「れいむれいむ、湿布貼ってくれ」
「また来たか」
こたつでみかんを食べながらごろごろしてると魔理沙がやってきた。帽子をおさえて入ってきたところを見ると、外は風が強いのだろう。わざわざ空飛んでここまで出かけてきて他人に湿布を貼らせる神経がわからない、と霊夢は思う。
「背中だと貼りにくいんだよ」
「体固いのね」
「失敗して、はがして、貼りなおして、また失敗して、っていかにも面倒だろ」
上半身裸になって、畳の上にうつ伏せる。寒くないの、と訊くと、女の子は風の子だ、とかよくわからないような答えが返ってくる。
裸の背中を見る。ひとつひとつ、指定されたところへ、丁寧に湿布を貼っていく。ひい、と魔理沙が声を出す。
「今度は何したの」
「箒で木に突っ込んで落ちた。速度向上の実験中だったんだ」
「今でもじゅうぶん速くない?」
「そのうち天狗より速くなるぜ」
打撲以外に、擦り傷、切り傷もたくさんある。風呂には入ってきたようで、汚れはなくなっているけれど、やはり痛そうだ。女の子なんだからもっと大事にすれば、と言いかけて、まるで紫が自分に言うようなことだ、と思って、霊夢は口をつぐんだ。
左肩にひとつ、背中の真ん中のちょっと右寄りのあたりにふたつ。お尻にほど近いところにもひとつ。数えてみると、十いくつは傷があった。昔の傷で、痕になってしまっているのもある。永遠亭行きなさいよ、きれいに治してもらえるわよ、と何度もすすめたが、あんな宇宙医者にかかっていられるか、と魔理沙は言う。
(きれいにしてもらったほうがいいのにな)
と思うが、なんだか余計なことのようにも思えるので、霊夢は黙っておく。
ふと、ひとつの傷からひとつの傷へ、線を書くように、指で背中をなぞってみた。魔理沙が、ん、と声を出す。もう一度。ん、ん、と声を出す。
何かに似ていた。傷ではなく、傷を結んだ線の形が。魔理沙の黒いスカートを見る。魔理沙で、黒で、夜で……と連想をつなげていくと、この前紫から教えてもらった、夜の星のことだと思い当たった。
「星座っていって、星の形を何かに当てはめて、つながりを覚えるのよ」
「ふうーん」
「ここがこう、ここがこう、なると……えーっと、ペガサス座みたい」
「こら、あんまりなでるなよ」
ちょっと戸惑ったように、魔理沙が言う。
霊夢の指が次々と魔理沙の傷を探り当て、線をなぞっていく。つつつ、と、右肩の先に来たところで、その指が止まった。
「うん、やはり、ここがひとつ足りない」
「何の話だ」
「ごめんね。ちょっと我慢しなさいね」
「おい」
霊夢は魔理沙の裸の右肩に口付けると、そのままちゅうううう、と唇をすぼめて吸い付いた。
うわわ、と魔理沙が情けない声を出す。
「これでよし」
くっきりと赤い痕が残った。しばらくはとれなそうだ。
「何しやがんだ。レミリアに血を吸われて、吸血鬼になったのかと思ったぜ」
「そんなわけないでしょう。これで完成よ」
「ふん」
「魔理沙座よ」
「ペガサス座じゃなかったのか」
「いやいや、私があんたのことを考えて作ったんだから、魔理沙座よ」
ううん、と魔理沙は唸った。
気恥ずかしくなって、慌てて服を着ると、
「あんまり他の人に見せびらかしちゃだめよ」
と言って、霊夢がにやにや笑った。
元から絡みが多いから想像しやすいし。
あっでも同じ題材でR-18を読んでみたい。