†←で視点が変わります。
最初は咲夜視点です。
最近になって私に楽しみが出来た。
それは他人からしたら些細なことかもしれないけども、私はそうは思わない。
自分でも驚いたが、どうやら私は恋をしているようだ。
相手は魔法の森に住んでいる魔女。
よく、七色の人形遣いと呼ばれている。
彼女はいつも傍らに人形を連れている。
まあ、人形遣いなのだから当たり前だが。
優雅な気品溢れる彼女は私の憧れだった。
だけども最近は憧れを超えた対象になっていた。
「こんにちは、咲夜」
「アリス」
そう、今声をかけられたこの女の子こそが私の好きな人。
アリス・マーガトロイド本人だ。
「また図書館に用事?」
「ええ。ちょっとパチュリーに聞きたいことがあってね」
「…そう。後でお茶を持って行くわ」
「ありがとう。あ、今日はクッキーを焼いてきたのよ」
「あら、気が利くじゃない」
「いつも貰ってばかりだからね」
「ふふっ。それじゃあ私は仕事に戻るわ」
「うん」
何気ない会話でも私は嬉しくてしょうがない。
パチュリー様の名前が出た時は少し黒いモノが私の中で湧きあがったけど、一応抑えた。
これでも瀟洒なメイドですから。
これしきのことで嫉妬なんてしない……、と思う。
「…はぁ。これじゃ先が思いやられますね」
「ッ!? め、めーりん、なんでここに!?」
後ろを振り向くとそこには美鈴がいた。
美鈴の手には可愛らしい袋があった。
あれ、それはさっきアリスが持っていたクッキーの入っていた袋と同じ…。
「ああ、これですか? 先程アリスさんに頂いたんですよ。おいしかったですよ~」
「…私より先に食べるなんて」
「いや、そんなこと言われましても…。だいたい咲夜さんはもう少し積極的になった方がいいと思いますよ?」
「うるさいわよ! 私だって、そりゃもうちょっとアリスと仲良くしたいわよ」
「仲良くって…、そんな考えだからいつまでたっても想いを伝えれないんじゃないですか?」
「うぐっ、」
まあ、それを言われてしまったら言い返せない自分がいる。
なんて情けない。
よもや美鈴にそんなこと言われるなんて…。
「自然な流れで聞いてみたらどうですか?」
「…何を?」
「今好きな人いるのか、とか?」
「はあ!? そ、そんなこと聞けるわけないでしょ!!」
「なら私が聞いてあげましょうか?」
「えっ? いや、でも…」
「サラッと聞いてみるだけ聞いてみましょうよ、ね?」
「…うん」
結局あのまま美鈴に流されて二人で図書館に行くことになった。
作戦はこうだ。
まず、私が紅茶を淹れている間に美鈴がアリスに「こっちに人形に関する本があります」などと言って私とパチュリー様から離れる。
そうして私はパチュリー様と「あ、美鈴にサボるなって言ってきます」などと言って様子を見に行くふりをして小悪魔を探しに行く。
そして小悪魔になるべくパチュリー様に「なにかあったの」と言われても「なんでもないです」と言える準備をさせておく。
私は何事もなかったかのようにパチュリー様のところへ戻り「それでは仕事に戻ります」と言って図書館を出る。
これで後は美鈴が図書館から出てくるのを待つ……こんな感じだ。
「…うまくやりなさいよ?」
「わかってますって」
「それじゃ、行くわよ」
「了解です」
図書館の扉をノックして扉を開ける。
独特な匂いが私の鼻を刺激する。
中に入るとアリスとパチュリー様がなにやら楽しそうに話しているのが見えた。
私は胸を締め付けるような感覚に襲われた。
そんな笑顔を、私は向けられたことがない。
「咲夜さん…?」
「あ、ごめんなさい。さ、行きましょう」
「はい」
美鈴の心配そうな顔を見て、私は相当変な顔していたのだと思った。
一歩一歩近づく度に、アリスの楽しそうな顔がはっきりと見えて、正直辛かった。
でも、ここで引き下がるわけにもいかない。
せっかく美鈴が協力してくれるんだから。
「あら、珍しいわね。美鈴も一緒なのね」
「はい。あ、パチュリー様~植物に関する本、ありますか?」
「あるんじゃない? 探してみなさいな」
「了解です!」
「どうぞ、パチュリー様。それにアリスも」
「ありがとう咲夜」
「パチュリー、よかったらクッキーどうぞ」
「アリスが焼いたの?」
「ええ。パチュリーって甘いの苦手よね?」
「まあ、あまり好きではないかしらね」
「はいこれ。パチュリー用に甘さ控え目にしたから」
「わざわざ悪いわね」
「気にしないでよ。私が好きでやってることだから」
私ここで死にたいかも。
目の前でこんなもの見せつけられて…。
泣きたくなるわ。
「アリスさーん!」
「…美鈴? どうしたの?」
「さっき人形に関する本があったので、もしよかったら案内しますよ」
「本当? それじゃあお願い。パチュリー、咲夜、ちょっと行ってくるわね」
「ええ。あ、クッキー頂くわ」
「食べたら感想聞かせてね」
なにこの会話。
私の入る隙が全くない。
アリスはパチュリー様のことが好きなのだろうか…。
まあ、魔法使い同士、合う話があるのは仕方のないことだけど。
私だって共通の話題くらいある。
お菓子の話ならいくらでも出来る。
でも所詮その程度。
悲しいな。
「あ、パチュリー様。私美鈴にサボるなって言ってきます」
「そう。あ、小悪魔にこの本の続きをお願いって言っておいてちょうだい」
「かしこまりました」
ごく自然に、ばれないように。
パチュリー様は本に目を通して完全に自分の世界に入った。
私は小悪魔を探しに行く。
とりあえずうろうろしていたら小悪魔を発見した。
「あれ、咲夜さん。どうしたんですか?」
「ちょっとね。あ、パチュリー様から伝言ね、この本の続きをお願い、だそうよ」
私は預かっていた本を小悪魔に渡す。
「わかりました。わざわざありがとうございます」
「これくらいいいわよ。それより小悪魔、ちょっといいかしら?」
「なんでしょう?」
「美鈴とアリスを見なかった?」
「ああ、あの二人ならさっき見ましたよ。いいんですか咲夜さん?」
「なにが?」
「え? だってアリスさんのこと好きなんでしょう? 美鈴さんにとられちゃいますよ?」
「んなっ!? なんで、知ってるの…?」
びっくりした。
なぜ小悪魔が私がアリスのこと好きだって知ってるのよ。
「…まあ、見ていれば分かりますから」
「それ、パチュリー様も知ってるの?」
「まさか! 大丈夫ですよ、パチュリー様は鈍感さんですから」
「…そう」
仮にも自分の主だろうに…。
その言い方はいかがなものか。
「それで、いいんですか?」
「大丈夫よ。美鈴は私の味方だし。今ある作戦に協力してくれてるから」
「作戦、ですか?」
「ええ。それで小悪魔にもちょっと協力してもらおうかと思ってね」
「なんでしょうか?」
「カクカクシカシカ」
「なるほど。わかりました、大丈夫ですよ。任せてください」
「ありがと。それじゃあ私はパチュリー様のところに戻るから」
「はい」
私はパチュリー様のところへ戻った。
パチュリー様は相変わらず自分の世界に入り込んでいる。
声をかけてもきっと返事はないだろう。
「…それでは私は仕事に戻ります」
「………。」
「失礼しますね」
私はスタスタと扉に向かって歩いた。
美鈴は上手くやっているだろうか。
心配になりながらも私は外に出た。
†††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
「あ、こっちですよアリスさん」
「もう美鈴。どこまで行く気なの~?」
「もう少しですから」
「はあ」
「着きましたよ」
「ここにあるの?」
私は咲夜さんの作戦を実行するべくアリスさんを連れてきた。
少し遠くまで来すぎたかな…、まあ、それは置いといて。
「あの、アリスさん」
「なぁに?」
「…今、好きな人っていますか?」
「えっ? な、なんで?」
「いえ、少し気になったものでして。すみません突然こんなこと聞いて」
「………。」
「アリスさん?」
どうやら今の質問でアリスさんの顔は真っ赤になってしまった。
それも耳まで赤い。
うわ、これは可愛いなぁ…ってイカンイカン!
咲夜さんに殺される。
「おーい、アリスさん? 大丈夫ですか?」
「へっ!? あ、うん、大丈夫よ!」
「そうですか? あ、えと、さっきのことなんですけど」
「…美鈴は、その、…私のことがすきなの…?」
「ええっ!?」
そうか、そりゃそう聞けばそういう展開になりますよね!
今の聞き方も可愛いなぁ…ってダメだってば!
「いえ、違うんです!」
「…違う?」
「はい。私じゃなくて、ある人が貴方のことを気に入ってるみたいで」
「ある人?」
「その人は今は少し自分に勇気がないんですよ。でも、小さな一歩を踏み出せばあの人はきっと大丈夫なんです」
「…?」
「とにかく。待っていてください」
「待てって言われても…」
「あの人は貴方のこと、とても大事に想ってますから」
「え、あ、…そう、なんだ…」
ちょっと強引すぎたかな?
でも、これくらいしないと咲夜さん絶対小さな一歩も踏み出せないし。
それに私は協力者。
少しでも咲夜さんを幸せにしてあげたい。
「アリスさんは、今好きな人いますか?」
私はもう一度聞いてみた。
結局待っててくれと言っても、相手にもう好きな人がいたらどうにもならない。
まあ、その時は奪うまでですよ。
ね、咲夜さん!
「……いるわ」
「いるんですか」
「いるわよ」
「いちゃうんですか」
「いたらダメなのかしら」
「いるくらいでダメだなんて言いませんよ」
「いるだけで付き合ってはいないけど」
「いるんですね」
「いるんです」
咲夜さん。
これ以上は待っていられませんよ!
相手に好きな人がいる以上、貴方のそのネガティブな考えではアリスさんを振り向かせることなんて出来ません!
「ちなみに、相手の方のお名前とか聞いてもよろしいでしょうか?」
「……それは、ちょっと」
「お願いします!」
「なんで美鈴がそんなに知りたがるのよ?」
「いいじゃないですか」
「……じゃあ、ヒントなら教えてあげるわ」
「ヒントですか?」
「ええ。それで当ててみて」
「わかりました」
ヒントか。
私こういうの結構苦手なんだよな。
まあ、これで分からなかったら咲夜さんに言って好きな人割り出せばいいや。
「えっとね。背は私より少し高くて、スラっとした手足が綺麗で、いつも気が利いて、お茶とお菓子が美味しくて、瀟洒で、メイドで、……あっ、」
「……それ、ほとんど答えですよね?」
「ち、違うのよ!」
「違うんですか?」
「…違わないけど」
「なら答え言ってもいいですか?」
「……どうぞ」
「それって咲夜さんですよね?」
「そうよ! 悪い?」
「悪くないですよ」
本人はずっと隠しておきたかったのだろう。
でも、自分で墓穴掘ってこの逆切れモード。
どうしたもんか。
「これ咲夜には内緒だからね!」
「わかってますよ」
「まだ誰にも言ってないんだから!」
「でしょうね」
「美鈴、これから私に協力しなさい!」
「協力、ですか?」
「そうよ! 咲夜とのこと、貴方にも協力してもらからね!」
「あはは、勘弁してくださいよ~」
「笑いごとじゃないの!」
笑いごとじゃない。
恋愛は、付き合ったり、振られたりして、それで自分がそのことについて納得出来た時に、初めてそれを笑い話に変えることができる。
いつだって真剣なんだから。
私だってきっといつかそんな日が来ることを願っている。
「アリスさん」
「…なに?」
「頑張ってくださいね」
「…うん」
「それじゃあ私は仕事に戻ります」
「…分かってるでしょうね?」
「咲夜さんのことですか? その件については辞退させてもらいますよ」
「な、なんでっ!?」
「笑いごとじゃないなら、自分でなんとか出来ますよね?」
私はにっこりと笑ってそう言った。
我ながら少し意地悪な感じだったかもしれない。
でも、両想いならべつにいいですよね?
「応援してますよ」
「…うん」
「上手くいかなかった時くらいは、相談に乗ります」
「ありがと」
「それでは、失礼します」
私は咲夜さんにこの事を伝えるために少し早足で図書館を出た。
さて、いったいどこにいるのやら。
いろいろ探しまわって最終的に着いた場所は、咲夜さんの部屋だった。
ノックをすると中から「どうぞ」と声がしたのでドアを開けた。
そこにはベッドに倒れこんでいる咲夜さんがいた。
「お疲れ様。どうだった?」
「とりあえず体起こしてくださいよ」
「…うん」
ちゃんと頭の中脳味噌詰まってるのかな、この人。
ずいぶんと気力がないような気がするんですけど…。
「ごほん! えー、咲夜さん? 良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたいですか?」
「良いニュースだけ」
「それはナシですよ」
「……じゃあ悪いニュースから」
「アリスさん、どうやら好きな人がいるみたいですよ」
「……本当に?」
「はい。ちゃんと確かめましたから」
「そう、なんだ…」
「良いニュース、聞きますか?」
「……ちょっと待って、頭の中整理するから」
結構きてるんだろうな。
心ここにあらずって感じですし。
「良いニュースってなに?」
「えっとですね。咲夜さん、頑張ればその相手からアリスさんを奪えるかもしれませんよ?」
「えっ?」
「今の咲夜さんの頑張り次第ですけどね」
「でも、奪うだなんて…」
「恋は戦争ですよ」
「……そんなことしてアリスに嫌われないかしら?」
「大丈夫ですよ! 私が保証します」
「…じゃあ、頑張ろうかな」
「はい! 応援してますよ」
「うん。ありがとっ」
咲夜さん、笑ってくれた。
その笑顔があればきっと大丈夫ですよ。
†††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
美鈴から聞いた。
アリスには好きな人がいるって。
でも、私の頑張り次第でアリスは私に振り向くかもしれないって。
ほんのちょっとだけ、勇気が出た気がした。
最初は咲夜視点です。
最近になって私に楽しみが出来た。
それは他人からしたら些細なことかもしれないけども、私はそうは思わない。
自分でも驚いたが、どうやら私は恋をしているようだ。
相手は魔法の森に住んでいる魔女。
よく、七色の人形遣いと呼ばれている。
彼女はいつも傍らに人形を連れている。
まあ、人形遣いなのだから当たり前だが。
優雅な気品溢れる彼女は私の憧れだった。
だけども最近は憧れを超えた対象になっていた。
「こんにちは、咲夜」
「アリス」
そう、今声をかけられたこの女の子こそが私の好きな人。
アリス・マーガトロイド本人だ。
「また図書館に用事?」
「ええ。ちょっとパチュリーに聞きたいことがあってね」
「…そう。後でお茶を持って行くわ」
「ありがとう。あ、今日はクッキーを焼いてきたのよ」
「あら、気が利くじゃない」
「いつも貰ってばかりだからね」
「ふふっ。それじゃあ私は仕事に戻るわ」
「うん」
何気ない会話でも私は嬉しくてしょうがない。
パチュリー様の名前が出た時は少し黒いモノが私の中で湧きあがったけど、一応抑えた。
これでも瀟洒なメイドですから。
これしきのことで嫉妬なんてしない……、と思う。
「…はぁ。これじゃ先が思いやられますね」
「ッ!? め、めーりん、なんでここに!?」
後ろを振り向くとそこには美鈴がいた。
美鈴の手には可愛らしい袋があった。
あれ、それはさっきアリスが持っていたクッキーの入っていた袋と同じ…。
「ああ、これですか? 先程アリスさんに頂いたんですよ。おいしかったですよ~」
「…私より先に食べるなんて」
「いや、そんなこと言われましても…。だいたい咲夜さんはもう少し積極的になった方がいいと思いますよ?」
「うるさいわよ! 私だって、そりゃもうちょっとアリスと仲良くしたいわよ」
「仲良くって…、そんな考えだからいつまでたっても想いを伝えれないんじゃないですか?」
「うぐっ、」
まあ、それを言われてしまったら言い返せない自分がいる。
なんて情けない。
よもや美鈴にそんなこと言われるなんて…。
「自然な流れで聞いてみたらどうですか?」
「…何を?」
「今好きな人いるのか、とか?」
「はあ!? そ、そんなこと聞けるわけないでしょ!!」
「なら私が聞いてあげましょうか?」
「えっ? いや、でも…」
「サラッと聞いてみるだけ聞いてみましょうよ、ね?」
「…うん」
結局あのまま美鈴に流されて二人で図書館に行くことになった。
作戦はこうだ。
まず、私が紅茶を淹れている間に美鈴がアリスに「こっちに人形に関する本があります」などと言って私とパチュリー様から離れる。
そうして私はパチュリー様と「あ、美鈴にサボるなって言ってきます」などと言って様子を見に行くふりをして小悪魔を探しに行く。
そして小悪魔になるべくパチュリー様に「なにかあったの」と言われても「なんでもないです」と言える準備をさせておく。
私は何事もなかったかのようにパチュリー様のところへ戻り「それでは仕事に戻ります」と言って図書館を出る。
これで後は美鈴が図書館から出てくるのを待つ……こんな感じだ。
「…うまくやりなさいよ?」
「わかってますって」
「それじゃ、行くわよ」
「了解です」
図書館の扉をノックして扉を開ける。
独特な匂いが私の鼻を刺激する。
中に入るとアリスとパチュリー様がなにやら楽しそうに話しているのが見えた。
私は胸を締め付けるような感覚に襲われた。
そんな笑顔を、私は向けられたことがない。
「咲夜さん…?」
「あ、ごめんなさい。さ、行きましょう」
「はい」
美鈴の心配そうな顔を見て、私は相当変な顔していたのだと思った。
一歩一歩近づく度に、アリスの楽しそうな顔がはっきりと見えて、正直辛かった。
でも、ここで引き下がるわけにもいかない。
せっかく美鈴が協力してくれるんだから。
「あら、珍しいわね。美鈴も一緒なのね」
「はい。あ、パチュリー様~植物に関する本、ありますか?」
「あるんじゃない? 探してみなさいな」
「了解です!」
「どうぞ、パチュリー様。それにアリスも」
「ありがとう咲夜」
「パチュリー、よかったらクッキーどうぞ」
「アリスが焼いたの?」
「ええ。パチュリーって甘いの苦手よね?」
「まあ、あまり好きではないかしらね」
「はいこれ。パチュリー用に甘さ控え目にしたから」
「わざわざ悪いわね」
「気にしないでよ。私が好きでやってることだから」
私ここで死にたいかも。
目の前でこんなもの見せつけられて…。
泣きたくなるわ。
「アリスさーん!」
「…美鈴? どうしたの?」
「さっき人形に関する本があったので、もしよかったら案内しますよ」
「本当? それじゃあお願い。パチュリー、咲夜、ちょっと行ってくるわね」
「ええ。あ、クッキー頂くわ」
「食べたら感想聞かせてね」
なにこの会話。
私の入る隙が全くない。
アリスはパチュリー様のことが好きなのだろうか…。
まあ、魔法使い同士、合う話があるのは仕方のないことだけど。
私だって共通の話題くらいある。
お菓子の話ならいくらでも出来る。
でも所詮その程度。
悲しいな。
「あ、パチュリー様。私美鈴にサボるなって言ってきます」
「そう。あ、小悪魔にこの本の続きをお願いって言っておいてちょうだい」
「かしこまりました」
ごく自然に、ばれないように。
パチュリー様は本に目を通して完全に自分の世界に入った。
私は小悪魔を探しに行く。
とりあえずうろうろしていたら小悪魔を発見した。
「あれ、咲夜さん。どうしたんですか?」
「ちょっとね。あ、パチュリー様から伝言ね、この本の続きをお願い、だそうよ」
私は預かっていた本を小悪魔に渡す。
「わかりました。わざわざありがとうございます」
「これくらいいいわよ。それより小悪魔、ちょっといいかしら?」
「なんでしょう?」
「美鈴とアリスを見なかった?」
「ああ、あの二人ならさっき見ましたよ。いいんですか咲夜さん?」
「なにが?」
「え? だってアリスさんのこと好きなんでしょう? 美鈴さんにとられちゃいますよ?」
「んなっ!? なんで、知ってるの…?」
びっくりした。
なぜ小悪魔が私がアリスのこと好きだって知ってるのよ。
「…まあ、見ていれば分かりますから」
「それ、パチュリー様も知ってるの?」
「まさか! 大丈夫ですよ、パチュリー様は鈍感さんですから」
「…そう」
仮にも自分の主だろうに…。
その言い方はいかがなものか。
「それで、いいんですか?」
「大丈夫よ。美鈴は私の味方だし。今ある作戦に協力してくれてるから」
「作戦、ですか?」
「ええ。それで小悪魔にもちょっと協力してもらおうかと思ってね」
「なんでしょうか?」
「カクカクシカシカ」
「なるほど。わかりました、大丈夫ですよ。任せてください」
「ありがと。それじゃあ私はパチュリー様のところに戻るから」
「はい」
私はパチュリー様のところへ戻った。
パチュリー様は相変わらず自分の世界に入り込んでいる。
声をかけてもきっと返事はないだろう。
「…それでは私は仕事に戻ります」
「………。」
「失礼しますね」
私はスタスタと扉に向かって歩いた。
美鈴は上手くやっているだろうか。
心配になりながらも私は外に出た。
†††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††††
「あ、こっちですよアリスさん」
「もう美鈴。どこまで行く気なの~?」
「もう少しですから」
「はあ」
「着きましたよ」
「ここにあるの?」
私は咲夜さんの作戦を実行するべくアリスさんを連れてきた。
少し遠くまで来すぎたかな…、まあ、それは置いといて。
「あの、アリスさん」
「なぁに?」
「…今、好きな人っていますか?」
「えっ? な、なんで?」
「いえ、少し気になったものでして。すみません突然こんなこと聞いて」
「………。」
「アリスさん?」
どうやら今の質問でアリスさんの顔は真っ赤になってしまった。
それも耳まで赤い。
うわ、これは可愛いなぁ…ってイカンイカン!
咲夜さんに殺される。
「おーい、アリスさん? 大丈夫ですか?」
「へっ!? あ、うん、大丈夫よ!」
「そうですか? あ、えと、さっきのことなんですけど」
「…美鈴は、その、…私のことがすきなの…?」
「ええっ!?」
そうか、そりゃそう聞けばそういう展開になりますよね!
今の聞き方も可愛いなぁ…ってダメだってば!
「いえ、違うんです!」
「…違う?」
「はい。私じゃなくて、ある人が貴方のことを気に入ってるみたいで」
「ある人?」
「その人は今は少し自分に勇気がないんですよ。でも、小さな一歩を踏み出せばあの人はきっと大丈夫なんです」
「…?」
「とにかく。待っていてください」
「待てって言われても…」
「あの人は貴方のこと、とても大事に想ってますから」
「え、あ、…そう、なんだ…」
ちょっと強引すぎたかな?
でも、これくらいしないと咲夜さん絶対小さな一歩も踏み出せないし。
それに私は協力者。
少しでも咲夜さんを幸せにしてあげたい。
「アリスさんは、今好きな人いますか?」
私はもう一度聞いてみた。
結局待っててくれと言っても、相手にもう好きな人がいたらどうにもならない。
まあ、その時は奪うまでですよ。
ね、咲夜さん!
「……いるわ」
「いるんですか」
「いるわよ」
「いちゃうんですか」
「いたらダメなのかしら」
「いるくらいでダメだなんて言いませんよ」
「いるだけで付き合ってはいないけど」
「いるんですね」
「いるんです」
咲夜さん。
これ以上は待っていられませんよ!
相手に好きな人がいる以上、貴方のそのネガティブな考えではアリスさんを振り向かせることなんて出来ません!
「ちなみに、相手の方のお名前とか聞いてもよろしいでしょうか?」
「……それは、ちょっと」
「お願いします!」
「なんで美鈴がそんなに知りたがるのよ?」
「いいじゃないですか」
「……じゃあ、ヒントなら教えてあげるわ」
「ヒントですか?」
「ええ。それで当ててみて」
「わかりました」
ヒントか。
私こういうの結構苦手なんだよな。
まあ、これで分からなかったら咲夜さんに言って好きな人割り出せばいいや。
「えっとね。背は私より少し高くて、スラっとした手足が綺麗で、いつも気が利いて、お茶とお菓子が美味しくて、瀟洒で、メイドで、……あっ、」
「……それ、ほとんど答えですよね?」
「ち、違うのよ!」
「違うんですか?」
「…違わないけど」
「なら答え言ってもいいですか?」
「……どうぞ」
「それって咲夜さんですよね?」
「そうよ! 悪い?」
「悪くないですよ」
本人はずっと隠しておきたかったのだろう。
でも、自分で墓穴掘ってこの逆切れモード。
どうしたもんか。
「これ咲夜には内緒だからね!」
「わかってますよ」
「まだ誰にも言ってないんだから!」
「でしょうね」
「美鈴、これから私に協力しなさい!」
「協力、ですか?」
「そうよ! 咲夜とのこと、貴方にも協力してもらからね!」
「あはは、勘弁してくださいよ~」
「笑いごとじゃないの!」
笑いごとじゃない。
恋愛は、付き合ったり、振られたりして、それで自分がそのことについて納得出来た時に、初めてそれを笑い話に変えることができる。
いつだって真剣なんだから。
私だってきっといつかそんな日が来ることを願っている。
「アリスさん」
「…なに?」
「頑張ってくださいね」
「…うん」
「それじゃあ私は仕事に戻ります」
「…分かってるでしょうね?」
「咲夜さんのことですか? その件については辞退させてもらいますよ」
「な、なんでっ!?」
「笑いごとじゃないなら、自分でなんとか出来ますよね?」
私はにっこりと笑ってそう言った。
我ながら少し意地悪な感じだったかもしれない。
でも、両想いならべつにいいですよね?
「応援してますよ」
「…うん」
「上手くいかなかった時くらいは、相談に乗ります」
「ありがと」
「それでは、失礼します」
私は咲夜さんにこの事を伝えるために少し早足で図書館を出た。
さて、いったいどこにいるのやら。
いろいろ探しまわって最終的に着いた場所は、咲夜さんの部屋だった。
ノックをすると中から「どうぞ」と声がしたのでドアを開けた。
そこにはベッドに倒れこんでいる咲夜さんがいた。
「お疲れ様。どうだった?」
「とりあえず体起こしてくださいよ」
「…うん」
ちゃんと頭の中脳味噌詰まってるのかな、この人。
ずいぶんと気力がないような気がするんですけど…。
「ごほん! えー、咲夜さん? 良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたいですか?」
「良いニュースだけ」
「それはナシですよ」
「……じゃあ悪いニュースから」
「アリスさん、どうやら好きな人がいるみたいですよ」
「……本当に?」
「はい。ちゃんと確かめましたから」
「そう、なんだ…」
「良いニュース、聞きますか?」
「……ちょっと待って、頭の中整理するから」
結構きてるんだろうな。
心ここにあらずって感じですし。
「良いニュースってなに?」
「えっとですね。咲夜さん、頑張ればその相手からアリスさんを奪えるかもしれませんよ?」
「えっ?」
「今の咲夜さんの頑張り次第ですけどね」
「でも、奪うだなんて…」
「恋は戦争ですよ」
「……そんなことしてアリスに嫌われないかしら?」
「大丈夫ですよ! 私が保証します」
「…じゃあ、頑張ろうかな」
「はい! 応援してますよ」
「うん。ありがとっ」
咲夜さん、笑ってくれた。
その笑顔があればきっと大丈夫ですよ。
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美鈴から聞いた。
アリスには好きな人がいるって。
でも、私の頑張り次第でアリスは私に振り向くかもしれないって。
ほんのちょっとだけ、勇気が出た気がした。
両想いであることは伏せつつ嘘はついてない感じのセリフだったら
上手く落ちてたんですけど、にやりと出来たんですが
これだとちょっと微妙ですね。
もっと咲夜さんの頑張るとこを見たかったけど、面白かった。
お初ということですので、今後徐々に長く、肉付けをしていけば良いと思いますよ。
次回作に期待しています。
ただ、その魅せ方が少しわかりづらかったのがおしいところでした。
咲夜やアリスが互いを好きになる具体的なエピソードなどを描写すれば、より自然に誘引できますし、それぞれの心情描写に意識を向けてみれば、さらに甘酸っぱい物語へ昇華させることができると思います。
恐らく、セリフと地の文をきっちりと分けすぎているのかもしれません。
それと、言語の選択ですね。
例えば……
私は咲夜さんにこの事を伝えるために少し早足で図書館を出た。
さて、いったいどこにいるのやら。
いろいろ探しまわって最終的に着いた場所は、咲夜さんの部屋だった。
ノックをすると中から「どうぞ」と声がしたのでドアを開けた。
そこにはベッドに倒れこんでいる咲夜さんがいた。
「お疲れ様。どうだった?」
「とりあえず体起こしてくださいよ」
「…うん」
ちゃんと頭の中脳味噌詰まってるのかな、この人。
ずいぶんと気力がないような気がするんですけど…。
「ごほん! えー、咲夜さん? 良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたいですか?」
「良いニュースだけ」
「それはナシですよ」
「……じゃあ悪いニュースから」
「アリスさん、どうやら好きな人がいるみたいですよ」
「……本当に?」
「はい。ちゃんと確かめましたから」
「そう、なんだ…」
「良いニュース、聞きますか?」
「……ちょっと待って、頭の中整理するから」
結構きてるんだろうな。
心ここにあらずって感じですし。
この部分を心情描写交え、セリフと地の文をバランスよくさせてみようと思います。
咲夜さんにこの事を伝えるため、私は足早に図書館を後にした。
とはいえ、咲夜さんの仕事は多岐にわたる。
咲夜さんがどこで何をしているかなんて、日がな門前で居眠り、もとい、警備を任されている身には皆目見当もつかなかった。
仕方がなく、私は広い広い紅魔館をしらみつぶしに歩きまわることにした。
(咲夜さん、どんな顔するかなぁ)
歩いている間、考える。
あんなに乙女乙女している咲夜さん、今まで見たことがない。
嬉しい半面、少し寂しい気もする。
だけど、私は咲夜さんを応援する。
私だって、咲夜さんのことが大好きだから。
(なんてね)
そうこうしているうちに、あらかた紅魔館を回り終えてしまった。
残るは咲夜さんの自室のみ。私は咲夜さんの部屋へ向かった。
目的地に着き、想像する。
(今頃悶々としてるんだろうなぁ)
思わず笑ってしまう。だって、そんな咲夜さん、可愛いんだもん。
コンコン、と扉をノックすると「どうぞぉ……」とずいぶん気のない返事が返ってきた。
「失礼しますね」
見ると、咲夜さんはベッドに倒れ込んでいた。
(うわぁ)
「……どうだった?」
「とりあえず、体起こしましょうか」
「うん……」
パンク寸前だなぁ。
ごほん、と咳払いをし、話を切り出した。
「良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたいですか?」
悪いニュースという単語に、咲夜さんの眉がぴくりと反応する。
「……良いニュースだけ」
「それはナシですよ」
「……じゃあ悪いニュースから」
少しためて、告げる。
「……アリスさん、どうやら好きな人がいるみたいですよ」
それを聞いた咲夜さんの顔は、捨てられた子猫のようだった。
「……ほ、本当なの?」
「はい。ちゃんと確かめましたから」
「そう、なんだ……」
がっくりと肩を落とす咲夜さん。
「良いニュース、聞きますか?」
「……いい、もうどんな良いニュースでも挽回なんてできない」
虚ろな表情で咲夜さんは言った。
いけない、意地悪しすぎたかもしれない。
と、ここまで書いておいてなんですが、作戦決行後に咲夜が無気力というのは流れ的に不自然です。
そわそわしていたりするのが自然だと思います。
そして、上記の例は、飽くまでも私ならこうする、という自分本位且つ主観的意見でしかありませんので、鵜呑みにはせずに、ご参考程度に留めておいてください。
それどころか、かなり上から目線な意見に感じることと思います。申し訳ありません。
不快でしたら、すぐに削除いたしますので、その旨をお伝えください。
それでは、少しでも作者様の肥やしになれることを祈りつつ、失礼いたします。
両想いであることを知らないまま悶々としている二人を見てニヤつきたい者としては
決着をあえて書かないのもまた心地よく感じました。
この先の展開は脳内でしっかり補正させていただきますw
それにしてもこの美鈴……できる……
第二幕が始まるまであとどれくらいでしょうか?