「クソッ、あの虎っ子、強敵だったな……」
正直しんどい。普段なら六面にはもっと余裕を持って挑めているはずなのに。
しょうがない。さっき戦った奴が、私の大嫌いな「へにょりレーザー」の使い手だったから。
レーザーは大好きなんだが、へにょると超気持ち悪い。極太に限る。やっぱパワーだパワー。マスパ最高。
で、六面は何だか鬱々しい雰囲気だった。まず音楽が心臓の拍動から入る。怖い。普通の魔法使い的に、このアルカイックなメロディーラインが気に食わない。
そのうえ背景もダークっぽい。あと何故か海産物の香りがする。満貫振り込みで暗い。
……そういやここ魔界の一部なんだそうだが、まさか、ラスボスってアリスんとこのあいつじゃないだろうな。色々アレだった時の私を知ってる奴だから、会いたくないんだが。マジで。
「そろそろBGMがワンループ……、六ボスだぜ」
身が引き締まる。愛用のウィッチハットを目深にかぶり直した。
そこそこ強くなってきた雑魚を、パワー五のレーザーでもって蹴散らしつつ進む。やがて人型の影が見えてきた。
背丈は私と同じくらいだろうか。妙な形の帽子を被っているみたいだ。顔は分からない。こっちからだと逆光気味だから、イマイチよく見えない。
BGMがループした。つまり奴がラスボスってことだ。あいつが聖とかいう、今までの連中が崇めてた輩なんだな。よかった、アリスんとこのアレじゃなくて……。
ただ、立ち姿がジャケ絵のシルエットとかなり違うのが気になった。まあその辺は大人(アル中)の事情か。
やがて画面スクロールが終わった。自信満々の笑みを見せるそいつは、やっぱりジャケットのシルエットとはだいぶ違うけれど、六ボスらしい威圧感はあった。
「ゲーソっソっソっソっソッ!」
何かと思った。
あんまり酷いもんだから、それが高笑いなんだと理解するのに、五秒くらいかかった。
ありなのかアレ……いやいや、グラララって笑うキャラが人気になるご時世だし、ありっちゃありなのか。
しかし、あんな笑い方する奴が聖なのか。胸が熱くなってくるな。
「ん、あれ……」
まじまじと見ているうちに気づいた。こいつ、最近どっかで見かけたぞ?
さて誰だったか。喉に魚の小骨が刺さった気分を数秒味わって、私はそいつを思い出した。
「ああ、さっき戦った三ボス……の、オプション」
「ありゃオプションじゃないしそもそも私は一輪さんでもないでゲソ!」
「あ、スマン、他人の空似か……」
なるほど確かに、よくよく見たら服とか顔とか結構違う。何よりあのデカいオッサン(本体?)がいないし。
じゃあ何だろうな、こいつに対する既視感は――?
「あ……もしかして、うおおマジか!? こんなところでこんな有名人に出くわすとは!」
「なんだ、ちゃんと知ってるんじゃなイカ」
もちろんだ。知ってるも何も、超有名じゃないか。
「サイン下さい、え――……イン、インテグラルさん? 今日は上条さんは一緒じゃないんですか?」
「私はインデックスでもないし名前間違ってるじゃなイカ! お約束やめい!」
どうやらまた他人の空似らしい。確かに所々違う。
というか、そうか。あのシスターはインターセプトっていうのか。何か違う気もするが。
どうも名前が覚えられなくて困るのは、私がオルソラさん派だからなんだ。
「うーん、じゃあ、お前いったい誰なのぜ?」
「フフフ……よく聞いてくれたじゃなイカ! この幻想郷を侵略しにきた、侵略! イカ娘さまとは私のことでゲソよ!」
「誰だよ」
「え、……え? 知らない?」
「うん」
「マジで?」
「うん」
「馬鹿な! 今大人気じゃなイカ! グッズの宅配テロとか話題になったし!」
「へえ」
今大人気なモンが幻想郷に流れてくる可能性は、ものっそ低いんだが。
とりあえず、こいつがイカ娘さんとかいう人気キャラで、幻想郷を侵略しにきたということは何となく把握した。道理でステージ全体が磯臭い訳だよ。イカだもんな。
しかし侵略て……物騒な奴だ。
「つうか、本来の六ボスはどうしたんだよ」
「ああ、ちょっと眠ってもらってるでゲソ」
「ってことは、じゃあ、お前意外と強いのか」
「当たり前じゃなイカ。舐めるんじゃないでゲソ?」
これは困った。サクッと倒して帰ろうかなと思ってたんだが、中々そうも行かなさそうだ。
六ボスを倒してこの余裕、かなりの実力にちがいない。
「ふふ……、まず魔界都市エソテリアを魚介都市ゲソテリアに変えてやった! ここから版図を広げるでゲソ!」
「あ? 六面BGMは法界の火だぞ? エソテリアは五面だ」
沈黙。
「ふふ……まず法界の火を北海の漁火に変えてやった! ここから版図を広げるでゲソ!」
「おい、ゲソテリアとやらはどこ行った」
「え、ゲソテリア? 何それ、幻聴じゃなイカ? 私のログには何も残ってないでゲソ」
こいつ無かったことにしようとしてやがる……汚いなさすがイカ娘汚い。
つうか漁火て。おもっくそ釣られてんじゃなイカ。
「なに、べつに悪い話じゃないでゲソ。ただ今人気絶好調な私が侵略することで、イカ娘ファンの東方界隈ヘの流入が起きるんでゲソ。それで界隈がいっそう賑わう、いいことじゃなイカ?」
「ふむ」
こいつの言うことにも一理有るかもしれない。寂れるよりは賑わう方がよほどいい。
そういうときよく言われるのが「にわか」の問題だが、それにしたってどのジャンルでもいつも起きて来たことだ。
……だが。
「だが断るのぜ」
「む……私の提案の良さが分からなイカ!?」
「いや、お前の提案自体には賛成だぜ」
私は、むしろ良いとすら思っているのだ。もっとも、人によって賛否両論別れるところだろうが。
しかし、コイツを受け入れる訳にいかない理由がある。
「ただな。お前、来るとこ<サイト>間違えたな。侵略<クロス>がしたいなら、悪いことは言わん。理想郷<Arcadia>に行くこった」
「ぐ……分からず屋め!」
「大体、安易な侵略<にわかなクロス>は身を滅ぼすんだぜ? さあ、これ以上ボロ<原作との乖離>が出る前に、とっとと幻想郷<このSS>からご退場願おうか!」
断るならば、力づくだ――構えた八卦炉で、そういうメッセージを伝えた。
しかし、それで退いてくれるほどヤワな相手でもない。むしろ闘志を漲らせてきた。
「ふん、元々こうするつもりだったんでゲソ。さあ、後悔するがいい!」
「やる気は充分ってこった。いいぜ、弾幕ごっこだッ」
私は右手をにぎりしめ、相手へ突撃した。
ゲソテリアだか北海の漁火だかなんだか知らないが、スルメにして霊夢ん家にでも送り付けてやろうじゃなイカ。
一気に間合いを詰め、まずは一撃先手必勝。
「ンーーー! マスタースパァァァーーーク!!」
「おい馬鹿それはやばブッ」
マスタースパーク。といっても私の使う極太レーザーとは別物だ。これは筋肉に生きた伝説の魔法使い、オイ=ドンの生み出した必殺魔法だ。中身はキングストレート。終わったと思いきや信じられない伸びを見せる帝王の拳。
奇襲だったこともあいまって、私の細腕でも充分な破壊力があった。
振り抜かれた拳で大きくのけ反ったイカは、しかし気合いの声とともに復帰した。意外にしぶとい。スルメみたいな奴だ。
「ッ……、そのパロはヤバいんじゃなイカ!?」
「ん、何だか知らんが、弾幕ごっこは飛び道具限定じゃないぞ? ほら、妖夢なんかは斬りかかって来るしな」
「そうじゃなくて、ええい、とにかくそれ禁止でゲソ!」
理由は知らないが、イカ娘はそう言い立ててきた。
まあいい。どうせこの勝負ではもう使えない。人間で小娘な私は、もともと肉弾戦に劣る。さっきのアレも、奇襲の一発限定だからやれたんだ。
「じゃあ次はこれだ」
魔法使いは魔法使いらしく、飛び道具で行くべきだろう。
ンーーーマスタースパァァァーーークを堪えても、まさかこっちは堪えられまい。
懐から取り出したのは、八卦炉ではない。もっとでかくて長くて太い。
「……何でゲソ、そのやたら物騒な代物は」
「おう、軍用の対戦車ライフルだぜ。名付けてMASTER SPARK」
魔法使いといえば遠くから敵をやっつける職だからな。ピッタリだ。ちなみに、きわめてイイ発音で言うのがコツだ。ハリウッド風に。
こいつは私のマスタースパークより扱いづらいし当てにくいが、当たればとんでもないダメージになる博打スペカだ。……あくまでスペカだ。
ポケモンでいうドリルくちばしみたいなその特徴は、名古屋撃ちでこそ真価を発揮する。優れた判断力と機動力を持つ上級者向けというわけだ。
「いや、それもヤバいでゲソ」
「ああいや大丈夫、ライフルったって威力は落としてあるから。紫の耐久ゲージ一本分ぐらいだな」
そこは流石に修正入れとかないと、死人が出かねん。私にもそれくらいの良識はあった。
弾幕ごっこにも当然事故死は有る。でも、わざと殺すのは駄目なのだ。
「いや威力落としたって安心できないし、私が言いたいのはそういうことじゃなくて……とにかくそれも禁止でゲソ!」
「ええ? 何だよわがままだな……。あと他にニューウェポンといったら、これぐらいしか無いぞ」
ホントは他人に見せるのも惜しいようなプレミア品なんだが、この際だ、仕方あるまい。
「それは、バット……? もしかして紅魔館のじゃなイカ?」
「おう。パチュリーから借りたプロ野球選手のバットだ。何でも、マハトマとかいう――」
「やっぱ『湖上の華』じゃなイカ! それもやべえんだよォ!」
ああもう、何なんだこいつ。人のやることにケチばっか付けやがって。
こっちだっていつまでもマスパ一本じゃやってけないんだよ。今やチルノですら自機になる群雄割拠の時代、個性と斬新さが大事なんだ。
だから人が色々試行錯誤してんのに、邪魔しやがって。
「もう魔理沙さんは怒ったのぜ、わがままばっか言いやがって。本気で行くぞ、泣いて土下座させちゃるからな!」
「フン、私だって本気で行くでゲソ。国宝の海老がボコボコにされた今、魚介類のエースはイカだけなのでゲソ!」
いや、その海老の話こそヤバいよ。自称国宝Disるのはヤバいだろ……。
私は今度こそ八卦炉を構えた。奴も戦闘体勢に入る。
――しかし、啖呵を切ったとこまではいいとして、実は内心不安だ。
何せコイツは、本物の六ボスに勝っている。それも外傷無しでだ。見た目はアレでも相当強い、はず。
対する私は、実は四面あたりから既にキツかった。エクステンドの仕組みが独特過ぎるのが悪い!
実力には恐らく差がある。鍵となるのは、どうやってそれを埋めるか……。難しいところだ。
「……魔法使いの天敵、スペルインターセプトも使って来るだろうしな……ッ」
「だからインデックスじゃないと言ってるじゃなイカ!」
「ちぃッ、とにかく、やるしかないのか!」
「待ちなさい魔理沙、私も戦うわよ!」
聞き慣れた声。振り向いた先には、我が親友が居た。
こんなときには何より心強い奴だ!
「続々とげそれいむが集まってくるな……!」
タコである。
「ふん、今更一人二人増えたところで――いや待て『続々と』って何!? おかしくなイカ!?」
「そりゃ多少増えたりするわよ、巫女だもの」
「これだけの霊夢が居れば百人力だ。私も、取っておきのスペカ・友符『ディアマイフレンド』を出すときが来たな!」
「だからそういうパロはイカんと言ってるでゲソ……。そもそもパロですらない、どストレートじゃなイカ!」
喚くイカを尻目に、私は勝利を確信していた。
しかし、半ば浮かれる私を、霊夢(の内の一人)がたしなめる。
「駄目よ魔理沙、まだ気は抜けない……私たちの力を合わせても、まだあっちの方が強いわ」
「ハァ!? 目茶苦茶じゃないか、くそっ、どうすれば……」
何と言うことだ。人気絶頂な作品の壁とは、こうも厚く高いのか。
私にも霊夢にも、もはや状況をひっくり返せるようなカードがない。相当厳しいが、やるしかないのか。
「二人とも、私を忘れてもらっては困りますよ!」
「さ……早苗!?」
「はい東風谷早苗です! 今回自機になりました東風谷早苗です! ただ今赤マル急上昇中の東風谷早苗、東風谷早苗ですよ!
きた! メイン祝きた! これで勝つる!
しかし、カカッとバックステッポでやって来た風祝が始めたのは、露骨な人気アッピルだった。
「私は風祝ですからね、人気も取るますし、借りたものは返しまえsん」
汚いなさすが緑巫女きたない。しかしあんまアッピルが過ぐると人気が鬼なって死ぬから程々にしておくべきそうするべき。
「いいところに来てくれたわね早苗、ありがたいわ」
「褒めるのはまだ早いですよ霊夢さん。実は、強力な助っ人を他にも連れて来ました。その人も加えれば、イカ娘だろうと目じゃありません!」
「ほほう」
早苗の呼ぶ助っ人だから、やはり神奈子や諏訪子だろうか。
かたや六ボス、かたやエクストラボス。確かに、味方になってこれほど心強い奴も居るまい。
ただ、懸念も有るわけで。
「なッ――今、この私を上回る人気キャラなんて居るはずないじゃなイカ――!?」
そう、そこなんだ。
あの二人の人気は、果たしてイカ娘を上回り得るのだろうか?
人気キャラが勝つのは、いろんなものの王道だ。つまりイカ娘並の人気キャラでないと、絶対神による補正が入って勝率が下がってしまう。
実力自体は有る二人だから、下手すりゃ噛ませポジにされてしまう。
「ふふ、居るんですよコレが……先生! お出でください!」
結論から言えば、そいつは神奈子でも諏訪子でもなかった。
早苗が先生と呼ぶ、そいつの名は――。
「俺もいるぜ!」
「「「テリーマン!」」」
……誤字?
そしてオルソナ派とは…乳か乳なのか!?
ってかもう色々とヤバいだろwwww
よもや創想話内のパロをやってくるとは想定外だったw
あと、土下座表からahoさんが抜けてる気が(ry
俺は良いと思います!!
というか純粋に後書きに上がってる名前の方々が羨ましいというかいややっぱなんでもないです
まさかのオチで吹いてしまった
でも作者のそそわ好きは伝わったので半分。
でも点数はつけちゃいけない気がします。せめて4月1日まで待ってほしかった。
まさに狂人……!
オイドンとかガンジーバットとか懐かしすぎるw
また読み返したくなりました。あの長編を。どうしてくれる。
×カカッと ○カカッっと
どちかというと最重要なところをミスしているんですがねぇ…?
その程度の知識でブロント語を使おうと思った 浅はかさは愚かしい
もし同じに見えるならおまえの目は意味ないな後ろから破壊してやろうか?
喚くさんには無理にでもネタを思いつく義務はないんだから、
そういう悪いところを真似ないでほしいなあ
元ネタが解らない人に対する配慮なしって
解る人にはいいけど解らない人はポカーンですよ。
作品としては0点以外ないですね。
でも東方じゃなくても~って感じなのでこの点です
とりあえずテリーマン自重wwww
面白かった、いいんじゃね、これ?
一応、あなただけのサイトではないので…
しかし他のアニメ主役をSSの主役にしたらそれはクロスSSだし、二次SSの話をパロったらそれは三次SSではなイカ?とも思う。
でもまあ面白かったから点数はこのくらいで。
ところで例の理想郷で余りにもズバり過ぎるタイトルの作品があったけれども別人なのかしら
いつもの勢いが感じられないssだった。なんか読みにくかったし
むっ、靴ひもが…
ブロントさんが苦手って人もいるから気をつけるべきそうすべき(このあたりの配慮が人気の秘訣)
あまり調子ぶっこいてると病院で栄養食を食べる羽目になる
なかなか面白かった
でも……独りよがりが過ぎるんじゃないでしょうか。
誰得?
元ネタ全部知らないと楽しめないですよ、これは。
腹いてぇwww
名作パロおもしろかったです
貴方は少し反省した方が良いのでは。
テリーマンは途中で読めた。そして案の定なんの捻りもなしに出てきて残念
下らんっちゃ下らんが、笑ったんで、素直に満点つけときますわw
>ポケモンでいうドリルくちばしみたいな
「ドリルくちばし」は堅実な技では? 博打技なら「つのドリル」かと
でもタイミング的に火○さんの同人誌が思い浮かんだので半減。
俺は普通に面白かったし、いつも通り文章の書き方もよかったし
みんな目くじら立て過ぎじゃないか?
オールスターを見ている感覚で楽しめました。
幻想郷に来た瞬間、餓えた巫女に焼かれて食われてしまいますよw
いいそそわオールスターです。笑いましたw
あとイカ!幻想郷に海はないぞ
上条さんってでてきたところからもう
おもしろかったですw