意見をもっと尊重してもらいたいものだわ」
「そんなこと言わずに~」
「しつこいわね……あなたたちも本当は参加したくないんじゃないの?」
パチュリーはそう言って他の3人に同意を求めた。
自分1人だけが反対するならともかく他の3人も揃ってやりたくないと言い出せば、さすがのレミリアも諦めざるを得まい。
そう思っての発言だったのだが――
「私はお嬢様の従者ですから、この身はお嬢様の意思と共に」
「まぁ、たまにはいいじゃないですか。門番の仕事もやってみれば意外と楽しいかもしれませんよ?」
「んー……お姉さまもこんなに言ってることだし、4日間ぐらいならいいんじゃない?」
と、思わぬ墓穴を掘る形になってしまった。
「ほら、他の皆もそう言ってることだし、ね?」
「……はぁ、しょうがないわね」
観念したパチュリーは読みかけの本をパタリ、と閉じる。
最後まで抵抗し続けた“動かない大図書館”は、ここにとうとう陥落した。
「それじゃあまず始めに、5つの役職とその名称を決めましょう」
ゲームの開催が決定したことで上機嫌になったレミリアは、見ている方が微笑ましくなるような満面の笑みを浮かべてそう言った。
「まずは“当主”と“メイド長”は確定、っと」
レミリアはそう言いながら、咲夜がいつの間にか用意した白紙の札にペンを使って文字を書き込んでいく。
どうやらそれらの札に各役職の名称を書き記し、クジとして使用するらしい。
引いたクジに書かれていた役職をその日1日全うする、というルールなのだろう。
「あとは美鈴の“門番”に、パチェのは“司書”でいいわね」
“門番”“司書”と書かれた札が新たに生産され、残る役職はあと1つとなった。
「フランの役職は……役職、は……」
「何か言いたいことがあるならこっちを見て言ってねお姉さま」
にこやかな笑顔をレミリアに向けるフランドール。
何故だろう。ただのあどけない笑顔のはずなのに、レミリアは自身の背筋がゾクリと震え上がるのを感じた。
「えーと……じゃあ“妹”ってのはどうかしら?」
「それって役職なの?」
すかさず突っ込みを入れるパチュリー。
言われてみれば“妹”が役職というのは何だかおかしい気がする。
「だったら“当主その2”とか――」
「そんな役職があるなんて初めて聞いたけど」
またもやパチュリーからのダメ出し。
ひょっとしてゲームに参加させられたことを根に持っているのだろうか、とレミリアは邪推してしまう。
というか根に持っているに違いない。きっとそうだ。
「あーもう、しょうがないわね……じゃあこれならどう?」
「決まったの? 私の役職名」
フランドールの問いに対し、レミリアはいかにも自信アリといった態度で言い放った。
「ええ――あなたの役職名は“ひきこもり”よ」
刹那、レミリアの脇腹に衝撃が走った。
視界に映っていた光景が急速に真横へとスライドしていく。
やがて動いているのは周りの風景ではなく自分の体の方なのだと気付いたとき、一足遅れてレミリアの口から絶叫が迸った。
「ごっ、がァァァァァァアアアアアアアああああああああああああああああああああああッッッ!?」
音速を突破せんばかりの勢いで吹き飛んだレミリアの体は、紅魔館の壁を何枚も突き破って多数の風穴を作り上げる。
レミリアが吹き飛んだ後、そこには自前の杖のようなものを大きく振り抜いたフランドールの姿があった。
「妹様、掃除と修繕が大変なのでもう少し抑えて頂けると助かります」
「ごめん咲夜、ついカッとなって」
「いえ、お気持ちは分かります」
いくら自分の主とはいえ、世の中には言っていい事と悪い事がある。
今のレミリアの発言は間違いなく後者に分類されるものだった。
「はぁ……はぁ……いきなりひどいじゃないフラン。吸血鬼でなければ死んでいたわ……」
吸血鬼特有の驚異的な再生力によって復活したレミリアが、壁に開けられた風穴を通って部屋まで戻ってくる。
それを見たフランドールは「チッ」と小さく舌打ちすると、不機嫌そうにレミリアから顔を背けた。
「私が悪かったわ……もっといい名称を考えるから機嫌を直してちょうだい」
「……フン、お姉さまのネーミングセンスには期待してないわよ」
もっともだ、とその場にいる誰しもが心の中で同意した。ただ1人、レミリア本人を除いて。
「大丈夫よ、ちゃんとカッコいい名前を考えてあげるから! 確かに“ひきこもり”じゃイマイチ締まりがないし、やっぱり横文字の方がいいわよね」
そういう問題ではない、と一同は心の中でツッコミを入れる。
「少し前に図書館の本で読んだんだけど、外の世界にはフランみたいな人に対する呼称が存在するらしいのよ」
「呼称? 一体どんな?」
「確か……“ニート”とか言ったかしら。うん、これなら横文字だし問題ないでしょ。シンプルなところが逆にカッコいいと思わない?」
「そう? 確かに“ひきこもり”よりはマシだろうけど……ちなみにその呼称にはどんな意味が込められてるの?」
純粋な疑問から、フランドールはレミリアに対して質問する。
レミリアは本に書かれていた文章をそっくりそのまま記憶から掘り起こし、フランドールに向けて言った。
「何でも『仕事をせず、ただ無気力に日々を過ごすだけの人々』を指し示す言葉だとか――」
瞬間、フランドールを中心にして莫大な量の殺気と魔力の渦が巻き起こった。
それを本能で感知したレミリアは、咄嗟にスペルカードを展開する。
「――ッッ! 運命『ミゼラブルフェイト』!」
宣言と共に紅い鎖が出現するのと、フランドールが顕現させた炎剣・レーヴァテインが振り下ろされるのはほぼ同時の出来事であった。
ゴバッ!! という凄まじい爆音が響き渡る。
レミリアがすんでのところで発動させた真紅の鎖は、ぎりぎりという嫌な音を立てながらも何とか巨大な炎剣を防ぎきっていた。
「くっ! フ、フラン……とりあえず落ち着きなさい」
「お姉さまが焼き切れた後で、ゆっくり落ち着くとするわ」
そんな禍々しい光景を傍から見ていた3人は、皆が皆一様に「関わりたくないなぁ」という感想を抱いた。
しかしこのまま放っておくわけにもいかない。
仮にも主or親友のピンチなのだし、何より話が先に進まない。
「妹様、どうか気をお鎮めになってください。お嬢様も反省していることですし」
「そ、そうですよ。何なら私たちでいい名称を考えますから!」
「そもそも“ニート”という言い方が悪いのよ。別の本にもっといい呼び方が書かれていたわ」
「いい呼び方?」と、パチュリーの発言を聞いてフランドールの意識がレミリアから外れる。
そのことによって巨大な炎剣は消失し、命の危機から介抱されたレミリアはホッと肩を撫で下ろした。
「言っとくけど、あんまり酷い名称だったらたとえパチュリーといえど怒るよ?」
「安心なさい。私はどこぞの吸血鬼と違って墓穴を掘ったりしないわ」
「ねぇパチェ、それって私のこと?」
「自覚があるなら黙っててちょうだい」
厳しい言葉を突きつけられたレミリアは「うっ」とだけ呻くと、そのまま何も反論できずに俯いてしまう。
咲夜はそんな主の姿を見てフォローに走るべきかどうか一瞬考えたが、やめておくことにした。
どう考えても悪いのはレミリアの方であるし、いくら主とはいえ甘やかしすぎるのは良くない――と、瀟洒なメイドである咲夜は思ったからだ。
「それで本題だけど……外の世界の“ニート”と呼ばれる人間たちも、さっきのフランみたいにその名称を気に入らなかったそうよ」
「そりゃそうよね、ほとんど蔑称だもの。私じゃなくても怒るに決まってるわ」
「ええ、だからその人間たちは“ニート”という呼び方よりも、もっと聞こえのいい呼称を自分たちで考え出したのよ」
「へー、どんな呼び方なの?」
フランドールは期待するような眼差しでパチュリーを見つめる。
パチュリーはその視線を真っ向から受け止め、どこか誇らしげな様子でその名称を口にした。
「その名も――自宅警備員」
かくして5つの役職が決定した。
“当主”、“メイド長”、“司書”、“門番”、そして“自宅警備員”。
それら5つの役職名が書き込まれた札は筒状に丸められ、小さな瓶の中に納められている。
「さて……それじゃあ早速、1日目の役職を振り分けるとしましょう――」
レミリアはそう言うと、瓶に詰められたクジの中から1つを選んで引き抜いた。
次いで咲夜、パチュリー、美鈴、フランドールの順番でクジを引いていく。
「――これで全員引き終わったわね。それじゃあ各自自分の引き当てた役職を確認してちょうだい。
もし自分が普段やっている役職だったなら引き直してもらうわ。そうでなければ……すぐにゲームスタートよ」
レミリアがゲーム開始の宣言をし、参加者一同は今日1日己が全うすることになる役職を確認しようとクジを開く。
こうして4日間にわたる壮大なゲーム――その第1日目が幕を開けた。
◇◇◇ 1 日 目 ◇◇◇
紅魔館のトップ、レミリア・スカーレットは、中華風の服に着替えて門の前に仁王立ちしていた。
どうして館の主である彼女が普段とは違う格好をしてこんな場所に立っているのかというと――
「まさかこの私がいきなり“門番”を引き当てるだなんてね」
とまあ、そういうわけである。
ちなみにわざわざ服まで着替えているのはレミリア本人が望んだからだ。
曰く、『その役職になりきる以上、ただ仕事内容をこなすだけでなく服装もその役職本来のものに着替えないと面白味がない』とのことである。
「まぁいいわ。この私が門番である以上、どんな相手が攻めてこようと一瞬で蹴散らしてやる!」
気合十分といった感じで意気込むレミリア。
このところ戦闘はおろか弾幕ごっこすらご無沙汰だったため、久しぶりに暴れられるのが楽しみで仕方ないらしい。
好都合なことに本日の天気は曇りであるため、日光を気にすることなく思う存分動き回ることができる。
しかし想像してみて欲しい。
門番ぐらいなら突破できるだろうと軽い気持ちで紅魔館に攻め入ったら、いきなりラスボスがお出迎えである。
それもこれ以上ないぐらいの臨戦態勢で、だ。
そもそも侵入しようとすること自体が悪いのかもしれないが、それでも侵入者には同情を禁じ得ない。
「――にしても、あの子に当主が務まるのかしら」
レミリアは楽しそうな表情から一転して、その顔に不安の色を滲ませた。
気にかかっているのは“当主”のクジを引き当てたある人物のことだ。
当主とは文字通り、紅魔館の頂点に君臨する存在である。
それ故その肩書きに圧し掛かるプレッシャーや負担は半端なものではない。
「これを機にあの子も、私が普段味わっている苦労や重圧を分かってくれるといいんだけど……」
もしそうなったら、今後私のことをもっと尊敬してくれるようになるかもしれない……
当主という役職が彼女に務まるのか心配する反面、そんな淡い期待を抱いてもいるレミリアだった。
(これが、紅魔館の“当主”……)
今日1日“当主”となったフランドールは、館の一室で紅茶を啜りながら思考に耽っていた。
今まで自分は当主であるレミリアの妹として、それなりの待遇を受けながら生活してきた。
身の回りの世話は全て使用人がしてくれるし、新しい玩具や美味しいお菓子だって姉やメイドに頼めばすぐに用意してもらえた。
館の外にはなかなか出して貰えなかったが、逆に言えばそのおかげで危険な目に遭うことはなかったし、煩わしい些事にも関わる必要がなかった。
そう……自分は周りから甘やかされ、守られながら育ったのだ。
ゆえに私は当主である姉が背負っているものなど理解できなかったし、理解しようともしなかった。
ひょっとしたら姉は当主として、自分の知らないところで色々な重荷を抱えながら生きているのかもしれない……そう思ったことは何度かある。
自分は安全な場所にいて、厄介な出来事は全て周りに押し付け、何の意義もなく日々をだらだらと消化しているだけなのではないか。
そんな自分と比べて、姉の生き様はとても気高く立派なものなのではないか――
そして今日、実際に“当主”という肩書きをほんの少し背負ってみて分かったことがある。
「普段の私と全然変わらないじゃない――ッッ!」
激昂のあまり握り締めた拳を勢いよくテーブルへと叩きつける。
バキィ! という木材の砕ける音が響き、彼女の前にあったテーブルは綺麗に真っ二つに割れていた。
「紅茶を飲んで、庭を散歩して、本を読んで、クッキーを食べて……全っ然やることがないじゃないの!」
「落ち着きなさ……もう少し落ち着きになられては如何ですか、お嬢様」
怒りに身を任せるフランドールを宥めたのは、メイド服に身を包んだパチュリーであった。
“メイド長”のクジを引き当てた彼女は、今日1日こうして“当主”であるフランドールに付き従っているわけである。
あれほどゲームに参加するのを拒んでいた割にはちゃんとメイド口調で喋っているところを見ると、案外律儀な性格をしているのかもしれない。
「はぁ……当主がこんなに暇だなんて」
「所詮はそんなものよ……ですわ」
自らの姉に抱いていた淡い幻想を打ち砕かれ、フランドールはすっかり意気消沈していた。
しかしパチュリーは知っている。
紅魔館の当主とはそれほど簡単に務まるものではないということを。
最近のレミリアは確かに平和ボケしているし、当主という肩書きにかかる重圧や負担も大したものではない。
しかしそれはあくまで今の話、幻想郷というこの土地で平和な日常を確立させているからだ。
パチュリーは軽く目を閉じ、かつてのレミリアのことを思い出す。
“スカーレットデビル”の異名で人間はもちろん、多くの力ある人外たちからも恐れられていた吸血鬼のことを。
並び立つ者など誰1人として存在せず、圧倒的なカリスマで周囲を惹き付けていた全盛期の彼女の姿を――
(――ま、今はただのお間抜け吸血鬼だけどね)
それでも彼女が持つ根幹の部分は変わっていないはずだ。
もしこの平和が脅かされるようなことがあったら……たとえば大事な妹の身に何かあったりしたら、
彼女は再びかつてのように強大な力を振るい、全力をもって敵対する全ての存在を叩き潰すことだろう――
もっとも、今の平和な幻想郷でそのような事態が起きることはまず在り得ない。
ゆえにフランドールが姉の偉大さを知る機会は、この先当分訪れることはないはずだ。
「あー暇だわー、せっかく当主になったのに……ってそうだ!」
パチュリーが思考に耽っている間に、フランドールは何かいいことを思いついたようだった。
何となく嫌な予感を覚えつつも、メイド長としてフランドールに質問を投げ掛ける。
「あのー……お嬢様? 一体何を思いついたんですか?」
「ふふふ……ねぇパチュリー、私は今“当主”なのよね?」
「ええ、そうだ……はい、そうですね」
「ってことは、1人で外出しようが何しようが自由ってことよね!」
「そうですね……ってちょっと待ちなさい!」
思わず口調が乱れてしまったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
フランドールが1人で外へ? またまたご冗談を。
(完全に失念してた……いくらなんでもこの子を1人で外出させるわけには――!)
そうこうしている間にもフランドールは外へ出かける支度を進めている。
急いで対抗策を練らなければ、この無邪気ながらも狂暴な吸血鬼を野に解き放つことになってしまう。
(私が同伴すれば最悪の事態は防げるはず……でもこの子はさっき『1人で外出』と言っていた。私が同伴すると言っても聞かないでしょう)
パチュリーは灰色の脳細胞をフル回転させ、現状を打破できるような活路を見出そうとする。
(ならいつものように雨を降らせれば……駄目だわ、私が降らせることのできる範囲は館の周辺のみ。
もし館の周辺にしか雨が降っていないと気付かれたら、私の仕業だということが一瞬でバレてしまう。そうなったら私は……)
ただでさえストレスの溜まっているフランドールを怒らせたら、きっと私の身は持たないだろう。
というか下手をしたら殺される。
そこに転がっているテーブルの残骸のように……あるいはそれ以上に、私の体は無数のパーツへと爆散させられてしまう。
「じゃあ私は出かけてくるから、お留守番お願いねー♪」
(くっ! こうなったら捨て身でもいいから雨を降らせるしか――)
覚悟を決めたパチュリーは雨を降らせるための呪文を詠唱しようとする……が、そこであることに気付いた。
「――雨?」
ぽつり、ぽつりという微かな音が窓の外から聞こえてくる。
確認のために窓を開けてみると、思ったとおり空には黒い雨雲がうっすらと掛かり、そこから地上に向けて大量の水滴が降り注ぎ始めている。
言うまでもなくこの雨は自然のものであり、パチュリーが魔法によって降らせたものではない。
やがて雨足は見る見るうちに強くなり、ものの1分ほどで小雨から豪雨へと移り変わっていった。
(助かった――)
奇跡とは正にこのことを言うのだろう。
これで幻想郷の平和と紅魔館の平和、並びにパチュリー自身の平和は守られたのだ。
「ちぇー、つまんないのー! どうして急に雨が降ってくるのよ!」
「こればっかりは仕方ありませんわ、お嬢様」
ホッと一安心して余裕を取り戻したパチュリーは、再びメイド口調をしてそう言った。
これで今日1日は館内で大人しくしていてくれるだろう。
「仕方ないか……じゃあ館内で遊ぶことにしましょう! ね、パチュリー?」
「そうですね、館内で……って何で私まで!?」
「何でって、パチュリーは“メイド長”でしょう? 主の要望に応え、それに付き従うのが筋ってものじゃない?」
思わず絶句するパチュリー。
一時は守られたかに見えた彼女の平和が、目の前で音を立てて崩れ去っていく。
「今の私はどっかの馬鹿姉のせいでちょーっと苛立ってるから……加減できなかったら許してね?」
言葉と共にフランドールは自身のスペルカードを最大出力で展開させる。
その光景を見ながらパチュリーは心の中で固く誓った。
あの馬鹿吸血鬼は後で焼き払ってしまおう、と。
その頃、咲夜は地下室で1人膝を抱えて座っていた。
彼女が引き当てたのは“自宅警備員”。
警備員などと銘打ってはいるが実際にすることなど何もなく、フランドールには悪いがこれでは正に“ひきこもり”だ。
(退屈すぎて苦痛だわ……妹様はこんな苦しい生活を500年近くも……ううっ)
フランドールの不幸な境遇に思いを馳せ、思わず涙を流す咲夜であった。
ようやく1日が終わり、ゲーム参加者たちは再びあの部屋へと戻ってくる。
やたらと顔がツヤツヤしている者、まるでボロ雑巾のようになっている者、頬に涙の流れた跡が残っている者など、それぞれの顔色は多種多様だ。
「皆さん、1日目の業務お疲れ様でしたー!」
そう言って元気よく挨拶したのは、今日1日“司書”を務めていた美鈴だ。
「あなたは随分と元気ね……」
「咲夜さん……ってその顔どうしたんですか? 何だか目も赤いですし……」
「何でもないわ……それより司書の仕事はどうだったの?」
「あ、はい。司書といっても特に仕事がなくて……本の整理は普段から小悪魔さんたちがやっていますし、私はほとんど本を読んでるだけでした」
なるほど、それならこんなに元気が有り余っているのも無理はない、と咲夜は思った。
美鈴のことだ。おおかた1日中漫画でも読み漁っていたのだろう。
「……とりあえず今日はこれでお終いで、また明日の朝にクジを引いて次の役職を決めればいいのよね……?」
生気をまるで感じさせないパチュリーが、苦しそうな声で咲夜にそう問いかける。
どうすればたった1日でここまでボロボロになれるのか……
咲夜はパチュリーの身に何が起きたのか気になったが、その疑問を抑え込んで彼女の質問に答えた。
「ええ、そういうことで宜しいかと。ですよね、お嬢様……お嬢様?」
「あれ、あいつ……お姉さまは?」
「そう言えば姿が見当たりませんが、一体どこにいるんでしょう?」
「レミィなら今日1日外で門番を……」
「「「「 あ 」」」」
紅魔館の大きな門――の脇にある小さな茂み。
その茂みの中に蹲り、僅かな枝葉によって雨から身を守る1人の吸血鬼の姿があった。
「……なんで誰も迎えに来てくれないの?」
紅魔館の当主兼現門番、レミリア・スカーレット。
彼女は突然の降雨にも屋内に逃げ込むことなく、最後まできちんと門番をやり遂げたのであった。
◇◇◇ 2 日 目 ◇◇◇
ゲーム開始から2日目の朝。
5人は再びクジを引くため、とある一室に集まっていた。
「こういうときぐらい咲夜さんと上下関係を逆転させてみたいですねー」
そうやって明るく軽口を洩らしたのは美鈴だ。
彼女は昨日1日“司書”という、ある意味もっとも当たりに近いクジを引いたため、未だこのゲームの恐ろしさを実感できていない。
昨日1日で酷い目に遭った一部の者たちは、そんな美鈴の様子が妬ましくもあり哀れにも思えた。
(門番とメイド長じゃあ、同じ部下でも権力に差がありますからねー。たまには主になって咲夜さんに命令したり……ふふふ)
そんなことを考えながらクジに手を伸ばす美鈴。
もし彼女が“フラグ”という言葉を知っていたのなら、このような愚かな思考をめぐらせたりはしなかっただろう――
「それじゃあ今日1日よろしくね、“メイド長”」
“当主”となった咲夜は、メイド服に着替えた美鈴に向かってそう言った。
(ってむしろ上下関係の差が広がっとるぅぅぅぅぅうううううううぅぅぅぅぅぅ!?)
門番とメイド長、メイド長と当主。
前者と後者ではどちらの方が両者間の差が大きいか、考えるまでもない。
「はぁ……仕方ありません。今日1日、メイド長として誠心誠意頑張らせて頂きます!」
「そうそうその意気よ」
元々美鈴には様々な素質があることを、咲夜は上司兼同僚として知り得ていた。
問題なのは“やる気”であり、今までの美鈴にはどうもそれが欠けがちだったのだ。
しかし今の様子を見る限りでは大丈夫そうである。
普段の自分と同等の仕事ぶり……となるとさすがに厳しいが、それでも最低限合格ラインの働きはしてくれることだろう。
(美鈴はメイド長として問題ないはず……となると、問題なのは私の方よね)
「おや、どうかしましたか咲夜さ……いえ、お嬢様。何かお困りになったような顔を浮かべて」
「(お嬢様……)え、ええ。ほら、私って今までずっとメイドだったじゃない。
だからいきなり当主と言われてもどう振る舞ったらいいか分からなくて……」
今までずっと他人に仕える立場だったため、逆にどうやって他人を仕えさせたらいいのか分かりかねているのだ。
普段レミリアがしているように好き勝手振る舞っていればいいのだが……何とも彼女らしい不器用な悩みである。
「咲夜さんは相変わらず頭が固いですねぇ。当主といったら館のトップですよ? 好き勝手に命令してればいいんです!」
「そ、そう? ちゃんと下の者の意思を汲み取ったり、時には給料を弾んだり……そういった部下に対する思いやりも必要なんじゃないかしら?」
そんな咲夜の言葉を聞いて、美鈴は目頭が熱くなるのを感じた。
もうこの人が紅魔館の当主でいいんじゃなかろうか? と思ってしまったぐらいである。
「普段からそれぐらい思いやりがあってくれれば……」
「……普段の私はそんなに思いやりがないかしら?」
「それはもう。中間管理職という立場上、部下を甘やかすわけにいかないのは分かりますが……それでもあの冷酷さは異常ですよ……」
「なるほど――ありがとう美鈴、これで心置きなく好き勝手に命令できるわ」
「いえ、どういたしま……ってあれ? さっきと言ってることが違いません?」
「あら、『好き勝手に命令してればいい』って言ってくれたのは誰だったかしら?」
「た、確かに言いましたけど――」
「美鈴。今の私は“当主”であり、あなたは一介の“メイド長”に過ぎない――この意味が分かるな?」
ゾクッ! と美鈴の背筋をかつてない悪寒が走った。
咲夜から放たれる重圧感は、彼女が普段メイド長として美鈴を叱責するときの比ではない。
これが“紅魔館当主”という肩書きが持つ力だとでも言うのか?
「紅魔館当主、十六夜咲夜が命じる――今日1日死ぬまで働け」
それは遠回しな――いや、はっきりとした死刑宣告だった。
その頃、パチュリーは“門番”として、館の前で侵入者と対峙していた。
「――今日はまた随分と珍しいものが見れたな」
「生憎、見世物じゃないのだけれど」
侵入者――霧雨魔理沙は、チャイナ服を着て門の前に立ちはだかったパチュリーを見て、実に驚いたような顔を浮かべた。
「なんだ、いつの間に門番に転職したんだ? というか前の門番はクビにでもなったのか?」
「どっちも違うわよ。少し考えれば分かるんじゃない?」
「あー……もしかしてレミリアの思いつきか?」
「ご名答」
たったこれだけのやり取りでレミリアが元凶だと分かるとは……
魔理沙の洞察力が優れているのか、レミリアに対するイメージがよっぽど酷いものなのか。
比率的に言えば前者が3で後者が7と言ったところだろう。
「お前も大変だな、我侭なお嬢様に付き合わされて……ま、それとこれとは関係なく今日も元気に本を借りてくぜ!」
「――させない」
「そうくると思っ――ってパチュリー?」
何かがおかしい……そう、具体的にはパチュリーの様子がだ。
何というかこう、いつにも増してやる気満々というか……漂ってくる敵意や戦意の量が半端ではないのだ。
(――ッ! なんだこのプレッシャーは!? こいつ、本当に“あの”パチュリーかよ!)
パチュリーから迸る異常な量のプレッシャーを感じ取り、疑問と焦りを抱く魔理沙。
彼女が知る由もないが、それにはちゃんとした理由があるのだ。
(……ここで私が魔理沙を通せば、図書館に辿り着いた魔理沙はまず間違いなく“司書”と激突する)
今日の“司書”は誰かって?
何を隠そう、フランドール・スカーレットその人だ。
(そんなことになったら図書館は……)
パチュリーは想像する。
薄暗い図書館の中を縦横無尽に飛びまわる2人の破壊者。
魔理沙のマスタースパークが発射され、その直撃を受けた本棚が跡形もなく蒸発していく。
続いてフランドールのスターボウブレイクが降り注ぎ、机の上に積まれていた本が衝撃の余波を受けて消し飛んだ。
スターダストレヴァリエ、クランベリートラップ、ノンディレクショナルレーザー、カタディオプトリック――
スペルカードの応酬が繰り返されるたび、図書館に貯蔵されている貴重な書物の数々が、まるで無価値なゴミのように消されていく。
それだけは……それだけは何としてでも避けなければならない――!
「あの……パチュリー?」
「――止メル」
この日、魔理沙はパチュリーに対して初めて恐怖を覚えた。
「何だか外がうるさいなぁ……」
パチュリー(本気)が魔理沙に容赦なく襲い掛かっていた頃、フランドールは地下の図書館で大人しく本を読んでいた。
(図書館まで聞こえてくるだなんて、パチュリーが誰かと戦ってるのかな?)
きっと侵入者である誰かと戦闘を繰り広げているに違いない。
にしてもここまで轟音や爆音が聞こえてくるところを見ると、パチュリーは相当本気で戦っているようだ。
でなければここまで激しい戦闘にはならないはずである。
「あのパチュリーが本気を出すなんて、珍しいこともあるもんねー」
まさかその原因の一端が自分にあるとも知らず、フランドールは暢気にそう呟くのであった。
そして同時刻、レミリアは地下室で1人膝を抱えて座っていた。
彼女が引き当てたのは……もう言わずとも分かるだろうが“自宅警備員”であった。
警備員などと銘打ってはいるが実際にすることなど何もなく、妹には悪いがこれでは正に“ひきこもり”だ。
(暇すぎて死にそうだわ……地下だから空気も淀んでるし、あの子はこんな生活を500年近くも……ううっ)
実の妹が味わってきたであろう苦しみを想像し、思わず涙を流すレミリアであった。
2日目が終了し、再び5人が合流する。
「みんな……2日目の仕事お疲れ様」
どことなく暗い面持ちをしたまま、レミリアは言葉だけでもとゲーム参加者たちを労った。
「いえ、私は“当主”でしたので大して疲れることもありませんでした」
それは普段当主である私に対する遠回しな嫌味だろうか、とレミリアは自らの従者を勘繰ってしまう。
しかし咲夜はそのことに気付いている様子はなく、何だかやけに生き生きとした表情を浮かべていた。
どうやら本当に“当主”の体験が楽しかっただけであり、レミリアに対する他意はないようだ。
……それはそれで本心から“当主は大して疲れない=大した役職ではない”と言っているようなものなので、若干傷付くといえば傷付く。
「私は退屈だったわ。好きなだけ本が読めるぶん、普段よりはマシかもしれないけど」
僅かながら不満げな様子で言ったフランドールを見て、レミリアの目には再び涙がこみ上げてきた。
「ううっ……」
「ど、どうしたのお姉さま? 何か悲しいことでもあったの?」
「いいえ、何でもないわ……フランは優しいわね、自分だって辛いでしょうに姉である私のことを心配してくれるだなんて」
「え゛ ちょ、ちょっと本当にどうしたの?」
何でもない、何でもないわと涙を拭うレミリア。
そんな姉の姿を見て、“訳が分からない”という思いと共に“気味が悪い”という感想を抱くフランドール。
「ぐすっ……それで、パチェと美鈴は今日1日どうだっ……」
鼻水を啜りながらそう言いかけたレミリアは、件の2人の姿を視界に収めた瞬間、文字通り言葉を失った。
門番として全力を振り絞り、何とか魔理沙を撃退したパチュリー。
本日の当主である咲夜によって馬車馬のように扱き使われた美鈴。
その2人がどうなったかというと――
「――――――」
「――――――」
そこにはボロ雑巾のようなものが2枚――いや、物言わぬただの肉塊が2つ、綺麗に並んでいた。
◇◇◇ 3 日 目 ◇◇◇
3日目の朝、既に恒例となったクジ引きが行なわれる。
一体今日は誰がどの役職を引き当てるのか――
結論から言おう。紅美鈴が“当主”のクジを引き当てた。
(ついに私の時代がきたぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁ!!)
心の中で歓喜の雄叫びを上げる美鈴。
昨日1日で廃人以下の存在に成り果てた彼女だったが、持ち前の体力と回復力によって何とか一晩で復活していた。(といっても全快ではない)
(さーて、今日1日私の従者として、手となり足となり働いてくれるのは誰ですかーっと)
美鈴は周囲を見回し、一体誰が“メイド長”のクジを引き当てたのか確認しようとする。
(一昨日がパチュリー様で昨日が私だったから……ひょっとしてお嬢様!? やだー、まさかあのお嬢様に命令できる日が来るなんてー!)
頬を押さえて嬉しそうに悶える美鈴。
長年下っ端として働いてきた彼女だが、それでも人並みの野心は持ち合わせている。
自らの主に命令できるというシチュエーションを喜ばないはずがないのだ。
(――?)
ふと、美鈴はそこで違和感に気付いた。
気になって周りを見れば、美鈴を除く大半の人物がなぜか彼女のことを見つめている。
それもどことなく哀れむような表情で、だ。
「……あの、皆さん?」
「「「………………」」」
彼女たちは無言のまま、交互に美鈴の肩をポン、と叩いていく。
まるで『頑張れよ……』とでも言うかのように。
「え、え? 一体これはどういう……」
「美鈴」
唐突に自分の名を呼ばれ、美鈴は声がした方へと顔を向ける。
するとそこには、ニコニコとした笑みを浮かべるフランドールの姿があった。
どうしましたかと美鈴が聞く前に、フランドールは手に持っていた紙を美鈴の眼前に掲げて無邪気に言い放った。
「今日1日よろしくね、美鈴お嬢様!」
フランドールが掲げた紙には、小さな文字ではっきりと“メイド長”と書き記されていた。
「じゃ、じゃあ窓の掃除をお願いします」
「はーい!」
「って妹様!? そんなに力を込めて拭いたらガラスが割れ――!」
ビシッ!
「あれ、ガラスにヒビが入っちゃった」
「……ま、窓の掃除はもういいですから、次はゴミの処分をお願いします……」
「分かっ……じゃなくて分かりました! ゴミは……っと、これで全部ね。今この場で消滅させちゃえばいっか」
「駄目ですよ!? ちゃんと裏庭に持っていって焼却しないと――ってスペルカードは駄目ー!!」
次々と問題を起こすフランドールを諌めるため、当主でありながら奔走を余儀なくされる美鈴。
彼女の時代は1時間と経たずに終わりを告げた。
「……お引き取り願おうかしら」
「そう言われて簡単に引き下がると思うか?」
館の門前。
そこで咲夜は魔理沙を始めとする侵入者“たち”と相対していた。
「おやおや、これは魔理沙さんの言っていた通り、何だか面白いことになってますねー」
スクープゲットー! と1人ではしゃいでいるのは天狗のブン屋、射命丸文。
「ふん、誰が相手だろうとあたいがいれば怖いもの無しよ!」
そう言って自慢げに胸を反らしているのは氷の妖精、チルノ。
昨日、本気になったパチュリーに完膚なきまでに敗北した魔理沙は、いわゆる“助っ人”としてこの2名を付き従え、改めてリベンジにやってきたのである。
ちなみにどうやってこの2人を勧誘したのかというと、
文には「紅魔館の連中が面白いことをやっているから潜入取材に行かないか?」などと言って記者魂を揺さぶり、
チルノには「最強の妖精であるお前の力が必要なんだ!」などと適当に言いくるめて連れてきた。
「できることならパチュリーにリベンジしたかったんだが、今日はお前が門番なのか」
「ええ、今日1日はこの私、十六夜咲夜が紅魔館の門番よ」
「はっ! どっちだっていい。中に入ればパチュリーにも会えるだろうし……悪いがここは突破させてもらうぜ」
懐から八卦炉を取り出し、戦闘態勢を整える魔理沙。
それに応じるかのように文とチルノの2人もスペルカードを取り出して構えた。
「すみませんね。これも取材のためですので」
「あたいの力を見せてやる! ……でも3人がかりってずるくない?」
言葉とは裏腹に全く悪びれる様子のない文と、存外良識的なことを口にするチルノ。
前者の実力はいわずもがな、後者だって妖精としては最強クラスであり、気を抜けば苦戦を強いられることは間違いない。
(3対1……さすがにキツイわね。門番の仕事なんて大したことないと思っていたけど……)
表面上は余裕の態度を崩さない咲夜であったが、内心では少なからず焦りを覚えていた。
咲夜自身も相当の手練であるとはいえ、これだけの実力者たちを前にして勝利を収められるかどうか、正直言って怪しい。
(……美鈴はいつも、私たちの見えないところでこんな強敵たちと死闘を繰り広げていたのね)
いえ今日はたまたまです。普段は敵が攻めてくることなど滅多にありません。
(ふっ……少し見直したわ、美鈴)
咲夜は壮絶な勘違いをしたままナイフを取り出すと、迫り来る侵入者たちを迎撃すべく前方へと駆け出していく。
そう、門番としての責務を果たすために――
その頃、パチュリーは地下室で1人死体のように寝転がっていた。
彼女が引き当てたのは(以下略)
警備員などと銘打ってはいるが実際にすることなど何もなく、連日の激務で死にかけだったパチュリーにとっては救い以外の何者でもなかった。
(疲れ果てて死にそう……どうして私がこんな目に……ううっ)
自分がこの2日間で味わった苦行を思い返し、思わず涙を流すパチュリーであった。
そして3日目が終わりを告げ、1日の業務を果たし終えた戦士たちが帰還する。
「――――――」
「――――――」
「――――――」
そこには真っ白に燃え尽きた抜け殻が3体。
それらは昨日の時点で既に廃人だった美鈴とパチュリー、そして3人の襲撃者からその身を犠牲にしてまで館を守り抜いた門番、十六夜咲夜の変わり果てた姿であった。
体力に自信のある美鈴でも、さすがに2日連続のハードワークには耐え切れなかったらしい。
逆に普段から運動不足であるパチュリーは、今日1日休んだ程度ではこれっぽっちも回復できていなかった。
いずれも全員が今回のゲーム――レミリアが主催したこのゲームの犠牲者である。
廃人が増えたよ! やったねレミリアちゃん! とでも皮肉を言ってやりたい。
「だらしがないわね。まだあと1日残ってるんだから、もっとシャキッとしなさいな」
「メイド長って面白いんだね! この3日間で一番楽しかったわ!」
1日中“司書”として図書館で漫画を読んでいたレミリアと、“メイド長”として
ともあれこれでゲームは残すところあと1日だけとなった。
この時点で各々がまだ体験していない役職は1つずつであるため、自動的に明日の分の役職は決定されることとなる。
当主:パチュリー
メイド長:レミリア
司書:咲夜
門番:フランドール
自宅警備員:美鈴
以上が、ゲーム最終日を飾る布陣である。
果たしてこの波乱万丈なゲームはどのような結末を迎えるのか。
そして1人の死者も出すことなく無事に乗り切れるのか。
全ては神のみぞ知る――
◇◇◇ 4 日 目 ◇◇◇
「実は1度やってみたかったのよねー、メイドってやつを」
そう言って“メイド長”レミリア・スカーレットはくるりと一回転してみせた。
フリルの付いたエプロンドレスがひらひらと舞い、その様子を見たレミリアは実に可愛らしい笑みを浮かべる。
見ていて何とも癒される光景……なのだが、それを見ても全く癒されることのない人物がここに1人。
「………………」
“当主”パチュリー・ノーレッジは、無言のままレミリアのことを見据えていた。
その瞳に宿るのは敵意、憎悪、怨恨といった負の感情のオンパレードであり、とてもではないが親友に向ける視線とは思えない。
しかし、彼女がこの3日間でレミリア(の主催したゲーム)によって味わわされた苦痛を考えれば無理もないことだ。
そんな親友の様子に気付くことなく、レミリアはどこまでも気軽な口調で声を掛ける。
「この私にできないことなどあるはずがないわ。どんな仕事でも華麗にこなして見せるから、何でも言ってみなさい!」
と、尊大な態度で“当主”であるパチュリーに向かって言い放つレミリア。実に教育のなっていないメイドだ。
しかしパチュリーはそんな不躾な態度を咎めるでもなく、ぶつぶつと何ごとかを呟いている。
「……本当に、何でも言っていいのね……? そうよね……私は今“当主”だものね……ふふふ」
怪しげな様子で笑うパチュリーを見て「?」と首を傾げるレミリア。
そんな彼女を見つめながらパチュリーはただ一言、命令を下す。
「跪け」
陰湿かつ苛烈な、魔女の復讐劇が幕を開ける。
「今日こそは……今日こそは突破してやる!」
2日連続で門番の前に敗れ去った魔理沙は、熱い意気込みを胸に紅魔館へと向かっていた。
相棒の箒に跨って曇天の下を飛ぶ彼女の横には、同じく昨日敗れ去った文とチルノの姿もある。
本日も助っ人として、あるいは個人的なリベンジのためでもあるのか、彼女ら2人も魔理沙と共に紅魔館を目指していた。
そして、確認できる姿はその3人のものだけではない。
「ねぇチルノちゃん、やっぱりやめた方がいいんじゃ……」
「ったく文のやつ、私はインドア派だっつってんでしょーに……この埋め合わせは必ずしなさいよね!」
「これが終わったら約束どおり宝塔を探すの手伝ってくださいよー? また失くしただなんてナズーリンには言えませんし……」
「私の光学迷彩スーツでこっそり侵入すればいいと思うんだけどなぁ」
そう、今回は新たに4人の頼もしい(?)仲間が加わっていた。
チルノに誘われて何となく付いて来てしまった大妖精。
文に半ば強引に連れてこられた姫海棠はたて。
遺失物の捜索を手伝うという条件でスカウトした寅丸星。
魔理沙と文の共通の知り合いということで、これまた強引に連れてこられた河城にとり。
何というか……実に微妙な組み合わせである。
「よっ、と。ようやく着いたな」
紅魔館の上空付近に到達した魔理沙一行は、律儀にも門の前へと着地する。
当初こそ館内に侵入するのが目的であったが、2度の敗北を経て魔理沙の目的は“門番を倒すこと”へと移行していたのだ。
「さて……出てこい門番! 今日は咲夜か、それともパチュリーか!? 誰だっていい、今日こそは勝たせてもらうぜ!」
威勢良く宣戦布告を下す魔理沙。
その声に応じたかのように、門の陰から本日の“門番”が姿を現す。
「御機嫌よう、侵入者さん♪」
にっこりと、これ以上ないくらい楽しそうな笑みを浮かべて登場したのは、紅魔館の最終兵器ことフランドール・スカーレット。
その姿を捉えた瞬間、侵入者たちの周りの空気は一瞬にして凍りついた。
そんな獲物たちの様子を気に掛けることなく、フランドールは歌うような声で虐殺の開始を宣言する。
「今日でゲームも終わりだし――最後まで楽しく遊びましょう?」
美鈴は地下室で死んでいた。
いや、死んだように寝転がっていた。
彼女が引き当て(以下略)
(………………)
昨日一昨日でこの世の地獄を味わった彼女には、語る言葉どころか流す涙さえ残されてはいない。
その頃、“司書”として図書館に詰めていた咲夜は、昨日1日の体験を経て“門番”という業務について思考をめぐらせていた。
まさか門番があそこまで過酷な仕事だったとは……今まで美鈴にキツく当たりすぎただろうか?
あんな死闘を連日繰り広げていて、たまに侵入を許すのは魔理沙1人ぐらい。それはひょっとしなくともかなり凄いことなのではないだろうか?
その上咲夜は、美鈴が仕事の後で辛そうにしているところを見たことがない。
あれほどの激務を任され、私やパチュリー様からは役立たずと罵られ、それでも辛そうな態度は決して見せようとしない――
咲夜はそんな美鈴に対し、一種の敬意さえ抱くようになっていた。
残念ながらそれらは全て咲夜の勘違いであり、普段の美鈴はただ門の前に突っ立っているだけに等しいのだが……
(明日からはもう少し優しくしてあげよう……そして、彼女が弱みを見せられるような、そんな存在になってあげよう)
生真面目な咲夜の勝手な勘違いのおかげで、本人の知らぬところで美鈴の株価は急上昇していた。
そして――
そしてついに、4日目が終わりを告げる。
「………………」
最終日にして廃人の仲間入りを果たしたレミリア。
「~♪」
諸悪の根源に復讐を果たし、すっかり活力を取り戻したパチュリー。
「ようやくこのゲームも終わりですね……」
ホッと安堵の息を漏らす咲夜。
「思ったより楽しかったねー!」
無邪気な笑みを辺りに振りまくフランドール。
「――――――」
未だに生死の境をさまよい続けている美鈴。
5人が見せる表情は千差万別ではあったが、何はともあれこれでゲームは終了だ。
「お嬢様、最後にゲーム終了の挨拶をお願いします」
「……え? いや……悪いけど、何かを話す気分にはなれな――」
「――レミィ?」
「――ッッ!? は、はい、パチュリー様!」
「貴女が始めたゲームなのだから――最後はしっかり締めなさい」
「わ、分かり……ました」
異常なまでの威圧感を放つパチュリーと、それに対し完全に萎縮してしまっているレミリア。
一体この2人に何があったのか? 事情を知らない咲夜とフランドールは不思議そうに顔を見合わせた。
「そ、それでは僭越ながら……これにて4日間にわたり行なわれた、役職交換ゲームを終了します……はい」
普段のレミリアからは想像もつかないような、何とも情けない挨拶と共にこのゲームは幕を閉じた。
◇◇◇ 後 日 談 ◇◇◇
話をしよう。
あの悪夢のようなゲームから数日後、紅魔館にはいくつかの変化が訪れていた。
まず1つ目の変化は、レミリアと咲夜がフランドールに対してやけに優しくなったことだ。
「ねぇフラン。天気もいいし、たまには皆でピクニックにでも出かけない?」
「い、いいよ別に。館で大人しくしてるから……」
「妹様。苺のタルトとチョコレートシフォンパイが出来上がりましたよ」
「ありがと……でもついさっきショートケーキとレモンパイとモンブランを食べたばっかなんだけど……」
「外に出るのが嫌なら皆でトランプでもしましょうか! それで夕食の後には、姉妹水入らずでお風呂にでも入らない?」
「それはいい考えですわお嬢様! ではその後は妖精メイドたちも交えてパジャマパーティなど如何でしょう? きっと楽しいですよ。ね、妹様」
(なにこれこわい)
それが逆効果となり、フランドールが前にも増して引きこもりがちになってしまうのは、また別のお話。
2つ目の変化は、咲夜の美鈴に対する態度が変わったことである。
「美鈴。門番のお仕事、いつもご苦労様」
「えっ、あ、はい。ありがとうございます……?」
咲夜と館内ですれ違うたびに仕事ぶりを労われたり、疲れていないかなどと心配されるので、美鈴は非常に混乱していた。
自分の評価が上がるようなことをした覚えはないし……一体この扱いの変化は何だというのか?
(もしかして……咲夜さんも門番を経験してみて、日頃の私の苦労が分かったから、とか?)
当たっているようで間違っている。
咲夜の経験した門番の辛さは言ってみれば仮初めのものであり、普段の門番の仕事はあそこまで大変ではない。
それを咲夜が“門番とは辛い仕事だ”と勘違いしてしまっているだけであり、もしあの日魔理沙たちが攻めてこなければこのような事態にはなっていなかっただろう。
しかし、美鈴がそんなことを知る由もない。
(ふふふ……ようやく私の頑張りが認められたってことですね)
咲夜が己の勘違いに気付き、調子に乗りすぎた美鈴が折檻を食らう日まで、そう遠くはない。
そして3つ目の変化――
「あら、おはようレミィ」
「お、おはよう……ございます」
「どうしたの? あのクソみたいなゲームはもう終わったんだから、以前みたいに砕けた口調で話していいのよ?」
「い、いえ、そんな……」
親友であったはずのレミリアとパチュリー。
しかし今、両者の間には明らかな上下関係が構築されつつあった。
2人の関係が以前のものへと修復されるまで、実に1ヶ月近い月日を要したという。
最後に4つ目の変化。
これは館の住人とは直接関係ないのだが、紅魔館を襲撃しようとする輩の数が減ったことである。
その原因は3日連続で門前にて行なわれた“激闘”にあった。
パチュリー、咲夜、フランドールの強キャラコンボによって叩きのめされた人妖たち(主に魔理沙)が、
「紅魔館の攻略難易度がファンタズムまで跳ね上がった!」などと吹聴して回ったからである。
初っ端からEXボスが出てくるなんて聞いたことがないと、話を聞いた者たちは恐れ戦いたという。
その結果、紅魔館に侵入しようとする襲撃者の数は激減したのであった。
このように、レミリアの思いつきから始まったあのゲームは、多くの者たちの心に甚大な傷跡を残した。
それは主催者たるレミリアも例外ではなく、今もなお親友の影に怯える日々を送っている。
しかし、どうしてまたレミリアはあのようなゲームを思いついたのだろうか?
「はぁ……あんなゲームやるんじゃなかったわ」
廊下でたまたますれ違ったパチュリーから逃げるようにして自室に転がり込んだレミリアは、疲れきった様子で溜息を吐いた。
そうしてふと、自室のテーブルの上に目を向ける。
、、、、、、
「面白そうな本だったから参考にしてみたけど……これで理想の上司とやらになれたのかしら……?」
レミリアの視線の先、小さな円形テーブルの上には1冊の本が無造作に置かれている。
その本の表紙には大きな文字で堂々と、こう書かれていた……
『理想の上司の条件! ~“相手を演じてみる”ことで、部下の気持ちを知る技術~』
後日、この本をレミリアの自室で発見したパチュリーは全てを悟り、その場でビリビリに破り捨てたという。
それは本を何よりも愛する人物が、自らの手で本を破壊するという大変貴重なシーンであった――
自宅警備員の「流す涙」ネタが色とりどりで面白かったです。
最後はレミィが理想の上司になりたい!って可愛い欲望でこんなカオスが…、
と思うとちょっとレミィがかわいそうに思えたり…。
いつかきっと多分恐らくもしかしたら、みんなの理想の当主様になれるよ!
個人的にほのぼの系が好きなので、こんな感想になってしまいました。
よければ最後が大団円のパターンも(ゲフゲフ
パチェとおぜうの最終日の内容が気になるw
一体どんな事を…。
しかし、フランの役職(?)でフランがいるわけじゃないんだから妖精メイドくらい派遣してやれよwww
>パチュリーとレミリアの中が元に戻るまで1ヶ月近く~。
>パチェとすれちがい様に逃げるように~。
全然元に戻ってないwwwむしろよそよそしいwww
の一言で、全てが完成されたネタになった気がします。
楽しく読ませて頂きました♪
「跪け」の後にはきっと「命乞いをしろ」とかどこぞの大佐みたいなことを言っているんだろうと想像してみましたw
もう一寸の狂いもありません。
所々センスも感じました。
愛も感じましたw
この人があの役職についたらどんな感じになるのかな、と妄想してた事を全てやってくれた感じでした。
ありがとうございました!
文章の書き方とか、話の持って行き方、登場人物の動かし方など、
全てが良かったと思います♪
念の為
萎縮しまくったレミリアが哀れと言うか、可愛いと言うかw
誤字報告
>>味あわされた苦痛を考えれば無理もないことだ。
味わわされた
ご指摘ありがとうございます!
お恥ずかしい・・・修正しておきます
欲を言えば一日ごとに一つの役職でいいからもっと詳しい描写が見たかったです
6人だとさすがにマンネリ化してしまうから仕方ないのか。
当初は小悪魔も登場させるべきかどうか悩んだのですが、
①さすがに6人となると話が長くなりすぎてしまう
②小悪魔の役職が思いつかなかった(司書だとパチュリーと被ってしまうので……)
③原作で台詞無し→キャラがよく分からないので上手く書き切る自信がなかった
これらの理由から小悪魔には休んでもらうことにしました
“小悪魔もちゃんといるよ!”ということを示すために名前だけは登場させたのですが・・・
小悪魔すまぬ・・・
そしてフランに撃退された魔理沙たちはよく皆生還できたなあw