Coolier - 新生・東方創想話

迷いの竹林に雪が降ったんだってね⇒へぇ! カッコイイ!

2010/10/14 21:34:29
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「輝く白さ……ッ!」

 驚きの柔らかさは、残念ながら付いてこなかった。










 何のことだか分からなかったと思うが、いや、話は単純極まりないのだ。
 今朝方、「迷いの竹林がおかしい」という通報があった。
 もうちょっと具体的に言ってもらいたかったのだが、いずれにせよ竹林は人里のすぐそばだ。異常事態は里にまで影響を及ぼしかねない。
 人里の守護者である私としては見過ごせない事態だから、念のために急行した。
 するとどうだ。竹林が銀世界と化しているではないか。
 細かく言うと、竹林「だけ」銀世界と化している。まさに驚きの白さだった。漂白剤も泣いて土下座する。

「一体何だ、コレは」

 触れてみると冷たかった。雪だった。いや雪じゃなかったら何だという話だが。
 見てみると、奥に行くにつれて積もった雪の量は増えているようだった。
 しかしまぁ、おかしな話だ。幻想郷は確かに雪深い方ではある。だが、それでも十月からこんな積雪をしたことは、私の知る限り無い。
 まして、竹林にだけ局所的になどとなると、コレは幻想郷始まって以来の珍事ではないか?

「しかしこれ……、今頃妹紅は大変だろうな、雪かきで」
「おや、慧音先生」
「ん? どうした田吾作」

 後ろから声をかけたのは、三十半ばの農夫だった。
 私の元教え子にあたる。本人は大人になったつもりだろうが、私からすればまだまだ子供だ。

「いえ、今日は竹林の焼き鳥屋に道案内を頼んでたんですが、時間になっても姿が見えないもんで」
「焼き鳥屋……あぁ妹紅のことか。ふむ、この雪だからなぁ、ひょっとすると雪かきしてるのかもしれん」

 困った、と田吾作は頭をかく。
 コイツは持病があって、定期的に永遠亭で薬を受け取っているのだ。もらえないと困るらしい。

「なんなら私が連れて行こうか? 永遠亭も雪かきには難儀しているだろうから、私はソレを手伝うとしよう」
「良いんですか? じゃあ、申し訳ないんですが、お言葉に甘えさせてください」
「ああ。じゃあ行こうか」





























「……何だコレは」

 奥に進めば進むほど、竹林の雪は深くなっていった。永遠亭に辿り着くころには、膝丈ぐらいまで積もっていた。
 しかし、そんな事はどうでもよくなった。コレを見れば、だれだってそうなる。
 永遠亭が凍り付いていたのだ。
 外壁を氷が覆っていた。厚さは一定ではなく、多少の凸凹があったが、平均すれば二センチほどか。

「慧音先生、こりゃ一体」
「田吾作。お前今日は帰れ。コレは尋常じゃない」
「は? いやでも、先生は?」
「中が無事かどうか確認してくる。……魔法か、何かの術か知らんが、半分妖怪の私ならまだ何とかなるだろう。付いてくるんじゃないぞ」

 念入りに言っておいてから、玄関に回って、扉に手をかけた。が、頑として開かない。
 鍵でも掛かっているのかと思ったが、良く考えてみれば当たり前の話だ。玄関も凍り付いているのだ。
 侵入のしようが無かった。

「む……えぇい、後で平謝りして修理すれば良いだろう、緊急事態だ、已むを得ん!」

 弾幕を放つ。派手な破砕音がして、玄関戸が吹き飛んだ。
 少しばかり、やりすぎたか。

「クソッ……寒い、長くは居られないな」

 何となくそんな気はしていたのだが、中まで凍り付いていた。
 四方八方から放たれる冷気。氷室の中に居るのと同じだ。長居はあまり良くない。
 滑って歩きづらいが、どうにかバランスを取りつつ進む。

「誰か居ないかッ……うぉッ!?」

 こけた。
 いや、滑ったのではない。明らかに何かに躓いてこけた。
 それも、結構大きなものに。

「くそ、廊下のど真ん中に一体何を置いたんだ……?」

 もろに打った額をさすりながら、立ち上がってソレを見る。
 私の息が止まった。

「……鈴仙・優曇華院・イナバ……?」

 そこに居たのは、廊下に倒れた妖怪兎だった。
 彼女も凍り付いていた。まるで彫刻か何かのように。
 最初はチルノの仕業だと思っていた。だがこれは、違う。
 アレは阿呆だが、やっていい悪戯とやってはならない悪事の区別ぐらい出来る。
 だが私の目の前に広がるこの光景は、明らかな悪意をもって造られていた。

「馬鹿な、まさか……住人たちまで氷漬けにされたというのか!?」

 私は駆け出す。転げそうになりながらも、私の疑念を振り払うために。

「誰か居ないのか!?」

 返事は無い。まるで私が抱いた最悪の考えを肯定するかのようだった。
 これは最早、異変だ。私のような奴の手に負える問題でもないが――しかし、逃げ出すわけにも行かなかった。知っている者が氷漬けなのだ。
 閉ざされた氷漬けの襖を壊しながら進む。氷像がそこら中に転がっていた。
 だが、動くものは誰一人見当たらない。
 永遠亭の診療室。その扉を壊した。
 せめて永琳殿か輝夜殿、どちらかが無事なら、何があったのか掴めるかもしれない。

「――あぁ、騒がしいと思ったら貴方? ずいぶんとまぁ、壊してくれたみたいで……まぁいいわ」

 彼女は、いつもと同じように、専用の椅子に座っていた。
 凍った部屋の中で、まるで何事も起こっていないかのように。

「あぁ、永琳殿、一体何が」

 待て。
 弟子も凍っているし、おそらくは輝夜殿の安否も不明だ。
 だのに、何故この人は、こうも冷静にしている?

「永琳殿、一つ聞いていいか?」
「何?」
「一体、誰がコレをやった」

 興味を抱いたように私を見ていた視線が、一気に醒めた。

「あぁ。そんなこと。決まってるじゃない、私よ。ホラそこにも一人」

 永琳が、いかにもつまらなそうに指差した。
 そこにあった氷塊は、とても良く知っている形をしている。

「妹紅――ッ!」
「言い訳させてもらいますけどね、私もわざとやったわけじゃないのよ? 自分にこんなことが出来るなんて、知らなかったもの」
「だが妹紅は! これは意図してやったろう!?」
「正当防衛よ。戻し方が分からなくて困ってたところを、問答無用で襲ってくるんだもの。姫が凍って困るのは、こっちだって同じなのにねぇ」
「む……」

 それは、確かに信憑性のある話だった。

「入り口近くにウドンゲが居なかった?」
「え? ああ、居たが」
「深夜ごろにあの子と世間話をしてたら、急に私の近くから放射状に凍りはじめてね……何か妙なことをやらかした記憶もないし、本当何なのやら……」

 原因は永琳殿だが、何があったのかが分からない、という状況か。

「術か何かが偶然発動した、というのも考えづらいな……竹林全域に広がるほどの術なんて、偶然には起こらないだろうな」
「え? 外にまで広がってるのこれ。出てないから分からないのだけど」
「ああ。といっても、流石に凍っちゃいないな。雪が積もっていた。膝ぐらいまで」
「そう。……ふふ」

 何か面白かったのか、永琳殿は微かに笑みを零した。

「どうした? 何か妙なことでも?」
「いえ、ただちょっとね……ねぇ慧音さん? 雪の中を歩いてきたの?」
「ん? ああ。それ以外に方法もなかったし」
「そう。
























 雪の中を歩くなんて、それは大変でスノー」



「がッ……あぁぁぁぁ!!」

 手足に、痛みにも似た猛烈な冷たさを感じた。
 見れば、猛烈なスピードで凍り付いていくではないか。

「くッ、くそ! 最初からコレが狙いか八意永琳ッ!!」
「フフフ、あんな作り話に引っかかる方が悪いのよ! 分かったかしら、コレが、私が長年研究してきた術、ようやく完成したのよ……!」

 そう開き直ると、奴は思いっきり悪役笑いを始めた。
 見事に騙されたというわけだ。
 だが、これで終わる私では無い!

「おのれッ……いいか八意永琳! お前のギャグだがな!
























 うっ氷ー! こいつぁ、おっもしれぇや!」



「……馬鹿なッ……、私の氷結術【イッセイチダイノギャグ】を、氷結術【イッセイチダイノギャグ】で返すですって……!?」

 私の氷が融けていく。
 周りの壁や、妹紅の氷も同様に。
 その代わり、永琳が凍り付いていく。

「くっ……覚えてなさい、この借りは必ず返すわッ……!」
「ふん、凍ってしばらく反省していろッ――!」
























「いや慧音! 申し訳ない、助けてもらって」

 あの後、何だかんだで妹紅や永遠亭の面々を助け出し、私と妹紅は帰路に着いていた。
 八意永琳には少し反省してもらおう。あれは自然解凍されるようだし。

「何を言う妹紅。困ったときはお互い様というやつだ」

 永琳の術――氷結術【イッセイチダイノギャグ】とか言ったか――が解けたおかげで、竹林からも雪は融けて消えていた。
 その代わり、雪解け水で地面がぐっちゃぐちゃだが。
 ん? 永遠亭? ……推して知れ。そうだな、鈴仙・優曇華院・イナバは泣いていた。

「いやはやしかし、あんな術があるとは驚きだな……世界は広い」
「いや……あれは術なのかなー? まぁいいや。威力が制御できるなら、夏場とかは便利そうだけどね」
「うむ。……あぁそうだ妹紅、体調は大丈夫か? 氷漬けというのが一体どういう感じなのかは知らんが、健康には良くなさそうだぞ」

 私がそう言うと、妹紅は気にするなと笑った。

「大丈夫だって。身体は火で暖めたし、そもそも大して長い時間凍ってたワケでもないし。あ、でも……」
「どうした?」



















「お腹が……小腸が、しょうちょう痛いかな? なんちゃって」
「ぬわ――ッ!!」
「まぁ、氷漬けとか寒いのとかは大したこと無かったけど、そうやって気にかけてくれる慧音が、私はスキーだな? おっと、スケートかも」
「ぬわ――ッ!!」
「け、慧音ェ!? 大丈夫!?」
書いてる途中で、コレ幻想郷滅ぼすの案外簡単なんじゃねーのとか思うなど。
う氷、小腸、スキーに関しては、おるふぇさんに頂きました。ありがとうございます。
喚く狂人
http://wamekukyouzintouhou.blog45.fc2.com/
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コメント



0.2770簡易評価
1.60名前が無い程度の能力削除
狂人、あなた疲れてるのよ
3.100名前が無い程度の能力削除
ぬわ――ッ!!
ってwwwww
5.100名前が無い程度の能力削除
エターナルフォースブリザードwww
7.90yunta削除
雪の中を歩くなんて、それは大変でスノー

がなければ100点でした。
8.70桜田ぴよこ削除
おあとがよろしいようd(凍結
10.80名前が無い程度の能力削除
パトラッシュ、とても寒いんだ……
11.50名前が無い程度の能力削除
魔法陣グルグルのダジャレ魔法を思い出したのは俺だけでいい
12.100名前が無い程度の能力削除
なんじゃこりゃwww
13.40名前が無い程度の能力削除
今日のは、あんまり……。
14.70名前が無い程度の能力削除
どうしてこうなった

でもなんか、方向性が変わってきなすったかしら。
16.100名前が無い程度の能力削除
就活で気が滅入っていたのですが、
久々に自然な笑いを戴けました

コメは滅多に付けないのですが、
この話には100点ヒョウカイ外は考えられません
18.80爆撃削除
田吾作さん……。田吾作さん、しっかりしてください!
忘れられし彼に愛の手を。
おそらくレティやチルノは、こうして能力を発揮しているのかなあと幻視してしまいました。
恐るべし、大寒波。
25.90名前が無い程度の能力削除
いや、便利だろう。
28.70名前が無い程度の能力削除
寒ぃ・・・寒すぎて死ぬ
32.90名前が無い程度の能力削除
あなたの世界観はどうなってるんだww
34.無評価名前が無い程度の能力削除
つまらない
書くという手間を掛けてしまうほどに
35.90奇声を発する程度の能力削除
くっだらねーwwwww
36.100名前が無い程度の能力削除
自分の駄洒落に自分で笑ってる永琳に笑ってしまったw
40.100名前が無い程度の能力削除
早く暖かいほのぼの話を書くんだ・・・凍え死ぬ・・・
43.100名前が無い程度の能力削除
なるほど、私が風邪をひいてしまったのはあなたのせいだったか
49.100名前が無い程度の能力削除
これはいい意味でくだらない
50.100名前が無い程度の能力削除
もうこれシリーズできるんじゃない?
もってけこの野郎www
54.90名前が無い程度の能力削除
つまらないのにつまらなくない!不思議!
55.90名前が無い程度の能力削除
こんなに寒いのはもうこおりごおりです
57.100名前が無い程度の能力削除
本文でもコメントでもレティさん、大暴れですね。
まさに黒幕。
58.100名前が無い程度の能力削除
喚くさん、あなた憑かれてるのよ
60.100名前が無い程度の能力削除
タイトルデジャヴ
61.90名前が無い程度の能力削除
冷えーすげーやー
68.100名前が無い程度の能力削除
あかん……あ寒わ!
75.70名前が無い程度の能力削除
さみぃぃぃ!こいつぁ狂人の気配がプンプンするぜぇぇええ!!
80.90名前が無い程度の能力削除
身体はフリーズしたはずなのに脳味噌だけは熱暴走した!!
もう、最高にハイってやつだッ!!
81.80名前が無い程度の能力削除
面白い、お憑かれではないですか?
86.100名前が無い程度の能力削除
弾幕すら凍り付く寒さ・・・チルノなみかよ永琳w
87.20名前が無い程度の能力削除
狂人氏の作品を読んでいると芸術ではなかった頃の俳句を彷彿します。
物珍しくはありますが良くはないです。
点数にとらわれることなく東方のSSを投稿してほしいです。
もしくはご自身のサイトで精力的に活動されてはどうかと。
氏を好きな人には強烈な人気があるのは確かでしょうから。
90.50名前が無い程度の能力削除
こういう予想外の落ち、私は好きです。
ただ、ちょっと落ちがくどいかな?とか思ったり。
93.80名前が無い程度の能力削除
何と恐ろしい術www