スカーレット姉妹はいつも喧嘩ばかりしている。
それはそれはもう毎日のように口喧嘩を繰り返している。
今日もまた……
「お嬢様、お茶が入りましたわ」
「ありがとう咲夜」
自室でお茶を楽しむレミリア。
紅茶の香りで胸を満たし、添え物のクッキーに舌鼓を打つ。
実に優雅な時間である。だがその平和も長くは続かなかった。
「レミリアァァァ!!」
実の妹が自分の名前を呼び捨てにしながら飛び込んできたからだ。
レミリアは怒りのあまり椅子をはね飛ばして立ち上がり、咲夜は慣れた様子で部屋の隅に退避する。
「姉のことを呼び捨てにするんじゃないわよ!!」
レミリアの怒りは当然である。姉妹関係は舐められたらそこで試合終了なのだ。
故に実の姉を呼び捨てにするなど断じて許せる話では無い。
しかしそんなレミリアの怒声にもフランドールは動じはしない。
「未だに『お姉様』なんて呼んでもらえると思ってるの。あ~やだやだ」
「ほぉ」
薄ら笑い浮かべ姉を見下すように睨むフランドール。
それに対しレミリアは怒気をいっそう強めていく。
部屋の隅では咲夜がやれやれと頭を振っていた。
「今すぐ『ごめんなさいお姉様』って言えば非礼は水に流すわよ」
弾幕も凍りつくような冷たい声で謝罪を要求するレミリア。
だがフランドールがそんなものに応じる義理はない。
フランドールは余裕を崩さず姉に向かって人差し指を突きつけ、
「もうレミリアを『お姉様』なんて言わない!!
今日からは『あなた』って呼ぶことにしたの。『あなた』よ『あ・な・た』」
ときっぱりと宣言した。
「ずいぶんと他人行儀な呼び方ね」
「うふふ、いい呼び方でしょ」
無論姉の威厳にかけてそんな暴挙を許すレミリアではない。
すでにレミリアの脳内会議では、生意気な妹に対して制裁を行う決議が採択されていた。
無言でフランドールに歩み寄るレミリア。
「あら、何する気?」
少し身構えるフランドール。だがまだ余裕を崩すことはない。
それは姉がどう出てこようが対処できるという自信の現れなのか。
レミリアはゆっくりとフランドールの目の前まで歩いていく。
そして躊躇無く妹の唇に自分の唇を押し当てた。
もちろんただの口付けではない。
バンパイアキス!!
唇を通して相手の生気や体力を吸い取る吸血鬼特有の技である。
「なっ……」
「動けないでしょ」
とたんに腰が抜けフランドールは床に座り込んだ。
レミリアは舌なめずりしながら妹を見下ろす。
「ちっ!!」
思い切り舌打ちするフランドール。
普段ならそれだけでもレミリアは怒り狂うのだが、
今のレミリアは先ほどまでのフランドールのように薄ら笑いを浮かべるだけだ。
もはや彼女にとって妹は天人の胸の上の鯛も同じなのだ。
「いい格好ね」
そう言って動けない妹を軽々と両手で持ち上げるレミリア。
いわゆるお姫様だっこである。そのまま部屋の外に向かって歩き出す。
「私をどうする気?」
見た目はお姫様だっこでも、フランドールにしてみれば生け贄に捧げられる乙女の気分である。
「まずお前には悪魔らしからぬ真っ白な服を着てもらう。
そのまま首輪……はさすがに可哀想だから指輪を填めて私に永遠に尽くすと誓ってもらうのよ」
生意気な妹を生涯自分の側に置いて気まぐれに愛で永遠に奉仕させる。
それはレミリアの夢であった。
「くそっ」
苦しげに声を吐くフランドール。
レミリアはその顔をのぞき込むように顔を近づける。
それがレミリアにとって命取りとなった。
「ふふふいい気味……むっ!!」
フランドールは渾身の力で起きあがると姉の唇を奪った。
バンパイアキス!!
先ほど奪われた生気を吸い取り返すフランドール。
そのまま姉の腕から逃れ距離をとる。
「油断したわねレミリア!!」
「なんであなたがそれを……」
なぜ妹が自分の技を使えるのか不思議に思うレミリア。
そんな姉の様子にフランドールは得意げに胸を張る。
「レミリアに使えるものが私に使えないとでも思った?
思ってたんならとんだ慢心ね」
「いい気になるな~!!」
ここに来てレミリアの怒りのボルテージが鰻登りに上がってゆく。
さらにフランドールの挑発は続く。
「そんな傲慢なレミリアには喪服のような真っ黒な服を着て、
ずっと私の世話をするって誓うのがお似合いよ」
生意気な姉を生涯自分の側に置いて枕代わりにしたり散歩の傘持ちをさせる。
それはフランドールの夢であった。
「フ~ラ~ン~」
「レミリア!!」
お互い言葉は必要なかった。
今やレミリアの部屋は導火線に火がついた火薬庫である。
時を置かずして爆発するだろう。
咲夜が部屋の隅で深い深いため息をついた。
それを合図に同時に動き出す姉妹。
狙いは決まっている。
吸血鬼同士しかも身内同士の争いは、激しい吸い合いになると相場が決まっているのだ。
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
互いに相手の攻撃を避けようとはしない。
攻撃を避けたりしたら、それは相手に臆することと同じだ。
相手の攻撃を受けきった上で倒す。
それこそが栄光の未来に繋がると姉妹は信じていた。
「フォーオブアカインド!!」
分裂して手数を増やすフランドール。
それに対しレミリアも一枚のカードを取り出すと、
「フォーオブアカインド!!」
同じように分裂する。
今度はフランドールが驚く番である。
「「「「なんで!!」」」」
「「「「お前に使えるものが私に使えないと思ったか。
大した慢心だな」」」」
「「「「ちっ!!」」」」
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
バンパイアキス!! バンパイアキス!!バンパイアキス!!バンパイアキス!!
いつ果てるとも知れない激しい姉妹の戦い。
それを初めから見ていた咲夜は、
「まったく……つき合いきれませんわ」
呆れて部屋を出て行くのであった。
スカーレット姉妹はいつも喧嘩ばかりしている。
それはそれはもう毎日のように口喧嘩を繰り返している。
だが当人達以外それを喧嘩と思ってる人は、誰一人としていないのである。
こわいわー
そんなんありかよ…
天子に流れ弾がwww
もうずっとちゅっちゅしてればいいとおもいます