今日ボク……私は、博麗神社の宴会に妹と来ているわけで。妹はもとから奇行が目立っていて、最近は部屋で”てれびじょん”ばかり見てたからおとなしかったけれど、それでも何かしでかしやしないかと、心の中で心配しているわけで……。
ちびちび飲むワインの味がどうにもわからない。私の心中と視線は、久しぶりに外に出した妹フランドールの一挙手一投足に揺れ動いている。
「今度の宴会に連れてかないなら、お姉ちゃんのコレクション全部ぎゅっとしてドカーンしてやる!」
そう脅されては仕方ないではないか。もっともカモフラージュの”寒がり戦士セータームーン”全集なら、多少被害金額が多い程度で済むが、本命の妹写真集や妹フィギュア1/1等を収めた秘密の妹部屋の方をドカーンされたら多分私は生きていけないだろう。本物の妹がどちらを壊すと判別できなかった以上、私はその要求を呑むしかなかった。
神社での宴会が始まってから一時間は経っているだろうか。幸いにして霊夢や魔理沙、他の参加者に対しても妹は平常に接している。だが油断は出来ない。懸念するあいつが、まだここに姿を現してはいないからだ。
「あらレミリア。相変わらず顔色が丸いわね」
「……相変わらず神出鬼没に意味不明だな、八雲紫。……来たのね、とうとう来てしまったのね」
すっかりぬるくなったワインを飲み干した矢先。唐突に私の横の空間が裂けて、今日一番来て欲しくなかった輩どもの登場である。思いっきり深い溜息をこれ見よがしにしてやるが、糠にグングニルを叩き込むようなものか。
「あ! ヤクモだ! こんばんは、お久しぶりです」
「あら、あなたもいるなんて珍しい。こんばんは」
そんな私に構わず、いつしか側に来ていたのだろう妹が、明るく、そして優雅にスカートの端を摘んで一礼する。紫も微笑みながら挨拶をかわした。このまま何事もなければいいが、そんな淡い期待は次いでの出現者のせいでいとも簡単に潰えた。
「紫さまー? 私はまた厨房で手伝えばよろしいですかね?」
紫の現れたスキマの向こうから新たな影。紫の式、八雲藍。ダメだ、紫はまだしもお前はダメだ、来るんじゃぁないっ!!
だが、遅かった。紫が何か返答するより早く、響き渡る幼い声。
「あっ! キツネだ!!」
あー。我が妹やってもーたー。びしっと指差し叫んだかと思えば、しゃがみこんで次はこう。
「るーるるるるるる、るーるるるるるる」
甘ったるい声でるーるるるーるるやりだした妹を見やり、ついで私にあんまり温度の感じられない視線を投げかけてくる紫。あぁもう、だから来て欲しくなかったんだってばぁ! 仕方ない、事情を話すとするか。
「すまないわね、紫。このところフランはずっと家で”北の国から”ってテレビ番組を見ててね。完全にその影響だわ……」
「あら、そうなの」
不意に紫は視線を妹とあいつの式の方に向ける。つられて私の視線もそっちへ……って、おい。おいまて、おい。
「るーるるるるる、るーるるるるる」
相も変わらず藍に向けて呼びかける妹。それはまぁ、いい。
おい八雲の式、何でお前は野生にかえったかのように目を見開き怪しい挙動をとっている。すごいなるーるるるるるのパワー。今度やってみよう。……いやまぁ、それはともかく。
「えーと、なんか、ホントにごめん」
紫に向かって頭を下げる。いつもの見下したような目をしているのかと思ったら、意外にも優しい笑みを浮かべていた。
「いいのよ。いい物を見せてもらったしね」
「え?」
「だって、あれこそほんとの
富良野ドール、だもの」
……外の世界は、今頃ようやく落ち葉の季節になっていると思われ。みなさん、幻想郷は、もう、一面の雪に覆われた、冬です。
妹フィギュア1/1が気になるわけで。
ただし、そろそろこの系統のネタに食傷してきたわけで。
野生の藍しゃまが可愛かったのでちょいおまけして。
滑った時の事は考えてるか?
しかし和みましたねw