紅魔館の地下深く、破壊の能力を持った悪魔の妹が眠るその寝室。
悪魔の妹こと、フランドール・スカーレットがすやすやと穏やかな寝息を立てるその最中、今回の主役はもぞもぞとフランドールの布団の中から顔を出したのでございます。
「……こぁ~」
眠そうな顔をくしくしとハムスターのように擦るその少女、なんと大きさは手のひらに乗るほどの小ささではありませんか。
真っ赤な髪は寝癖でぼさぼさで、半分閉まりかけている瞳を見れば今にも眠ってしまいそう。
手乗りサイズの小さな小さな小悪魔は、布団の誘惑を撥ね退けるように這い出てきました。
彼女は図書館で司書として働く小悪魔から分化した、いわゆる分身のようなもの。
みんなから「チビ」だの「おチビちゃん」などと親しまれているマスコット。
「こぁ!」
ペチンペチンと気合を入れるように頬を叩いたチビは、むんっと握りこぶしを作ってベッドから飛び降ります。
実は彼女、まったく飛べません。つまりどうなるかといえば、それは―――
ベチーンッ!
「ごぁっ!!?」
当たり前のように顔面から墜落するのでございます。
面を上げたチビは目に涙を一杯にため、今にも泣き出しそうなのを我慢してゴシゴシと涙を拭いました。
可愛くて、泣き虫で、そしておっちょこちょいな、そんなちっちゃな小悪魔の一日の始まり始まり。
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彼女のご主人様のフランドールは吸血鬼。
そのため基本的に起きるのは夕方なのです。
その間、チビはかまってもらえない寂しさを紛らわすため、紅魔館の中を探検しているのであります。
チビにとってご主人様と遊んでもらうことは大好きなのですが、だからといって起こしてしまうのは忍びない。
そんなチビが最初に向かう場所は決まって、紅魔館の門だったりするのです。
「すぅーっ……」
妖精メイドに頼んで門の前にまで訪れれば、やはりいつものように門番の妖怪、紅美鈴が奇妙な踊りを舞っていました。
太極拳だったか、それとも八極拳だったか、どちらだったかチビはよく覚えていませんが、そんなのは些細なこと。
美鈴の動きにあわせ、チビも拳を突き出したり、足を振り上げたり、小さな体で大忙し。
「こぁーっ……こぁっ! こぁっ!!」
自然と声も出てしまいます。
そうして、その声で美鈴がチビに気がついて、にっこりと温和な笑みを浮かべました。
「あら、おチビちゃん。今日も一緒に運動していく?」
「こぁっ!」
元気のいい返事です。一緒に手も突き出しちゃうぐらい気持ちのいい返事に、美鈴は満足そうな笑顔を浮かべて「よろしい」と先生気分。
気持ちを引き締め、美鈴が静かに構えを取ると、チビもまねをして同じ構え。
日も昇らぬ早朝に、珍妙な二人組みが織り成す珍妙な踊り。
けれども、こんな珍妙な光景も、最近の紅魔館では日常の一つとして溶け込んでいるのでございます。
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「いやー、いい汗かいたわねぇ」
「こぁー」
ようやく日が昇り始めた紅魔館の厨房にて、美鈴とチビはそんなことを口にします。
美鈴の帽子の上に乗ったチビはうつ伏せにしがみついてほっこりといい笑顔。
疲れたときには水分が欲しくなるのも仕方なきこと。二人が厨房に足を踏み入れたのもそういった理由からでした。
しかしやしかし、そこには既に先客がいるのも事実であるわけで。
「……まったく、門番が門を離れてどうするんだか。……まぁ、少しぐらいなら大目に見るのだけど」
「あ、咲夜さん」
「こぁっ!!?」
紅魔館の家事全般を引き受けるメイド長、十六夜咲夜その人です。
妖怪、妖精、悪魔、魔女、そして吸血鬼が住まうこの屋敷でただ一人、住み込みで暮らす人間の少女。
しかしやしかし、その実力はかなりのもの。並みの妖怪では太刀打ちできぬとさえ言われる、紅魔館の主、レミリア・スカーレットの右腕とも言うべきお人なのでございます。
美鈴はにこやかに声をかけたのですが、しかしながらチビには一大事。
そそくさと美鈴の帽子の中に入り込み、すっかりとその姿を隠してしまったのです。
何を隠そう、チビは咲夜のことが大層苦手なのでございまする。
「……」
「……えーっと、咲夜さん。元気出してくださいってば。いつか懐かれますって!」
「ね?」と、それとなくフォローする美鈴ですが、咲夜の表情はすぐれません。
知らない人物から見れば、咲夜が不機嫌になったと感じ取れそうなものですが、そこは付き合いの長い美鈴、彼女が寂しそうなのを感じ取ったのでしょう。
しかし、それを素直に認めてしまうほど、十六夜咲夜は子供にはなりきれません。
「別に、気にしないわよ。私にはお嬢様さえいてくれれば十分なんですから」
「むむむ、咲夜さんこんなことで拗ねちゃうのはあまりよろしくありませんよ?」
「誰が拗ねてるって?」
ジト目で睨みつけてみても、美鈴は「もちろん咲夜さんです」とキッパリ口にします。
気付いていないのか、それともあえて口にしたのかは定かではありませんが、何を言っても無駄と悟ったのか、咲夜は小さくため息を一つ。
そうして、何か妙案を思いついたのか、掌をポンッと叩いたのは美鈴でした。
「そうだ、咲夜さん。咲夜さん特性のプリンをおチビちゃんに食べさせてあげてはいかがですか?」
「……私の?」
「そうですよ。きっと懐いてくれますって!」
「そんなに単純なものかしら?」
「そんなものですよ、きっと」
なんだか自信満々の美鈴に釈然としない咲夜でしたが、駄目元で冷蔵庫から取っておいたプリンを取り出します。
美鈴はと言うと、トントンッと帽子を軽く叩いてチビの名を呼んで準備万端。
恐る恐るといった様子で帽子から顔を覗かせたチビは、咲夜の持っているプリンに気がつきました。
「こあーんっ!!?」
ターゲット、ロックオン。気分は「狙い打つぜ!」と叫ぶナイスガイ。
目をキラキラと輝かせたチビには、既に咲夜がそのプリンを持っているという事実など瑣末ごとに成り果ててしまいました。
そんな彼女の様子に二人は苦笑して、美鈴はチビを、咲夜はプリンをテーブルに置きます。
とてとてとチビはプリンに一目散。小さな体で、自分と同じぐらいの大きさのプリンに噛り付くその姿はなんとも愛らしいものでした。
ですがしかし、当然ながら服やら掌やら顔がべとべとになるのは日を見るよりも明らかな結果だったわけでして。
「あらら、美味しそうですねぇ」
「いってる場合じゃないでしょ。もう、こんなに汚して……」
しょうがないといった様子で、けれどもどこか嬉しそうに、咲夜はポケットからハンカチを取り出します。
自分の作ったものをこんなにも美味しそうに食べてくれるのです。それが、咲夜にはとても嬉しいことだったのでしょう。
おせっかい焼きの母親のような表情で、咲夜はべとべとになったチビの顔を優しく拭いてあげます。
「こぁー」
「はいはい、顔逃げちゃダメよ。綺麗にならないじゃない」
優しく、丁寧に。
手馴れた手つきでチビの顔を綺麗にした咲夜は「よし」とどこか満足そう。
それから、咲夜は恐る恐るといった様子で、チビの頭をそっと撫でてあげます。
するとどうでしょう。先ほどまであんなに怖がっていたチビは満面の笑顔を浮かべて。
「こぁ~」
スリスリと、咲夜の手に頬擦りをしたではありませんか。
「ブハッ!?」
「ちょっ!? 咲夜さん鼻血!!?」
乙女にあるまじき失敗です。でも仕方ないんです。察してあげてください。
よろよろと鼻を押さえて後退する咲夜の姿は、普段の完全で瀟洒なメイドと呼ばれている姿とは程遠い。
そんな彼女の様子に、不思議そうに小首をかしげているチビには自分が原因だなんて露にも思わないことでしょう。
「美鈴、私ね、今違う扉を開きかけたかもしれない」
「開かないでください、後生ですから」
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朝の準備体操が終わったら、チビは今度は図書館に足を運びます。
ここには、チビの元になった小悪魔率いる司書隊が忙しく働いており、小悪魔の主であるパチュリー・ノーレッジもこの図書館で本に夢中です。
チビ専用の梯子が備え付けられた机によじ登り、チビが部屋を見渡せば、司書隊の妖精メイドが忙しそうに飛び回っていました。
「やらせはせん! やらせはせんぞぉー!!」
「妖精メイドは伊達じゃない!!」
「メイドスラッシュ・タイフゥゥゥゥン!!」
「このターンテーブルすごいよ!! さすがターンメイドのお姉さんッ!!」
なんか約一名、野太い声で叫びながらテーブルでグルグル回って遊んでましたが、やっぱりみんな仕事に大忙しの様子。
そんな中、チビが捜し求めていた人物が見つかりました。
彼女の元になった人物、名無しの小悪魔です。
「コアンザム!!」
赤い魔力の光を撒き散らしながら、縦横無尽に高速スピードで駆け巡って仕事をこなす彼女は、チビにとっては憧れのお姉さんです。
うっとりとした様子で眺めるチビと同じように、司書隊のメイドたちにとっても小悪魔は憧れの的でありました。
「すげぇ、さすが司書長! 今日も動きが冴えてます!」
「一体、何を食ったらあんな動きが出来るっていうのよ!」
「パネェ! マジパネェッス司書長!!」
「うはははははは!! 我が世の春が来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
妖精メイドたちも小悪魔に対して思い思いの言葉を紡ぎだします。
そんな彼女たちを見て、チビは対抗意識を燃やしたのかムムッと不機嫌そうな顔。
チビはテーブルの端に立つと、ふふんと得意げな表情を浮かべました。
無論、妖精メイドたちは気付いていませんでしたが、そんなことにまでチビは思考が回りません。
そうして、彼女が何をやったかと言うと。
「こあんちゃむ!!」
テーブルの端から勢いよく飛び上がり。
「ぷぎゃっ!!?」
そして当たり前のように墜落したのであります。
冒頭にも述べましたが、チビは空が飛べません。そして、彼女はその事をよく忘れるのでした。
普通の人にはさしたる高さではありませんが、チビにとってはちょっとした崖のようなものです。
顔面を強かに打ちつけたチビは、「こぁ~」と鳴き声をあげてほろほろと今にも泣き出してしまいそう。
そんな彼女を、ひょいっと摘んで拾い上げる誰かの姿。
「まったく、飛べもしないのにまた飛び降りたのね、この子は」
「……こぁ~」
グスッグスッとしゃくりあげるチビに、魔女のパチュリー・ノーレッジは呆れ顔。
やれやれといった様子で机に座らせると、小さく呪文を紡いでチビの額に指を当てます。
するとどうでしょう。チビから痛みがどんどん引いていくではありませんか。
それに驚いて目を白黒とさせるチビに、「もう大丈夫よ」と無表情のまま、けれどどこか温かみのある声で優しく撫でるのは紛れもないパチュリー。
そんな彼女の後ろに、いつの間にか小悪魔が立っていてニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべていました。
「あらあら、パチュリー様もおチビさんには優しいんですねー」
「たまには、そういう気分になることもあるのよ」
「ふふ、ではそういう事にしておきます。私にも向けてくれませんかねー、その優しさ」
「あなたは優しくすると付け上がるからダメよ」
「まぁ、酷い。いいですもーん、後で妹様に甘えちゃうんですから」
ぷんぷんと形だけは不機嫌な様子を取り繕う小悪魔に、「はいはい」と呆れた様子ながらも笑みを浮かべるパチュリー。
なんとも奇妙な形の主従ではあったが、これはこれで彼女達の信頼の証なのでございます。
「さぁさぁ、おチビさん。甘ーいミルクティーを用意しますから、妹様が目を覚ますまでゆっくりしていってくださいな」
「こぁっ!」
元気よく敬礼してみせるチビに、小悪魔もパチュリーも微笑ましそう。
そんなわけで、チビの一日の大半はこの図書館で過ごすことになるのであります。
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トテトテトテトテ。
小さな小さなおチビさんは、廊下を慌しく走ります。
もう少しでフランの目覚める時間。彼女の目覚めを手助けするのは、チビが毎日行っている恒例行事なのです。
そうして、起こしたフランに「ありがとう」とお礼を言われるのが、チビにとっては何よりも楽しみなのでしょう。
そこでふと、フランの姉の部屋が少し開いていることにチビは気がつきます。
泥棒が入ってしまっては大変です。チビは一旦立ち止まり、誰も侵入していないか確認してからドアを閉めるつもりだったのですが……。
「かーめーはーめー、波ぁーッ!!」
ある意味、中身を確認しないままドアを閉じた方が、チビにとっては幸せだったのかもしれません。
鏡の前でなにやら変な構えを取るフランの姉、レミリア・スカーレットの姿に、チビはあいた口が塞がりません。
ポカーンとしているチビに気付きもしないまま、レミリアはなにやらぶつぶつと独り言。
「いやー、やっぱ違うなァ。邪王炎殺黒龍波も違うし、イマイチイメージ合わないし……ここはやっぱ卍解か?
いやまてまて、吸血鬼的にはやっぱり空想具現化的なものを使えた方が……あれ、妄想具現化だったっけ? ヤベェ、超欲しいそれ」
もはやワケがわかりません。チビにとってはレミリアの台詞の一つ一つがまるで異界の言葉に聞こえてきました。
終いには、レミリアは右腕を押さえて「静まれ、静まれ私の右腕!」などと、知る人が見れば「アイタタタタタ!!?」と胸を抉られるような台詞を連発する始末。
そこで、チビは踵を返してご主人様を起こすために戻るべきだったのでしょう。
しかし、とき既に遅く。
「アンリミテッド・ブレイド……わーく……す?」
レミリア、チビを発見。
チビは彼女が気付いたのを理解したのか、冷や汗流しながら「こぁ!」と手を上げて挨拶。
なんとなく、彼女も見てはいけないものを見てしまったのだと雰囲気的に感じ取ったようです。
しかしやしかし、レミリアの表情は能面そのもの。重苦しい沈黙はまるでチビを圧殺せんばかりに圧し掛かりました。
にっこりと、レミリアが笑いました。青筋を浮かべて。
にっこりと、チビも笑い返しました。ただし、顔は真っ青でしたが。
「まてそこのチビィィィィィ!!」
「こ、こぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
そして始まる全力疾走。あたりまえのょうに逃げたチビと、当たり前のように追いかけたレミリア。
これがチビの姉である小悪魔なら「ラディカルグッドスッピィィィィィッド!!」などと叫んで全力で逃げ切るのでしょうが、しかし残念ながらチビにはそんな芸当は出来ません。
歩幅が違います。身体能力が違いすぎます。そして何より、チビは飛べませんが、レミリアは当たり前のように飛べるのです。
「捕まえたぁっ!!」
「こぁぁぁぁぁぁ!!?」
つまり、開始一分以内でつかまるのは、火を見るよりも明らかな結果だったというわけです。
しかし、この吸血鬼大人気ない。見た目は子供ですが。
「ふふふ、私の秘密を知られたからには生かしておけないね。それに、私のフランにべったりなお前には、一度キツーイ灸をすえねばならないと思っていたところだ」
「こ、こぁー……」
「うふふ、さーて、煮てやろうか、焼いてやろうか、それとも裂いてやろうか。ククク、吸血鬼の恐ろしさを教えておくのも悪くないねぇ」
クスクスとレミリアは妖しく笑いますが、無論、そこまでおっかないことをするつもりはありません。
チビは真に受けて怯えてしまっていますが、レミリアはこうやって脅しつけて、ちょっと口止めをするぐらいで済ますつもりでありました。
彼女とて、鬼ではないのです。吸血鬼ですけど。
「……へぇー、お姉さま。チビに何をするって?」
だがしかし、悪いときに悪いことがかさなるというのはよくある話のようで。
その声を聞いた瞬間、今まで得意げだったレミリアの表情から血の気が引きました。
冷や汗をだらだらと滝のように流しつつ、声のした後ろのほうに振り返ってみればあら不思議、妹のフランドール・スカーレットが能面のような表情で立っていらっしゃる。
にっこりと、フランが満面の笑みを浮かべて手を差し出しました。
冷や汗を流したできる限りの笑顔で、レミリアはまるで献上するかのように捕まえたチビをフランの差し出された手にそっと乗せます。
「大丈夫だった、チビ?」
「こあー! こあー!!」
「はいはい。怖かったねー、もう大丈夫だよー」
ポロポロと泣いているチビをあやすように、フランは優しく頭を撫でながらあやすように言葉を紡ぎます。
そんな様子を見て、レミリアはソロリソロリと忍び足でその場を去ろうとしましたが、ガッシリと妹に襟首をホールドされてしまいました。
ギリギリと錆びた扉のような音をならして振り向いてみれば、頭にチビを載せたフランがにっこりと満面の死なす笑みを浮かべています。
「お姉さま、今さっき偶然にも新しいスペルカード思いついたんだけど、ちょっと実験台になってくれない?」
「いやー、お姉ちゃんは今日は霊夢の家でお泊まりしてニャンニャンする予定が―――」
「禁忌『フルスペルコンビネーション』!!」
「ちょっ!? そんな反則なもん避けられるわけがないじゃない!!?
レーヴァテインが!? スターボウブレイクがっ!? 過去を刻む時計が!!? 恋の迷路がいっぺんに襲って他にも……アッー!!?」
ピチューン!
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ご主人様のフランドール・スカーレットが起きてからは、チビはいつも彼女と一緒です。
時々、お出かけしてしまうときはついていけませんが、紅魔館の中ではいつも一緒。
お話をしたり、頬をなでてもらったり、褒めてもらったり、頭に載ったり、他にも色々、一杯一杯、楽しいことが一杯です。
本を読んでもらったり、遊んでもらったり、そんな時間が過ぎてすっかりと夜になってしまいました。
「チビ、もう眠たい?」
「……こぁー」
うつらうつらと、舟をこぎ始めたチビを心配して、フランが声をかけます。
けれど、チビは首を立てには振りません。彼女はご主人様ともっともっと、一緒に遊んでいたいのです。
そんなチビの様子に、フランはクスクスと笑顔を浮かべながら彼女の頭を撫でてあげました。
「眠いなら眠いって、ちゃんといわなきゃダメだよ。ほら、眠るまで一緒に寝てあげるから、ベッドに行こう?」
「こぁー」
少し名残惜しくはありましたが、ご主人にそういわれては仕方ありません。
フランに抱えられて一緒にベッドに入ったチビは、ふわふわなベッドの感触を感じながら、フランに頬を擦り付けて嬉しそう。
「こぁ……」
「はいはい、わかってるよ」
おねだりをすればフランに優しく頭を撫でられて、ふわふわと幸せな気分のまま瞼が落ちていく。
やがて、穏やかな寝息が聞こえてくるのに時間はかかりませんでした。
チビは朝早いですが、夜遅くまで起きられません。
それだけが、チビにとっても、そしてフランにとっても、非常に残念な事実でありました。
「まったく、幸せそうな寝顔しちゃってさ。ゆっくりと休むんだよ、チビ」
そんな風に、優しい笑顔を浮かべたフランはベッドから抜け出すと、チビが風邪を引かないように布団をかけてあげます。
んーっと背筋を伸ばして、「さて」とフランは苦笑をこぼし。
「さてさて、お姉さまに謝ってこようかな。今頃、拗ねてるんだろうし」
くすくすと笑って、フランは部屋を後にする。
部屋のベッドには、手乗りサイズの小さな小さなチビがすやすやと幸せそうに眠りこけています。
ただ嬉しそうに、満面の笑顔を浮かべて、幸せそうに。
▼
彼女の一日は、これで終わり。
いつも騒がしくて、大変な毎日ですけど。
きっとまた明日も、彼女にとっての幸せな日々が続くことでしょう。
今日も騒がしく慌しい、ちょっと変わった住人ばかりの紅魔館。
チビもまた、そんな変わった住人達の仲間なのです。
でも、それでいいのでしょう。
きっとそれは、誰にとっても幸せな事実に違いないと、そう思えることでしょうから。
和みました
咲夜さんは扉を開けば良いと思うよwww
最高です!!
画面の前でにやにやしてしまいましたよ。
鼻を押さえて交代→後退でしょうか?
前回コメにそれとなく書いたら、本当にチビちゃんが出た! ひゃっほう!
鼻をおさえて交代 → 後退
圧殺船 → 圧殺せん
誰がなんと言おうと反則