目を開いて一番にはいって来たのはいつもの寝室の天井ではなく、見知らぬ天井だった。
着ているものもいつもの無粋な寝まきではなく、私のような年ごろの女の子が身につけているようなファンシーなものだった。よく見ると、布団がベットに変わっていたりもした。
「どこ?」
こんな辺鄙な状況に置かれていても、開口一番がこれだ。いつもの異変解決で馴れてしまっているのかもしれない。
部屋の中を観察しようとベットから這いだすと、部屋のドアがノックされた。
「霊夢、起きてる?」
「うん、起きてるよ。どうしたの?お母さん」
おかしい。私の母はもうこの世にはいなかったはず。なのにどうして『お母さん』などと口から軽く出てきたのだろう?
「休日だからっていつまでも寝かせてるわけにはいかないもの。朝ごはんができたから呼びに来たの」
「わかったわ、すぐ行く」
私のお母さんらしい人の足音が遠ざかるのを見計らって私は部屋から出た。
部屋から出てみると、いつもの神社とはかってが全く違っていた。洋式の住宅なのだ。
「これじゃあ、トイレの場所も分からないかもしれないわね……」
と呟きながら階段を下りていくと、Tシャツに半ズボンというい出立ちで洗面所(扉にプレートが貼ってあっただけ なので、詳しくはわからないけれど)から出てきたところだった。
「おお、起きてきたのか霊夢。今日は早いんだな」
「お母さんに起こされたの」
『この人が……、私のお父さん』
一度写真で見たことがあるので顔は知っていた。
するとお父さんは手を伸ばしてきて、ふいに私の頭をグシャグシャっと乱暴になでまわした。
「ちょ、何するのよ。髪がグシャグシャになっちゃうじゃない」
「いやあ、霊夢が可愛くて。つい、な」
頭を誰かになでられる。そんなのは久しぶりだった。私はそこに、家族の暖かさを感じ取っていた。
「もう、そんなことしてないで。お母さんがまってるよ」
照れ隠しに顔を隠しながら私はリビングの食卓へと向かった。
*
朝食を食べ終えた私は、とりあえず身辺の調査から始めることにした。
結果からいえば、この世界での霊夢の記憶は今の私と共有されているようだ。
そうすれば家の食卓の場所がわかったのも、父や母と何ら変わりなく会話ができたというのもつじつまが合う。
「とりあえず、どこから行けばいいんだろう?」
この世界は、幻想郷とはかってがまるで違う。一番の問題はそこだった。
まだこの世界の霊夢の記憶も、全てが私のものになっているわけではなかった。
「霊夢、あなたにお客さんよ」
『誰かが来た』そのことに私は少なくはない希望を抱いた。
「誰?」
「よう、霊夢!久しぶりだな」
「もしかして、まりさ。魔理沙なの!?」
「そうだぜ!私がいない間元気してたか?」
これはうれしい。私が来客者に抱いた希望は、決して無駄ではなかったのだ。
魔理沙の存在を確認するように私は魔理沙を強く抱きしめた。
「ふふ、霊夢ったら。魔理沙ちゃんとももう6年もあってなかったもんね~」
「そう、なの。どうりで久しぶりに会った感じがすると思ったわ」
しばらくの間、そんなやり取りをしていると玄関のドアが開く音がした。
「こんにちは博霊さん。ご無沙汰してます~」
「霧雨さんも、お久しぶりです~」
こうしてしばらくの間、私たちは思い出話を聞いたりして午前中を過ごした。
そして、午後である。
私は魔理沙に連れられて、町中の魔理沙の知り合いに会いに行った。
会いに行った知り合いには見知った顔が多い、と言うより皆知っている顔だった。
「え~と、アリスには会いに行っただろ?それに蓬莱山一家にも会いに行ったし。他にも、慧音に妹紅に霖之助……。なあ、霊夢。他に会いに行ってないところあるか?」
「そうねえ。咲夜さんちなんかまだじゃなかったかしら?」
「あ~十六夜家か。あそこは遠いからまた明日だな」
「そうね」
私と魔理沙は約束を交わしてお互いの家に帰った。ちなみに霧雨家は隣の家らしい。
次の日、大きな館にたどり着いた私がみたこっちの世界のレミリアがカリスマブレイクされていたことは、また別の話。
※※※
『今日の成果』
・幻想郷メンバーはこの世界にも存在している。
・永遠亭メンバーは全員が名字を『蓬莱山』に改名。
・もことけーねはふうふ、ふうふ。(※同棲です)
※※※
私がこの世界に来てから、もう1週間がたった。
いまだに元の世界からのアクションはない。
1週間もすると、私はこの世界にすっかり依存してしまっていた。
『あっちの世界よりこっちの世界のほうがいいな~。巫女仕事ないし』なんて思っている始末だ。
「おい、霊夢。お~い」
いけない、考え事していて魔理沙に気付けなかった。
「ごめんね、魔理沙。で、なに?」
「なあ、あそこに居るの紫じゃないか?」
……、何ですって?
「どこ!?」
「ほら、あそこの店にさ」
確かに、あの日傘は紫だ。しかし、幻想郷の紫とは全く違う長袖のシャツに、ジーンズという服装をしていた。
「お~い、ゆかり~」
「あら?魔理沙じゃない。帰ってきていたの?」
「そうだよ。いや~久しぶりだなあ」
「そうね。そっちに居るのは霊夢かしら?」
「ええ、こんにちは。紫」
その後、私たちは紫の家にお邪魔することになった。
魔理沙が『久しぶりに紫ん家に行きたくなったんだぜ!!』と言いだしたのだ。
「実はね、私新居を構えたの。ほら、そこよ」
曲がり角を曲がった先には『八雲孤児院』と書かれたプレートを輝かせる、建物があった。
「あ~紫だ~、おかえり~」
「はい、ただいま。皆、いい子にしてた?」
なんということだろう。そこにはチルノを始め、大妖精やミスティア、ルーミアに橙がいた。よく見たらちび萃香までいる。
「皆孤児なのよ。まったく、生むならちゃんと責任を持ちなさいっての。あ、橙は別よ?」
中に入ると藍がエプロン姿で出迎えてくれた。もちろん尻尾はない。
「紫さん、おかえりなさい」
「ただいま藍。急だけど、部屋を一つ用意してくれる?」
「わかりました」
「悪いけれど、魔理沙はあの子たちと遊んでいてくれない?」
「う~、わかったよ」
魔理沙が行ったのを見届けた後、私は紫と藍が用意してくれた部屋に通された。
部屋の雰囲気はこの世界にしては異質なものだった。
「久しぶりね?霊夢」
「なんで、私はこの部屋に通されたのかしら?」
「それはね、私があなたに聞きたいことがあったからよ」
そういった紫の眼を見ると、いつもの紫の目をしていた。幻想郷を管理し、全てを支配するような胡散臭さをはらんだ眼。
「もしかして……、あなた本当の紫なの?」
「ええ、そうよ。ちなみにそっちの藍も本物よ」
おどろいた、もう幻想郷の本物には会えないと踏んでいたのだから。
「さて、話の内容を率直に言うとね。あなたは元の世界に戻りたいか?っていうことなのよ」
「元の世界に戻る?」
「そう、勘のいいあなたのことならもう気づいてるかもしれないけれど、ここはあなたの望すべてが叶った世界なの」
「私の、望がすべて」
「あなたがもといた世界の幻想郷を放棄するのならそれでもいいわ」
「……」
私は押し黙ってしまった。
私の望がすべて叶った世界なのだ。そんなの手放したくないに決まっているじゃないか。
「とりあえず話はここまで。そうね、私たちがここに残れるのが後2日ぐらいだからそれまでに答えを出してちょうだい。」
その後、チルノ達とあそばせていた魔理沙と一緒に私は孤児院を後にした。
*
「なあ、霊夢」
「なによ、魔理沙」
「お前、何そんな悲しそうな顔してしてるんだ?」
私が、悲しそうな顔をしている?
「そんなっ、でたらめ言わないでよ」
「でたらめなんかじゃない。霊夢、何があったんだ?」
「なんでもいいじゃない、あなたには、関係ないんだから」
もうやめて、魔理沙。
「私、ときどき思ってたんだ。お前、私の知ってる霊夢じゃないんだろ?」
「!?」
「もういいんだぜ?嘘なんかつかなくたってさ」
その瞬間、私の心の中で煮詰まっていたものが、思いのすべてがはじけ飛んだ。
なんでだろう?
「なんでなんだろうね、魔理沙。こっちの世界でも、あなたはちっとも変わらない」
私たちは帰り道の河川敷で座り込んでいた。
あのあと、ここに来るまで私の抱えていたすべてを魔理沙に話したのだ。
「なるほどな……、そんなことがあったのか」
「うん」
「でもさ、霊夢がこの世界を捨てたって向こうの世界『幻想郷』だっけ?そこではこっちの世界のやつらも皆生きてるんだろ?」
「うん」
「ならいいじゃないか、そっちで生きてたって」
「え?」
「私と遊んでた時の霊夢、ちょっとつまらなそうだった」
「……」
「きっと霊夢にとっては向こうのほうが楽しかったんだ、違うか?」
そうだ。
どんなに巫女仕事が面倒臭くたって。
吸血鬼たちや蓬莱人たちや神様たちが面倒事を起こしたって。
向こうの世界は私にとってかけがえのないものだったんだ。
「なあ、霊夢。最後にさ」
「なに?」
「その、キス、してくれないか?」
「はあ!?」
「その、最後の思い出にさ。霊夢は向こうの世界に帰るって決めたんだろうしさ」
この魔女にはすべて筒抜けってわけね。
「いいわよ。じゃあ、恥ずかしいから目つぶって」
「なんか恥ずかしいぜ」
「じゃあ、いくわよ」
私と魔理沙の唇が優しく触れる。
優しく触れて、そのあとは……。
「さようなら、私の願った幻想郷」
*
「結局霊夢はこっちの世界を選んだのね」
「はたから見ると紫様意地悪いですよ?」
「しょうがないじゃない、いきなりあの子が並行世界作ったと思ったら、そっちに飛んじゃうんだもの」
「そうだとしても、存在しない期限なんか設けて追い詰めるのはよくなかったのでは?」
「そうかもしれないわ。けれど、今回のことであの子はさらに強くなった」
「そんなもんですか」
「ええ、けれどもう一つ世界を作っちゃうなんて。あの子はどこまですごいのかしらね」
「それも、博霊の巫女の力のうちなのでしょうか?」
「わからない。けれど、それだけ霊夢にも考えるところがあったのよ。この幻想郷に」
今覗いているスキマにはわが子のように親しんできた霊夢の姿がある。
あれだけの異変を起こしておいて気持ちよさそうに眠っている。
「なんだか眠くなってきちゃったわ、藍。引き続き霊夢の監視よろしく」
「分かりました、紫様」
お疲れ様、霊夢。
「今宵はなんだかいい夢が見れそうだわ」
着ているものもいつもの無粋な寝まきではなく、私のような年ごろの女の子が身につけているようなファンシーなものだった。よく見ると、布団がベットに変わっていたりもした。
「どこ?」
こんな辺鄙な状況に置かれていても、開口一番がこれだ。いつもの異変解決で馴れてしまっているのかもしれない。
部屋の中を観察しようとベットから這いだすと、部屋のドアがノックされた。
「霊夢、起きてる?」
「うん、起きてるよ。どうしたの?お母さん」
おかしい。私の母はもうこの世にはいなかったはず。なのにどうして『お母さん』などと口から軽く出てきたのだろう?
「休日だからっていつまでも寝かせてるわけにはいかないもの。朝ごはんができたから呼びに来たの」
「わかったわ、すぐ行く」
私のお母さんらしい人の足音が遠ざかるのを見計らって私は部屋から出た。
部屋から出てみると、いつもの神社とはかってが全く違っていた。洋式の住宅なのだ。
「これじゃあ、トイレの場所も分からないかもしれないわね……」
と呟きながら階段を下りていくと、Tシャツに半ズボンというい出立ちで洗面所(扉にプレートが貼ってあっただけ なので、詳しくはわからないけれど)から出てきたところだった。
「おお、起きてきたのか霊夢。今日は早いんだな」
「お母さんに起こされたの」
『この人が……、私のお父さん』
一度写真で見たことがあるので顔は知っていた。
するとお父さんは手を伸ばしてきて、ふいに私の頭をグシャグシャっと乱暴になでまわした。
「ちょ、何するのよ。髪がグシャグシャになっちゃうじゃない」
「いやあ、霊夢が可愛くて。つい、な」
頭を誰かになでられる。そんなのは久しぶりだった。私はそこに、家族の暖かさを感じ取っていた。
「もう、そんなことしてないで。お母さんがまってるよ」
照れ隠しに顔を隠しながら私はリビングの食卓へと向かった。
*
朝食を食べ終えた私は、とりあえず身辺の調査から始めることにした。
結果からいえば、この世界での霊夢の記憶は今の私と共有されているようだ。
そうすれば家の食卓の場所がわかったのも、父や母と何ら変わりなく会話ができたというのもつじつまが合う。
「とりあえず、どこから行けばいいんだろう?」
この世界は、幻想郷とはかってがまるで違う。一番の問題はそこだった。
まだこの世界の霊夢の記憶も、全てが私のものになっているわけではなかった。
「霊夢、あなたにお客さんよ」
『誰かが来た』そのことに私は少なくはない希望を抱いた。
「誰?」
「よう、霊夢!久しぶりだな」
「もしかして、まりさ。魔理沙なの!?」
「そうだぜ!私がいない間元気してたか?」
これはうれしい。私が来客者に抱いた希望は、決して無駄ではなかったのだ。
魔理沙の存在を確認するように私は魔理沙を強く抱きしめた。
「ふふ、霊夢ったら。魔理沙ちゃんとももう6年もあってなかったもんね~」
「そう、なの。どうりで久しぶりに会った感じがすると思ったわ」
しばらくの間、そんなやり取りをしていると玄関のドアが開く音がした。
「こんにちは博霊さん。ご無沙汰してます~」
「霧雨さんも、お久しぶりです~」
こうしてしばらくの間、私たちは思い出話を聞いたりして午前中を過ごした。
そして、午後である。
私は魔理沙に連れられて、町中の魔理沙の知り合いに会いに行った。
会いに行った知り合いには見知った顔が多い、と言うより皆知っている顔だった。
「え~と、アリスには会いに行っただろ?それに蓬莱山一家にも会いに行ったし。他にも、慧音に妹紅に霖之助……。なあ、霊夢。他に会いに行ってないところあるか?」
「そうねえ。咲夜さんちなんかまだじゃなかったかしら?」
「あ~十六夜家か。あそこは遠いからまた明日だな」
「そうね」
私と魔理沙は約束を交わしてお互いの家に帰った。ちなみに霧雨家は隣の家らしい。
次の日、大きな館にたどり着いた私がみたこっちの世界のレミリアがカリスマブレイクされていたことは、また別の話。
※※※
『今日の成果』
・幻想郷メンバーはこの世界にも存在している。
・永遠亭メンバーは全員が名字を『蓬莱山』に改名。
・もことけーねはふうふ、ふうふ。(※同棲です)
※※※
私がこの世界に来てから、もう1週間がたった。
いまだに元の世界からのアクションはない。
1週間もすると、私はこの世界にすっかり依存してしまっていた。
『あっちの世界よりこっちの世界のほうがいいな~。巫女仕事ないし』なんて思っている始末だ。
「おい、霊夢。お~い」
いけない、考え事していて魔理沙に気付けなかった。
「ごめんね、魔理沙。で、なに?」
「なあ、あそこに居るの紫じゃないか?」
……、何ですって?
「どこ!?」
「ほら、あそこの店にさ」
確かに、あの日傘は紫だ。しかし、幻想郷の紫とは全く違う長袖のシャツに、ジーンズという服装をしていた。
「お~い、ゆかり~」
「あら?魔理沙じゃない。帰ってきていたの?」
「そうだよ。いや~久しぶりだなあ」
「そうね。そっちに居るのは霊夢かしら?」
「ええ、こんにちは。紫」
その後、私たちは紫の家にお邪魔することになった。
魔理沙が『久しぶりに紫ん家に行きたくなったんだぜ!!』と言いだしたのだ。
「実はね、私新居を構えたの。ほら、そこよ」
曲がり角を曲がった先には『八雲孤児院』と書かれたプレートを輝かせる、建物があった。
「あ~紫だ~、おかえり~」
「はい、ただいま。皆、いい子にしてた?」
なんということだろう。そこにはチルノを始め、大妖精やミスティア、ルーミアに橙がいた。よく見たらちび萃香までいる。
「皆孤児なのよ。まったく、生むならちゃんと責任を持ちなさいっての。あ、橙は別よ?」
中に入ると藍がエプロン姿で出迎えてくれた。もちろん尻尾はない。
「紫さん、おかえりなさい」
「ただいま藍。急だけど、部屋を一つ用意してくれる?」
「わかりました」
「悪いけれど、魔理沙はあの子たちと遊んでいてくれない?」
「う~、わかったよ」
魔理沙が行ったのを見届けた後、私は紫と藍が用意してくれた部屋に通された。
部屋の雰囲気はこの世界にしては異質なものだった。
「久しぶりね?霊夢」
「なんで、私はこの部屋に通されたのかしら?」
「それはね、私があなたに聞きたいことがあったからよ」
そういった紫の眼を見ると、いつもの紫の目をしていた。幻想郷を管理し、全てを支配するような胡散臭さをはらんだ眼。
「もしかして……、あなた本当の紫なの?」
「ええ、そうよ。ちなみにそっちの藍も本物よ」
おどろいた、もう幻想郷の本物には会えないと踏んでいたのだから。
「さて、話の内容を率直に言うとね。あなたは元の世界に戻りたいか?っていうことなのよ」
「元の世界に戻る?」
「そう、勘のいいあなたのことならもう気づいてるかもしれないけれど、ここはあなたの望すべてが叶った世界なの」
「私の、望がすべて」
「あなたがもといた世界の幻想郷を放棄するのならそれでもいいわ」
「……」
私は押し黙ってしまった。
私の望がすべて叶った世界なのだ。そんなの手放したくないに決まっているじゃないか。
「とりあえず話はここまで。そうね、私たちがここに残れるのが後2日ぐらいだからそれまでに答えを出してちょうだい。」
その後、チルノ達とあそばせていた魔理沙と一緒に私は孤児院を後にした。
*
「なあ、霊夢」
「なによ、魔理沙」
「お前、何そんな悲しそうな顔してしてるんだ?」
私が、悲しそうな顔をしている?
「そんなっ、でたらめ言わないでよ」
「でたらめなんかじゃない。霊夢、何があったんだ?」
「なんでもいいじゃない、あなたには、関係ないんだから」
もうやめて、魔理沙。
「私、ときどき思ってたんだ。お前、私の知ってる霊夢じゃないんだろ?」
「!?」
「もういいんだぜ?嘘なんかつかなくたってさ」
その瞬間、私の心の中で煮詰まっていたものが、思いのすべてがはじけ飛んだ。
なんでだろう?
「なんでなんだろうね、魔理沙。こっちの世界でも、あなたはちっとも変わらない」
私たちは帰り道の河川敷で座り込んでいた。
あのあと、ここに来るまで私の抱えていたすべてを魔理沙に話したのだ。
「なるほどな……、そんなことがあったのか」
「うん」
「でもさ、霊夢がこの世界を捨てたって向こうの世界『幻想郷』だっけ?そこではこっちの世界のやつらも皆生きてるんだろ?」
「うん」
「ならいいじゃないか、そっちで生きてたって」
「え?」
「私と遊んでた時の霊夢、ちょっとつまらなそうだった」
「……」
「きっと霊夢にとっては向こうのほうが楽しかったんだ、違うか?」
そうだ。
どんなに巫女仕事が面倒臭くたって。
吸血鬼たちや蓬莱人たちや神様たちが面倒事を起こしたって。
向こうの世界は私にとってかけがえのないものだったんだ。
「なあ、霊夢。最後にさ」
「なに?」
「その、キス、してくれないか?」
「はあ!?」
「その、最後の思い出にさ。霊夢は向こうの世界に帰るって決めたんだろうしさ」
この魔女にはすべて筒抜けってわけね。
「いいわよ。じゃあ、恥ずかしいから目つぶって」
「なんか恥ずかしいぜ」
「じゃあ、いくわよ」
私と魔理沙の唇が優しく触れる。
優しく触れて、そのあとは……。
「さようなら、私の願った幻想郷」
*
「結局霊夢はこっちの世界を選んだのね」
「はたから見ると紫様意地悪いですよ?」
「しょうがないじゃない、いきなりあの子が並行世界作ったと思ったら、そっちに飛んじゃうんだもの」
「そうだとしても、存在しない期限なんか設けて追い詰めるのはよくなかったのでは?」
「そうかもしれないわ。けれど、今回のことであの子はさらに強くなった」
「そんなもんですか」
「ええ、けれどもう一つ世界を作っちゃうなんて。あの子はどこまですごいのかしらね」
「それも、博霊の巫女の力のうちなのでしょうか?」
「わからない。けれど、それだけ霊夢にも考えるところがあったのよ。この幻想郷に」
今覗いているスキマにはわが子のように親しんできた霊夢の姿がある。
あれだけの異変を起こしておいて気持ちよさそうに眠っている。
「なんだか眠くなってきちゃったわ、藍。引き続き霊夢の監視よろしく」
「分かりました、紫様」
お疲れ様、霊夢。
「今宵はなんだかいい夢が見れそうだわ」
でも面白かったです
テーマも良かったし、楽しめました。
あと、似ている作品は暇人KZさんの『霊夢と胡蝶の夢』です。
話が淡々と進んでいったので。
「これも一つの幻想郷ですからね。だから批判は無しですからね」って感じがタイトルからありありと伝わってくる。後書きも後書きで『どこかで見たような話』だなんてさ。要はありきたりな話しか自分には書けませんって事だろ。誤魔化すなよ。なんで狙ってやりましたみたいな玄人みたいな雰囲気を出そうとしてんのさ。実力の程なんて中身みりゃ一発でばれんだからさ、変に言い繕おうとするなよ、みっともない。
別に下手なら下手でいーじゃないですか。そうやって自分歪めて逃げ道作ってる間は大成しないし、俺は評価を付けたかーありません。まずは舞台に立ちましょ。全てはそっからです。
平たく言うと描写不足だと感じました。