その日、にとりは博麗大結界にめりこんでいた。
「ふわぁあ・・・」
うに、おはようございます。
『河城にとり』
元気とメカニックな知識が取り柄な超妖怪弾頭だ。
え?
それよりそんな所で何やってるかって?
そりゃ、見たらわかるだろ。
結界にめり込んでいるのさ。
じゃなくて、理由?
それはねぇ。
話すと長くなるんだけどね。
聞きたい?
ねぇ、聞きたい?
ふふっ。
そんなに聞きたいなら仕方ないな。
じゃあ、回想スタート!
◇ ◇ ◇
「にとりブースターーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
キュイイイイイイイイイイイン!!
ドゴォォォォォオオオオオオン!!
◇ ◇ ◇
てなことがあったんだよ。
いやぁ、我ながら凄まじい推進力だったよ。
噴射から僅か7秒で博麗大結界に辿り着くとはね。
やっぱし河童の技術力は幻想郷一だよねぇ。
まぁ。
ブレーキのこと忘れてて結界に激突してめり込んだのは些細なミスさ。
実験に失敗は付き物だからね。
よし、今度はこれを改良して魔理沙の箒の後ろっ側に付けてあげよう。
あぁ、なんて優しいだ、私。
やっぱし河童と人間は盟友だね。
「で、他に言いたい事は?に・と・り・ちゃん♪」
「すいませんでした」
横で凄まじい厄い笑顔で微笑んでいる雛ちゃんに下げれない頭を下げた。
だって、動けないんだもん。
◇ ◇ ◇
「まったく。にとりちゃんは・・・」
そう言いながら隣でくるくる回っているのは親友の『鍵山雛』。
私の知り合いの中ではトップクラス(あくまでも個人的見解)なキュートさと優しさを併せ持つ厄神様だ。
そしていま現在の私の中でそのエンジェルさが急上昇中な訳なのだ。
「だからさ、早く朝御飯ちょうだいよぉ」
「ダメよ。にとりちゃんは悪いことしたんだから、まだお預け」
「悪いことじゃないよっ!これは日々進化し続ける幻想郷一の技術屋としての使命であって」
「じゃあ、私は帰るわね。くるくる~」
「待って!ごめん!謝るから朝御飯ください!!」
うぅ。
そのエンジェルさ急上昇の裏に見え隠れするイジワルさが、今の私には辛いんだよ。
激突したのは昨晩。
そして一番に私を発見してくれたのは雛ちゃん。
その時から私を心配してくれて、こうやって様子を見に来てくれる。
そして、いまも朝御飯をお弁当箱につめて持って来てくれたのだ。
やっぱし持つべきものは親友と盟友だよねっ。
「じゃあ、そろそろ朝御飯にしましょう。今日は私の大好きなホットドッグもついているわよ」
「自分の好物・・・。いえいえ、なんでもないです」
一瞬、黙りなさい、と言わんばかりの可愛すぎて死にたくなるような笑みを向けられたので大人しくしておく。
というか。
「ねぇ、ここで雛ちゃんが私を引っ張り出してくれたら全てが解決しないかな?」
「さて、準備もできたし。そろそろお待ちかねの朝食タイムよ」
「聞いてる?雛ちゃん」
私が提示した解決策をくるくるっとスルーしたマイ親友。
まぁ、いいか。
まずは腹ごしらえだ。
雛ちゃんは料理が上手だから楽しみだなぁ。
おぉ、ちゃんとキュウリの漬物も用意してある。
「にとりちゃん。はい、あ~ん」
「えっ?」
雛ちゃんがお箸で取った卵焼きを私の口まで持ってくる。
いや、そういうのはちょっと恥ずかしいなぁ。
「ね、ねぇ。そんなことしなくても私一人で」
「あら、動けないのに?」
「うっ」
し、しまったぁ。
そういや私、全然動けないんだった。
「で、でもさぁ。ほら、こういうの恥ずかしいよぉ」
ほんのり赤くなっていく顔。
たぶん、こんなところ誰も見てないだろうけど。
それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「恥ずかしがることはないわ。だって2人っきりですもの」
さらに色んな意味で恥ずかしくなること言ってくる雛ちゃんの笑顔がどんどん眩しいものになっていってるのは気のせいだろうか?
それよりもさ。
「やっぱし、今すぐ引っ張り出してくれた方が早いんじゃ」
「あら、こんな所に大量の厄が」
「食べさせてください、お願いします!」
なに?
拒否権なし?
もし拒否したらその厄どうするつもりだったのさ?
「ふふふっ」
嬉しそうに微笑む雛ちゃん。
いつもの優しい笑み。
ただ今日はその裏に何か黒いものが視えるのは気のせいかな?
私の発言に満足したのか、持っていた厄の塊を後ろにポイッと捨てる。
落下していく厄。
その落下地点の方から、とある鴉天狗の新聞記者の悲鳴が聞こえたような気がしたが大丈夫なんだろうか?
「さ、改めて。いただきます」
「いただきまーす」
「にとりちゃん、あ~ん」
「あ、あーん・・・」
うぅ、やっぱし恥ずかしい。
◇ ◇ ◇
嬉しいんだか恥ずかしいんだか、ある意味拷問のような朝食が終わった。
最後に丁寧に口元まで拭ってくれるというサービス付で。
でも。
お蔭で元気が出た。
お腹もいっぱいになったし、もう大丈夫だ。
「そういうわけで雛ちゃん。そろそろ」
「さて、次は何をしようかしら?」
助けてくれないの!?
てか、まだ何かある訳!?
出来れば早くここから出してくれると嬉しいんだけど。
ラボに帰ってやりたいこといっぱいあるんだけどなぁ、魔改造とか。
「にとりちゃんは何かしてほしいことある?」
「してほしいことって・・・。あえて言うなら今すぐここから」
「なにかぁ、してほしいことぉ、あるぅ?」
「ひゅ、ひゅい!?」
私の頬を優しく手で包んで顔を近づけてくる。
近づいてくる雛ちゃんの顔。
甘い吐息が鼻をくすぐる。
厄神様なのに、何故かしてくる良い香り。
頬から直に伝わってくるほんのりした暖かみ。
「てか、雛ちゃん顔近い!顔近いって!・・・あ、当たる、唇当たるぅ!!」
「ふふっ。にとりちゃん、キスして欲しいの?」
バクンッ!
一瞬、心臓が破裂するかと思うくらいの大きな鼓動がなる。
私は真っ白になった頭で必死に言葉を紡ぐ。
「だ、だ、だ、ダメだよぉ。そんなことされたら」
「あら、にとりちゃんは私とキスするの、いや?」
少し寂しげな表情を織り交ぜた笑みで問いかけてくる。
「ち、ちがっ!?・・・ば、場所!ほら、誰だってこんな間抜けな状況でキスされても困る訳でして」
「なら、ここじゃなかったら良い訳?」
さらに近づいてくる顔。
い、いや、良いというかなんというか!?
や、やばい。
これ以上はやばい。
もはや正常でない思考で私は叫んだ。
「べ、別の場所で!例えば家の中とか!?」
「キス、してもいいの?」
「は、は、はい!どうぞご自由に!!」
そこでようやく。
雛ちゃんの暖かみが遠ざかった。
「はぁ、はぁ・・・」
なんとか危機は脱したみたいだ。
・・・ちょっと残念だなんて思ってないよ!?
しかし。
危機は今まさに続行中であった。
「ふふっ。じゃあ後で、ね」
「あ、いや、あれは」
「あ・と・で・ね♪」
そう言いながら雛ちゃんの手には一つの機械が。
「ま、まさか!?」
「にとりちゃんが作ったものなんだから、分かるわよね?」
『再生』と書かれたボタンを押す。
すると。
『べ、別の場所で!例えば家の中とか!?』
『キス、してもいいの?』
『は、は、はい!どうぞご自由「うわぁぁぁぁああああああああああああ!!?」
何処から持ってきた、その録音機!?
もはや、ゆでだこ状態になっている私。
あぁ、穴があったら入りたい気分。
でも入れない。
だって、動けないんだもん。
◇ ◇ ◇
その後。
雛ちゃんは昼と夜の御飯も作って来てくれた。
その合間に、私が動けないことをいいことに様々な誘導尋問と録音が続いた。
そして、ようやく引っ張り出してくれたのは夜御飯終了時。
やっと自由になれたと思ったのも束の間。
隣で幸せ(暗黒面あり)いっぱいの笑顔でくるくる回っている雛ちゃん。
この後待っているであろう雛ちゃん的お楽しみタイム。
私はそのまま、雛ちゃんの家に連行された。
お楽しみタイムが気になるのぜ…
そんな感じです。
こんなカスの意見は無視して良いと思いますよ
凄く面白かったです
ご意見ありがとうございます。
今後の参考にさせてもらいます。
<<6.様
応援のメッセージありがとうございます。
批評に関しては、ちゃんと目を通して、かつあまり気にしすぎない程度にしていますので大丈夫ですよ^^
食べる方はともかく出す方がどうなっていたか非常に気になります。