今日は25日。クリスマスの日だ。
「 I don't want a lot for Christmas
There is just one thing I need 」
アリスは歌いながら、楽しそうに飾り付けをしている。
赤いケープに赤いサンタ帽を被ってあちこち行ったり来たり。
サンタや妖精に扮した人形達が飛び回り、絵本が現実になったような可愛らしい光景だ。
金髪に青い瞳、白い肌。
人形のように綺麗な娘には、西洋の行事もぴったり似合う。
純和風な人里の家屋も、外の陰気な魔法の森のことも気にならない。
ただ、一つだけ気になることが。
魔女がキリストの生誕を祝う筋合いがあるのかしら?
「魔女である前に女の子だもの。イベントは楽しまないと損よ?」
と笑って返された。
色んな文化がごった煮状態の幻想郷で、今更そんなことを気にする方が変なのかしら。
楽しんだ者勝ちって考えには大賛成だけどね。
今頃は悪魔の館でも、盛大なクリスマスパーティーが行われてるのかしらねえ。
「 I don't want a lot for Christmas
There is just one thing I need 」
アリスは人形達を指揮し、一人オーケストラ状態で歌っている。
盛り上がってきたのか、時々妙な振り付けも入ってきた。
体中で嬉しさを表現しているみたいで、見てるだけでこっちも楽しくなる。
アリスと二人だけのクリスマスを過ごせる幸運を噛み締めながら、もう少しだけ、
この可憐な少女を見つめていることにしよう。
☆
「ふぅ」
「お疲れ様。とても上手だったわよ」
「ありがと」
褒めてあげるとにっこりと微笑む。
この笑顔は天使にも負けないわね。
「幽香、リースは完成した?」
「はい、この通り」
向日葵で作ったフラワーリースを見せる。
他にも、この時期には咲いていないような花を使っているけど。
暖房の効いた部屋に置いておけば数日は持ってくれるだろう。
ドライフラワーの方が日持ちはするんだけど、どうも苦手なのよね、あれは。
こっちの方が色が綺麗で、花弁も生き生きしてて良いでしょ?
「うん、流石は幽香ね。それをツリーに飾れば、飾りつけは終わりね」
どこで手に入れてきたのか、もみの木風の木のてっぺんにリースを飾る。
綿や小物などが飾り付けられているけど、これはきっとアリスのお手製ね。
いったいいつから準備を進めていたのかしら。
可愛いのはいいんだけど、首吊り人形が飾ってあるのは悪趣味だと思うわよ?
☆
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
ターキーも食べ終え、ケーキをつまんで紅茶を飲む。
クリスマスと言っても、こうなってしまえばいつもと変わりがないわよね。
アリスは何か用意してないのかしら?
「ねえ、アリス」
「なあに、幽香」
「私の衣装は作ってたりしないの?」
「……何のことかしら」
アリスが分かりやすく目を逸らす。
別に隠さなくたっていいのに。
「どうせ性懲りも無く作ってるんでしょ? 怒らないから正直に言ってみなさい」
「……うん。幽香のサンタ服も作った」
紅茶を口に運び、上目遣いで私の機嫌を窺ってくる。
怯えと期待が半々ってとこかしら。
肩を丸めて小動物っぽい仕草が、今すぐ抱きしめてしまいたい程に可愛らしい。
「着てくれる?」
アリスが私を見つめ、恐る恐る聞いてくる。
こんな頼まれ方をされたら、断れるわけがないじゃないの。
アリスの頭を撫でて話しかける。
「着てあげるわ。折角のイベントだし、アリスが私のために作ってくれたんだものね」
「ありがとう」
アリスが嬉しそうに微笑み、私の手にキスをする。
「隣の部屋にあるの。着替えを手伝う?」
「一人でできるから、いいから座ってなさい」
「うん。あまり待たせないでね」
「分かってる」
ご馳走を前にしたわんこみたいに、はしゃいで飛びついて来そうなアリスを座らせる。
着ると言ったら途端に目の色変えちゃって。
さっきの不安そうな表情は演技だったのかしら?
……。
どっちでもいいか。
演技だと分かっていても、アリスのお願いを断るなんて無理な相談だものね。
さて、アリスはどんな服を用意してくれたのかしら?
☆
「アーリースー。そろそろ離れなさいよ」
「やだっ」
「朝までこうしてるつもり?」
「夜まででもいいわよ」
全く。ここまで甘えてくるとは予想外だった。
着替えて部屋から出たら、目を輝かせたアリスに全身まじまじと見られ、抱きつかれた。
抱きついて、時々体を離して私を見て、そしてまた抱きつく。
しっかりと私の体を掴んで離さないので、仕方なくお姫様抱っこしてソファーまで移動したけど。
座ってからもずっと抱きつきっぱなし。
私の膝の上に座り、首に抱きついている。
冬なのに少し熱いくらい。
アリスが作ってくれたサンタ服は気に入ってるわよ。
向日葵のブローチと、白くて温かいファーがたっぷり付いてるし。
目立たないけど、女の子らしいリボンがついてて可愛いし。
ちゃんとアリスとお揃いの赤いケープに赤い帽子。
ただ、スカートが短すぎるのよね。
ふとももが半分くらいしか隠せてないじゃない。
この部屋は暖かいし、アリスが脚を絡ませてくるおかげで寒くは無いんだけど。
これで外には絶対出れないわね。
こんな格好を見せてあげるのはアリスだけなんだから、ちゃんと感謝しなさいよね。
「ねえ、アリス」
「なあに、幽香」
「試着も採寸もしてないのに、よくぴったりの服が作れるわね」
「幽香のことなら何でも知ってるのよ。服のサイズも、どんな服が似合うかもね」
アリスが少しだけ体を離し、おでこを合わせて自慢そうな目をして見つめてくる。
服飾士としてのプライドと、私への愛を強く感じる。
今日くらいは、アリスの好きにさせてあげようかしら。
「妖怪は元々体型が変わりづらいみたいだから、そう頻繁に採寸する必要もないんだけどね。
それでも、ちょっとは修正したりもするのよ?」
「はいはい、分かったわ。毎日肌を合わせてるから、そういう変化にも敏感なのよね」
「幽香の胸が少し大きくなって、最近ちょっと肉付きが良くなったのだって知ってるんだから」
「そういうのは言わなくていいの」
「女の子は少しくらいふっくらしてる方が可愛いのよ?」
「あなたが言えた事かしら」
「私は魔女だから別枠よ」
「はいはい。言ってなさい」
指を絡ませ、唇を合わせる。
そしてまた体をくっつけて抱きしめ合う。
今日は朝までこんな調子かしら。
☆
抱き合ったままどれだけ時間が経っただろうか。
草木も眠る丑三つ時?
眠いわけじゃないけど、ずっと同じ姿勢だと疲れちゃうわね。
アリスの髪を撫でる。
嬉しそうに喉を鳴らして抱きしめてきたから、まだ起きてるみたい。
「アリス」
「うん?」
「クリスマスは満足した?」
「うん。でも、まだ離れたくない」
「脚が痺れたから、体勢を変えたいんだけど」
「じゃあ、続きはベッドでね」
「え、ちょっと、ちょっと待って」
アリスが立ち上がり、脚の感覚を確かめようとしたら、すかさず抱きかかえられた。
しかも、お姫様抱っこで。
するのはいいけど、されるのはちょっと恥ずかしい。
真っ赤な顔を見られないよう、アリスの肩に顔をうずめる。
アリスのばか。
いきなりこんなことしないでよ。
「幽香。来年も、そのまた来年も。ずっとずっと、クリスマスは一緒に過ごしてね」
「あんまり意地悪するなら、もう来ないわよ」
「幽香が言えた事かしら? 可愛いから、からかいたくなるのよ」
「…………ばか」
「ベッドに着いたわよ」
「もう少し、こうしてたい」
「うん、私もそう思ってた」
アリスがベッドサイドに腰掛け、その膝の上に私が座り、アリスの首筋に抱きつく。
さっきとは逆の体勢。
赤い顔を見られたくないというのも勿論あるけど。
さっき気付いたけど、この体勢はとても居心地がいい。
朝までこのままで、アリスを困らせてやろう。
貴女と一緒にいられること。それが一番の幸せだから。
メリークリスマス、アリス。
一番のプレゼントをありがとう。
「 I don't want a lot for Christmas
There is just one thing I need 」
アリスは歌いながら、楽しそうに飾り付けをしている。
赤いケープに赤いサンタ帽を被ってあちこち行ったり来たり。
サンタや妖精に扮した人形達が飛び回り、絵本が現実になったような可愛らしい光景だ。
金髪に青い瞳、白い肌。
人形のように綺麗な娘には、西洋の行事もぴったり似合う。
純和風な人里の家屋も、外の陰気な魔法の森のことも気にならない。
ただ、一つだけ気になることが。
魔女がキリストの生誕を祝う筋合いがあるのかしら?
「魔女である前に女の子だもの。イベントは楽しまないと損よ?」
と笑って返された。
色んな文化がごった煮状態の幻想郷で、今更そんなことを気にする方が変なのかしら。
楽しんだ者勝ちって考えには大賛成だけどね。
今頃は悪魔の館でも、盛大なクリスマスパーティーが行われてるのかしらねえ。
「 I don't want a lot for Christmas
There is just one thing I need 」
アリスは人形達を指揮し、一人オーケストラ状態で歌っている。
盛り上がってきたのか、時々妙な振り付けも入ってきた。
体中で嬉しさを表現しているみたいで、見てるだけでこっちも楽しくなる。
アリスと二人だけのクリスマスを過ごせる幸運を噛み締めながら、もう少しだけ、
この可憐な少女を見つめていることにしよう。
☆
「ふぅ」
「お疲れ様。とても上手だったわよ」
「ありがと」
褒めてあげるとにっこりと微笑む。
この笑顔は天使にも負けないわね。
「幽香、リースは完成した?」
「はい、この通り」
向日葵で作ったフラワーリースを見せる。
他にも、この時期には咲いていないような花を使っているけど。
暖房の効いた部屋に置いておけば数日は持ってくれるだろう。
ドライフラワーの方が日持ちはするんだけど、どうも苦手なのよね、あれは。
こっちの方が色が綺麗で、花弁も生き生きしてて良いでしょ?
「うん、流石は幽香ね。それをツリーに飾れば、飾りつけは終わりね」
どこで手に入れてきたのか、もみの木風の木のてっぺんにリースを飾る。
綿や小物などが飾り付けられているけど、これはきっとアリスのお手製ね。
いったいいつから準備を進めていたのかしら。
可愛いのはいいんだけど、首吊り人形が飾ってあるのは悪趣味だと思うわよ?
☆
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
ターキーも食べ終え、ケーキをつまんで紅茶を飲む。
クリスマスと言っても、こうなってしまえばいつもと変わりがないわよね。
アリスは何か用意してないのかしら?
「ねえ、アリス」
「なあに、幽香」
「私の衣装は作ってたりしないの?」
「……何のことかしら」
アリスが分かりやすく目を逸らす。
別に隠さなくたっていいのに。
「どうせ性懲りも無く作ってるんでしょ? 怒らないから正直に言ってみなさい」
「……うん。幽香のサンタ服も作った」
紅茶を口に運び、上目遣いで私の機嫌を窺ってくる。
怯えと期待が半々ってとこかしら。
肩を丸めて小動物っぽい仕草が、今すぐ抱きしめてしまいたい程に可愛らしい。
「着てくれる?」
アリスが私を見つめ、恐る恐る聞いてくる。
こんな頼まれ方をされたら、断れるわけがないじゃないの。
アリスの頭を撫でて話しかける。
「着てあげるわ。折角のイベントだし、アリスが私のために作ってくれたんだものね」
「ありがとう」
アリスが嬉しそうに微笑み、私の手にキスをする。
「隣の部屋にあるの。着替えを手伝う?」
「一人でできるから、いいから座ってなさい」
「うん。あまり待たせないでね」
「分かってる」
ご馳走を前にしたわんこみたいに、はしゃいで飛びついて来そうなアリスを座らせる。
着ると言ったら途端に目の色変えちゃって。
さっきの不安そうな表情は演技だったのかしら?
……。
どっちでもいいか。
演技だと分かっていても、アリスのお願いを断るなんて無理な相談だものね。
さて、アリスはどんな服を用意してくれたのかしら?
☆
「アーリースー。そろそろ離れなさいよ」
「やだっ」
「朝までこうしてるつもり?」
「夜まででもいいわよ」
全く。ここまで甘えてくるとは予想外だった。
着替えて部屋から出たら、目を輝かせたアリスに全身まじまじと見られ、抱きつかれた。
抱きついて、時々体を離して私を見て、そしてまた抱きつく。
しっかりと私の体を掴んで離さないので、仕方なくお姫様抱っこしてソファーまで移動したけど。
座ってからもずっと抱きつきっぱなし。
私の膝の上に座り、首に抱きついている。
冬なのに少し熱いくらい。
アリスが作ってくれたサンタ服は気に入ってるわよ。
向日葵のブローチと、白くて温かいファーがたっぷり付いてるし。
目立たないけど、女の子らしいリボンがついてて可愛いし。
ちゃんとアリスとお揃いの赤いケープに赤い帽子。
ただ、スカートが短すぎるのよね。
ふとももが半分くらいしか隠せてないじゃない。
この部屋は暖かいし、アリスが脚を絡ませてくるおかげで寒くは無いんだけど。
これで外には絶対出れないわね。
こんな格好を見せてあげるのはアリスだけなんだから、ちゃんと感謝しなさいよね。
「ねえ、アリス」
「なあに、幽香」
「試着も採寸もしてないのに、よくぴったりの服が作れるわね」
「幽香のことなら何でも知ってるのよ。服のサイズも、どんな服が似合うかもね」
アリスが少しだけ体を離し、おでこを合わせて自慢そうな目をして見つめてくる。
服飾士としてのプライドと、私への愛を強く感じる。
今日くらいは、アリスの好きにさせてあげようかしら。
「妖怪は元々体型が変わりづらいみたいだから、そう頻繁に採寸する必要もないんだけどね。
それでも、ちょっとは修正したりもするのよ?」
「はいはい、分かったわ。毎日肌を合わせてるから、そういう変化にも敏感なのよね」
「幽香の胸が少し大きくなって、最近ちょっと肉付きが良くなったのだって知ってるんだから」
「そういうのは言わなくていいの」
「女の子は少しくらいふっくらしてる方が可愛いのよ?」
「あなたが言えた事かしら」
「私は魔女だから別枠よ」
「はいはい。言ってなさい」
指を絡ませ、唇を合わせる。
そしてまた体をくっつけて抱きしめ合う。
今日は朝までこんな調子かしら。
☆
抱き合ったままどれだけ時間が経っただろうか。
草木も眠る丑三つ時?
眠いわけじゃないけど、ずっと同じ姿勢だと疲れちゃうわね。
アリスの髪を撫でる。
嬉しそうに喉を鳴らして抱きしめてきたから、まだ起きてるみたい。
「アリス」
「うん?」
「クリスマスは満足した?」
「うん。でも、まだ離れたくない」
「脚が痺れたから、体勢を変えたいんだけど」
「じゃあ、続きはベッドでね」
「え、ちょっと、ちょっと待って」
アリスが立ち上がり、脚の感覚を確かめようとしたら、すかさず抱きかかえられた。
しかも、お姫様抱っこで。
するのはいいけど、されるのはちょっと恥ずかしい。
真っ赤な顔を見られないよう、アリスの肩に顔をうずめる。
アリスのばか。
いきなりこんなことしないでよ。
「幽香。来年も、そのまた来年も。ずっとずっと、クリスマスは一緒に過ごしてね」
「あんまり意地悪するなら、もう来ないわよ」
「幽香が言えた事かしら? 可愛いから、からかいたくなるのよ」
「…………ばか」
「ベッドに着いたわよ」
「もう少し、こうしてたい」
「うん、私もそう思ってた」
アリスがベッドサイドに腰掛け、その膝の上に私が座り、アリスの首筋に抱きつく。
さっきとは逆の体勢。
赤い顔を見られたくないというのも勿論あるけど。
さっき気付いたけど、この体勢はとても居心地がいい。
朝までこのままで、アリスを困らせてやろう。
貴女と一緒にいられること。それが一番の幸せだから。
メリークリスマス、アリス。
一番のプレゼントをありがとう。
ところでクリスマスはとっくに終わりましたが?(wktk
ところで、もう年明けるんだけど?(wktk
(本音)ぶち込んで下さいお願いします
うん、って返事しちゃうだだ甘アリスがたまりません
電車の中で読んでて見事に不審がられました。
どうしてくれるんですか
望むところだと言わせてもらおう
さ、ばっちこーい
でもクリスマスはとっくに終わってますよ?(口を開けつつ)