好きになったひとが、たまたま人間だった。ただ、それだけのこと。
◇◆◇◆◇◆◇◆
静かな自室。紅魔館の地下に存在する私の部屋を訪れる者は、滅多に居なかった。時折、壁際に設けられた燭台の火がユラユラと影を揺らす。
私は椅子に腰掛け、本のページを一枚めくる。
読んでいるのはパチュリーの所で借りてきた恋愛小説。
一人の少女が偶然に知り合った年上の女性に恋をする話だ。
私達とは違うけれど、私達と同じ恋をする彼女達を私は気に入っている。
また一枚、ページをめくる。
一行目に視線を移したとき、部屋の扉をノックする音が響いた。
待ち人来たるかしら?
本を閉じて、書棚に挿す。それから声をかけた。
「開いてるよ」
扉を開けて入ってきたのはお姉様。
残念、待ち人ではなかった。
「そんなに露骨に残念そうな顔をしないで頂戴」
お姉様は苦笑して肩を竦める。
「それに、愛しい彼女をそんな恰好で迎えるつもりだったの?」
首を傾げた私に、お姉様は呆れたようにため息を吐いた。
「髪、跳ねてるわよ」
「え、うそ。どこどこ!?」
慌ててその箇所を探る私を、お姉様が制する。
「私がやってあげるから、あなたはジッとしてなさい」
「え、でも」
「いいからいいから」
その場に座ったままにさせられた私。そんな私の髪に櫛を入れるお姉様。ゆっくりと櫛を動かしていく。私はただされるままになった。
「お姉様、何しに来たの?」
「あら、用事がなくちゃ来ちゃいけないの?」
「そんなことないけどさ……」
「でもまあ、フランと話がしたくて来たのだから、用事があるといえばあるのかしら」
「話?」
「ええ、フランは霊夢のこと好き?」
「うん!」
当然だ。即答する。
姿は見えなかったけれど、きっとお姉様は笑っていたと思う。
それから、お姉様は少しだけ黙って、また口を開いた。
「どんなところが好き?」「ぶっきらぼうだけど優しいところとか笑った顔とか全部!」
「そ、そう。――でも、彼女には感謝するべきかしらね」
「なんで?」
「あなたに色んなことを教えてあげることができたから。その役が私じゃないのが残念だけれど」
「『私の可愛いフランはあなたには渡さない!』とか言いながら弾幕勝負を挑んだひととは思えないわ」
結果、負けてたしね。
「フランのことを大事に思っているのは私も同じよ。あの娘に取られてしまったのは悔しいけれどね。でも、あなたが幸せならそれで良いわ」
「お姉様……」
「しかし、フランと付き合っているのが霊夢とはね、初めて聞かされたときは驚いたわ」
「飲んでた紅茶吹き出すほどだったもんね」
「そこは思い出さなくていいの。……さ、これで良いわ」
「ん、ありがとう」
簡単に確認して、私は頷く。お姉様にお礼でもしようかな。
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「お姉様、ちょっと待ってて」
そうして私が向かったのは部屋に設置された棚。そこに置かれた瓶詰を一つ手に取る。
「はい、お姉様にあげる」
「何も入ってないわよ?」
透明な瓶詰の中を覗き込んで、お姉様は首を傾げた。
「その中には私の胸いっぱいの幸せな気持ちを沢山詰め込んであるの。だから、お姉様にも幸せのおすそ分け。お姉様にも幸せが訪れるようにって」
「なによそれ」
そう言ってお姉様は可笑しそうに笑う。
「何時まで経ってもお姉様の気持ちに気付かない、ニブチンなあの娘との関係が少しでも進展するようにってね」
「わ、私は別にあの娘の事は何とも思ってないわよ! 私が直接雇い入れたのだから様子が気になっているだけで!」
「分かった、そういうことにしておいてあげる。でも、お姉様が私の幸せを想ってくれているように、私もお姉様の幸せを想っているの」
「う、わ、分かった。頑張るわ」
「うん、私も応援してる」
可笑しくて、なんだか幸せでふたりで笑う。と、その時部屋の扉が叩かれた。
「なに?」
「博麗霊夢様をお連れしました」
扉の外から返事が聞こえた。
「入ってちょうだい」
失礼します、の言葉と共に入ってきたのは、メイド服を身に纏った緑の髪の妖精と、惜し気もなく脇を晒した巫女服を身に纏った黒髪の少女。
「ご苦労様、大ちゃん」
私に深々と頭を下げるメイドは、お姉様が何処からか見つけて雇い入れた妖精だ。館の皆からは大ちゃんの愛称で呼ばれて親しまれている。
「霊夢、いらっしゃい。座って座って」
「それじゃ、遠慮無く。レミリア、お邪魔してるわよ」
「霊夢、そんなに遠慮しなくても私の事は『お姉様』って呼んでも良いのよ?」
「レミリア」
「嫌っ!」
「さあ霊夢も来たし、お姉様は話も終わったんだし、帰った帰った」
わざとらしくぞんざいに手を振ると、お姉様は大仰に肩を竦めた。
「はいはい、オジャマ虫は退散しますよ。さ、行くわよ大妖精」
「は、はい」
私のあげた瓶詰を片手に、お姉様は大ちゃんの手を引いて部屋を出ていった。平静を装っていたけれど、その頬が赤く染まっていたのを私は見逃さない。頑張れ、お姉様。
「あんた達何かあったの?」
椅子に座って、頬杖を付いて霊夢が私を見る。
「んー、内緒。私達姉妹の秘密だよ」
口元に人差し指を立てて、ウインクをして見せた。
「……まあ、異変を起こすようなことでさえ無ければ別にいいわ。出来ることなら、あんたを退治なんて事はしたくないから。それに、何となく想像は付くわ」
「へえ、それも得意の博麗の巫女の勘ってやつかしら?」
「別にそんなんじゃないわ。あのふたりの様子を見てれば嫌でも気付くでしょ」
「まあ、当然ね。緑茶と紅茶、どっちが良い?」
笑って、踏み台を利用して棚からティーポットを引っ張り出す。そうしてそれに水を注いで、お姉様に頼んで部屋に新しく設置してもらったコンロに置く。指を弾くと、それを合図に簡単な火の魔法が起動する。
パチュリーから教わった魔法だ。
「それじゃ、緑茶でも貰おうかしら」
「ん、わかった」
踏み台を使って棚から茶葉の入った缶詰を取り出して、準備を進める。
これまで何度も失敗したけれど、今では一人でお茶なんて鼻歌混じりに煎れられる。まあ、霊夢と一緒にお茶を飲みたいから頑張った結果なんだけど、霊夢には内緒。なんか恥ずかしいし。
そうしている内に準備が整う。湯呑みにお茶を注ぐ。
「はい」
「ん、ありがとう」
霊夢に湯呑みを手渡して、私は対面に座る。
ふたりでお茶を飲み、のんびりと会話に花を咲かせ、笑い合う。ゆっくりと、時が流れていく。
そうして、私はふと思う。後どれだけの時を、私は目の前の少女と過ごすことが出来るのだろうかと。
人間の一生は、妖怪のそれと比べると、刹那とも言えるほど短い。
私が死という言葉を今ほど理解していなかった頃、美鈴がよくそんなことを言っていた。
彼女は今、私と同様に人間である咲夜と付き合っている。私と同じ幸せと、私と同じ何時か来る悲劇を、美鈴はどう考えているんだろう。そこまで考えて、背中を冷たいものが伝う。
「どうしたの、フランドール?」
我に帰ると、霊夢が私の顔を覗き込むように身を乗り出していた。
「あんた、泣いているじゃない」
雫がテーブルの上に置かれていた私の手の甲に落ちた。
「何でも……」
ない、と続けようとして、けれどそれは言葉にはならなかった。
恐怖なのか、悲しみなのか、ただ溢れ出すばかりの涙の正体も掴めず、私は目元を乱暴に拭う。
「……ちょっと移動するわよ」
霊夢の言葉と、胸に抱き抱えられるのは同時。下ろされたのは、テーブルの直ぐ隣のベッドだった。
霊夢は私の隣に腰を下ろすと、私の肩を抱き寄せて頭を優しく撫でた。
何も聞かずに、私が泣き止むまでただ黙って頭を撫で続けてくれた。
「……ありがとう、もう大丈夫だよ霊夢」
しばらくの間そうして、ようやく霊夢から離れる。
「そう、ならよかったわ」
霊夢が小さく笑う。
「ちょうどいいかしらね。今日はこの辺で帰るわ……ん?」
そう言って立ち上がった霊夢の袖の端を、私は反射的に摘んでいた。その指先を霊夢はゆっくりと解く。
「何も……聞かないんだね」
「今は聞かれたくないって、顔に書いてあるわよ」
「ズルイよ……霊夢」
「言いたくなったのなら、明日にでも聞かせてもらうわ」
体を屈めた霊夢の顔が近づく。
触れたのは一度だけ。唇で私の唇に軽く触れる。
「今は寝なさい。また明日来るわ」
「霊夢!」
離れる背中を見送って、彼女が扉を開いたところで声をかけた。振り向いた彼女に、私は精一杯の笑顔を贈る。
「ありがとう」
柔らかく微笑みを返し、霊夢は静かに扉を閉めた。
そのまま身体を横に倒して、ベッドに預ける。
少しずつ、まどろみが私の意識を削り取っていく。視界に、テーブルの上に残されたままになっていた二つの湯呑みが映った。
その時唐突に、私は初めて自覚した。
霊夢と一緒に同じ時を過ごす。それだけで、私は幸せだった。
彼女は何時か私の前からいなくなる。けれど、その何時かは今じゃない。
今はただ、一緒にいられるこの幸せを大切にしたい。
心からそう思った。
私の愛するあの人と過ごす幸せを大切にしよう。鮮烈に、色褪せないように、何時までも残るように。後悔なんてしたくないから。
その為にまずは明日、私の伝えられる『大好き』を全て伝えよう。
だから、覚悟してよね、霊夢。
END
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静かな自室。紅魔館の地下に存在する私の部屋を訪れる者は、滅多に居なかった。時折、壁際に設けられた燭台の火がユラユラと影を揺らす。
私は椅子に腰掛け、本のページを一枚めくる。
読んでいるのはパチュリーの所で借りてきた恋愛小説。
一人の少女が偶然に知り合った年上の女性に恋をする話だ。
私達とは違うけれど、私達と同じ恋をする彼女達を私は気に入っている。
また一枚、ページをめくる。
一行目に視線を移したとき、部屋の扉をノックする音が響いた。
待ち人来たるかしら?
本を閉じて、書棚に挿す。それから声をかけた。
「開いてるよ」
扉を開けて入ってきたのはお姉様。
残念、待ち人ではなかった。
「そんなに露骨に残念そうな顔をしないで頂戴」
お姉様は苦笑して肩を竦める。
「それに、愛しい彼女をそんな恰好で迎えるつもりだったの?」
首を傾げた私に、お姉様は呆れたようにため息を吐いた。
「髪、跳ねてるわよ」
「え、うそ。どこどこ!?」
慌ててその箇所を探る私を、お姉様が制する。
「私がやってあげるから、あなたはジッとしてなさい」
「え、でも」
「いいからいいから」
その場に座ったままにさせられた私。そんな私の髪に櫛を入れるお姉様。ゆっくりと櫛を動かしていく。私はただされるままになった。
「お姉様、何しに来たの?」
「あら、用事がなくちゃ来ちゃいけないの?」
「そんなことないけどさ……」
「でもまあ、フランと話がしたくて来たのだから、用事があるといえばあるのかしら」
「話?」
「ええ、フランは霊夢のこと好き?」
「うん!」
当然だ。即答する。
姿は見えなかったけれど、きっとお姉様は笑っていたと思う。
それから、お姉様は少しだけ黙って、また口を開いた。
「どんなところが好き?」「ぶっきらぼうだけど優しいところとか笑った顔とか全部!」
「そ、そう。――でも、彼女には感謝するべきかしらね」
「なんで?」
「あなたに色んなことを教えてあげることができたから。その役が私じゃないのが残念だけれど」
「『私の可愛いフランはあなたには渡さない!』とか言いながら弾幕勝負を挑んだひととは思えないわ」
結果、負けてたしね。
「フランのことを大事に思っているのは私も同じよ。あの娘に取られてしまったのは悔しいけれどね。でも、あなたが幸せならそれで良いわ」
「お姉様……」
「しかし、フランと付き合っているのが霊夢とはね、初めて聞かされたときは驚いたわ」
「飲んでた紅茶吹き出すほどだったもんね」
「そこは思い出さなくていいの。……さ、これで良いわ」
「ん、ありがとう」
簡単に確認して、私は頷く。お姉様にお礼でもしようかな。
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「お姉様、ちょっと待ってて」
そうして私が向かったのは部屋に設置された棚。そこに置かれた瓶詰を一つ手に取る。
「はい、お姉様にあげる」
「何も入ってないわよ?」
透明な瓶詰の中を覗き込んで、お姉様は首を傾げた。
「その中には私の胸いっぱいの幸せな気持ちを沢山詰め込んであるの。だから、お姉様にも幸せのおすそ分け。お姉様にも幸せが訪れるようにって」
「なによそれ」
そう言ってお姉様は可笑しそうに笑う。
「何時まで経ってもお姉様の気持ちに気付かない、ニブチンなあの娘との関係が少しでも進展するようにってね」
「わ、私は別にあの娘の事は何とも思ってないわよ! 私が直接雇い入れたのだから様子が気になっているだけで!」
「分かった、そういうことにしておいてあげる。でも、お姉様が私の幸せを想ってくれているように、私もお姉様の幸せを想っているの」
「う、わ、分かった。頑張るわ」
「うん、私も応援してる」
可笑しくて、なんだか幸せでふたりで笑う。と、その時部屋の扉が叩かれた。
「なに?」
「博麗霊夢様をお連れしました」
扉の外から返事が聞こえた。
「入ってちょうだい」
失礼します、の言葉と共に入ってきたのは、メイド服を身に纏った緑の髪の妖精と、惜し気もなく脇を晒した巫女服を身に纏った黒髪の少女。
「ご苦労様、大ちゃん」
私に深々と頭を下げるメイドは、お姉様が何処からか見つけて雇い入れた妖精だ。館の皆からは大ちゃんの愛称で呼ばれて親しまれている。
「霊夢、いらっしゃい。座って座って」
「それじゃ、遠慮無く。レミリア、お邪魔してるわよ」
「霊夢、そんなに遠慮しなくても私の事は『お姉様』って呼んでも良いのよ?」
「レミリア」
「嫌っ!」
「さあ霊夢も来たし、お姉様は話も終わったんだし、帰った帰った」
わざとらしくぞんざいに手を振ると、お姉様は大仰に肩を竦めた。
「はいはい、オジャマ虫は退散しますよ。さ、行くわよ大妖精」
「は、はい」
私のあげた瓶詰を片手に、お姉様は大ちゃんの手を引いて部屋を出ていった。平静を装っていたけれど、その頬が赤く染まっていたのを私は見逃さない。頑張れ、お姉様。
「あんた達何かあったの?」
椅子に座って、頬杖を付いて霊夢が私を見る。
「んー、内緒。私達姉妹の秘密だよ」
口元に人差し指を立てて、ウインクをして見せた。
「……まあ、異変を起こすようなことでさえ無ければ別にいいわ。出来ることなら、あんたを退治なんて事はしたくないから。それに、何となく想像は付くわ」
「へえ、それも得意の博麗の巫女の勘ってやつかしら?」
「別にそんなんじゃないわ。あのふたりの様子を見てれば嫌でも気付くでしょ」
「まあ、当然ね。緑茶と紅茶、どっちが良い?」
笑って、踏み台を利用して棚からティーポットを引っ張り出す。そうしてそれに水を注いで、お姉様に頼んで部屋に新しく設置してもらったコンロに置く。指を弾くと、それを合図に簡単な火の魔法が起動する。
パチュリーから教わった魔法だ。
「それじゃ、緑茶でも貰おうかしら」
「ん、わかった」
踏み台を使って棚から茶葉の入った缶詰を取り出して、準備を進める。
これまで何度も失敗したけれど、今では一人でお茶なんて鼻歌混じりに煎れられる。まあ、霊夢と一緒にお茶を飲みたいから頑張った結果なんだけど、霊夢には内緒。なんか恥ずかしいし。
そうしている内に準備が整う。湯呑みにお茶を注ぐ。
「はい」
「ん、ありがとう」
霊夢に湯呑みを手渡して、私は対面に座る。
ふたりでお茶を飲み、のんびりと会話に花を咲かせ、笑い合う。ゆっくりと、時が流れていく。
そうして、私はふと思う。後どれだけの時を、私は目の前の少女と過ごすことが出来るのだろうかと。
人間の一生は、妖怪のそれと比べると、刹那とも言えるほど短い。
私が死という言葉を今ほど理解していなかった頃、美鈴がよくそんなことを言っていた。
彼女は今、私と同様に人間である咲夜と付き合っている。私と同じ幸せと、私と同じ何時か来る悲劇を、美鈴はどう考えているんだろう。そこまで考えて、背中を冷たいものが伝う。
「どうしたの、フランドール?」
我に帰ると、霊夢が私の顔を覗き込むように身を乗り出していた。
「あんた、泣いているじゃない」
雫がテーブルの上に置かれていた私の手の甲に落ちた。
「何でも……」
ない、と続けようとして、けれどそれは言葉にはならなかった。
恐怖なのか、悲しみなのか、ただ溢れ出すばかりの涙の正体も掴めず、私は目元を乱暴に拭う。
「……ちょっと移動するわよ」
霊夢の言葉と、胸に抱き抱えられるのは同時。下ろされたのは、テーブルの直ぐ隣のベッドだった。
霊夢は私の隣に腰を下ろすと、私の肩を抱き寄せて頭を優しく撫でた。
何も聞かずに、私が泣き止むまでただ黙って頭を撫で続けてくれた。
「……ありがとう、もう大丈夫だよ霊夢」
しばらくの間そうして、ようやく霊夢から離れる。
「そう、ならよかったわ」
霊夢が小さく笑う。
「ちょうどいいかしらね。今日はこの辺で帰るわ……ん?」
そう言って立ち上がった霊夢の袖の端を、私は反射的に摘んでいた。その指先を霊夢はゆっくりと解く。
「何も……聞かないんだね」
「今は聞かれたくないって、顔に書いてあるわよ」
「ズルイよ……霊夢」
「言いたくなったのなら、明日にでも聞かせてもらうわ」
体を屈めた霊夢の顔が近づく。
触れたのは一度だけ。唇で私の唇に軽く触れる。
「今は寝なさい。また明日来るわ」
「霊夢!」
離れる背中を見送って、彼女が扉を開いたところで声をかけた。振り向いた彼女に、私は精一杯の笑顔を贈る。
「ありがとう」
柔らかく微笑みを返し、霊夢は静かに扉を閉めた。
そのまま身体を横に倒して、ベッドに預ける。
少しずつ、まどろみが私の意識を削り取っていく。視界に、テーブルの上に残されたままになっていた二つの湯呑みが映った。
その時唐突に、私は初めて自覚した。
霊夢と一緒に同じ時を過ごす。それだけで、私は幸せだった。
彼女は何時か私の前からいなくなる。けれど、その何時かは今じゃない。
今はただ、一緒にいられるこの幸せを大切にしたい。
心からそう思った。
私の愛するあの人と過ごす幸せを大切にしよう。鮮烈に、色褪せないように、何時までも残るように。後悔なんてしたくないから。
その為にまずは明日、私の伝えられる『大好き』を全て伝えよう。
だから、覚悟してよね、霊夢。
END
霊夢とおいしくお茶飲むために緑茶淹れる練習してるフランかわいい。
しかし寿命ネタは難しい問題ですね。この界隈では必ずついてまわる要素ですし…。
人里デート編、期待して待ってます。
姉妹の今後が楽しみです。
フラ霊好きなんだけど少ないから見れてよかったです。
レミ大、めーさく。パチュリーは誰とつき合っているんだろうな
素晴らしい。フラ霊とは良いものですね。
ほのぼのシリアスといった感じでしょうか?
この2人の素敵な関係が少しでも長く続いて欲しいです。
そして…レミ大とな!これはまたレアカップリング。
いいぞもっとやれ。