Coolier - 新生・東方創想話

誰かさんの呟きで私は即座に飛び立った

2010/11/29 01:06:55
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 秋と冬の境目というか、そろそろあの姉妹の仕事が終えるんじゃないかとか、そんな季節の満月の日。
 博麗神社では宴会が行われていた。

 人妖問わずに(…といっても人間の数が圧倒的に少ないのだが)それなりの数が揃ってお酒を飲む。
 この風景にもずいぶんと見慣れたものだと我ながら思う。

 こんなにも月が綺麗なのに、今回紅魔館の輩がいないのは、昨日の文々。新聞が原因かとか、今頃寺子屋のあいつはせっせと働いてるんだろうなとか、適当な推測を巡らせながら盃を傾けて辺りを見渡す。

 いくつかの異変を解決して、その度に宴会にやって来る妖怪どものバリエーションは増えた。

 その喧騒を聞き流しながら、あいつを探す。
 あまり大勢でいるのが得意でないから、少し離れたところに居るだろうと考え、空になった盃を置いた。

 嫉妬妖怪がいた、珍しい。連れて来たのは誰だろうか。
 毒人形は宇宙人達のところ。
 寅は鼠に何か謝っている。

 居た。
 やはり少し離れた位置。木の幹を背もたれにして飲んでいるのに魔理沙が絡んでる。
 もう少し短いのを穿いてくれていたら中が見えるのに。

 どこぞの覚りが口元を押さえたのが見えたが気にしない。
 この人数だ、私の心が原因とは限定できな…

 目が合った。
 私だった。

 「霊夢~、進んで無いぞぉ」

 顔を近付けるんじゃない、角が当たる。

 「飲んでるわよ、ちゃんと」

 「いいや、もっと飲め」

 どこから湧いたか、けらけら笑って萃香が私にもたれ掛かり、勇儀が私の盃に酒を注ぐ。この酔いどれ妖怪め。
 あんたらは一度禁酒した方がいい。酔っ払って無い時が無いじゃない。

 完全にタイミングを逃した。八つ当たりでさとりを睨んだが、すぐにそっぽを向かれた。

 仕方ない。
 諦めて鬼二人に付き合うしかないだろう。


 やっと鬼達が別の輩に絡みに行った頃には、あいつらに合わせたせいでけっこう酔ってしまっていた。
 さっき居た場所を見ても、辺りを見渡しても、あいつも魔理沙も見当たらない。
 酔ったせいで見落としたかともう一度見渡すが、それでも見当たらない。兎と庭師が酔い潰れて寝かされていたが気にしない。

 代わりにもならないが、さとりと目が合った。
 膝に乗ってる猫はお燐だろう。水橋も側にいた。
 さとりに手招きされたので、不承不承、仕方なく、面倒臭さと機嫌の悪さを全面に出して側に行く。
 途中で妖精を蹴ったのも御愛嬌だ。

 「何か用?」

 「お二人なら森の方に行かれましたよ」

 口元に微笑みを浮かべて答えられた。
 感情も考えもだだ漏れとはこういうわけか。嫌味を言う以外にたまには役に立つらしい。

 「失礼な。私だって…」

 さて、森か、やっぱりどちらかの家だろうか。

 「聞く耳持ちましょうよ」

 知った事か。
 私に一切構わずに去るなんて許すとでも…

 「はいはい、じゃあさっさと追ったらどうです?紫もいますし、神社の事は気にしなくてもいいでしょう」

 「…宴会の最中、誰にも告げず抜け出す二人」

 誰かさんの呟きで私は即座に飛び立った。

 「能力使いました?誰かさん」

 「………二人から思われるなんて、妬ましい妬ましい」

 「天邪鬼とかにジョブチェンジできそうですよね、貴女」







 「アリス」

 霧雨邸(と書いて魔理沙ん家)から出てくるアリスを発見。飲酒飛行は犯罪ではありません日常です。
 魔理沙はいない。
 中に置いてきたらしい。
 追いかけたら最中とかじゃなくてよかった。いや、別に疑ってたりはナイデスヨ?卑猥な妄想だなんてとんでもない。…想像通りでなくてよかった。

 「あら、霊夢。抜け出してきてよかったの?」

 よかったのよ。
 とは、返事をし損ねた。

 「魔理沙は?」

 「寝てるんじゃない?気持ち悪いって。何日か徹夜もしてたみたい。心配した?」

 心配してるのが現状。
 なぜ貴女が知っているのか、とか。魔理沙のためにわざわざ、とか。

 「霊夢は魔理沙と仲がいいし」

 ただの腐れ縁だ。
 言葉に出せてない。返事を待たずに続きを言うのは、私が何も言わなかったせいか。
 ふむ、アリスの下着を屈んで覗こうとしたぐらいのノリで話すべきかしら。

 「アリス、好きよ」

 間違えた。飛躍しすぎた。立ち幅跳びで三段跳びの世界新記録タイ、みたいな。 
 ほら、アリスも困った顔を…

 「奇遇ね、私も霊夢が好きよ」

 していなかった。
 いつもの顔だ。ちなみに私は目が好きだ。鼻立ちもいい。その柔らかそうな唇も…雲が邪魔、もっと明るければもっとちゃんと見れるのに。

 「酔った勢いで言うものじゃないわよ?」

 そういえば私は酔っていた。
 そうか、酔ったせいだったのか。どうりで舌が動かなかったり滑ったりするわけだ。
 I love youとか言ってみようか。酔った勢いで。
 
 「だって貴女、きっと魔理沙が好きだもの」

 なるほど、そうか、私は魔理沙が…
 
 「いや、違う違う」

 そんなわけがない。
 否定した。
 身振りつけて否定した。
 首を横に振った上に、手まで振った。

 どこからの発想だ。

 「え?何?何でそう思ったの?」

 舌が回り始めた。
 うん、この調子で回ったほうがいい。化猫以上厄神未満くらいで。

 「気づいてなかった?貴女さっきも魔理沙探してたじゃない?無意識だった?」

 「むしろ意図的にあんた探してたわ」

 気づいていたのに勘違いされていた。
 視線を好意につなげられるのに、勘違いとか。

 「魔理沙とは仲はいいし、友人だろうけどあんたに対するそれとは違う」

 今は雲が厚いのかよく顔が見えない。
 だが、よく見たらアリスの後ろに人形が2体。多分上海人形。名前はちょっと覚えた。

 今更ながら、自分が普通に告白していることに気付いた。
 全部酔ったせいだ。
 そういえばさっきアリスに好きだと言われた気がする。いや、それは昨日の夢の中のことだったっけ?
 
 「違うっていうのは…」

 アリスが言うのをためらった。
 アリスは照れたように、頬を赤らめている(私の脳内では)

 「むしろ魔理沙には嫉妬してるわよ。
  アリスに世話してもらって、うらやましい。くらいな心持ち」

 ふむ。もやもやはこれか。
 まさか魔理沙に嫉妬していたとは。

 「つまり…」
 「“恋愛対象として”…あんたが好きよ」
 アリスが言い切る前に遮って言った。

 硬直。軽い溜息。そして前髪を掻き上げた。
 私は黙ってそれを見つめて、言葉を待った。

 「良かったわね、霊夢。どうやら私達、両想いらしいわ」

 一歩近づいた。
 照れたような頬笑みを浮かべていた。つられて私も微笑った
 どちらからともなく手を伸ばすと互いの手が触れた。





















 窓から月の光が差した。
 眩しい。
 やっぱり三日の徹夜から飲酒はキツかったかもしれない。宴会に行く前に思わず食べたキノコが悪かったかもしれない。
 せっかくの満月だと言うのに。
 カーテンを閉めておこうと状態を起こして外を見た。

 人の家の真ん前で巫女と人形遣いがキスをしてるように見えた。
 どうやら私はまだ寝ているらしい。

 「失恋する夢を見るなんてどうかしてるんだぜ」

 乱暴にカーテンを閉めると、呟いて布団にくるまった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました

「タイトル関係ねー!!」
ごもっともです、すいません

初投稿です
制作意欲を最近触発されるようなことがありまして、2年ぶりくらいに文章書きました
感想、アドバイス、カップリングへの熱い思い、俺の嫁等、意見いただけたら嬉しいです


※追記(というか返事/12/29)
・魔理沙好きの方、すいません。魔理沙が嫌いとかじゃないです。でもマスパよりミルキーウェイが好きです
・まさか気づく方がいるとは思いませんでしたが、私の脳内では魔理沙⇒霊夢です。内容には関係の無いコトですが
・レイアリいいよレイアリ! はい、他のカップリングも好物ですが、久しぶりに書くきっかけがレイアリ関連でしたので
・タイトルは…もうすいませんとしか

意見、感想、ほんとにありがとうございます
もし、また見かけた時には、その時も読んでくださると嬉しいです
橋守
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コメント



0.2020簡易評価
5.50俺はO型削除
れいありと言えばハチミツフロートさんを連想します(畑違い)。
よく見かけるのは霊夢とアリスの魔理沙引っ張りあいーみたいな奴です。

作品に関しましてのコメントは特にありません。
タイトルを大事にしてください、としか言いようがないです。
7.60名前が無い程度の能力削除
内容量も展開もあっさりめながら読みやすくて良かったです。

ただ魔理沙が当て馬というか踏み台というか、そんな印象が残念です。
総受けは私も好きですが、相手役を一人だけ選ぶ展開なら総受けにしないほうが無難かと。
今作だと例えがありきたりですが、マリアリ間に恋愛感情はなく、霊夢の思い過ごしだったとか、
魔理沙を霊夢なりアリスなりを焚き付ける役に回したり等ですね。
それなら魔理沙好きな方もつっかえなく楽しめるのではないかなぁと愚考する次第です。

偉そうな事書きましたが、私個人としては普通に楽しめました。
レイアリご馳走様です。
14.80名前が無い程度の能力削除
レイアリストを目指すのじゃ
15.90名前が無い程度の能力削除
ここであえて魔理沙も霊夢のことが…と、
逆の発想をしてみたらなかなか面白い気がしてきた!
17.90奇声を発する(ry in レイアリLOVE!削除
レイアリだぁ!!
19.90名前が無い程度の能力削除
タイトル関係なくなくないですかね。
魔理沙好きには辛い結末でしたが、面白かったです。
月明かりに照らされたキスシーン、綺麗ですね。
レイアリご馳走さまです。
20.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです
25.90名前が無い程度の能力削除
恋愛とは幸せばかりではないですな。甘いのばかり読んでて忘れてました。良い作品をありがとう!
43.100名前が無い程度の能力削除
パルスィとさとりの件、素晴らしかったです。
いつかミステリ調の作品など読んでみたいです!
49.100名前が無い程度の能力削除
二人からってそういうね
51.90名前が無い程度の能力削除
ちょっと切なくて、いいね
霊夢の奔放な感じが好きだ
57.90非現実世界に棲む者削除
うん、微妙に甘いね。好みです。