※注意
・慧音と妹紅のキャラはこんなんじゃない!と思ったらすぐに、戻る、を押す事をオススメします。
・作者にはギャグセンスが皆無です。
以上の事を了承する事ができた方は↓へどうぞ、楽しんでいただけたら嬉しいです
人里でお笑い大会がある。
それを慧音から聞いたのはそれが行われる2日前だった。
「頼む妹紅!一緒に出てくれないか!?」
「…いや、待ってくれ。急過ぎるし、いきなりそんなことを言われてもだな…」
「頼む!!」
…とりあえず話だけ聞くことにした。
「里の長がな、里おこしでお笑い大会を開く事にしたらしいんだが、私にも出てくれと言うんだ。…でも私にはそういったセンスも無いし、何しろ初めてだから怖いんだ」
「なら断れば良かったじゃないか、あの里にお前が嫌がる事を無理矢理させる様な人間はいないだろ?」
「それだけなら断れたんだが、生徒達がな、『けーね先生の漫才見たーい!』とか『先生出てくれるよね!?』と言ってきかなくてな…。一個人としても、教育者の立場としてもできる限り、子供達の要望は叶えてあげたいんだ。だから…」
なるほど、それで悩んでいるのか。
「う~ん、協力してはやりたいんだが、私にも生憎そういったセンスは無くてな」
「そうか、それは残念だ。…やはり断るしかないか」
日が暮れかかっている竹林で、二人がしょんぼりしていたその時だった。
「そんな時は私にまかせなさい!」
突如竹林から出てきた、腰の下まで伸びた艶めく黒髪を持つ女性は、
終わりなき怠惰を貪るパラサイト、別名、法外ニート、蓬莱山輝夜であった。
「どっからわいてきやがったーーーーーー!!」
「おーっと、妹紅選手すかさず輝夜選手の背後に回って大技ジャーマンスープレックスだぁーー!」(ごしゃぁ!!)
「ごへぶぅ!?」
「決まったぁーーーーー!さて、気になる審査員が下した結果は……!出ました!右からM、O、K、O、U!『も・こ・う』だぁーーー!……………ビューティフォー」
「あ……あなた達そろって失礼ね!せっかくN・O・Y【ニートオブザイヤー】に永久殿堂入りした私が来てあげたっていうのに!」
「自分で自分のことをニート呼ばわりしてんじゃねぇ!この穀潰しがぁ!」
「ちょっ!起き上がっていきなりコブラツイストは不味いって!
アバ、アバラ折れるぅぅぅぅうううう!ギブギブギブギブギブぎぶぁ!?」
ちーん
白目になって泡を吹く輝夜を尻目に、妹紅と慧音は先程の共同作業を褒めあっていた。
「流石だな、妹紅!あのジャーマンスープレックスはタ○ガーマスクも裸足で逃げ出す程の仕上がりだったぞ!」
「いや、慧音こそ筋金入りの実況ありがとう。父親がプロレスの実況者という点を除いても十二分な実力の持ち主だな!」
「そんな設定無いでしょ!?そもそも、慧音の実況何か変だったわよね!?」
オチてた輝夜がログインしてきた。ちっ、早かったな、流石永遠のニート。
「あなたも人の事言えないでしょ!」と独り言を呟いている。禿げるよ?
「で?滅多に外に出てこないお前がどうしてこんな所に?」
慧音が最もな事を言う。そうである、蓬莱山輝夜といえば藤原妹紅との弾幕ごっこ(という名の殺し合い)や何かイベント等が行われる時以外は、殆んどその姿を見せない金リオレイア並みの希少種なのだ。
「えっとまあ、買い物の帰り道に竹林に入ったらあなた達が話してるのを見てね。何話してるのかなぁ、って思ったらお笑いの話じゃない!ktkr!って思ったのよ。私お笑い好きなの!」
「ほぉ~」
輝夜はてっきりそういうのがあまり好きな方ではない、と思っていただけに意外であった。姫様、姫様と呼ばれている割には結構庶民派なんだな。
………ん?ちょっと待てよ、何か今の発言に引っかかる所があるような気がする。
!?
買い物の帰り………だ……と………?
「おい……輝夜、今日はエイプリフールじゃないぞ?」
綺麗な黒目をぱちくりさせる輝夜。
「ええ、知ってるわよ?いきなりどうしたの?」
馬鹿な……、自分で【ニートオブザイヤー】に永久殿堂入りしたとか言ってた奴が買い物に行ってきただと!?
こいつはいかん、今日で幻想郷は滅びるぞ!!
「慧音!」
「ああ、分かってる。輝夜が外出したという歴史を喰らう!」
「ちょっ!?何言ってんの!外出ぐらい私だってするわよ!」
輝夜の肩に手を置く。そしてできる限りの微笑を浮かべ
「嘘吐くな」(にっこり)
「嘘じゃないわーーーー!」
「まったく、人がせっかく力になってやろうと思った結果がこれだわ」
「あれか、お笑いが好きだのああだの言ってたがそういうの得意なのか?」
「最初に言ったでしょう?漫才とギャグのことなら私に聞きなさい!」と自信たっぷりに胸を張る輝夜。
……!もしかしたら慧音の悲願も叶えられるんじゃないか?慧音にはいつもお世話になっているから、私としてもできれば恩返しがしたい。
ネタさえ提供してくれるなら、私も慧音の為に頑張れるかもしれない。
「なあ輝夜、さっきも聞いたとおり私達にはお笑いのセンスというものが無いんだ。だが、もしお前がネタを提供してくれるというなら…私は慧音の為にも頑張りたい」
「妹紅、一緒に出てくれるというのか!?」
「ああ」
輝夜の方は端からその気だったのだろう、すぐさま答えた。
「良いわよ、あなた達に私がとっておきのネタを提供してあげるわ」
「「本当か!?」」慧音とハモった。やはり私達は以心伝心だ。
寺子屋の授業とお花摘みの時以外は風呂も就寝時も常に一緒なのだ。出会った時から心が通じ合うのまで、さほど時間は掛からなかった。ちなみにこの場合のお花摘みとは……言わなくても分かるよな?
それにしても輝夜は、常日頃から殺し合いをしている私からすると人助けなどする様には見えないのだが、実は案外良い奴なのだろうか?
あっさりし過ぎてて、何か裏がありそうな気がするんだが…?
「ありがとう輝夜!里長と子供達もきっと喜んでくれる!」…まあ、慧音が喜んでくれるなら私に異存は無いがな。
「で?あなた達はどれくらい持ちネタがあるの?」
いやいや、だから持ちネタとかそういうの以前にお笑いに関する知識が……
「あるぞ!」
「ってゐぇぇぇぇぇぇえええええええ!?あるのか!?」
全然以心伝心じゃなかったよ!というかさっき自分でも無いって言ってたじゃんか、慧音
「いや、あるとは言ってもお笑い大会用に自分で作ったのが1つだけなんだが…」
「…じゃあそれを見せて」
輝夜が真剣な面持ちでそう言うと、コクリ、と頷いて深呼吸を始める慧音。待て待て待て……マジで!?本当にあるのか、驚いたよ。
生来真面目な彼女がまさかオリジナルのギャグを温めていたなんて誰が思うだろうか。ここ数ヶ月で一番驚いたかもしれん。
それよりも慧音の持ちネタというのはどんな物なのだろうか?殆んどの時間を共に過ごす私さえ知らないんだ、多分誰にも見せたことが無いんだろう。
期待をするなと言われたとしても期待してしまうのが人の性というものだ。思わず生唾を飲み込む。
「いくぞ」慧音は誰にでもなく確認して、助走をつけ、そして
いきなりこけた
「「!?」」
誰が見てもわざとらしいとしか思えないようなこけっぷりだった。
慧音はその大人の女性特有のプロポーションをした体をゆっくりと起こすと一言。
「てへ☆いっけーね!」
………………………
「「なんじゃそりゃあああああああああああーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
竹林に絶叫が響き渡る。カラスや小動物達が吃驚してバタバタと音を立て逃げ出し、私達の半径10メートル以内には一瞬で静寂が満ちた。
しーん
何だこの威力、恐るべし慧音のギャグセンス。
当人は……………涙目だ。
「……ひっぐひ…ぐ、す…っまん、頼むかっっ……らぁ…
そんな…顔……しないでくれぇ!………うわああああぁぁぁぁん!」
ついには泣きだしてしまった。私達はきっと物凄く微妙な顔をしていたんだろう、輝夜にいたっては顔を下に向けてぷるぷると震えていた。
それはともかく、慧音は自分がお笑いとはかけ離れた性格をしていると分かっていても、ギャグセンスが無いと知っていても、それでも諦めずに里長や子供達の為に一生懸命頑張ってあのギャグを編み出したのだ、これではあまりにも救われないじゃないか。先の結果が大事なのではない、そういった思いやりこそ、人が、妖怪が、妖精が、吸血鬼が、その他大勢が大切にすべきことなんだ!つまりは結果は重要でなく過程こそが大事なのである。この熱い本心を慧音に伝えようとした瞬間、
輝夜が慧音に近づき、そして、抱きしめた。
「慧音!あなた天才よ!!」
………な、なんだってーーーーーーーー!?……馬鹿な!
輝夜に認められただと!?
てか、もしかして輝夜のギャグセンスもおかしいんじゃ…!
「思わず体が痺れたわよ!ここ数百年で最高の一発ギャグを見せてもらったわ!
ああ、もう、あなたったら本当に天才!」
確信した、こいつぁ駄目だ、『逸材を見つけたわ!』と目が物語っている。なんかキラキラしてるし。
さっきのは感動のあまり思わず体が震えてしまったといった感じか
……慧音には本当にすまないと思うが…………あり得ねぇ
「ほ、本当か!?すごく…嬉しいぞ……(ぐすっ!ぐすん)ここ一週間ギャグの事しか頭に無くてな…困っていた所に里長が通りかかってアドバイスをくれたんだ。『自分を活かしたギャグを作りなさい』とな……、最初は苦戦したんだが昨日ようやく完成した自信作なんだ…そのせいで妹紅に大会の事を言うのも遅れてしまってな………妹紅にはすまないと思っていたんだが、そうか………そんなに良かったか………嬉しいなぁ、頑張った甲斐があったよ…」
重ねてきた苦労を思い出したら胸に込み上げるものがあったのか、笑顔を浮かべて再び泣き出す慧音。抱きしめながら労いの言葉を掛ける輝夜。
「色々な苦労があったのね、でも大丈夫!あなたは最高の一本をたたき出したの、胸を張って良いわよ。私が断言するわ、あなたのユーモアがあれば、皆を笑わせるどころか大会で優勝なんて余裕も余裕、この幻想郷で笑いを用いて人を感動させる事に関してあなたの右に出る者はいないわ!…威風堂々としなさい、あなたはお笑いのカテゴリーなら無敵よ、上白沢慧音!」
「…輝夜」
2人が凄く良い雰囲気になっていたので、
「少しお花を摘みに行ってくる」と言い残してその場から一旦離脱。2人に私の声が
聞こえない所まで上昇しようとしていたら、夕陽が瞳に映った。
真っ赤、それでいて美しい橙で彩られ、輝いている。ああ、眩しいな、と思っていたらちょうど良い高度まで飛んでこれてたのでこの辺で滞空する。
さて、そろそろ我慢の限界だ。
お前ら、準備は出来たか?よし、それではいくぞ?せーの…!(すぅーーー)
「何でやねーーーーーーーーーーん!!!」夕闇が私の声を吸い込んでいく。
「まず慧音ぇぇぇぇー!!一週間も時間があったならもっと早く教えてくれよ!その間に打つ手はいくらでもあっただろぉぉぉぉぉ!?気づこうよ!普通、センス無いって分かってるなら『自分一人で考える』って選択肢は最初から考えないよ!!?おかしいでしょ!思いやりも努力も大切だけど、やっぱり結果も大事だよな!?
それと輝夜ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(切れ気味)
散々お笑いが好きだとか言ってたがお前にはそのセンスは無ぇよぉぉぉ!お前には私が断言するよ!一体どんだけのギャグやらコントを見てきたのかは知らないけど、漫才とギャグが得意だと自分を豪語する事に関してお前ほど説得力の無い奴は幻想郷にいねえよ!!
里長ぉぉぉぉぉぉぉー……!(若干ツッコむのに疲れてきた)
人にアドバイスとかしてる暇があるんだったら、てめぇが大会に出ろよ!!何が『自分を活かしたギャグを作りなさい』だ!?都合良く通りかかったお前の方が、ある意味一番キャラが濃いんだよおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
その後も妹紅は沈んでいく夕陽に怒鳴り散らした。常識人はいつの時代も大変である、しかし、妹紅の苦悩はまだ終わらなかった。むしろそう、これからが本番であった。
竹林に着いた頃にはすっかり日が暮れて、辺りには夜の帳が下りていた。暗くなってきたしお腹も減ったのだろうか。輝夜はすでに帰路についたらしくここにはいなかった。
「おかえり妹紅。……どうした?だいぶ疲れているみたいだが」
「い、いや何でもないさ。それより輝夜はもう帰ったんだな?」
「ああ、先に帰ると言っていたぞ」
「そうか」
とにかく疲れていたし、
面倒なことは明日にまわしたいところだったのでちょうど良かった。
「よし、じゃあ家に帰るか」
「ん」
早く慧音の家で体を休めたい。ついでに心の方も。
そう安心していた私が浅はかだった。
慧音の家に着くと、居間に何かが寝転がっていた。
法外ニートだった
「お前はどこまで人の心労の種を増やせば気が済むんだーーーーーー!!」
「でたー!妹紅選手の必殺技『凱旋快晴 フジヤマヴォルケイノ(プロレス風)』ーーーー!!燃え盛る紅蓮の足蹴に輝夜選手堪らず横壁にたたきつけられたぁぁぁ!バウンドした輝夜選手を妹紅選手さらに蹴り上げる!最後に落下してきた輝夜選手が地面に激突する直前で背後に回って止めの、ジャーマンスープレックスゥゥゥゥゥーーー!!
大好きだーーーーー!!」(ぐしゃばぁ!)
「そげぶぅ!?」
「決まったーーーー!さて、気になる審査員が下した結果は……!出ました!
右からK,I,M,U,C,H,I!『キ・ム・チ』だぁーーー!
辛いー!……………スペクタクォー」
「だから慧音の実況おか……!ぐぇ!………(くたっ)」
ごぼーん
言い終わる前にスリーパーホールドでオトした。
「慧音、教えてくれ。何でここにこいつがいるんだ?」
「それがな、ありがたい事に輝夜がつきっきりで私達に漫才の指導をしてくれると言ってくれたんだ!どうせならと思って家に招いたんだ」
「そうよ!クイーンオブコントたる私があなた達に教鞭を執ってあげると言っているの。もう少し丁重に扱いなさいよ!さっきの等身大のGでも見つけたかの様なアクションは何!?私じゃなかったら死んでるわよ?」
蘇生早ぇ~
前々から言おうと思ってたんだけどさ、回復した後に何で肌がつやつやしてるの?
………怖いよ
「とにかくこうして輝夜も着てくれた事だし、さっそく夕餉でも食べながらネタについて話し合おうじやないか」
そうだな。あと一日も余裕があるんだし、
何とか上手く誘導していけばまともな出来にはなるだろ……
ガラガラ……
「慧音さん、少しよろしいかね?」
「おや、里長殿、どうかしましたか?」
「いや~、ワシももう年老いて今年八十になる。最近ボケが始まってのぅ、慧音さんに伝える事を忘れとったんじゃが、第一回人間の里お笑い大会が急遽1日早く行われる事が3日前に決まったんじゃよ」
…はぁ?
「大会参加者には他の者に伝えてもらったんじゃが、慧音さんに出てくれと頼んだのはワシじゃからのぅ。自分で行こうと思っとたんじゃが、すっかり頭から抜け落ちてしまっとった。今日妻に言われて思い出したんでな、ここに来た次第じゃ」
「…成る程。承知しました。御足労をお掛けしてすみませんでした」
「いやいや、本当にすまなかったのぅ。それじゃあワシは帰るとするよ、漫才楽しみにしとるよ。ふぉっふぉっふぉっ」
カツカツカツ、と杖をついて出ていく里長。静かになった室内。さ、
「里長ぁぁぁぁぁーーーー!!やっぱりお前が一番キャラ濃いんだよぉぉぉおおおお!!!」
そう言って、閉められた引き戸を開け放ち、
里長の頭の上に生えていた3本の毛を引きちぎってやろうと…
「「待つんだ(のよ)!妹紅!!」」
二人の制止の声が掛かった。慧音が言う。
「仕方ないだろう、里長殿ももうかなりお年を召している」
そ、そうかもしれないけど……!
「案ずることは無いわ、安心しなさい妹紅。
優良なネタ製造人の私と笑いの天才、慧音がいれば明日からでも今からでも優勝は決定事項よ!あなたのツッコミにも期待してるわ!」
うるさい!パラサイトがでしゃばるんじゃない!
優勝とかそういうもの以前の問題だろ!
まあ、確かにもう文句を言ってもどうにかなる様な状況じゃないが……
「それに2人とも、あなた達を待っている間に私の脳内に抱腹絶倒の神が舞い降りて
至高のネタを授けてくれたわ!聞きたい?」
どうでもい
「本当か!?聞かせてくれ!」
渇望の眼差しを輝夜に向ける慧音。…何かもういいや。
「良いわよ、ネタのタイトルは『決戦!ボイラー室で!』……斬新でしょ?」
得意げに微笑む輝夜。
「ああ!時代を先駆けた素晴らしいネタのような気がしてきたぞ!」
とか言って輝夜を褒めちぎる慧音。
私はもうツッコむの疲れたから飯食って風呂入って、お花を摘みに行って寝る。
明日が来ない事を祈りながら床に就く。
輝夜と慧音が盛り上がっているのを横目に意識を手放した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日
朝6時から起こされ、身支度をしてから3人で家を出た後、里の近くにある川に来た。
それからのネタ合わせは地獄だった。
2人に「妹紅!今のはツッコむ所よ!」やら「妹紅!今のはスルーする所だぞ」と
散々注意されながら4時間ぶっ通しで練習した。
細かい事はここに書かないが、こいつらの言うツッコむ所と、一般に言うツッコむ所の基準は絶対にずれてると思う。昨日も今日も私は自分がアウェーな気がして仕方無い。……非常につらい。
輝夜が私達にOKを出した後、家に帰って昼食に近い朝食を食べたりしていた。そうこうしていると、私の思いとは裏腹に時間は着々と進み、ついに大会が始まる時間になってしまった。
会場へと足を運ぶ、う~、行きたくないなぁ
そう思っている内に目的地に着いてしまった。
そこには里中の人間と、少数の妖怪も人間に化けて来ているらしく大勢の観客が集まっていた。
慧音に、妖怪がいるけど追い出さなくて良いのか?と聞いてみたところ、
危害を加えるはずなら里に入ってすぐに人を襲っているだろうし、何かあったらちゃんと出張る、と言っていた。
それで大丈夫なのだろうかと思いもしたが、様子を見てみると安全な奴らばっかりだった。ただ単にお笑い大会に興味があるらしい。確かに妖怪もお笑い好きだしな。
出場ペアも多くて、数えてみたらなんと40組近くいた。
いや、人数的におかしいだろ。こんなに里の人間いた?
これまた慧音曰く、
「最近、すぐ隣の里にいる娘と里長殿が結婚したから、ついでに里ごと合併したんだ。
だから今年の里の活気は凄いぞ!里長夫婦も熱愛中らしいしな」、だと。
本当にあの里長はあらゆる意味でやり手だな。ボケが始まったとか言ってたが、あれはもしかして色ボケのことか?
ていうか、結婚ついでに合併って……。いや、今ツッコむのは止めておこう。
ネタでのツッコむタイミングを忘れてしまいそうだ、危ない危ない。
里長に関してはここまでくると呆れるどころか感心してしまう。
大会が始まる少し前に司会者から簡単なルール説明と抽選会について話があった。
……抽選会?
「ああ、大会の出場順はくじ引きで決めるらしいな」
そーなのかー。初めて知ったよ、それ。
私は大会について殆んど何も知らされて無かったからなぁ。なあ、慧音?
「うっ、…すまん」慧音が申し訳なさそうに頭を下げる。
まあ慧音を攻めるつもりはない、すべてはあの色ボケ里長のせいだ。
ちなみに今、輝夜は観客席の特別席に座っている。里長の妻の隣の席だ。
歯をキラッ!と光らせて
「あなた達ならできるわ、頑張りなさいよ」と言って去っていったのを思い出す。
人の気も知らないで…!
私達がくじ引きをする番がやってきた。
頼む!出来るだけ早い番号でちゃっちゃっと済ませたい!
そう念じつつ、くじを引いた。
(ドックン!ドックン!)
心臓の音が聞こえる。薄目を開けた。
『40』
「神よぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!ぐわあああああああああ!」
なんて事だ、トリかよ。終わった、絶望的だ、お先真っ暗だ。
不老不死だけど死にたい。
『それでは順番が決まりましたので、これから「第一回人間の里お笑い大会」を開催いたします!』
こうして私の嘆きを無視して第一回人間の里お笑い大会は始まってしまった。
大会が開幕してから随分経って、
そろそろ最後のペアである私達の出番が来る頃だった。
お笑い大会の方は大盛り上がりで、会場からは大笑いや噴出し笑いが聞こえてくる。
慧音と私は取り留めの無い話やネタ合わせで時間を潰していた。
慧音は、緊張で胃が痛くなってきたよ、と苦笑していたが実際のところ慧音は本番には強い性格をしているから問題ないだろう。
ヤバイのは私の方だった。
その原因はネタの内容を知っているだけに、絶対皆が失笑するという確定的事項からくる不安と、単にあまり大勢の前でこういう事をするのに慣れていないからだ。
慧音は寺子屋の先生として、子供達や、時には大人達の前で授業をする事があるから慣れているかもしれないが、私はといえばただでさえ竹林の中で過ごす事が多いのに、少し人見知りをしてしまう性格なのでこういう環境は不適合者なのだ。
うう、緊張するよぅ。何か緊張し過ぎてキャラがおかしくなってないか?
でも今はそんなことを気にしている余裕は無い。
さっきから何回もトイレに行っている。
そんなことを考えるのが26回目の時だった。
「なんだ、私達の後は妹紅と慧音が出るのか」
声のする方を見ると、其処には博麗霊夢と霧雨魔理沙(だったけか?)その2人が立っていた。お前ら出るのかよ。
「霊夢が、優勝賞品の米俵3ヶ月分が欲しいって言って聞かなくてな」
霊夢の方をよく見てみると、確かに巫女のオーラが鬼神のそれと同じだった。怨嗟の声さえ聞こえてきそうだ、殺伐としてるなぁ。
「おい、霊夢、大丈夫か?」慧音が心配して声を掛ける。そりゃあこんな様子見たら誰でも声を掛けてやらずにはいられな…
「ああっ!?」
やべぇ、鬼神が睨んできた。慧音が息を呑んだのが分かった。
まるで臀部の中につららを突っ込まれた気分だ。
『次は39組目、博麗霊夢さんと霧雨魔理沙さんで、
題目は「お前は今までに見た腋の数を覚えているのか?」です!どうぞ!』
どんなタイトルだよ。輝夜並みに意味不明だ。…そんなことより
「はーい!どうも~霊夢と魔理沙です♪」
鬼神から一瞬で営業スマイルを振りまく女神に豹変した霊夢がとても恐ろしかった。
………巫女って怖ぇぇぇぇぇ…!
妖怪達が『紅白まんじゅうを食べたことの無い紅白』と呼んで、畏怖の念を抱く気持ちが今ならはっきりと分かる。
そんな2人の漫才は、ボケが魔理沙でツッコミが霊夢だろうという私の思考を裏切って、実際はその逆であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
↓以降は霊夢と魔理沙の漫才のやりとりの一部
「いや~、人がいっぱいいるわね~」
「そりゃあ人間の里だからなぁ」
「こんな大勢の前で一発ギャグとかやったら気持ちいでしょうねぇ」
「それならせっかくの機会だ。やってみたらいいんじゃないか?」
「あら、本当?いい?やっていい?」
「ああ、ほら、どーん!と」
「よ~し、いくわよ~!」
突如自分の腋を魔理沙の腋に当てだした霊夢。
「何してんだ?霊夢」
「これが本当の『腋合い合い』」
しーん
「すべってんじゃねぇか!」(バシッ!)
『クスクスクスwww』
「ったぁ!何よ、あんたもやってから文句言いなさいよね!」
「何で私もやらなきゃいけないんだぜ?」
「良いからさっさとする!」
「仕方ねぇな~」
観客に向き直る魔理沙
「下着かと思ったらぁ~」
自分のスカートを手で掴んで、バッ!っと捲り
「ドロワーーーズ!!」
しーん
「すべっちゃったぜ」
「すべっちゃったぜ、じゃないわぁ!」(バシンッ!)
『あははははははwww』
「もう、一発ギャグはいいから次行きましょ!次!」
「分かったぜ」
「私、最近巫女の仕事以外にもアルバイトか何かやらなきゃいけないと思ってるの」
「ほうほう、成る程な。で?例えばどんなアルバイトがやりたいんだ?」
「ん~、コンビニの定員とかかなぁ」
「じゃあ試しに私が客やるから、お前が店員やれよ」
「あら、いいの?じゃあ遠慮なく」
「腹でも減ったからコンビニで何か買うか、ウィーン(ドアを開ける動作)」
「いらっしゃいませ!」
「よし、パンとホットコーヒーでも買っておくかな」
「それではお会計させてもらいます、ピッ!ピッ!合計で320円になりまふぁ」
「かんじゃったぜ」
「私のギャグをパクるな!!」(バシンッ!)
『あははははははははははwwww!』
「ごめんごめんwww」
「まったく、ほら、いくらだっけ?」
「320円です(照れ)」
「はいはい、320円ね」
「缶コーヒーは温めますか?」
「いや、それすでにホットだから温めなくても…」
「温めます」
「強制!?」
「腋で」
「腋で!!?」
「ブーーーー、チーン!…温まりました!」
霊夢から缶コーヒーを受け取る魔理沙
「別に、というか少しぬるくなった気がするぜ?」
「いや、そっちじゃなくて」
自分の腋を指差す霊夢
「腋!!?」
『あひゃひゃひゃひゃひゃwww!』
「やけどしました」
「知るかっ!」
『っっっwwwww!』
ツッコむ魔理沙、しっかりと持ち直して笑いをとる霊夢、爆笑する観客
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
↓から現実
絶対無理!こいつらの次とか絶っっっ対無理!!
頭を抱える私。当たり前だろう、こいつら本当に素人か!?観客達も今までで一番大笑いしているし、腹を抱えて笑い転げてる者までいる。
私だってもし観客としてこのコントを見てたら、爆笑必至だろう。
だがしかし、今の私、いや、私達にとっては最悪のシチュエーション以外の何物でもない。……もう竹林に帰りたい。アイコンタクトで慧音にそれを伝えようと試みる。
なっ……!?
慧音は、笑っていた
腹を抱えて
「あはははは、いや~、面白いなぁ、あの2人は」
高らかに大笑いしていた。
「け、慧音!?」
予想外だった、はっきり言って今でも目に映る光景が信じられない。
目の前に獅子が迫ってきたという絶体絶命にも関わらず、余裕をかましているヌーを見ている様な感じがした。
「ん?妹紅、どうした?またお腹が痛くなったのか?」
笑いすぎて目尻に溜まった涙を、手で拭いながら私にそう言う慧音。
思わず聞いてしまう。
「なあ慧音、怖くないのか?」
それだけで私の言いたい事は伝わったらしい。
「あ~」
ポリポリと頬を掻いている。
「確かに怖いな」
そうか、やっぱり慧音も…
「でもな、妹紅」
「私達はウケを狙いに来てるだけか?」
…え?
「輝夜は私を笑いの天才と褒めてくれたし、
自分自身をクイーンオブコントと豪語してたよな?」
……うん
「本当に私にギャグのセンスがあると思うか?
輝夜は本当にお笑いが得意だと思うか?妹紅はどう思う?」
それは、その、だな
「いや良いんだ。私は自分にセンスが無い事も、
輝夜だって自身が笑いをとる事に関して上手な方だとは思っていない」
何で輝夜の気持ちまで分かるんだ……?
「私を誰だと思ってる?言い過ぎかもしれないが、歴史の編纂者だぞ?いや、編纂者気取りだな。歴史そのものを編集した事はごく僅かしかないが、それでも、細かい所まで目を向ける事に関しては他人より長けていると思う。昨日、輝夜がお笑いが好きだと断言した時のあいつの目を見たんだ。あいつの目からは……嘘の色が視えた」
あいつ、何で嘘なんか…!
「妹紅、では再び質問しよう」
……………
「里長殿が、寺子屋の子達が求めていたのは、
私が冗談を言って里の皆を笑わせる事か?」
…………
「笑いに不慣れな輝夜が私達に教えてくれた事は笑いをとる方法か?
大会で優勝する為の方法か?それだけか……?」
……あっ!
私が気付いたのを見て微笑む慧音。それでも質問は終わらない。
「私が妹紅をこの大会に、『組む相手がいなかったから』
というだけの理由で誘ったと思うか?」
今ならはっきりと確信できる。そういうことだったんだ。
初めから大事だったのは、最も大切にするべき事だったのは
「過程」
「そうだ」慧音が頷く。
奇しくも慧音が初めて自分のオリジナルギャグを披露した後に、私が慧音に言おうとした事と同じだった。
里長が、寺子屋の子供達が求めていたのは、慧音が里おこしの為に、いや、皆の為に大会に出るという『過程』であって、皆を笑わせるという結果ではない。
輝夜が私達に教えてくれたことは、笑いをとるという結果への方法でも、勿論優勝という結果を得る為の方法でもない。
輝夜が教えてくれたことというのは、大会の為に頑張ると言う『過程』である。不慣れなネタ作りや朝早くのネタ合わせ等を通して、私達に努力する事の大切さに気付いて欲しかったのだ。
慧音の言う過程とは…
私の心を読み透かしたかのように慧音が答える。
「まあ、私のは結果も入っているがな。『過程』は妹紅と一緒に大会に出る事で、決して私一人でも、大会に出ればいいというわけじゃない。そんな結果は望んでいない。私が求めていた『結果』とは妹紅と一緒にこの大会を楽しむと言う事だ」
それも私が夕陽に向かって言ったことだ。
「結果も大事」
慧音はにこやかに私を視ていた。
そして『藤原妹紅』を見てくれていた。
かけがえない私の親友でもあり、良き理解者。
私も『上白沢慧音』を見た。
…あなたと出会えて本当に良かった
「さて、そろそろ私達の出番だな」慧音がそう言うのと同時に霊夢と魔理沙の漫才が終わり、観客からの大喝采を受けていた。お腹はもう痛くなかった。
慧音もいつの間にかハクタク化していた。今日は満月だったな。
「妹紅、最後にもう1つ質問してもいいか?」
「何?」
「私と……一緒に漫才をしてくれるか?」
ははは、そんなの決まってるじゃないか
「もちろん!」
霊夢と魔理沙が満足した面持ちで帰ってくる。
「いや~、何とか上手くいったな」
「これで米俵は私の物ね!」
優勝賞品はお前だけの物かよ。心中でツッコむが私は大満足だった。
何せ漫才をやってる最中にでさえ「優勝できる!」と確信できたからな。かなり手ごたえがあった。あと残ってるのは慧音と妹紅だけか。
2人については注意しなくてもいいだろう。慧音も緊張していたが、妹紅はもっと駄目だった。楽勝だぜ!
『次は40組目。取りの上白沢慧音さんと藤原妹紅さんです!慧音さんについては皆さんも知ってのとおり、寺子屋の先生をなされており時には里の人々の指導にあたる事もある御人です。妹紅さんについては慧音さんの御親友という事もあり、かなり博識がある御人だと思われます。そんな御二人には大いに期待がよせられています!
漫才の題目は『決戦!ボイラー室で!』です!どうぞ!』
…他人の事言えたもんじゃないがタイトルが意味不明だった。
これで終わったぜ。
こんなにプレッシャーが掛かるような紹介をされたからには緊張も倍増しただろう。
「「勝ったな」」思わず口をついて出た言葉で霊夢とハモった。
霊夢も同じ気持ちだったらしい。
「「それはどうかな?」」
「「え?」」私と霊夢は同時に振り向いた。
そこには上白沢慧音と藤原妹紅がいた。
だが、さっきまでの2人とは明らかに様子が違っていた。
自信に満ちていた。勇気に溢れていた。何よりも
笑顔だった
「「お前達がどう思っているかは知らないが、私達は………負けんぞ?」」
威風堂々、胸を張ってステージに赴く2人。
…何があったんだ?
2人のコントが始まる。
そして、霊夢と魔理沙は奇跡を目の当たりにする事になる。
いつもは超が付くほど真面目な慧音が初っ端からハイテンションでボケまくる。観客が爆笑する。それにツッコむ妹紅はあれだけ博識だの何だのと紹介されていたにも関わらず、スルー、スルー、スルー。素人でも見逃さない様なボケを笑顔で流したかと思ったら、要所要所でこれまた少しズレたツッコミを展開。そのシュールっぽさがつぼに入ったのか、爆笑していた観客が腹を抱えてもんどりを打つ。ズレたツッコミに対して今度は慧音が先のハイテンションでツッコむと、それがとどめとなって笑い泣く観衆。笑いが止まる事はなかった。今、正に2人は抱腹絶倒の神であった。
霊夢と魔理沙はこの状況が自分達にとって不都合だとは思わなかった。
そんな考えなど吹き飛ぶ程に…
「あひゃひゃひゃひゃwwwひーっひっひっひっ!」
「ぶわはははははは!くくくくwwいひひひひひひひ!」
2人も笑っていた
笑い出せずにはいられなかった
「け、慧音のかたつむりダンスやばいwwww!こっちみないでよwww!あふぁ、わははははははは!」
「妹紅寝るなよwwww!ちょ、寝ながらジャーマンスープレックスするなwwwww!ぶはぁ!慧音の角刺さってるwwww!」
この瞬間、笑っていない、いや、この大会を楽しんでいない者は誰一人としていなかった。観客も、出場し終わったペアも、霊夢も魔理沙も輝夜も、皆が笑い興じていた。
最高の時間だった。
その時間を作り出していた張本人達も終始良い笑顔で漫才をしていたらしい。
大会の後
私は慧音と輝夜と共に大会の打ち上げに参加していた。霊夢と魔理沙も一緒だ。
「まさか慧音と妹紅に優勝を持っていかれるとは思わなかったわ」
「お前は米を手に入れられたんだから結果的に良かっただろ。それより本当に良かったのか、慧音?」
「ああ、良いんだ。私も準優勝の賞品の『クーラー』とやらには興味があったからな。米一ヶ月分と交換できたし、子供達が夏も快適に勉強できる環境を作れるのなら安いもんさ」
「その感覚私には分からないわ~、そもそも家に電気きてないし」
あれ?詳しくは知らないが、お前の家にはこたつがあるんじゃなかったか?
「あるにはあるんだけど電気がきてないからただの布団代わりに使ってるわ」
それは厳しいなぁ
「なら私の知り合いの河童に頼んであげましょうか?電気をひいてくる事なんて朝飯前だと思うわよ?」
「でもお高いんでしょ?」
「それが今ならお値段なんと2万円!」
「高いわ!」
「え~、普通に工事するよりも破格の値段よ?」
「私の家のお財布事情を考えろ」
他愛ない会話で盛り上がる。この2人と話したことは少なかったが、なかなか面白いな、たまにはあまり面識の無い者と話をするのも。
結果的に私達は優勝したが、優勝していなかったとしても晴々とした気持ちでこういう風に話していただろう。
多分、もう一度あのステージで披露したネタをしてくれと言われても、あんなに笑いをとれる事は2度と無い。あの時の私達には輝夜が言ってた様な、お笑いの神か何かが舞い降りていたのかもしれない。
「妹紅、どうかしたの?」輝夜が声を掛けてきた。
「いや、もう漫才は2度とやりたくない、と思ってな」
「「私もそれは同感」」慧音と輝夜がハモる。3人で顔を見合わせる。
「「「あはははははは!」」」それから大笑いした。
霊夢と魔理沙が訝しげに見ているが気にしない。わるいが今だけは3人の時間を過ごさせてもらいたい。
もしどうしてももう一度コントをしてくれと頼まれたら、今度は3人でしたいな。
そんな事を思っていると、向こうから里長がやってきた。
「慧音さん達、今日は優勝おめでとう。それに関してなんじゃが、引き続きお笑い大会は里の行事にする事が決まってなぁ、次は3ヶ月後なんじゃが出てくれるかのぅ」
それを聞いた私達は、3人同時に言ってやった。
『『『もう☆けっこーね!』』』』
おあとがよろしいようで
完
・慧音と妹紅のキャラはこんなんじゃない!と思ったらすぐに、戻る、を押す事をオススメします。
・作者にはギャグセンスが皆無です。
以上の事を了承する事ができた方は↓へどうぞ、楽しんでいただけたら嬉しいです
人里でお笑い大会がある。
それを慧音から聞いたのはそれが行われる2日前だった。
「頼む妹紅!一緒に出てくれないか!?」
「…いや、待ってくれ。急過ぎるし、いきなりそんなことを言われてもだな…」
「頼む!!」
…とりあえず話だけ聞くことにした。
「里の長がな、里おこしでお笑い大会を開く事にしたらしいんだが、私にも出てくれと言うんだ。…でも私にはそういったセンスも無いし、何しろ初めてだから怖いんだ」
「なら断れば良かったじゃないか、あの里にお前が嫌がる事を無理矢理させる様な人間はいないだろ?」
「それだけなら断れたんだが、生徒達がな、『けーね先生の漫才見たーい!』とか『先生出てくれるよね!?』と言ってきかなくてな…。一個人としても、教育者の立場としてもできる限り、子供達の要望は叶えてあげたいんだ。だから…」
なるほど、それで悩んでいるのか。
「う~ん、協力してはやりたいんだが、私にも生憎そういったセンスは無くてな」
「そうか、それは残念だ。…やはり断るしかないか」
日が暮れかかっている竹林で、二人がしょんぼりしていたその時だった。
「そんな時は私にまかせなさい!」
突如竹林から出てきた、腰の下まで伸びた艶めく黒髪を持つ女性は、
終わりなき怠惰を貪るパラサイト、別名、法外ニート、蓬莱山輝夜であった。
「どっからわいてきやがったーーーーーー!!」
「おーっと、妹紅選手すかさず輝夜選手の背後に回って大技ジャーマンスープレックスだぁーー!」(ごしゃぁ!!)
「ごへぶぅ!?」
「決まったぁーーーーー!さて、気になる審査員が下した結果は……!出ました!右からM、O、K、O、U!『も・こ・う』だぁーーー!……………ビューティフォー」
「あ……あなた達そろって失礼ね!せっかくN・O・Y【ニートオブザイヤー】に永久殿堂入りした私が来てあげたっていうのに!」
「自分で自分のことをニート呼ばわりしてんじゃねぇ!この穀潰しがぁ!」
「ちょっ!起き上がっていきなりコブラツイストは不味いって!
アバ、アバラ折れるぅぅぅぅうううう!ギブギブギブギブギブぎぶぁ!?」
ちーん
白目になって泡を吹く輝夜を尻目に、妹紅と慧音は先程の共同作業を褒めあっていた。
「流石だな、妹紅!あのジャーマンスープレックスはタ○ガーマスクも裸足で逃げ出す程の仕上がりだったぞ!」
「いや、慧音こそ筋金入りの実況ありがとう。父親がプロレスの実況者という点を除いても十二分な実力の持ち主だな!」
「そんな設定無いでしょ!?そもそも、慧音の実況何か変だったわよね!?」
オチてた輝夜がログインしてきた。ちっ、早かったな、流石永遠のニート。
「あなたも人の事言えないでしょ!」と独り言を呟いている。禿げるよ?
「で?滅多に外に出てこないお前がどうしてこんな所に?」
慧音が最もな事を言う。そうである、蓬莱山輝夜といえば藤原妹紅との弾幕ごっこ(という名の殺し合い)や何かイベント等が行われる時以外は、殆んどその姿を見せない金リオレイア並みの希少種なのだ。
「えっとまあ、買い物の帰り道に竹林に入ったらあなた達が話してるのを見てね。何話してるのかなぁ、って思ったらお笑いの話じゃない!ktkr!って思ったのよ。私お笑い好きなの!」
「ほぉ~」
輝夜はてっきりそういうのがあまり好きな方ではない、と思っていただけに意外であった。姫様、姫様と呼ばれている割には結構庶民派なんだな。
………ん?ちょっと待てよ、何か今の発言に引っかかる所があるような気がする。
!?
買い物の帰り………だ……と………?
「おい……輝夜、今日はエイプリフールじゃないぞ?」
綺麗な黒目をぱちくりさせる輝夜。
「ええ、知ってるわよ?いきなりどうしたの?」
馬鹿な……、自分で【ニートオブザイヤー】に永久殿堂入りしたとか言ってた奴が買い物に行ってきただと!?
こいつはいかん、今日で幻想郷は滅びるぞ!!
「慧音!」
「ああ、分かってる。輝夜が外出したという歴史を喰らう!」
「ちょっ!?何言ってんの!外出ぐらい私だってするわよ!」
輝夜の肩に手を置く。そしてできる限りの微笑を浮かべ
「嘘吐くな」(にっこり)
「嘘じゃないわーーーー!」
「まったく、人がせっかく力になってやろうと思った結果がこれだわ」
「あれか、お笑いが好きだのああだの言ってたがそういうの得意なのか?」
「最初に言ったでしょう?漫才とギャグのことなら私に聞きなさい!」と自信たっぷりに胸を張る輝夜。
……!もしかしたら慧音の悲願も叶えられるんじゃないか?慧音にはいつもお世話になっているから、私としてもできれば恩返しがしたい。
ネタさえ提供してくれるなら、私も慧音の為に頑張れるかもしれない。
「なあ輝夜、さっきも聞いたとおり私達にはお笑いのセンスというものが無いんだ。だが、もしお前がネタを提供してくれるというなら…私は慧音の為にも頑張りたい」
「妹紅、一緒に出てくれるというのか!?」
「ああ」
輝夜の方は端からその気だったのだろう、すぐさま答えた。
「良いわよ、あなた達に私がとっておきのネタを提供してあげるわ」
「「本当か!?」」慧音とハモった。やはり私達は以心伝心だ。
寺子屋の授業とお花摘みの時以外は風呂も就寝時も常に一緒なのだ。出会った時から心が通じ合うのまで、さほど時間は掛からなかった。ちなみにこの場合のお花摘みとは……言わなくても分かるよな?
それにしても輝夜は、常日頃から殺し合いをしている私からすると人助けなどする様には見えないのだが、実は案外良い奴なのだろうか?
あっさりし過ぎてて、何か裏がありそうな気がするんだが…?
「ありがとう輝夜!里長と子供達もきっと喜んでくれる!」…まあ、慧音が喜んでくれるなら私に異存は無いがな。
「で?あなた達はどれくらい持ちネタがあるの?」
いやいや、だから持ちネタとかそういうの以前にお笑いに関する知識が……
「あるぞ!」
「ってゐぇぇぇぇぇぇえええええええ!?あるのか!?」
全然以心伝心じゃなかったよ!というかさっき自分でも無いって言ってたじゃんか、慧音
「いや、あるとは言ってもお笑い大会用に自分で作ったのが1つだけなんだが…」
「…じゃあそれを見せて」
輝夜が真剣な面持ちでそう言うと、コクリ、と頷いて深呼吸を始める慧音。待て待て待て……マジで!?本当にあるのか、驚いたよ。
生来真面目な彼女がまさかオリジナルのギャグを温めていたなんて誰が思うだろうか。ここ数ヶ月で一番驚いたかもしれん。
それよりも慧音の持ちネタというのはどんな物なのだろうか?殆んどの時間を共に過ごす私さえ知らないんだ、多分誰にも見せたことが無いんだろう。
期待をするなと言われたとしても期待してしまうのが人の性というものだ。思わず生唾を飲み込む。
「いくぞ」慧音は誰にでもなく確認して、助走をつけ、そして
いきなりこけた
「「!?」」
誰が見てもわざとらしいとしか思えないようなこけっぷりだった。
慧音はその大人の女性特有のプロポーションをした体をゆっくりと起こすと一言。
「てへ☆いっけーね!」
………………………
「「なんじゃそりゃあああああああああああーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
竹林に絶叫が響き渡る。カラスや小動物達が吃驚してバタバタと音を立て逃げ出し、私達の半径10メートル以内には一瞬で静寂が満ちた。
しーん
何だこの威力、恐るべし慧音のギャグセンス。
当人は……………涙目だ。
「……ひっぐひ…ぐ、す…っまん、頼むかっっ……らぁ…
そんな…顔……しないでくれぇ!………うわああああぁぁぁぁん!」
ついには泣きだしてしまった。私達はきっと物凄く微妙な顔をしていたんだろう、輝夜にいたっては顔を下に向けてぷるぷると震えていた。
それはともかく、慧音は自分がお笑いとはかけ離れた性格をしていると分かっていても、ギャグセンスが無いと知っていても、それでも諦めずに里長や子供達の為に一生懸命頑張ってあのギャグを編み出したのだ、これではあまりにも救われないじゃないか。先の結果が大事なのではない、そういった思いやりこそ、人が、妖怪が、妖精が、吸血鬼が、その他大勢が大切にすべきことなんだ!つまりは結果は重要でなく過程こそが大事なのである。この熱い本心を慧音に伝えようとした瞬間、
輝夜が慧音に近づき、そして、抱きしめた。
「慧音!あなた天才よ!!」
………な、なんだってーーーーーーーー!?……馬鹿な!
輝夜に認められただと!?
てか、もしかして輝夜のギャグセンスもおかしいんじゃ…!
「思わず体が痺れたわよ!ここ数百年で最高の一発ギャグを見せてもらったわ!
ああ、もう、あなたったら本当に天才!」
確信した、こいつぁ駄目だ、『逸材を見つけたわ!』と目が物語っている。なんかキラキラしてるし。
さっきのは感動のあまり思わず体が震えてしまったといった感じか
……慧音には本当にすまないと思うが…………あり得ねぇ
「ほ、本当か!?すごく…嬉しいぞ……(ぐすっ!ぐすん)ここ一週間ギャグの事しか頭に無くてな…困っていた所に里長が通りかかってアドバイスをくれたんだ。『自分を活かしたギャグを作りなさい』とな……、最初は苦戦したんだが昨日ようやく完成した自信作なんだ…そのせいで妹紅に大会の事を言うのも遅れてしまってな………妹紅にはすまないと思っていたんだが、そうか………そんなに良かったか………嬉しいなぁ、頑張った甲斐があったよ…」
重ねてきた苦労を思い出したら胸に込み上げるものがあったのか、笑顔を浮かべて再び泣き出す慧音。抱きしめながら労いの言葉を掛ける輝夜。
「色々な苦労があったのね、でも大丈夫!あなたは最高の一本をたたき出したの、胸を張って良いわよ。私が断言するわ、あなたのユーモアがあれば、皆を笑わせるどころか大会で優勝なんて余裕も余裕、この幻想郷で笑いを用いて人を感動させる事に関してあなたの右に出る者はいないわ!…威風堂々としなさい、あなたはお笑いのカテゴリーなら無敵よ、上白沢慧音!」
「…輝夜」
2人が凄く良い雰囲気になっていたので、
「少しお花を摘みに行ってくる」と言い残してその場から一旦離脱。2人に私の声が
聞こえない所まで上昇しようとしていたら、夕陽が瞳に映った。
真っ赤、それでいて美しい橙で彩られ、輝いている。ああ、眩しいな、と思っていたらちょうど良い高度まで飛んでこれてたのでこの辺で滞空する。
さて、そろそろ我慢の限界だ。
お前ら、準備は出来たか?よし、それではいくぞ?せーの…!(すぅーーー)
「何でやねーーーーーーーーーーん!!!」夕闇が私の声を吸い込んでいく。
「まず慧音ぇぇぇぇー!!一週間も時間があったならもっと早く教えてくれよ!その間に打つ手はいくらでもあっただろぉぉぉぉぉ!?気づこうよ!普通、センス無いって分かってるなら『自分一人で考える』って選択肢は最初から考えないよ!!?おかしいでしょ!思いやりも努力も大切だけど、やっぱり結果も大事だよな!?
それと輝夜ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(切れ気味)
散々お笑いが好きだとか言ってたがお前にはそのセンスは無ぇよぉぉぉ!お前には私が断言するよ!一体どんだけのギャグやらコントを見てきたのかは知らないけど、漫才とギャグが得意だと自分を豪語する事に関してお前ほど説得力の無い奴は幻想郷にいねえよ!!
里長ぉぉぉぉぉぉぉー……!(若干ツッコむのに疲れてきた)
人にアドバイスとかしてる暇があるんだったら、てめぇが大会に出ろよ!!何が『自分を活かしたギャグを作りなさい』だ!?都合良く通りかかったお前の方が、ある意味一番キャラが濃いんだよおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
その後も妹紅は沈んでいく夕陽に怒鳴り散らした。常識人はいつの時代も大変である、しかし、妹紅の苦悩はまだ終わらなかった。むしろそう、これからが本番であった。
竹林に着いた頃にはすっかり日が暮れて、辺りには夜の帳が下りていた。暗くなってきたしお腹も減ったのだろうか。輝夜はすでに帰路についたらしくここにはいなかった。
「おかえり妹紅。……どうした?だいぶ疲れているみたいだが」
「い、いや何でもないさ。それより輝夜はもう帰ったんだな?」
「ああ、先に帰ると言っていたぞ」
「そうか」
とにかく疲れていたし、
面倒なことは明日にまわしたいところだったのでちょうど良かった。
「よし、じゃあ家に帰るか」
「ん」
早く慧音の家で体を休めたい。ついでに心の方も。
そう安心していた私が浅はかだった。
慧音の家に着くと、居間に何かが寝転がっていた。
法外ニートだった
「お前はどこまで人の心労の種を増やせば気が済むんだーーーーーー!!」
「でたー!妹紅選手の必殺技『凱旋快晴 フジヤマヴォルケイノ(プロレス風)』ーーーー!!燃え盛る紅蓮の足蹴に輝夜選手堪らず横壁にたたきつけられたぁぁぁ!バウンドした輝夜選手を妹紅選手さらに蹴り上げる!最後に落下してきた輝夜選手が地面に激突する直前で背後に回って止めの、ジャーマンスープレックスゥゥゥゥゥーーー!!
大好きだーーーーー!!」(ぐしゃばぁ!)
「そげぶぅ!?」
「決まったーーーー!さて、気になる審査員が下した結果は……!出ました!
右からK,I,M,U,C,H,I!『キ・ム・チ』だぁーーー!
辛いー!……………スペクタクォー」
「だから慧音の実況おか……!ぐぇ!………(くたっ)」
ごぼーん
言い終わる前にスリーパーホールドでオトした。
「慧音、教えてくれ。何でここにこいつがいるんだ?」
「それがな、ありがたい事に輝夜がつきっきりで私達に漫才の指導をしてくれると言ってくれたんだ!どうせならと思って家に招いたんだ」
「そうよ!クイーンオブコントたる私があなた達に教鞭を執ってあげると言っているの。もう少し丁重に扱いなさいよ!さっきの等身大のGでも見つけたかの様なアクションは何!?私じゃなかったら死んでるわよ?」
蘇生早ぇ~
前々から言おうと思ってたんだけどさ、回復した後に何で肌がつやつやしてるの?
………怖いよ
「とにかくこうして輝夜も着てくれた事だし、さっそく夕餉でも食べながらネタについて話し合おうじやないか」
そうだな。あと一日も余裕があるんだし、
何とか上手く誘導していけばまともな出来にはなるだろ……
ガラガラ……
「慧音さん、少しよろしいかね?」
「おや、里長殿、どうかしましたか?」
「いや~、ワシももう年老いて今年八十になる。最近ボケが始まってのぅ、慧音さんに伝える事を忘れとったんじゃが、第一回人間の里お笑い大会が急遽1日早く行われる事が3日前に決まったんじゃよ」
…はぁ?
「大会参加者には他の者に伝えてもらったんじゃが、慧音さんに出てくれと頼んだのはワシじゃからのぅ。自分で行こうと思っとたんじゃが、すっかり頭から抜け落ちてしまっとった。今日妻に言われて思い出したんでな、ここに来た次第じゃ」
「…成る程。承知しました。御足労をお掛けしてすみませんでした」
「いやいや、本当にすまなかったのぅ。それじゃあワシは帰るとするよ、漫才楽しみにしとるよ。ふぉっふぉっふぉっ」
カツカツカツ、と杖をついて出ていく里長。静かになった室内。さ、
「里長ぁぁぁぁぁーーーー!!やっぱりお前が一番キャラ濃いんだよぉぉぉおおおお!!!」
そう言って、閉められた引き戸を開け放ち、
里長の頭の上に生えていた3本の毛を引きちぎってやろうと…
「「待つんだ(のよ)!妹紅!!」」
二人の制止の声が掛かった。慧音が言う。
「仕方ないだろう、里長殿ももうかなりお年を召している」
そ、そうかもしれないけど……!
「案ずることは無いわ、安心しなさい妹紅。
優良なネタ製造人の私と笑いの天才、慧音がいれば明日からでも今からでも優勝は決定事項よ!あなたのツッコミにも期待してるわ!」
うるさい!パラサイトがでしゃばるんじゃない!
優勝とかそういうもの以前の問題だろ!
まあ、確かにもう文句を言ってもどうにかなる様な状況じゃないが……
「それに2人とも、あなた達を待っている間に私の脳内に抱腹絶倒の神が舞い降りて
至高のネタを授けてくれたわ!聞きたい?」
どうでもい
「本当か!?聞かせてくれ!」
渇望の眼差しを輝夜に向ける慧音。…何かもういいや。
「良いわよ、ネタのタイトルは『決戦!ボイラー室で!』……斬新でしょ?」
得意げに微笑む輝夜。
「ああ!時代を先駆けた素晴らしいネタのような気がしてきたぞ!」
とか言って輝夜を褒めちぎる慧音。
私はもうツッコむの疲れたから飯食って風呂入って、お花を摘みに行って寝る。
明日が来ない事を祈りながら床に就く。
輝夜と慧音が盛り上がっているのを横目に意識を手放した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日
朝6時から起こされ、身支度をしてから3人で家を出た後、里の近くにある川に来た。
それからのネタ合わせは地獄だった。
2人に「妹紅!今のはツッコむ所よ!」やら「妹紅!今のはスルーする所だぞ」と
散々注意されながら4時間ぶっ通しで練習した。
細かい事はここに書かないが、こいつらの言うツッコむ所と、一般に言うツッコむ所の基準は絶対にずれてると思う。昨日も今日も私は自分がアウェーな気がして仕方無い。……非常につらい。
輝夜が私達にOKを出した後、家に帰って昼食に近い朝食を食べたりしていた。そうこうしていると、私の思いとは裏腹に時間は着々と進み、ついに大会が始まる時間になってしまった。
会場へと足を運ぶ、う~、行きたくないなぁ
そう思っている内に目的地に着いてしまった。
そこには里中の人間と、少数の妖怪も人間に化けて来ているらしく大勢の観客が集まっていた。
慧音に、妖怪がいるけど追い出さなくて良いのか?と聞いてみたところ、
危害を加えるはずなら里に入ってすぐに人を襲っているだろうし、何かあったらちゃんと出張る、と言っていた。
それで大丈夫なのだろうかと思いもしたが、様子を見てみると安全な奴らばっかりだった。ただ単にお笑い大会に興味があるらしい。確かに妖怪もお笑い好きだしな。
出場ペアも多くて、数えてみたらなんと40組近くいた。
いや、人数的におかしいだろ。こんなに里の人間いた?
これまた慧音曰く、
「最近、すぐ隣の里にいる娘と里長殿が結婚したから、ついでに里ごと合併したんだ。
だから今年の里の活気は凄いぞ!里長夫婦も熱愛中らしいしな」、だと。
本当にあの里長はあらゆる意味でやり手だな。ボケが始まったとか言ってたが、あれはもしかして色ボケのことか?
ていうか、結婚ついでに合併って……。いや、今ツッコむのは止めておこう。
ネタでのツッコむタイミングを忘れてしまいそうだ、危ない危ない。
里長に関してはここまでくると呆れるどころか感心してしまう。
大会が始まる少し前に司会者から簡単なルール説明と抽選会について話があった。
……抽選会?
「ああ、大会の出場順はくじ引きで決めるらしいな」
そーなのかー。初めて知ったよ、それ。
私は大会について殆んど何も知らされて無かったからなぁ。なあ、慧音?
「うっ、…すまん」慧音が申し訳なさそうに頭を下げる。
まあ慧音を攻めるつもりはない、すべてはあの色ボケ里長のせいだ。
ちなみに今、輝夜は観客席の特別席に座っている。里長の妻の隣の席だ。
歯をキラッ!と光らせて
「あなた達ならできるわ、頑張りなさいよ」と言って去っていったのを思い出す。
人の気も知らないで…!
私達がくじ引きをする番がやってきた。
頼む!出来るだけ早い番号でちゃっちゃっと済ませたい!
そう念じつつ、くじを引いた。
(ドックン!ドックン!)
心臓の音が聞こえる。薄目を開けた。
『40』
「神よぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!ぐわあああああああああ!」
なんて事だ、トリかよ。終わった、絶望的だ、お先真っ暗だ。
不老不死だけど死にたい。
『それでは順番が決まりましたので、これから「第一回人間の里お笑い大会」を開催いたします!』
こうして私の嘆きを無視して第一回人間の里お笑い大会は始まってしまった。
大会が開幕してから随分経って、
そろそろ最後のペアである私達の出番が来る頃だった。
お笑い大会の方は大盛り上がりで、会場からは大笑いや噴出し笑いが聞こえてくる。
慧音と私は取り留めの無い話やネタ合わせで時間を潰していた。
慧音は、緊張で胃が痛くなってきたよ、と苦笑していたが実際のところ慧音は本番には強い性格をしているから問題ないだろう。
ヤバイのは私の方だった。
その原因はネタの内容を知っているだけに、絶対皆が失笑するという確定的事項からくる不安と、単にあまり大勢の前でこういう事をするのに慣れていないからだ。
慧音は寺子屋の先生として、子供達や、時には大人達の前で授業をする事があるから慣れているかもしれないが、私はといえばただでさえ竹林の中で過ごす事が多いのに、少し人見知りをしてしまう性格なのでこういう環境は不適合者なのだ。
うう、緊張するよぅ。何か緊張し過ぎてキャラがおかしくなってないか?
でも今はそんなことを気にしている余裕は無い。
さっきから何回もトイレに行っている。
そんなことを考えるのが26回目の時だった。
「なんだ、私達の後は妹紅と慧音が出るのか」
声のする方を見ると、其処には博麗霊夢と霧雨魔理沙(だったけか?)その2人が立っていた。お前ら出るのかよ。
「霊夢が、優勝賞品の米俵3ヶ月分が欲しいって言って聞かなくてな」
霊夢の方をよく見てみると、確かに巫女のオーラが鬼神のそれと同じだった。怨嗟の声さえ聞こえてきそうだ、殺伐としてるなぁ。
「おい、霊夢、大丈夫か?」慧音が心配して声を掛ける。そりゃあこんな様子見たら誰でも声を掛けてやらずにはいられな…
「ああっ!?」
やべぇ、鬼神が睨んできた。慧音が息を呑んだのが分かった。
まるで臀部の中につららを突っ込まれた気分だ。
『次は39組目、博麗霊夢さんと霧雨魔理沙さんで、
題目は「お前は今までに見た腋の数を覚えているのか?」です!どうぞ!』
どんなタイトルだよ。輝夜並みに意味不明だ。…そんなことより
「はーい!どうも~霊夢と魔理沙です♪」
鬼神から一瞬で営業スマイルを振りまく女神に豹変した霊夢がとても恐ろしかった。
………巫女って怖ぇぇぇぇぇ…!
妖怪達が『紅白まんじゅうを食べたことの無い紅白』と呼んで、畏怖の念を抱く気持ちが今ならはっきりと分かる。
そんな2人の漫才は、ボケが魔理沙でツッコミが霊夢だろうという私の思考を裏切って、実際はその逆であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
↓以降は霊夢と魔理沙の漫才のやりとりの一部
「いや~、人がいっぱいいるわね~」
「そりゃあ人間の里だからなぁ」
「こんな大勢の前で一発ギャグとかやったら気持ちいでしょうねぇ」
「それならせっかくの機会だ。やってみたらいいんじゃないか?」
「あら、本当?いい?やっていい?」
「ああ、ほら、どーん!と」
「よ~し、いくわよ~!」
突如自分の腋を魔理沙の腋に当てだした霊夢。
「何してんだ?霊夢」
「これが本当の『腋合い合い』」
しーん
「すべってんじゃねぇか!」(バシッ!)
『クスクスクスwww』
「ったぁ!何よ、あんたもやってから文句言いなさいよね!」
「何で私もやらなきゃいけないんだぜ?」
「良いからさっさとする!」
「仕方ねぇな~」
観客に向き直る魔理沙
「下着かと思ったらぁ~」
自分のスカートを手で掴んで、バッ!っと捲り
「ドロワーーーズ!!」
しーん
「すべっちゃったぜ」
「すべっちゃったぜ、じゃないわぁ!」(バシンッ!)
『あははははははwww』
「もう、一発ギャグはいいから次行きましょ!次!」
「分かったぜ」
「私、最近巫女の仕事以外にもアルバイトか何かやらなきゃいけないと思ってるの」
「ほうほう、成る程な。で?例えばどんなアルバイトがやりたいんだ?」
「ん~、コンビニの定員とかかなぁ」
「じゃあ試しに私が客やるから、お前が店員やれよ」
「あら、いいの?じゃあ遠慮なく」
「腹でも減ったからコンビニで何か買うか、ウィーン(ドアを開ける動作)」
「いらっしゃいませ!」
「よし、パンとホットコーヒーでも買っておくかな」
「それではお会計させてもらいます、ピッ!ピッ!合計で320円になりまふぁ」
「かんじゃったぜ」
「私のギャグをパクるな!!」(バシンッ!)
『あははははははははははwwww!』
「ごめんごめんwww」
「まったく、ほら、いくらだっけ?」
「320円です(照れ)」
「はいはい、320円ね」
「缶コーヒーは温めますか?」
「いや、それすでにホットだから温めなくても…」
「温めます」
「強制!?」
「腋で」
「腋で!!?」
「ブーーーー、チーン!…温まりました!」
霊夢から缶コーヒーを受け取る魔理沙
「別に、というか少しぬるくなった気がするぜ?」
「いや、そっちじゃなくて」
自分の腋を指差す霊夢
「腋!!?」
『あひゃひゃひゃひゃひゃwww!』
「やけどしました」
「知るかっ!」
『っっっwwwww!』
ツッコむ魔理沙、しっかりと持ち直して笑いをとる霊夢、爆笑する観客
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↓から現実
絶対無理!こいつらの次とか絶っっっ対無理!!
頭を抱える私。当たり前だろう、こいつら本当に素人か!?観客達も今までで一番大笑いしているし、腹を抱えて笑い転げてる者までいる。
私だってもし観客としてこのコントを見てたら、爆笑必至だろう。
だがしかし、今の私、いや、私達にとっては最悪のシチュエーション以外の何物でもない。……もう竹林に帰りたい。アイコンタクトで慧音にそれを伝えようと試みる。
なっ……!?
慧音は、笑っていた
腹を抱えて
「あはははは、いや~、面白いなぁ、あの2人は」
高らかに大笑いしていた。
「け、慧音!?」
予想外だった、はっきり言って今でも目に映る光景が信じられない。
目の前に獅子が迫ってきたという絶体絶命にも関わらず、余裕をかましているヌーを見ている様な感じがした。
「ん?妹紅、どうした?またお腹が痛くなったのか?」
笑いすぎて目尻に溜まった涙を、手で拭いながら私にそう言う慧音。
思わず聞いてしまう。
「なあ慧音、怖くないのか?」
それだけで私の言いたい事は伝わったらしい。
「あ~」
ポリポリと頬を掻いている。
「確かに怖いな」
そうか、やっぱり慧音も…
「でもな、妹紅」
「私達はウケを狙いに来てるだけか?」
…え?
「輝夜は私を笑いの天才と褒めてくれたし、
自分自身をクイーンオブコントと豪語してたよな?」
……うん
「本当に私にギャグのセンスがあると思うか?
輝夜は本当にお笑いが得意だと思うか?妹紅はどう思う?」
それは、その、だな
「いや良いんだ。私は自分にセンスが無い事も、
輝夜だって自身が笑いをとる事に関して上手な方だとは思っていない」
何で輝夜の気持ちまで分かるんだ……?
「私を誰だと思ってる?言い過ぎかもしれないが、歴史の編纂者だぞ?いや、編纂者気取りだな。歴史そのものを編集した事はごく僅かしかないが、それでも、細かい所まで目を向ける事に関しては他人より長けていると思う。昨日、輝夜がお笑いが好きだと断言した時のあいつの目を見たんだ。あいつの目からは……嘘の色が視えた」
あいつ、何で嘘なんか…!
「妹紅、では再び質問しよう」
……………
「里長殿が、寺子屋の子達が求めていたのは、
私が冗談を言って里の皆を笑わせる事か?」
…………
「笑いに不慣れな輝夜が私達に教えてくれた事は笑いをとる方法か?
大会で優勝する為の方法か?それだけか……?」
……あっ!
私が気付いたのを見て微笑む慧音。それでも質問は終わらない。
「私が妹紅をこの大会に、『組む相手がいなかったから』
というだけの理由で誘ったと思うか?」
今ならはっきりと確信できる。そういうことだったんだ。
初めから大事だったのは、最も大切にするべき事だったのは
「過程」
「そうだ」慧音が頷く。
奇しくも慧音が初めて自分のオリジナルギャグを披露した後に、私が慧音に言おうとした事と同じだった。
里長が、寺子屋の子供達が求めていたのは、慧音が里おこしの為に、いや、皆の為に大会に出るという『過程』であって、皆を笑わせるという結果ではない。
輝夜が私達に教えてくれたことは、笑いをとるという結果への方法でも、勿論優勝という結果を得る為の方法でもない。
輝夜が教えてくれたことというのは、大会の為に頑張ると言う『過程』である。不慣れなネタ作りや朝早くのネタ合わせ等を通して、私達に努力する事の大切さに気付いて欲しかったのだ。
慧音の言う過程とは…
私の心を読み透かしたかのように慧音が答える。
「まあ、私のは結果も入っているがな。『過程』は妹紅と一緒に大会に出る事で、決して私一人でも、大会に出ればいいというわけじゃない。そんな結果は望んでいない。私が求めていた『結果』とは妹紅と一緒にこの大会を楽しむと言う事だ」
それも私が夕陽に向かって言ったことだ。
「結果も大事」
慧音はにこやかに私を視ていた。
そして『藤原妹紅』を見てくれていた。
かけがえない私の親友でもあり、良き理解者。
私も『上白沢慧音』を見た。
…あなたと出会えて本当に良かった
「さて、そろそろ私達の出番だな」慧音がそう言うのと同時に霊夢と魔理沙の漫才が終わり、観客からの大喝采を受けていた。お腹はもう痛くなかった。
慧音もいつの間にかハクタク化していた。今日は満月だったな。
「妹紅、最後にもう1つ質問してもいいか?」
「何?」
「私と……一緒に漫才をしてくれるか?」
ははは、そんなの決まってるじゃないか
「もちろん!」
霊夢と魔理沙が満足した面持ちで帰ってくる。
「いや~、何とか上手くいったな」
「これで米俵は私の物ね!」
優勝賞品はお前だけの物かよ。心中でツッコむが私は大満足だった。
何せ漫才をやってる最中にでさえ「優勝できる!」と確信できたからな。かなり手ごたえがあった。あと残ってるのは慧音と妹紅だけか。
2人については注意しなくてもいいだろう。慧音も緊張していたが、妹紅はもっと駄目だった。楽勝だぜ!
『次は40組目。取りの上白沢慧音さんと藤原妹紅さんです!慧音さんについては皆さんも知ってのとおり、寺子屋の先生をなされており時には里の人々の指導にあたる事もある御人です。妹紅さんについては慧音さんの御親友という事もあり、かなり博識がある御人だと思われます。そんな御二人には大いに期待がよせられています!
漫才の題目は『決戦!ボイラー室で!』です!どうぞ!』
…他人の事言えたもんじゃないがタイトルが意味不明だった。
これで終わったぜ。
こんなにプレッシャーが掛かるような紹介をされたからには緊張も倍増しただろう。
「「勝ったな」」思わず口をついて出た言葉で霊夢とハモった。
霊夢も同じ気持ちだったらしい。
「「それはどうかな?」」
「「え?」」私と霊夢は同時に振り向いた。
そこには上白沢慧音と藤原妹紅がいた。
だが、さっきまでの2人とは明らかに様子が違っていた。
自信に満ちていた。勇気に溢れていた。何よりも
笑顔だった
「「お前達がどう思っているかは知らないが、私達は………負けんぞ?」」
威風堂々、胸を張ってステージに赴く2人。
…何があったんだ?
2人のコントが始まる。
そして、霊夢と魔理沙は奇跡を目の当たりにする事になる。
いつもは超が付くほど真面目な慧音が初っ端からハイテンションでボケまくる。観客が爆笑する。それにツッコむ妹紅はあれだけ博識だの何だのと紹介されていたにも関わらず、スルー、スルー、スルー。素人でも見逃さない様なボケを笑顔で流したかと思ったら、要所要所でこれまた少しズレたツッコミを展開。そのシュールっぽさがつぼに入ったのか、爆笑していた観客が腹を抱えてもんどりを打つ。ズレたツッコミに対して今度は慧音が先のハイテンションでツッコむと、それがとどめとなって笑い泣く観衆。笑いが止まる事はなかった。今、正に2人は抱腹絶倒の神であった。
霊夢と魔理沙はこの状況が自分達にとって不都合だとは思わなかった。
そんな考えなど吹き飛ぶ程に…
「あひゃひゃひゃひゃwwwひーっひっひっひっ!」
「ぶわはははははは!くくくくwwいひひひひひひひ!」
2人も笑っていた
笑い出せずにはいられなかった
「け、慧音のかたつむりダンスやばいwwww!こっちみないでよwww!あふぁ、わははははははは!」
「妹紅寝るなよwwww!ちょ、寝ながらジャーマンスープレックスするなwwwww!ぶはぁ!慧音の角刺さってるwwww!」
この瞬間、笑っていない、いや、この大会を楽しんでいない者は誰一人としていなかった。観客も、出場し終わったペアも、霊夢も魔理沙も輝夜も、皆が笑い興じていた。
最高の時間だった。
その時間を作り出していた張本人達も終始良い笑顔で漫才をしていたらしい。
大会の後
私は慧音と輝夜と共に大会の打ち上げに参加していた。霊夢と魔理沙も一緒だ。
「まさか慧音と妹紅に優勝を持っていかれるとは思わなかったわ」
「お前は米を手に入れられたんだから結果的に良かっただろ。それより本当に良かったのか、慧音?」
「ああ、良いんだ。私も準優勝の賞品の『クーラー』とやらには興味があったからな。米一ヶ月分と交換できたし、子供達が夏も快適に勉強できる環境を作れるのなら安いもんさ」
「その感覚私には分からないわ~、そもそも家に電気きてないし」
あれ?詳しくは知らないが、お前の家にはこたつがあるんじゃなかったか?
「あるにはあるんだけど電気がきてないからただの布団代わりに使ってるわ」
それは厳しいなぁ
「なら私の知り合いの河童に頼んであげましょうか?電気をひいてくる事なんて朝飯前だと思うわよ?」
「でもお高いんでしょ?」
「それが今ならお値段なんと2万円!」
「高いわ!」
「え~、普通に工事するよりも破格の値段よ?」
「私の家のお財布事情を考えろ」
他愛ない会話で盛り上がる。この2人と話したことは少なかったが、なかなか面白いな、たまにはあまり面識の無い者と話をするのも。
結果的に私達は優勝したが、優勝していなかったとしても晴々とした気持ちでこういう風に話していただろう。
多分、もう一度あのステージで披露したネタをしてくれと言われても、あんなに笑いをとれる事は2度と無い。あの時の私達には輝夜が言ってた様な、お笑いの神か何かが舞い降りていたのかもしれない。
「妹紅、どうかしたの?」輝夜が声を掛けてきた。
「いや、もう漫才は2度とやりたくない、と思ってな」
「「私もそれは同感」」慧音と輝夜がハモる。3人で顔を見合わせる。
「「「あはははははは!」」」それから大笑いした。
霊夢と魔理沙が訝しげに見ているが気にしない。わるいが今だけは3人の時間を過ごさせてもらいたい。
もしどうしてももう一度コントをしてくれと頼まれたら、今度は3人でしたいな。
そんな事を思っていると、向こうから里長がやってきた。
「慧音さん達、今日は優勝おめでとう。それに関してなんじゃが、引き続きお笑い大会は里の行事にする事が決まってなぁ、次は3ヶ月後なんじゃが出てくれるかのぅ」
それを聞いた私達は、3人同時に言ってやった。
『『『もう☆けっこーね!』』』』
おあとがよろしいようで
完
次はあなたの書くシリアスなどが見たかったりする
慧音のかたつむりダンス…如何なものなのか、気になりますw
ニートオブザイヤーってw
誰目線なのか、誰の台詞なのか、わかりづらい所もあったけど
面白く読ませて貰いました。
いつも真面目な慧音がプロレスの実況上手いとか……ごくり……
普段愛想よくなさそうな霊夢も同じように出来るんじゃないかとか思いました。
一応、誤字報告?
>>里長ぉぉぉぉぉぉぉー
「里長」は「さとおさ」だと思います。