Coolier - 新生・東方創想話

秋は終われどあなたへの想いは永遠に……

2010/11/09 20:43:13
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 今の季節は秋。だがもうすぐ秋も終わる。外も寒くなってきて、冬にかわる準備をしているところだ。
 私の名前は秋静葉。秋にだけ姿を現す豊穣の神だ。
 私には妹がいて、妹も秋にしか姿を現さない。名前は穣子。
 毎回、この時期になると切なくなってくる。私達の季節ももう終わるのかと。
 秋が終わると私達は姿を消す。いや、山とひとつになると言うべきか。
 山とひとつになった後は、来年の秋まで姿を現すことはない。冬も、春も、夏も。
 私達がいない間、みんなはどうして過ごしているのだろう。また、来年の秋になっても私のことを覚えてくれているだろうか。
 枯れ葉の敷き詰められた道を歩きながら私は思う。
 でも、仕方のないことだ。このように生まれてきてしまったのだから。
 昔は、なぜこのようなものに生まれてきてしまったのだろう、と嘆いたけど、今はもう、これは運命なのだろうと受け入れた。誇りにすら思っている。


 私は今、山にある神社に向かっている。
 あの神社の神様にこのことを伝えに行くためだ。
 私達の力はあの神社にいる神様の一人、八坂様に与えてもらっているといっても過言ではない。
 そんな人に伝えに行かないだなんて罰が当たってしまう。
 私は神社の鳥居をくぐる。鳥居をくぐって最初に見えたのは、掃き掃除をしている東風谷さんの姿だった。
 私が少し近づくと、東風谷さんも気づいたようだ。
「あ、静葉様。どうかなさいましたか?」
「東風谷さん……あの―――」
 用件を言う前に東風谷さんに遮られた。
「あの……失礼かもしれませんが……早苗って呼んでくれませんか? 名字で呼ばれるのはどうも違和感があって……」
「そのくらいなら。……じゃあ私のことも様、てつけなくてもいいですよ。神といってもそこまで偉いものでもないので」
 私は東風谷……いや、早苗さんに向かって笑顔で言う。この幻想郷ではかたっくるしいことなんて抜きだ。
「わかりました。……じゃあ静葉さん、て呼ばせてもらいますね。話を切ってしまいましたが、何の用でしょうか?」
 そうだ、私は八坂様に用があったんだ。
「八坂様はいらっしゃいますか?」
 早苗さんに問いかける。いると思って来たのだが……。いなかったらどうしよう。
「神奈子様ですね。いらっしゃいますよ。呼んできますね」
「あたしゃここにいるよ」
 早苗さんが呼びに行こうとしたとき、右の方から声がした。
 私と早苗さんがそちらを向くと、八坂様がこっちに向かっていた。
「神奈子様! 庭にいたんですか?」
 早苗さんが八坂様の方へ向かっていく。
「ちょっとね。……それで、私に何の用かな?」
 私は、八坂様に私達がそろそろ消えるということを話した。
「そうか。もうそんな時期か。……あんたはもう覚悟はできてるのかい?」
 私は言葉に詰まった。まだひとつだけ、心残りがあったからだ。
「まだ心残りがあるんだね。わかるさ。私も神様だからね。……行ってきな。すっきりさせたほうがいい」
 八坂様は私にそう言ってくれた。
 ここは素直にその言葉に甘えることにした。
「すみません。失礼します!」
 私は神社から駆け出した。急いで山を降り、博霊神社へと向かう道を進む。
 彼女がいるとしたらきっとこの道だ。
 しばらく道を走っていると彼女を見つけた。
 霧雨魔理沙。私の大切な人。
 私は急いでいたことを悟られないように息を整えて彼女に近寄る。
「こんなところで何をしているのですか?」
 私は話しかけてみる。
「誰かと思ったら……どこぞの神様じゃないか。私はきのこ狩りだ。お前は?」
 きのこ狩り……か。もうあまりとれやしないのに。
「私は……終わりゆく秋をこの目に焼き付けようと思って……」
 こういうと、彼女はばつの悪そうな顔をした。
「そうか……。もう秋も終わりなんだな……。お前はいついなくなるんだ?」
 帽子で顔を隠しながら言ってくる。
「一通り回ったら。……魔理沙さんは秋は好きですか?」
「秋か……。好きだぜ。秋といわずどの季節も」
 彼女は私に向かって笑いかけてくる。
「春は花見ができるし、夏は花火が見れるし、秋はきのこがとれるし、冬は雪で遊べるから」
 私はおもわず笑ってしまった。
「ふふっ。魔理沙さんらしいですね」
「ま、楽しめれば私はいいのさ」
 それからしばらくの沈黙があった。
 私は何も言わず落ちゆく枯れ葉を見る。
 彼女は何も言わずただ地面を見る。
 先に私が口を開いた。
「それじゃあもう行きますね……」
 彼女に背を向けて歩き出そうとする。
「待ってくれ!」
 彼女が私の後ろから抱きついてきた。
「魔理沙さん……」
「もう少し……このままでいさせてくれ……」
 こんなことは初めてだから、恥ずかしい反面うれしかった。
 この温もりがいつまでも感じられたなら……。
「ちゃんと戻ってきてくれるよな……?」
 小さな声で私に問いかけてくる。
「また……秋には戻ってきます……。私のこと、忘れないでくださいね……」
「忘れるわけがない……! だって私はお前を―――」
 抱きしめている手に少し力が入った。
「―――――」
 私の耳元で囁いた。誰にも聞こえない、小さな声で。
 彼女が私を抱きしめていた両腕を離す。
 その両腕が名残惜しかった。
「それじゃあな! また……」
 彼女が私に背を向けて走り出した。
 遠ざかっていく背中を私は見続けた。姿が見えなくなってもその方向を見続けた。
「ちゃんと聞こえましたよ……」
 あなたの言葉、あなたの気持ち。
 はっきりと。愛している、と。
「お姉ちゃん!」
 穣子の呼ぶ声がする。
 後ろを振り向くと、こっちに走ってきていた。
「もう。探したんだよ?」
 息を切らしながら穣子が言う。
 結構いろいろなところを探していたんだ、と私は思った。
「ごめん。ちょっと大切な用があってね。それじゃあ行きましょうか」
 私は穣子に手を差し出す。
 穣子はその手を握った。
 私達は手をつなぎながら山へ帰った。これから、山とひとつになるために。



 あと何時間もすれば私達は山とひとつになる。私達の姿も消える。
 私達がいなくなったところでこの世界になにか影響があるわけでもない。きっと、普段通り冬が来て、春が来て、夏が来て、また秋が来るだろう。
 さびしくなんかない。だって……


―――――私を待ってくれている人が、愛する人がいるから―――――

 またあの人に会うその日まで、私は眠り続ける。
どうも、ゆう@東方好きと申します。
久々に投稿してみましたよ……。まあ久し振りって言っても全然投稿してないわけですがw
魔理沙と静葉。珍しい組み合わせでしたが、いかがでしたでしょうか?
こんな組み合わせもありかなーって思いまして。

どの季節でも、季節の終わりって楽しみでありながらも切なくなりますよね。
皆さんはどの季節が好きですかね?
ちなみに自分は秋です。
ゆう@東方好き
http://twitter.com/yuutouhouzuki
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コメント



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3.60佐倉P子削除
魔理沙と静葉。過ぎゆく季節と物悲しい恋人達の別れ。
二人の馴れ初めにもう少し触れてほしかったかもです