ーカラン
「いらっしゃ……何だ霊夢か……」
「入ってきた客に対してその反応は酷いわよ。」
「客だったらこんな反応はしない!」
「まあ、たしかに何も買わないけど。でもいつもはそこまでの反応じゃないじゃない。」
「今日はすでに二人も来ているから今度も客だと思ったんだよ。」
「二人も?……これは異変かしら。」
「さすがにそれは酷いんじゃないか?……まあたしかに見栄を張ったさ。実際は一人とその従者だよ。」
「ああ、じゃあ異変じゃなくて宴会ね。」
「客だよ。で、今日は何の用だい?」
「暇つぶし。」
「……さ、仕事仕事。」
「やる事ないでしょうが。」
「うるさい。って、いつの間にお茶を用意している?」
「最初からよ。はい、お茶。」
「ありがとう……って、また高価なものを。あと、そこで飲むな。本の上に座るな。」
「いつも私が座る場所に本を置く霖之助さんが悪いのよ。」
「そもそも客ではない奴に席を与えるわけがないだろう。ほら、どけ。本を片付ける。」
「別に私の本なんだからどうしたって良いじゃない。」
「……いろいろと言いたいところはあるが、まず何が『私の』本だ。それはどう見たって僕のだろう。君がこんな本読むわけがない。」
「私のよ。私が霖之助さんに貸した本だもの。」
「……ああ、そういえばこれは変な妖怪が持っていた本か。確かにこの本は君から手に入れたものだが、きちんとした交渉の上で僕のものにしただろう。」
「でしょう。つまり私が貸しているのよ。」
「何を言っているんだ。これは僕のものだ……」
---カラン、カラッ
「駄目だぜ香霖、霊夢は話を聞かないぞ。」
「……判っているさ、あとそれは君も同じだ。」
「霊夢、神社で宴会だって妖怪が騒いでるぞ。」
「やっぱり……。」
「霊夢、こちらの話を聞け。あとで魔理沙にも話がある。」
「じゃ、夜までここで暇をつぶしているぞ。」
「そういうことで。」
「お前等話を聞け!」
「で、何だ話って?」
「君は……はぁ、まあいいや。取りあえず伝えるよう言われたことを言っておく。」
「?」
「図書館から、本を返せと。……お前、また盗んだか。」
「いつか返すと伝えておけ。」
「自分で言え。全然懲りてないなお前。」
「うん。」
「可愛く言っても無駄だ。お前等少しは……いや普通の人ぐらいには本を大事にしろ。」
「自分の本は大切にするさ。」「自分の本なら大切にするわよ。」
「嘘だ……特に霊夢。お前は先ほどまで自分がしてきた事を思い出せ。」
「お茶を飲んでいたわ。」
「違う、そこではない……まあいい。僕の言いたい事は書物を軽く見すぎない事だ。」
「?どういうことだ?」
「深く考えないで聞くな。まずは自分で考えろ。」
「毎度の事だがお前の言い方が悪い。そんなんじゃきちんと相手に伝わらないぜ。」
「確かにその通りかもしれないが、お前に説教される筋合いはない。……つまりそんなに乱雑に扱うと、書物は化けるという事だ。」
「化ける?つまり妖怪になるってこと?」
「正確に言うと付喪神の方が近いが、どちらも似たようなものだし間違ってはいないな。」
「だったら倒せば良いだけでしょう?」
「お前は曲がりなりにも巫女だろう!まさか本気でいったわけではないな?」
「曲がりなりにもって何よ。」
「不完全という意味だ。で、どうなんだ?」
「……。」
「お前……。」
「そんなことは良いからさっさと話を進めようぜ。」
「いや、これは結構重大な問題だ。博麗神社の文献をこいつは失わせるどころか、妖怪にさせるかもしれないのだぞ。」
「あまりそんな面白くなさそうなものには触れていないわ。きちんとしまってあるわよ。」
「良かった……、絶対に粗末に扱うなよ。」
「その話は気になるぜ。」
「博麗神社のことだから、僕も良くは知らないけどね。……おい、間違っても盗もうとか考えるなよ。」
「多分大丈夫よ。博麗神社は色々な結界で守られているから。」
「その割には普通にご神体とこんにちはできたけどな。」
「……その話は少し気になるが、とにかくそれ以外の本も大事に扱え。お前らの扱いが酷すぎる。」
「失礼な、どこを見てそんなことを。」
「お前はもうしゃべるな。」
「……。」
「何の話だっけ。」
「----っ!」
「まあまあ、お茶でものんで落ち着いて。」
「……そう、書物の話だ。書物は歴史書も小説も随筆も、どんな種類の本も様々な念を込められて作られる。特に魔導書なんかそれがないと意味がない。そこらは魔理沙の専門だろ。」
「……。」
「……まあいい。霊夢もだ。推測でものをいうが、お前もいつかは博麗神社に文献を残すんじゃないのか?」
「面倒よねえ。」
「ともかく強い意味があり、強い念が込められた書物は化けたら恐ろしいものになりやすい。」
「倒せば良いじゃない。現にあの後ろから弾幕を出す奴も倒したし。」
「あれは本を持っていただけだろう。風貌から鳥類の妖怪だと思うのだが。まあそれはどうでもいい。倒せば良いと言ったが、単純に倒せばいいものなら良いが、それだけではない呪いを残す妖怪や、そもそもの力が強大すぎて倒せないかもしれないだろう。」
「ああ、あったわね。紙舞だったかしら。周りのものを乗っ取っていく奴。」
「ん?何だいそれは。」
「文の新聞が化ける妖怪だって。何でも読まないと化けるらしいわ。」
「いや、紙舞はただ紙を舞い上がらせて人を驚かす妖怪だったような……。」
「でも、文がそう言ってたし、実際見たのよ。一斉に舞う新聞紙を。」
「お前は騙されやすい所があるしね。特に天狗の言う事だし、信じにくいな。でもその妖怪は僕にとっては恐くないね。」
「何で……って、ああ。」
「きちんと新聞を読んでいるからだ。」
「暇人ねえ……。」
「話を戻そう。そのような力を持つ紙舞がいるかはともかく、その『周りのものを乗っ取ってゆく』のように強大な力を持つものに化けられたら、いかに博麗の巫女と言えど苦労するだろう。」
「私にとっては暇つぶしになるわよ。」
「……お前は幻想郷を守る立場なのに、異変を起こす気か?だから博麗神社は妖怪神社と呼ばれるんだ。」
「……。」
「巫女としての、いや人間という種族の最低限のわきまえぐらいはつけろ。そもそも神を祀るお前が紙を大事にしないんじゃ、お賽銭が来ないのも全て自業自得だ。」
「お賽銭……。」
「……まあいい。自業自得につきあう気はない。で、さっきから魔理沙は黙っているが、話を聞いているのか?」
「……。」
「おい、答えろ。」
「黙ってろって言ったのはお前だろ。」
「……。」
「はい、お茶。」
「……ふぅ、ああいいさ。もう黙っていなくていいよ。」
「じゃあ感想を言うか。」
「あんた何様よ。」
「お前こそなんだ。じゃあ始めるが、お前ただ語りたかっただけだろう。」
「……そう思ったのならそれで良いよ。」
「いつにもまして気力がないわね。」
「お前もその理由の一つだ。」
「あと、妖怪やらなにやらで脅しでもしてる気か?だったら無駄だぞ。逆に楽しんでみたくなる。」
「そうかい。……やっぱり、お前等はもう何を言っても治らないかな。もう本を君たちの手の届かない場所に置くしかないか。」
「何で私も含まれているのよ。」
「もうこの話が始まったことも記憶にないのか?」
「ともかく、そんな脅しじゃ効果ないぞ。まあ本を大事に扱うということぐらいは、心の片隅に入れとくか。」
「言ったな。じゃあこれからはもう泥棒するなよ。」
「もちろん。借りるだけだ。」
「いらっしゃ……何だ霊夢か……」
「入ってきた客に対してその反応は酷いわよ。」
「客だったらこんな反応はしない!」
「まあ、たしかに何も買わないけど。でもいつもはそこまでの反応じゃないじゃない。」
「今日はすでに二人も来ているから今度も客だと思ったんだよ。」
「二人も?……これは異変かしら。」
「さすがにそれは酷いんじゃないか?……まあたしかに見栄を張ったさ。実際は一人とその従者だよ。」
「ああ、じゃあ異変じゃなくて宴会ね。」
「客だよ。で、今日は何の用だい?」
「暇つぶし。」
「……さ、仕事仕事。」
「やる事ないでしょうが。」
「うるさい。って、いつの間にお茶を用意している?」
「最初からよ。はい、お茶。」
「ありがとう……って、また高価なものを。あと、そこで飲むな。本の上に座るな。」
「いつも私が座る場所に本を置く霖之助さんが悪いのよ。」
「そもそも客ではない奴に席を与えるわけがないだろう。ほら、どけ。本を片付ける。」
「別に私の本なんだからどうしたって良いじゃない。」
「……いろいろと言いたいところはあるが、まず何が『私の』本だ。それはどう見たって僕のだろう。君がこんな本読むわけがない。」
「私のよ。私が霖之助さんに貸した本だもの。」
「……ああ、そういえばこれは変な妖怪が持っていた本か。確かにこの本は君から手に入れたものだが、きちんとした交渉の上で僕のものにしただろう。」
「でしょう。つまり私が貸しているのよ。」
「何を言っているんだ。これは僕のものだ……」
---カラン、カラッ
「駄目だぜ香霖、霊夢は話を聞かないぞ。」
「……判っているさ、あとそれは君も同じだ。」
「霊夢、神社で宴会だって妖怪が騒いでるぞ。」
「やっぱり……。」
「霊夢、こちらの話を聞け。あとで魔理沙にも話がある。」
「じゃ、夜までここで暇をつぶしているぞ。」
「そういうことで。」
「お前等話を聞け!」
「で、何だ話って?」
「君は……はぁ、まあいいや。取りあえず伝えるよう言われたことを言っておく。」
「?」
「図書館から、本を返せと。……お前、また盗んだか。」
「いつか返すと伝えておけ。」
「自分で言え。全然懲りてないなお前。」
「うん。」
「可愛く言っても無駄だ。お前等少しは……いや普通の人ぐらいには本を大事にしろ。」
「自分の本は大切にするさ。」「自分の本なら大切にするわよ。」
「嘘だ……特に霊夢。お前は先ほどまで自分がしてきた事を思い出せ。」
「お茶を飲んでいたわ。」
「違う、そこではない……まあいい。僕の言いたい事は書物を軽く見すぎない事だ。」
「?どういうことだ?」
「深く考えないで聞くな。まずは自分で考えろ。」
「毎度の事だがお前の言い方が悪い。そんなんじゃきちんと相手に伝わらないぜ。」
「確かにその通りかもしれないが、お前に説教される筋合いはない。……つまりそんなに乱雑に扱うと、書物は化けるという事だ。」
「化ける?つまり妖怪になるってこと?」
「正確に言うと付喪神の方が近いが、どちらも似たようなものだし間違ってはいないな。」
「だったら倒せば良いだけでしょう?」
「お前は曲がりなりにも巫女だろう!まさか本気でいったわけではないな?」
「曲がりなりにもって何よ。」
「不完全という意味だ。で、どうなんだ?」
「……。」
「お前……。」
「そんなことは良いからさっさと話を進めようぜ。」
「いや、これは結構重大な問題だ。博麗神社の文献をこいつは失わせるどころか、妖怪にさせるかもしれないのだぞ。」
「あまりそんな面白くなさそうなものには触れていないわ。きちんとしまってあるわよ。」
「良かった……、絶対に粗末に扱うなよ。」
「その話は気になるぜ。」
「博麗神社のことだから、僕も良くは知らないけどね。……おい、間違っても盗もうとか考えるなよ。」
「多分大丈夫よ。博麗神社は色々な結界で守られているから。」
「その割には普通にご神体とこんにちはできたけどな。」
「……その話は少し気になるが、とにかくそれ以外の本も大事に扱え。お前らの扱いが酷すぎる。」
「失礼な、どこを見てそんなことを。」
「お前はもうしゃべるな。」
「……。」
「何の話だっけ。」
「----っ!」
「まあまあ、お茶でものんで落ち着いて。」
「……そう、書物の話だ。書物は歴史書も小説も随筆も、どんな種類の本も様々な念を込められて作られる。特に魔導書なんかそれがないと意味がない。そこらは魔理沙の専門だろ。」
「……。」
「……まあいい。霊夢もだ。推測でものをいうが、お前もいつかは博麗神社に文献を残すんじゃないのか?」
「面倒よねえ。」
「ともかく強い意味があり、強い念が込められた書物は化けたら恐ろしいものになりやすい。」
「倒せば良いじゃない。現にあの後ろから弾幕を出す奴も倒したし。」
「あれは本を持っていただけだろう。風貌から鳥類の妖怪だと思うのだが。まあそれはどうでもいい。倒せば良いと言ったが、単純に倒せばいいものなら良いが、それだけではない呪いを残す妖怪や、そもそもの力が強大すぎて倒せないかもしれないだろう。」
「ああ、あったわね。紙舞だったかしら。周りのものを乗っ取っていく奴。」
「ん?何だいそれは。」
「文の新聞が化ける妖怪だって。何でも読まないと化けるらしいわ。」
「いや、紙舞はただ紙を舞い上がらせて人を驚かす妖怪だったような……。」
「でも、文がそう言ってたし、実際見たのよ。一斉に舞う新聞紙を。」
「お前は騙されやすい所があるしね。特に天狗の言う事だし、信じにくいな。でもその妖怪は僕にとっては恐くないね。」
「何で……って、ああ。」
「きちんと新聞を読んでいるからだ。」
「暇人ねえ……。」
「話を戻そう。そのような力を持つ紙舞がいるかはともかく、その『周りのものを乗っ取ってゆく』のように強大な力を持つものに化けられたら、いかに博麗の巫女と言えど苦労するだろう。」
「私にとっては暇つぶしになるわよ。」
「……お前は幻想郷を守る立場なのに、異変を起こす気か?だから博麗神社は妖怪神社と呼ばれるんだ。」
「……。」
「巫女としての、いや人間という種族の最低限のわきまえぐらいはつけろ。そもそも神を祀るお前が紙を大事にしないんじゃ、お賽銭が来ないのも全て自業自得だ。」
「お賽銭……。」
「……まあいい。自業自得につきあう気はない。で、さっきから魔理沙は黙っているが、話を聞いているのか?」
「……。」
「おい、答えろ。」
「黙ってろって言ったのはお前だろ。」
「……。」
「はい、お茶。」
「……ふぅ、ああいいさ。もう黙っていなくていいよ。」
「じゃあ感想を言うか。」
「あんた何様よ。」
「お前こそなんだ。じゃあ始めるが、お前ただ語りたかっただけだろう。」
「……そう思ったのならそれで良いよ。」
「いつにもまして気力がないわね。」
「お前もその理由の一つだ。」
「あと、妖怪やらなにやらで脅しでもしてる気か?だったら無駄だぞ。逆に楽しんでみたくなる。」
「そうかい。……やっぱり、お前等はもう何を言っても治らないかな。もう本を君たちの手の届かない場所に置くしかないか。」
「何で私も含まれているのよ。」
「もうこの話が始まったことも記憶にないのか?」
「ともかく、そんな脅しじゃ効果ないぞ。まあ本を大事に扱うということぐらいは、心の片隅に入れとくか。」
「言ったな。じゃあこれからはもう泥棒するなよ。」
「もちろん。借りるだけだ。」
霊夢と魔理沙をお前と呼んでいるとことかじゃないでしょうか?
辛口で行きますよ。
一つ、「」の台詞文章の最後に『。』は要りませんよ。
演出なら構いませんが、どうも違うようで。
二つ、全体的にやや喧嘩腰ですが、彼らは一体何に怒っているのでしょうか。
口調や表現も相まって、ややもすれば殺伐とした雰囲気が伝わってきます。
こーりんがストレートに毒舌なのも、それに拍車をかけているようです。
『普通に仲が悪いにも関わらず、何となく顔を合わせる腐れ縁達』として書かれた話なら、逆に合っているとは思いますが、今度は逆に陰険さが足りませんね。
三つ、他のコメントでも指摘されていますが、地の文章が足りないと思います。
もちろん演出として省かれているのなら問題はありませんが、それを補う事はできていないようで。
二次創作の利点として、読者側である程度の脳内補完はされますが、それにも限度があるでしょう。
これでは単なる手抜きです。
四つ、魔理沙は私の嫁。
五つ、『本の取り扱いとその応報』と言う物語の着眼点は良かったと思います。
しかし、こーりんが本気で嫌がっているにも関わらず、2人が態度を改めようとしないのが不可思議ですね。
私がこーりんなら、物理的に叩き出してますよ。あいつら。
ここら辺も違和感でしょうか。
六つ、物語の着眼点は良かったとは言いましたが、残念ながら練りが甘いと思いました。
本に宿る情念や魔力、付喪神の存在、紙舞の話など膨らませようとはしているようには見受けられますが、結局は概念的な話だけで終わってしまっていますね。
警告としては微妙ですし、怪談としては物足りません。
何だかはぐらかされたような気になりました。
霊夢ではありませんが、「ふーん、それで?」と。
そうなってくると、こーりんの喧嘩腰も必死に子供を脅かそうと四苦八苦しているようにしか見えません。
七つ、魔理沙は私の嫁。
とは言え、「黙ってろと言われたから黙ってた」にはイラッ☆としました。子供か!
……ああ、子供か。
おこさまりさ可愛い。ダメだ私。
以上の事を踏まえて、こんな点数です。
辛口でしたけど、割と楽しく読みましたよとだけ。
霖之助が霊夢達を呼ぶ時は、基本的にはお前じゃなくて君だったと思います。
霊夢が霖之助を呼ぶ時も、名前で呼ぶ以外には基本的には貴方だった気が。あんたと呼んだこともありましたけど。
あと霖之助の性格がちょっとキツイ気がします。こんなもんだと言われたらそんな気もしますが。
作者のアレンジによる多少の語尾の変化は二次創作の醍醐味だと思いますし、一概に悪とは思わないですが、本作での言動からは粗野なイメージが強く、あまり好感が持てませんでした。人物像について個人的な好き嫌いで言えば、嫌いなタイプです。
本に関する妖怪についての考察を題材にするならば、それを語るキャラに理知的なイメージを与えた方が効果的だったのではないかと思います。