「なあ、霊夢。……自分の最期について、考えたことはあるか?
遅かれ早かれ私たち人間はこの世を去るわけだが、一体どういう気持ちで逝くのだろうな。
私は怖いよ、懼れているよ。死ぬこともそうだが、それ以上に、魔法使いとして尊厳ある死を迎えられないことを。
……あ、すまんな。変な話をしてしまって。気にしなくてもいいぜ」
陽は沈もうとしている。
妖怪の山は紅い空を背負って一層、暗い。その中を二人の人間が飛んでゆく。
「天狗も知らぬ存ぜぬ、か」
箒に腰かけた魔女が言う。
「この異変は思ったより難航しそうだぜ」
「……そうね」
前を行く巫女は、振り向きもしない。
細い雨が降り始めた。
異変が発生していた。
遊びに出掛けた子供に、獣が憑く。祓いを受けても治らず、辺りを跳ねまわるばかりであった。
「おそらく」
霊夢が言う。
「子供の魂は抜かれ、代わりに四足の其れが入れられているのでしょうね。しかし、あまりに悪質よ。そう、犯人を」
連日の祈祷が彼女の健康を蝕むも、
「許すことなど、能わない。」
その眼差しは鋭い。
数日の間降り続けていた雨が止み、魔法の森に西日が差しこむ。
むせ返る様な草木の香りに混じり、魔理沙の家から、食欲をそそる濃厚な匂いが広がる。
ノックの音がした。
「どなたかな?」
魔理沙が内から扉を開くと、そこには霊夢の姿があった。家中に招き入れられた霊夢が言う。
「良い匂い、ね」
「ウサギのシチューだぜ。何となく、今日あたりに霊夢が来そうな気がしてな。多めに作っておいたから、食べていくといいぜ。」
「犯人がわかったわ」
シチューをよそいに行く魔理沙の背中に向かい、霊夢が言う。
「ほう、それはすごいな」
平坦な調子で返す魔理沙は振り返らない。
「霊夢、シチューに胡椒は入れるか?あと、箸とスプーンどちらが……」
「魂を入れ替えるなんて芸当が、並みの妖魔に出来得る筈がない」
霊夢が遮る。
「それが可能なのは、体系化された高度な妖術・魔術の駆使が可能な者に限られる。でも、何故そんなことをしなければならないのか。
私にはその理由がわからなかったわ。……いえ、嘘ね。本当は勘付いていた。でも、気付かないふりをしていた」
「名推理も結構だが、まずはシチューを食べてしまおう。冷めてしまうぜ」
配膳を終えた魔理沙が、湯気越しに微笑みかける。しかし、
「ごめんなさい。私はこのシチューを頂けないわ。……魔理沙、貴女」
「人を食べたわね?」
魔理沙は柔らかな笑みを浮かべて問い返した。
「どうして、そう思うんだ」
「妖怪は人間の肉を食べることに依り、その魂を取り入れ、強大な力を得る。ならば」
__笑いとばしてくれればいい__
「逆を考える人間がいてもおかしくは無いわ。人間を喰らい、力有る妖魔に化そうと望む者が。しかし」
__或いは、怒鳴りつけられても構わない。兎に角__
「人の身で人肉を食すにはやはり抵抗がある。ならばその魂だけを別の動物に入れて喰らえばいい。そして」
__否定してほしい__
「それに該当する人間は」
突如、魔理沙が苦しそうに背を丸めた。何かの軋むような音がして、やがて肩甲骨のあたりから、白い翼が生えた。瞳は紅く染まってゆく。
「御名答だぜ、霊夢。
場所を移そうか。異変は解決されなければ為らないからな。そうだな、やはり最期は博麗神社が良い。」
「身辺を整理するなら」
震える声で霊夢が言う。
「少しぐらい猶予をあげるわ。なんなら明日、明後日にでも……」
「必要ないぜ。もう処分済みだ。さっき言っただろう。そろそろ霊夢が来ると思っていた、って」
陽は沈もうとしている。
雨後の大気は澄み渡り、空は燃える様に紅い。その中を、一人の巫女と一匹の妖怪が行く。
白い翼を生やしたその妖怪は、その翼を用いずに箒に乗って飛んでいる。少し俯き、愛しそうに箒を撫でやる。
前を行く巫女はきつく祓い棒を握りしめている。しかしその手は、震えているようにも見受けられた。
博麗神社境内に降り立った魔理沙が、箒を霊夢に投げ渡した。
「形見だぜ。受け取ってほしい。ただ、本当は」
「もう少しこいつに乗りたかったな。そしてお前と巫山戯合い、じゃれ合いながら異変の調査をしていたかった。
可笑しいよな。自分で蒔いた種なのに」
「ならば何故、こんなことを」
「それはな霊夢、私が」
魔理沙が言う。
「普通の魔法使いだからだぜ」
「私はこれでも研究熱心でな、魔法の改良にも取り組んできた。加えて人間の中では運動にも秀でた方だと思うぜ。でも」
「敵わないんだ。霊夢、お前には。如何なる努力も、鍛錬も、お前の才能の前では塵に等しかった。
お前に並ぶには、こうするより他に無かった。」
「私は」
霊夢が叫ぶ。
「日々研鑽に努め、高みを目指す貴女が好きだった。『パワー』を標榜しながらもそれに依存しない、工夫と創造に溢れた弾幕が楽しかった。
在りのままの貴女が素晴らしかったのよ……!それに」
「例え力及ばずとも、私たちは掛け替えのない仲間だったわ」
「そう、『仲間』だ」
魔理沙が嘲る様に言う。
「私もそれで良いと思っていたんだ。お前への敵愾心を、嫉妬を乗り越えて、ようやく仲間になれた。ただ……」
魔理沙が少し口ごもる
「霊夢、花の異変を覚えているか?」
「え?……ええ」
「あの時お前は珍しく、異変解決の糸口を見つけられずにいた。それで、偶然出会った私に攻撃を仕掛けてきた」
「やつあたりをしてしまったわ。悪かったとは思っている。」
「違う。そうではない。あの時の霊夢、お前が私を変えたんだぜ」
「どういうことかしら?」
「あの時……竹林を縫うが如く飛ぶ姿に、美しい弾幕に、そしてお前の眼の力に。私は天才というものを見出してしまった。
レミリアや紫がお前に執着する理由を、ようやく理解できたよ。」
「結局私は撃墜された。口では悔しそうなことを言いながら墜ちて行ったが、本当は充足感に満ちていたんだぜ?
あの時だけはお前を、博麗霊夢を独り占めにできた。魔法使いとしての幕切れに相応しい戦いだった。
そしてその想いは、未だ消えることなく私の中でくすぶり続けているんだ。
『あの時霊夢に墜とされ、満開の竹の花に包まれながら逝くことができていれば』ってな」
「だからと言って、何故異変など起こして死に急ぐの?弾幕ごっこならいくらでも……」
「遊びじゃ駄目なんだ。真剣なお前が、良い。それに」
魔理沙が言う。そしてそっと呟く。
「レミリアから聞いたぜ。お前、巫女を辞めるんだってな」
「それは……」
「辞めるのはお前の自由だし、何か理由があるのだろう。私が口を挟める筈もない。
だが、お前が居なくなった後、私はどうすればいいんだ?魔法使いなんて辞めて実家に戻るか?嫁ぎ子を生し家を守り老い逝くか?
なるほど、それが正しいのかもしれないな。ただ」
「私は嫌だぜ。生まれ方は選べなかったが、最期は選べる。
魔法使いとして、尊厳ある最期を迎えたい。特別な存在である霊夢、お前に送られたい。」
強く言い切る魔理沙に応えるが如く、風が吹き始めた。
「なあ霊夢、お前の真の敵はレミリアではない。紫でも早苗でもあってはならない。……私なんだぜ」
背に負う翼が力強く空を掻き、魔理沙の足が地を離れる。
「さあ、お喋りは終いだ。そろそろ始めようか」
しかし霊夢は、俯いたまま動かない。
「魔理沙、ごめんなさい。私は……」
「詫びるな、霊夢。謝るべきは私の方だ。迷惑ばかりかけたうえ、最期に嫌な思いをさせてしまう。そして」
思わず霊夢は顔をあげる。魔理沙の瞳が束の間蒼く戻った、そんな気がした。
「迷惑ついでにもう一つ、どうか私のことを忘れないでほしい。最低最悪の異変を起こした妖怪として。……或いは、友人として」
__そうだ、友人なのだ__
霊夢は気付く。
__友人の最期の望みを、私が叶えてやれずに如何にしようか。
彼女は魔力に使役される「魔女」ではなく、独立自由にその手で自らの運命を決した「魔法使い」なのだ。
ならばその是非を問わず、想いに応えることが友情の在り方なのではないか__
「わかったわ。」
霊夢は言う。その顔は、最早哀しみに暮れる少女のそれではない。妖魔を封ずる、巫女の貌である。
「スペルカードを宣言します。でもこれは遊びではないわ。この異変は、首謀者の死を以て終結する」
「そう、その眼だぜ。……私は幸せ者だ。親父に宜しく。香霖にも」
「っ…!『夢想封印』」
「うん、それでは『オーレリーズサン』」
星空の下、魔理沙を背負った霊夢が石段を下りて行く。その足取りは、天の底を這うように、重い。
__私の天分が__
霊夢は思う。
__何事にも囚われない圧倒的な才能『空を飛ぶ程度の能力』が、魔理沙を狂わせ、その死の重みが私を縛り付ける__
「皮肉なものね」
独り呟く霊夢に、答える者はもういない。
__そして私は選べるのだろうか。自らの最期の在り様を。
尊厳ある最期を迎えることと、一瞬でも永く生き抜くことは、どちらに価値があるのだろうか__
答えは出ない。相談すべき友人は、既に解を出してしまったのだ。
「貴女が私を特別に想っていたように、私にとって貴女は、決して普通の魔法使いなどではなくて……」
眼から雫が零れぬ様に、霊夢は満天の星空を見上げる。
星が一つ、流れた気がした。
遅かれ早かれ私たち人間はこの世を去るわけだが、一体どういう気持ちで逝くのだろうな。
私は怖いよ、懼れているよ。死ぬこともそうだが、それ以上に、魔法使いとして尊厳ある死を迎えられないことを。
……あ、すまんな。変な話をしてしまって。気にしなくてもいいぜ」
陽は沈もうとしている。
妖怪の山は紅い空を背負って一層、暗い。その中を二人の人間が飛んでゆく。
「天狗も知らぬ存ぜぬ、か」
箒に腰かけた魔女が言う。
「この異変は思ったより難航しそうだぜ」
「……そうね」
前を行く巫女は、振り向きもしない。
細い雨が降り始めた。
異変が発生していた。
遊びに出掛けた子供に、獣が憑く。祓いを受けても治らず、辺りを跳ねまわるばかりであった。
「おそらく」
霊夢が言う。
「子供の魂は抜かれ、代わりに四足の其れが入れられているのでしょうね。しかし、あまりに悪質よ。そう、犯人を」
連日の祈祷が彼女の健康を蝕むも、
「許すことなど、能わない。」
その眼差しは鋭い。
数日の間降り続けていた雨が止み、魔法の森に西日が差しこむ。
むせ返る様な草木の香りに混じり、魔理沙の家から、食欲をそそる濃厚な匂いが広がる。
ノックの音がした。
「どなたかな?」
魔理沙が内から扉を開くと、そこには霊夢の姿があった。家中に招き入れられた霊夢が言う。
「良い匂い、ね」
「ウサギのシチューだぜ。何となく、今日あたりに霊夢が来そうな気がしてな。多めに作っておいたから、食べていくといいぜ。」
「犯人がわかったわ」
シチューをよそいに行く魔理沙の背中に向かい、霊夢が言う。
「ほう、それはすごいな」
平坦な調子で返す魔理沙は振り返らない。
「霊夢、シチューに胡椒は入れるか?あと、箸とスプーンどちらが……」
「魂を入れ替えるなんて芸当が、並みの妖魔に出来得る筈がない」
霊夢が遮る。
「それが可能なのは、体系化された高度な妖術・魔術の駆使が可能な者に限られる。でも、何故そんなことをしなければならないのか。
私にはその理由がわからなかったわ。……いえ、嘘ね。本当は勘付いていた。でも、気付かないふりをしていた」
「名推理も結構だが、まずはシチューを食べてしまおう。冷めてしまうぜ」
配膳を終えた魔理沙が、湯気越しに微笑みかける。しかし、
「ごめんなさい。私はこのシチューを頂けないわ。……魔理沙、貴女」
「人を食べたわね?」
魔理沙は柔らかな笑みを浮かべて問い返した。
「どうして、そう思うんだ」
「妖怪は人間の肉を食べることに依り、その魂を取り入れ、強大な力を得る。ならば」
__笑いとばしてくれればいい__
「逆を考える人間がいてもおかしくは無いわ。人間を喰らい、力有る妖魔に化そうと望む者が。しかし」
__或いは、怒鳴りつけられても構わない。兎に角__
「人の身で人肉を食すにはやはり抵抗がある。ならばその魂だけを別の動物に入れて喰らえばいい。そして」
__否定してほしい__
「それに該当する人間は」
突如、魔理沙が苦しそうに背を丸めた。何かの軋むような音がして、やがて肩甲骨のあたりから、白い翼が生えた。瞳は紅く染まってゆく。
「御名答だぜ、霊夢。
場所を移そうか。異変は解決されなければ為らないからな。そうだな、やはり最期は博麗神社が良い。」
「身辺を整理するなら」
震える声で霊夢が言う。
「少しぐらい猶予をあげるわ。なんなら明日、明後日にでも……」
「必要ないぜ。もう処分済みだ。さっき言っただろう。そろそろ霊夢が来ると思っていた、って」
陽は沈もうとしている。
雨後の大気は澄み渡り、空は燃える様に紅い。その中を、一人の巫女と一匹の妖怪が行く。
白い翼を生やしたその妖怪は、その翼を用いずに箒に乗って飛んでいる。少し俯き、愛しそうに箒を撫でやる。
前を行く巫女はきつく祓い棒を握りしめている。しかしその手は、震えているようにも見受けられた。
博麗神社境内に降り立った魔理沙が、箒を霊夢に投げ渡した。
「形見だぜ。受け取ってほしい。ただ、本当は」
「もう少しこいつに乗りたかったな。そしてお前と巫山戯合い、じゃれ合いながら異変の調査をしていたかった。
可笑しいよな。自分で蒔いた種なのに」
「ならば何故、こんなことを」
「それはな霊夢、私が」
魔理沙が言う。
「普通の魔法使いだからだぜ」
「私はこれでも研究熱心でな、魔法の改良にも取り組んできた。加えて人間の中では運動にも秀でた方だと思うぜ。でも」
「敵わないんだ。霊夢、お前には。如何なる努力も、鍛錬も、お前の才能の前では塵に等しかった。
お前に並ぶには、こうするより他に無かった。」
「私は」
霊夢が叫ぶ。
「日々研鑽に努め、高みを目指す貴女が好きだった。『パワー』を標榜しながらもそれに依存しない、工夫と創造に溢れた弾幕が楽しかった。
在りのままの貴女が素晴らしかったのよ……!それに」
「例え力及ばずとも、私たちは掛け替えのない仲間だったわ」
「そう、『仲間』だ」
魔理沙が嘲る様に言う。
「私もそれで良いと思っていたんだ。お前への敵愾心を、嫉妬を乗り越えて、ようやく仲間になれた。ただ……」
魔理沙が少し口ごもる
「霊夢、花の異変を覚えているか?」
「え?……ええ」
「あの時お前は珍しく、異変解決の糸口を見つけられずにいた。それで、偶然出会った私に攻撃を仕掛けてきた」
「やつあたりをしてしまったわ。悪かったとは思っている。」
「違う。そうではない。あの時の霊夢、お前が私を変えたんだぜ」
「どういうことかしら?」
「あの時……竹林を縫うが如く飛ぶ姿に、美しい弾幕に、そしてお前の眼の力に。私は天才というものを見出してしまった。
レミリアや紫がお前に執着する理由を、ようやく理解できたよ。」
「結局私は撃墜された。口では悔しそうなことを言いながら墜ちて行ったが、本当は充足感に満ちていたんだぜ?
あの時だけはお前を、博麗霊夢を独り占めにできた。魔法使いとしての幕切れに相応しい戦いだった。
そしてその想いは、未だ消えることなく私の中でくすぶり続けているんだ。
『あの時霊夢に墜とされ、満開の竹の花に包まれながら逝くことができていれば』ってな」
「だからと言って、何故異変など起こして死に急ぐの?弾幕ごっこならいくらでも……」
「遊びじゃ駄目なんだ。真剣なお前が、良い。それに」
魔理沙が言う。そしてそっと呟く。
「レミリアから聞いたぜ。お前、巫女を辞めるんだってな」
「それは……」
「辞めるのはお前の自由だし、何か理由があるのだろう。私が口を挟める筈もない。
だが、お前が居なくなった後、私はどうすればいいんだ?魔法使いなんて辞めて実家に戻るか?嫁ぎ子を生し家を守り老い逝くか?
なるほど、それが正しいのかもしれないな。ただ」
「私は嫌だぜ。生まれ方は選べなかったが、最期は選べる。
魔法使いとして、尊厳ある最期を迎えたい。特別な存在である霊夢、お前に送られたい。」
強く言い切る魔理沙に応えるが如く、風が吹き始めた。
「なあ霊夢、お前の真の敵はレミリアではない。紫でも早苗でもあってはならない。……私なんだぜ」
背に負う翼が力強く空を掻き、魔理沙の足が地を離れる。
「さあ、お喋りは終いだ。そろそろ始めようか」
しかし霊夢は、俯いたまま動かない。
「魔理沙、ごめんなさい。私は……」
「詫びるな、霊夢。謝るべきは私の方だ。迷惑ばかりかけたうえ、最期に嫌な思いをさせてしまう。そして」
思わず霊夢は顔をあげる。魔理沙の瞳が束の間蒼く戻った、そんな気がした。
「迷惑ついでにもう一つ、どうか私のことを忘れないでほしい。最低最悪の異変を起こした妖怪として。……或いは、友人として」
__そうだ、友人なのだ__
霊夢は気付く。
__友人の最期の望みを、私が叶えてやれずに如何にしようか。
彼女は魔力に使役される「魔女」ではなく、独立自由にその手で自らの運命を決した「魔法使い」なのだ。
ならばその是非を問わず、想いに応えることが友情の在り方なのではないか__
「わかったわ。」
霊夢は言う。その顔は、最早哀しみに暮れる少女のそれではない。妖魔を封ずる、巫女の貌である。
「スペルカードを宣言します。でもこれは遊びではないわ。この異変は、首謀者の死を以て終結する」
「そう、その眼だぜ。……私は幸せ者だ。親父に宜しく。香霖にも」
「っ…!『夢想封印』」
「うん、それでは『オーレリーズサン』」
星空の下、魔理沙を背負った霊夢が石段を下りて行く。その足取りは、天の底を這うように、重い。
__私の天分が__
霊夢は思う。
__何事にも囚われない圧倒的な才能『空を飛ぶ程度の能力』が、魔理沙を狂わせ、その死の重みが私を縛り付ける__
「皮肉なものね」
独り呟く霊夢に、答える者はもういない。
__そして私は選べるのだろうか。自らの最期の在り様を。
尊厳ある最期を迎えることと、一瞬でも永く生き抜くことは、どちらに価値があるのだろうか__
答えは出ない。相談すべき友人は、既に解を出してしまったのだ。
「貴女が私を特別に想っていたように、私にとって貴女は、決して普通の魔法使いなどではなくて……」
眼から雫が零れぬ様に、霊夢は満天の星空を見上げる。
星が一つ、流れた気がした。
魔理沙の代名詞とまで言われる技ですし。
(私の勝手な解釈なので気にしないで下さい)
自分としては、こういう作品、好きですよ。
おもしろかったです。
逆な王道
異変を起こした動機は魔理沙の独白で説明されていますが、なるほどと思わせるには少々尺が足りない気がしました。
いやいや、オーレリーズサンも中々良いチョイスで。
ただ、先の方も言われているように、物語に入らせるにはちょっと情報不足かな、と。
大罪を犯してしまう魔理沙の気持ちに共感できるくらいには書ききってほしかったです。
ただ望めるならもう少し登場人物の心情表現が欲しかった
魔理沙にはもっと外道になって欲しかった。ドロドロとして欲しかった。
本気で霊夢を憎み、それでも心の底から憧れて、笑って返り討ちにあって欲しかった。
霊夢は本気で魔理沙を断罪し、浅薄をあざ笑い、問答無用で殺しにかかり、
そして最後に涙を零して欲しかった。
もっともっと哀しいカタルシスを味わわせて欲しかったんだ。
欲しかった病に罹患した俺。うざいとは思うけど正直な気持ちなんだ、作者様。
何か、魔理沙らしくないと思いました。
最期かもしれないけど魔理沙ならそれを受け入れて、ほとんど普段と変わらない振る舞いをするような気がした。
いや、むしろ自分で決めたのだから魔理沙なら受け入れて当然、と私は思っているのかもしれません。
まぁ、自分の中の魔理沙なら、というだけの話ですが。
失礼致しました。
ただタイトルから連想されるチャンドラーの長編ハードボイルド、それだと霊夢の視点が強くなってしまいますが。
長さを伴う引き締まった現実的な内容を読後に欲してしまいました。
「文章を楽しむ」という面では色々な要素が欠落しているように思えました。
総評としては、このくらいで。
この点数は次への期待点です
お読みいただきありがとうございます。
皆様にご指摘戴いている通り、登場人物の心情を描き切れなかった感があるやも知れません。
今後一層の精進を重ねていきたいと思っております。今後ともよろしくお願いします。
>>朔盈さま >>爆撃さま
魔理沙のスペカについてなのですが、実は最後まで悩みました。
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、今作の魔理沙は西方秋霜玉EXステージの魔理沙を参考にしております。
この魔理沙がオーレリーズのようなものを繰り出しているので、スペカもそれに倣いました。
マスパの方が良かったかも、霊夢に二本お祓い棒を持たせるの忘れていたよ……などと、若干悔いております。
考えされますね、なんだかいろいろと。
もしかしたら魔理沙がこんな道を進むこともあるのかもしれない。
そう思わせられました。
もっと突き抜けてほしかったな。
魔理沙には。
それだけならまだ評価はできたんですが、寿命ネタとなると...
これ以上はコメントできません。