「はい、師匠!!」
「白玉楼の楼といふ字は、木の横の女に米と書く!!」
「その通りです!!」
「では西行妖の横で米を研ぐのだ!!」
「はい、師匠!!」
妖夢は研いだ、一心不乱に。
ただ、一心不乱に、米を研いだのだ……
「うぉぉぉぉぉ!!」
「よし、そこまで!! 飯にする!!」
「はい、師匠!!」
「馬鹿者ぉ!!」
「くっ……」
食事が終わり、幽々子がお昼寝タイムに入った頃、妖夢は台所の前で正座をさせられていた。
「水加減を間違えたなどと、そんなことが言い訳になるかっ!! 先ほどの幽々子様を見たか!? ええ!! 10合しかお米を召し上がりにならなかったではないか!!」
「返す言葉も御座いません!!」
「どうするのだ、妖夢!!」
「……かくなる上は、腹を切って幽々子様にお詫び申し上げる所存に!!」
「馬鹿者がぁぁぁぁ!!」
「っ!!」
妖忌ははあっとため息を付くと、手を伸ばし、お気に入りのハート柄エプロンを身に着けた。
「妖夢よ……腹を切れば美味い米が炊けるのか……? 腹を切れば、幽々子様がお喜びになるのか?」
「いえ、幽々子様はそのようなお方ではありません!!」
「ならば見ておけ……米は!! こう!! こうしてっ!! 研ぐのだっ!!!!!!!」
「こう!! こうですか!!」
「違う!! こう……ここうだ!!」
「こうっこここうですか!!」
「そうだ!!」
「こうっここう!!」
「こうっここう!!」
「「こうっここう!!」」
「「仕上げに!!」」
「「そいやっさ!!」」
───────────
「師匠!!」
「なんだ妖夢」
「剣の修行はいつになったらしてくれるのですか!!」
「……妖夢よ」
「はい、師匠!!」
「大抵のものは、それこそ森羅万象は、だ。 とりあえず斬ればわかる」
「…………」
「しかし、米は水を切っても駄目なのだ……ならば、何を切ると思う?」
「……わかりません」
「それはな……シャリを切るのだ……」
「!?」
この時、妖夢の目から涙が零れ落ちた。
何故涙が出てくるのか、妖夢自身にもわからない。
ただ、わけもわからず涙は止まらなかった。
「シャリを切ることにより米粒と米粒の間に空気が入り、ふっくらと、かつ粘りの少ない絶妙な塩梅となる……そう、シャリ切りを制するとき、お前は剣の道を極めることとなるのだ」
「師匠……師匠!!」
「なんだ?」
「私が、私めが間違っておりました!! この妖夢、シャリ切りも極めずして剣を指南して貰おうなどと……」
「いいのだ、いいのだよ妖夢、これでお前にもう教えることはない……」
「し……師匠!! どこへ向かわれるのですか!!」
「サラダバー、妖夢……」
「師匠ぉぉぉぉ!!」
「ふぁ~、おはよう妖夢、あ、そうそう、あのね、お米飽きちゃったから明日からパンがいいなー」
「いいかっ!! 妖夢!!」
「はい、師匠!!」
「白玉楼の白といふ字は、小麦を粉とする臼と書く!!」
「漢字が違います!! 師匠!!」
「……………………」
「……………………」
「白玉楼の白といふ字は、小麦を粉とする臼と書く!!」
「その通りです!!」
「では西行妖の横で臼をひくのだ!!」
「はい、師匠!!」
妖夢はひいた、一心不乱に。
ただ、一心不乱に、臼をひいたのだ……
「うぉぉぉぉぉ!!」
「よし、そこまで!! 飯にする!!」
「はい、師匠!!」
「あ、やっぱり今日はお蕎麦が食べたいかも」
「いいかぁぁぁぁぁぁ!! 妖夢ぅぅぅぅぅぅ!!」
「はいぃぃぃぃぃぃぃ!! 師匠ぉぉぉぉぉぉ!!」
「あとがきが来ると思ったか!! 甘いぞ妖夢!!」
「申し訳ありません、師匠!!」
妖夢は油断していた、あとがきさえ過ぎれば私の役目は終わりだと。
もう米を炊く修行をしなくてすむと……
「どんぶり勘定だったようだな、米だけに!!」
「はは、師匠の冗談はいつも面白いですねー、いつも笑わせてもらってます死ね!!」
「ヘーイ、どうしたどうしたへなちょこ剣士~」
「うわぁぁぁぁ!!」
「片手で防ぎきられる妖夢たん可愛いよ妖夢たん、もっと修行積んだら相手ちてあげるからね、じゃあ後のことはよろしくプー」
「どちくしょぉぉぉぉ!!」
こうして妖忌は去った……
その日から妖夢は修行に修行を重ね、今に到る。
「あれ、幽々子様。 ここに冷ましてあった酢飯シャリ切りしといてくれたんですね、ありがとうございます」
「えー、知らないわよー?」
「え?」
「え?」
ああ、なんて平和なんだ……
まさかの二段wwwwww
腹切りシャリ切りする前に血管切るなよ、魂魄二人。
だって枠小さかったもの。
そして僕は思った。
エンドレス魂魄コンビはいいものだ・・・と。
妖忌は大事なことだから2回言ったんだ!
決して気まずいからとかではなく・・・げふんげふん
二段後書きに、負けたぜ。
幕ノ内一歩のボディブローみたい。