むき出しのコンクリートに囲まれた薄暗い部屋、そこには一つの生き物がいた。
その部屋には床に固定されているごく普通の回転椅子が一つだけ、他には何も置いていない不自然な空間。その椅
子には普通の人が見たらその存在するものが普通の人間では無いと気付くことすら出来ないほどに姿形や雰囲気が
人間と酷似している生き物が座っている。
生き物は人間のそれとは全く異質な雰囲気を放ち、何も無いはずの虚空に話しかけていた。
「ふぅ・・・やっと貴女から会いに来てくれたんですね・・・もう待ちくたびれてしまいましたよ?」
(貴方が来るようにしむけたんでしょう?)
「ふふふ、だって仕方がないじゃあありませんか? あんな別れ方をして。あれから会えなかったのがすごく辛か
ったんですよ? そう、すごく、すごおぉぉぉぉくねぇ」
生き物が肩を揺らしながら不気味に笑う。
(それで貴方?いったい何が目的なのかしら?)
「何をですって?そんなの決まっていますよ! 貴女の事をこの目で見つめ、貴女の体をこの体で堪能し、貴女の
魂をこの魂で感じる!!! それ以外に目的なんてあるわけないじゃあないですか?
(ああ寒気がするわ。でも、貴方如きに幻想郷を掌握出来るとでも思っているの?)
「ええ出来ますとも! しっかりとした手順を取ればねぇ? それともあれですか? あの大戦のときから幾分戦
力が増したと? いいやぁぁぁ? ちがいますねぇぇぇ??? むしろ今のほうが戦力は落ちてるはずだと思います
が、ちがいますかねぇ?」
椅子から跳ねるように立ち、目を見開き頭の歯車が狂ったかのような奇怪な動作をしながら捲し立てる。
(さぁ?今は前と違って少数精鋭って感じで中々なのだけれどね)
「まぁそれはそれで面白そうなモノですがねぇ。あぁ近々そちらに行くことがかないそうですよ? あれが今完成
間近なんですよ~!! ・・・・・ま、完成しても私が行くことはまだまだ叶いそうもないんですが」
興奮していた様子が一気に冷めたように、固定された回転椅子にどかっと座った。
(それは結構な事だわ、貴女がこっちに来て良い事なんてありはしないわよ。百害あって一理なしね)
「そこまでいうこと無いでしょうに。まぁ確かにそちらには害しかないでしょうがね。あぁ、そうだ。気付いてま
すか? 貴女の魂が・・・・今この場に固定されつつある事が」
(なっ!!!!?????くっ・・・・・あああぁあっあぐぅぅぅぅぅぅ!!!)
「クククク、アッハッハッハッハッいーっひっひっひいっひひっ!!! はぁ、はぁ、はぁ……にしても貴女……ひ
どい悲鳴ですねぇ…しかし! 私はそれすらも掌握したいのです! そして今!!! 貴女の半分、魂が私の手の中
にはいった!! これからです・・・これから私の計画が始動するのです!」
強烈な高笑いが奇声に変わり、その後恍惚とした表情を浮かべながら椅子から立ち上がり扉に向かって歩き出し
た。
(あ・・・なた・・・っくぅ・・・・・・・・いったい・・)
「ああそうだ、一応向こうの様子が見えるように映像だけでも見せてあげますよ~。まぁあれが向こうに行かない
と意味無いんですがねぇ。それじゃあまたお会いしましょう? ・・・・・さん」
冷えた微笑を口元に浮かべ、生き物が薄暗い部屋から軽い足取りで出ていき、物理的に誰もいなくなった薄暗い部
屋は完全な闇になった。
「なぁ、ねぇちゃん? 俺ら今財布の中がまるで北極大陸のように寒くてこのままじゃフカスもんを買うことも出
来ねぇんダよ」
「そうそう、世界で一番寒いんだよ。だから俺らにお金を恵んでくれないかなぁ?」
「いや…でも喫煙はいけないと思いまっ」
「ああっ!? ごちゃごちゃうっせぇなぁ! とっとと金出せっつってんのがわかんねぇのかこの糞アマがぁっ!!」
夏の輝かしい日差しに包まれた朝の路地裏に怒声が響く。
学校にある裏路地で髪を染めた三人の男子がおとなしそうな一人の女子を囲んでカツアゲをしていた。
(あ? なんだ? カツアゲか? しゃーねー、センコー呼んでくっか)
偶然カツアゲの現場に通りかかってしまった目つきの悪い目にかかるようにのばした無造作な黒髪の少年『冴島
輝』(さえじま ひかる)がフルーツ牛乳を飲みながらその場面を見つけ職員室を目指そうと思い歩き出すが、
「ぁ・・・た、助けてくださいっ! お願いします!!」
誰かが見ていたのに気付いた少女が視線の先に向かって叫んだ。
「ぶぼぉっ!?」(ま、まじかよっ!!?)
予想外の事態に飲んでいたフルーツ牛乳を思い切りふき出した。
「なんなんだてめぇは? 正義の味方きどりですか~?」
「やんのかコラ?」
「あ~? てめーも金おいてけや」
不良三人組が輝に向かって啖呵をきりながら向かってきた。
「いや、俺はただ通りかかっただけなんで…」
「うっせぇなぁ!いいから財布おいてけっつってんだよ!」
(はぁ~、めんどくせぇなぁ。絡まれんの今月何回目だよ……)
「あ~残念だけど…俺、あんた達に差し出す金なんて持ち合わせてないんですよ。つーかあってもやる気ないし」
「あぁん?」
「ナメてんのかオイ?」
「この状況わかって言ってんのかぁお前?」
「あ~そうだ。ひとつ言ってもいいですか?」
何か思い出したように輝が声を上げた。
「いまさら許してくれとか言うんじゃねぇだろうなぁ?」
「いえいえ、そんなことないっすよ~。ただ北極は大陸じゃないし、しかも世界でいちばん寒いのは南極ですよっ
ていうのとあんたはいまどきタバコなんか吸ってカッコいいとでもおもってる?ようするにお前ら馬鹿だろ?って
言いたかったんだよこの小学生以下の屑が」
「んだとゴルァア!!」
「ぶっ殺すぞテメェ!」
「てめぇ……覚悟は出来てんだろうなぁ?」
さわやかな笑顔で淡々と馬鹿にした輝に不良三人組がブチ切れながら殴りかかった。
「おらぁっ!! ぐぶっ!?」
「おせぇなぁ!そんな実力でカツアゲなんてしてんじゃねーよっ」
不良の一人が放った大ぶりの右パンチをかがんで避け、カウンターで相手の脇腹に右フックを叩きこみ沈める。
「てめぇよくも!」
「よっ、ほっ、あぶねぇなぁ」
倒れた仲間を見て更にキレた不良の一人が回し蹴りを二発輝に放つがこれも後ろにステップして避ける。
「くそがぁっ!」
「っは!甘すぎんだよ!!」
「ぎがっ」
うしろに回り込んだ一人が輝の顔を殴ろうとするがそれを拳の風切り音で察知し、上半身を後ろに傾け、その勢
いを利用して相手のあごに裏拳を叩きこんでこれも沈める。
「ふん……さてと…っと、あとはお前だけだが?」
「ちぃっ…く、くそったれぇ!」
やけくそ気味に最後の一人が向かってきた。
「だから動きがおせぇんだよ!」
「がっ!? ごぶっ!」
右ストレートを頭を横にずらして避け、最後のカウンターを顔面に叩きこんだ。
「ふぅ……これで終わりか…で、大丈夫か?」
「あ……は、はいっ!あああ、ありがとうございますっ」
少女が頭を90度以上下げ、逃げるように走り去って行った。
「あ…また逃げられたよ………」
閑散とした裏路地に一人残された輝がポツリと呟いた。
「ふはぁ~…」
喧嘩のあと、授業を受けるために自分の教室まで戻ってきたが助けたはずの女生徒に脅えられて逃げられた事にシ
ョックを受け自分の席に座るなり盛大な溜息をついた。
しかし、そんな冴島の様子を気にかけ、誰かが声をかけに来るようすはない。
「うわ~、冴島君また喧嘩してきたんだ・・・こわ」
輝の顔についた青あざを見て一人の女子が言った。
「ね~、ていうかさぁ。あの凶悪な顔で喧嘩もするってマジヤクザ予備軍じゃね?」
それに同意をするようにもう一人のギャルっぽい女子が濃いメイクをさらに弄りながら言った。
(それじゃぁテメーはヤマンバ予備軍だこのヤロー)
額に軽く青筋を作りながら心のなかで輝が呟いた。
「ホント怖いわよね~…噂じゃ一回の喧嘩で必ず一人は骨を折るらしいよ?」
「あたしもこの前彼の噂聞いたんだけど、わざわざ倒れてる奴の目の前でコンクリを素手で握りつぶして、その握
力で両手両足握りつぶした事もあるらしいよ?」
もちろん嘘である。
しかし、もともと彼女たちの言うほど冴島の人相は悪いわけではない。むしろ、顔は悪くない方だ。ただ目つきの
悪い目を隠そうとしている前髪からちらちら見える鋭い眼光のせいで小学生が見たら泣くことも出来ずに失禁をし
てしまうようなレベルの凶悪さが醸し出ているのだ。
そして、なぜか今日のような喧嘩に巻き込まれることが多く、そのたびに不良を撃退していたためか事実に尾ひれ
がつき最早巻き込まれたという事実さえも消え去ってしまい、凶悪な人相に凶悪という人柄が危険物質同士が混ざ
り合うように加味されて噂だけが独り歩きをしている始末であった。
(女子よ・・・俺は人の骨を折った事など一度たりともないぞ?ましてコンクリを素手で握りつぶすなんて男子高
校生には不可能だ!!)
「おい・・・その噂、どこできいた?」
ここは一度訂正する必要があると思った冴島が立ち上がりながら声をかけるが。
「っ!?こっここここれは廊下をあああるっ歩いていたらみみみっ耳に入ってきただけなんでしっ知らないです
ぅ!!」
「はっはははははいいいいぃぃあたしも同じなんですぅぅおねがいだから握りつぶさないでくださいいいぃぃ!!」
輝のドスの効いてしまった声を聞いてびくっとそのままの姿勢で30cm程飛び上がりものすごい慌てようで教室か
ら二人の女子が出て行った。
「あ…………また逃げられた…」
そうとうなショックをうけて席に座るが前の席の男子生徒と目が合った時に、小さな悲鳴を上げて前を向かれて
しまったので放課後になるまでずっとうつむいて授業を受けていた。
〈放課後〉
「ぐぁ~~~!! ふぅ~終わった終わった~」
盛大な伸びをしながらたまった疲れと一緒に息を吐きだした。
「さて、と…帰るかな~、っとメールだ…」
携帯電話の画面に《ちょっと研究室に忘れ物したから持って帰って来てくれないか?》と冴島の兄『冴島当夜』
(さえじま とうや)から連絡が来ていた。
(まぁ、用事もないし散歩がてら行ってやってもいいかな)
「了解」と返信をしてから研究棟にまで足を運ぶことにした。
この九帖学園(くじょうがくえん)は長野の山奥を切り開いたまま使われなかった土地を利用しているため面積が
下手な大学よりも広いという特徴がある。更には高校生が約3千人、大学生が4千人、教職員が400人、そして
全寮制という超マンモス校なのである。
冴島当夜は現在大学3年生であり、若くして次元工学の権威であり自分の研究室を持っている。
ちなみに冴島輝は高校2年生である。
「思ったより時間がかかっちまったな…」
出発から40分ほどかかってようやく到着した研究室に兄から渡されているカードキーを差し込んで更に指紋認証
までして扉が開いたのを確認した。
「相変わらず厳重なことで…」
そのまま奥行きが10m程の無味乾燥な電子機器しか置いてない部屋の中に入り奥に進むと兄のデスクの上にあっ
た弁当箱をみて溜息をついた。
「忘れ物って弁当箱かよ…、・・・・? これ…なんだ?」
その弁当箱に手を伸ばしたときに目に入ったものがあった、いや…目に入ってしまったのだ。
「こいつは一体…亀裂から光が……」
一辺が20cm程の立方体にルービックキューブのマスの線をなぞるように謎の箱から6色の光が溢れだしていた。
それに触れる事によって自分自身の運命が大きく変わってしまう事にも気付けずに冴島輝はそれに手を伸ばしてし
まう。
「…………」
一つ一つの面に色を合わせるように、パズルを回していくと光が段々強くなり最後の面を解き終わりかけるとき
には光がうす暗い部屋を5色の色で満たしていた。
「これで完成・・・か、ってうわぁ!?」
全ての面をそろえ解き終わると同時に膨大な6色の光が衝撃のない爆発のように広がった。
欠片一個一個が鮮やかな光をまき散らしながら分裂する。分裂した後も強烈な輝きを放ちながら数多の欠片は輝
の周囲を肉眼では到底捉えられないスピードで回った。
その光景は外から見た者がいれば6色の輝きを放つ大きな筒のように見えた事だろう。そして数秒間の間回転す
る速度を上げた後回転を止め、光を発しなくなった5秒後には輝の姿は無く、2cm程度の立方体が床に散らばっ
ているだけだった。
それは偶然だったのだろうか、或るは必然だったのだろうか、それが分かるものはいるのだろうか?それすらも
分からない・・・ただ一つだけはっきりと分かる事はただ一つ。
それは今、この瞬間に二つの世界の運命が大きく揺らぎ始めたということだ。
人口的ではなく爽やかな自然の香り、堅い床とも違う柔らかだが湿った土の感触。
(ここは・・・兄貴の研究室じゃない?)
頭蓋骨を内側から直接ハンマーで叩かれるような頭痛に顔をしかめながら目をうっすらと開ける。
「竹林? どこだここは?」
「たしか学園の周りは雑木林だけだったから少なくともここは学園近辺ではない・・のか? しかも圏外・・・
マジでどこだここ? ・・・うん、少し頭の整理をしよう」
(俺はさっき兄貴の研究所に忘れ物を取りに行かされて・・・たしかそんときに弁当箱の隣にあったルービックキ
ューブもどきを解いた、そしたらいきなりパーってなってからの記憶がない・・・・・・・・)
「・・・・・・・・・さっぱりわからん?」
移動しなければなにも変わらないと思い輝はあてもなく歩きだす。
「にしてもすっごい竹林だなぁ終わりが見えねーぞ」
驚きと共にあきれた調子で呟く。
その後も30分程歩くが何の変化もなくただただ竹同士のこすれるざわめきと小鳥のさえずりだけが聞こえるだ
けだった。
「マジで迷っちまったみてーだな・・・ていうか遭難の域になるんじゃねーのかこれ・・・ん?」
竹の陰に小さな人形のようなものが見え、動いてるように見えた。
「なんだこ、れどぇわお!?」
輝がそれを掴もうとしたところその人形のようなものがこちらに振り向き、拳大
のピンク色の光球を飛ばしてきたのである。
(わ~、羽のはえた妖精さんが見えるよ~? とうとう俺の頭が壊れたのかな?)
それはふよふよと浮き、魔法陣のようなものを展開していた。その姿は人形などではなく絵本にでてくる妖精に
近かった。
「ってなにこれぇーーーーーー!? いっぱいきたーーー!?」
その攻撃が合図だったかのように周りの竹の陰から羽のはえた妖精が十数匹飛び出し、輝に向けて大量の光球を
放ってきた。
「なにこれアツッ!!服焦げたァァ! うそっ死ぬってこれは!? やーめーてーくーれぇぇぇぇ!! 誰かぁぁぁぁ!!
たーすけてぇぇぇぇ!!」
そのまま全力ダッシュで竹林を駆け抜けるがわらわらと前に現れる光球を放つ謎の物体たちの攻撃の勢いが心な
しか増しているように見える。
「てゆーかこれなんのイジメ?? わたくし何も悪いことしてませんよ!? あっそういえばしてましたっ!! 学食の
アイスをおばちゃんのガードが甘いのをいいことに毎日のようにパクってましたーーー!!」
「学園に戻ったらちゃんと頭下げて全額払ますいから許してくださいぃぃぃ!! ってなぜか球の量とスピードが上
がったよ?? なんで? もしかして知らなかったのに勝手に暴露しちゃった!? 俺墓穴掘った? マジで? とり
あえず何でもしますから命だけは取らないでーーーー!!」
さらにスピードを上げ、陸上選手顔負けのスピードで竹林を走る。
「ぜひゅー!はひゅー、ふひゅー・・・・はぁ、はぁ・・・はぁ~も、もう限界
・・・ごほっごほ・・あ、あれ?球が来ない?」
力つきて地面に倒れ込むがどこからも光球は飛んでこなかった。
「逃げ切ったのか?は、はは・・・やった、生き残れ、たぜ・・・・」
いつのまにか攻撃が止んでいた事に安堵した輝だが
ドォォォォォォォン!!
大地を揺るがすほどの爆撃音のような轟音にそれはかき消された。
「っ!!??な、なんだ今の爆音は!??」
キュィーーーン・・・・ボォォォォォァァァン!!!
「な、なんだ・・・あれは・・・?」
強烈な光の束が輝の立っている場所から5m離れている空間を薙ぎ払い一瞬にして竹林から焦土に変わった。焼
け焦げた地面に一歩踏みだし無数の光と轟音が轟く空を仰ぎ見た。
「かぁぐぅやぁ~死~ね死ね、死ね!死ね!!死ね!!!死ね燃え散れぇ!!」
背中に灼熱の炎のように赤い翼と尾羽を持った銀髪の少女が無数の炎を360度全方位に向けて照射しながら叫
んだ。
「あら、まるで鶏のような五月蠅さね」
それに対して自分の身の丈以上はある長い黒髪の少女が手に持っている宝石が散りばめられた木の枝を振るい、
銀髪の少女に向けて速くはないが直径2mはあろだろう巨大な宝石を何十個も飛ばした。
そしてその炎と宝石が衝突し、爆発、破裂、飛散を繰り返しこの世のものとは
えない非現実的な幻想のような情景を映し出していた。
「〈神宝〉【ブリリアントドラゴンバレッタ】! 」
「〈蓬莱〉【凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-】!」
二人の少女がほぼ同時に叫ぶ。それと同時に黒髪の少女の周りには大小様々な宝石と自分の周囲に均等に虹色の
レーザーのような弾が展開された、一方銀髪の少女の周りには無数の炎の塊が規則正しく走り、黒髪の少女に向け
て巨大な鱗をイメージさせる炎の塊が3本のラインに直線的に何個も並び、炎の翼からは白い燃え盛る塊が何個も
射出されていた。
「そこの君!!!逃げて!!」
「え?うわぁ!!?」
切羽詰まったような緊迫した口調で呼びかけられ正気に戻った輝が上空を見ると無数の光線に無数の宝石と炎の
鱗に白い燃え盛る塊が衝突し、大爆発が起きた所だった。
「いますぐそこから離れて!!!」
少女の声が聞こえたのと目の前に流れてきた炎の塊と光線がぶつかって来たのが
同時だった。
(うそ・・・だろ?)
次の瞬間、輝の意識がホワイトアウトした。
「し・・・・・・・・・もし・・・・・じょ・・ぶ?」
「もーしもーし!大丈夫?目、覚めた?ほら、これ何本?自分の名前言える?」
目の前にいる少女が頭の上にある二本の耳を揺らしながら胸の前で指を3本立て聞いてきた。
「3本・・・冴島輝」
「よかった~、意識ははっきりしてるみたいだね。安心安心!」
(ここは・・・病院か?なぜ?俺はいったい・・・そうだ、あの流れ弾がこっち
に飛んできて!)
輝の知っている病室とは若干違いはあるが部屋のあちこちにあるカルテのようなものやメスなどの手術用具を見
て判断したようだ。
「ッ!!!」
慌てて自分の体を見るが学生服の代わりに手術衣のようなものが着せられている以外変わったところはない。
「俺、あの時たしか流れ弾を食らったはずじゃ・・・」
「そうだよ、あの時君が千切れた自分の腕と一緒に吹っ飛んだ時はホントびっくりしたよ」
苦笑いをしながら頭の上にある兎の耳のようなものをゆらしながらいった。
「腕と一緒に?って、ええっ!??」
慌てて自分の両腕を見直すが無くなってるはおろか繋いだ痕跡すらも残っていなかった。
「あ~別に大丈夫だよ、師匠に火傷と一緒に腕も繋いでもらったから」
「師匠?」
「うん師匠、でもみかけた時はほんとにびっくりしたな~、姫様と妹紅さんの弾幕ごっこをぼーっと見てる人間が
いるんだもん。ていうか、なんで逃げなかったの?」
頭の上にある二本の兎の耳をゆらしながら問い詰めるように聞いた。
「いや~ちょっと見とれてて、あと弾幕ごっこって何?」
「え?弾幕ごっこを知らないの?」
頭の上にある二本の兎の耳を揺らしながら奇妙なものでも見たような顔をして聞き返してきた。
(やっぱりあの頭についてるのってバニー服についてる様なウサギの耳だよな?? コスプレか? いやでも飾り物
にしては本物みたいにぴょこぴょこ動いてるんだよなぁ・・・さわってみてぇ・・・・・・・・・・。)
「うどんげ、多分その子は噂に聞く外来人よ。服とか持ち物はどれも幻想卿の物ではないようだし弾幕ごっこも知
らないようだしね」
スタイルのいい長身にチャイナ服をナース服に改造したようなものを着た銀の長髪を後ろで三つ編みにした美人
の女性が紙袋を抱えて入ってきた。
「え!? この人が外来人!? でも人間とかわりませんよ?」
(やっぱ気になるなあれ・・・)
輝は自分が外来人と呼ばれている間うさ耳をずっと凝視している。
「外来人は外の世界の人間だもの、そりゃ変わらないわよ。さて、どう?どこか痛いとか違和感のあるところは無
い?特に右腕とか」
女性が紙束を手に持ちそれを眺めたあと薬を調合しながら聞いてきた。
「右腕? いえ、特に異常はないですね・・・他にはすこしだるい感じがするだけです。というかホントにとれた
んですかこれ?」
輝が右腕を指差して言った。
「ええ本当よ?でも切断面が焼け焦げてグチャグチャになってたからしっかりと繋がるか微妙な所だったの…で
も、しっかり繋がったみたいで良かったわ。さ、これを飲んでちょうだい。あ、まだ自己紹介してなかったわね、
私はこの永遠亭の院長の『八意永琳』(やごころ えいりん)、そしてこっちが助手であり弟子でもある『鈴仙・
優曇華院・イナバ』(れいせん・うどんげいん・いなば)。あとだるいのは手術で体力が失われてるからよ」
永琳が安心したような穏やかな表情を浮かべ粉薬とぬるま湯を輝に渡したあとに自己紹介をした。
「あ、冴島輝です」
(この薬苦っ!?)
「あの手術8時間はかかりましたからね、そりゃだるさも残りますよ」
兎の耳を揺らしながら鈴仙が苦笑いしながら答えた。
(・・・・・・・・・・・さわりてぇ)
「ありがとうございました、俺は一体どのくらい眠っていたんですか?」
あまりの薬の苦みに涙を滲ませる。
「3日よ」
「3日!?そんなに眠ってたんですか?」
「いやいや回復速度は結構速いほうだと思いますよ~」
「そんなもんですか・・・あっ、お礼を言うのを忘れてました!助けて頂いてホントにありがとうございました。
えっと、なんか助けてもらったのにすっごくいいにくいんですけど・・・実は俺あんまりっていうか殆どお金もっ
てないんですけどどうすればいいですか?」
「それについては大丈夫よ、こっちも慈善事業みたいなものだし安心して。」
「いやでも・・・」
「いいのよ。気にしてるんならこっちも珍しい外来人の体を調べさせてもらったってことでお相子よ。だから貸し
借り無しって事で安心して」
それを安心と捉えて良いのかいまいち分からなかった輝は「はぁ・・・分かりました」
と、答えた。
「でも外来人を治療するのは本当に初めてだったからもしかしたら軽い副作用みたいなのがでるかもしれないの、
だからなにかあったら言いに来てちょうだい。ああ、でも心配しないで、副作用っていっても命に関わるものじゃ
ないはずだから」
「はい、分かりました。あと一つ聞きたい事があるんですけど」
(健全な男子高校生ならばこれだけは確認せねばなるまい・・・)
了承した後真剣な顔で輝が質問をする。
「なに?」
永琳が輝の様子が違うことに気が付き、カルテから顔を上げ輝を見る。
「彼女、鈴仙さんの・・・・」
唾を飲み込み、息を整えるためにいったん言葉を切る。
「私?」
なんだろう?と鈴仙が頭の上にはてなマークを浮かべる。
「頭の上にある耳は本物なんですか!!?」
意を決したように目が覚めてから胸の中で渦巻いていた疑問をぶつけた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
輝の質問に拍子抜けしたのか二人は数秒固まった。
「えっと・・・」
返事のないのにやり場をなくした輝が呟いた直後
「ぷっ・・・・・・・・あっはっはっはっはっは!ひーひっーひっー!!み、みみ
、耳って!あーもうむりっ!笑いが止まらないわ!!」
「ちょっ、師匠!!そんなに笑わないで下さいよ!ぷぷっ、確かに私も予想外すぎて、くくっや、ヤバいですけど
流石に笑いすぎですよ~~」
輝が真剣な表情で聞いてきた事に拍子抜けし、笑いが止まらなくなった二人を見て呆然とした。
「あの~、それで・・・どうなんですか?」
おそるおそるもう一度訪ねてみる。
「あー笑った笑った~。こんなに笑ったのは久しぶりだわ、それで何?この娘の耳が本物ですかって?本物よ、
ほ・ん・も・の。なに?触ってみたいの?そうねぇ・・・一回だけなら許してあげるわ」
永琳が小さくウインクしながら輝に言った。
「え~~~!?し、師匠~!」
「まじっすか!!?」
鈴仙が抗議の声をあげるがその声を打ち消すかの如く輝が歓喜の声を叫んだ。
「そ、それじゃあ・・・」
輝が喉をごくりと鳴らしながらふわふわとした耳に手を伸ばした。
「ふにゃあっ!あっ、ふぅ~はにゅっ!ふひゃぁ~~~・・・」
耳を触られた鈴仙が一瞬体をびくっとふるわせたが輝が頭を優しく撫でるように触っていくうちに目を気持ちよ
さそうに細めて身体の力が抜けていった。
「どう・・・?うどんげの耳の触り心地は?」
「こ、これは・・・!」
(な、なんだこれは!?まるで・・・そう!ミラクル!世界にあるどんな毛皮にも勝る、いや!比較にもならない
この触り心地、そしてほのかに温かな耳のふにふに感が合わさると奇跡としか言いようがない極上の一品!)
「永琳さん・・・彼女は、鈴仙さんは奇跡です・・・」
鈴仙の耳から手を離し何かを悟ったような表情を浮かべ、輝の頬に一筋の涙が零れていた。
「あ、貴方がまさかそこまでの境地に至るとは思わなかったわ・・・やるわね」
ライバルを見つけたような表情を浮かべながら永琳は呟いた。
「え?奇跡?なにがですか?」
「しかもナース候補の彼女がこの服装に兎耳・・・この破壊力抜群のコンビネーションは貴女の趣向ですか?」
輝がYシャツにブレザー(ネクタイつき)に膝上10cmという学生服のような服装を指差して聞いた。
「いいえ、これはうどんげが自ら着ている服よ。すごいでしょ?」
「なん、だと!?ではこれは天然だと、天然だと言うのですか!!?」
テンションがかなり上がった調子で永琳に詰め寄った。
「今度は天然!?私のどこが奇跡で天然なんですか!??ねぇ!!」
「ええ、残念ながら彼女はしっかりしてはいるのだけれど相当な天然なのよ・・・」
永琳が半分あきれた口調でいった。
「それは、そのギャップこそが・・・み・・・ミラクゥゥゥゥル!!ぎゃぷっ!??」
半ギレ状態になった鈴仙が輝の頭に渾身の威力で分厚い医療本を振り下ろし、輝を気絶させた。
私自身が未熟者ですが、以下に気付いた点を挙げてみます。
・東方キャラの名前の読み仮名は必要無いかと
・ネット上の文章なので意見は様々だが、「・・・」ではなく「……」(三点リーダを二つ)を使うと批判は受けない
・「!」や「?」を無闇に(または連ねて)使用すると、セリフが安っぽく見える(私だけかも)
2さん>
改善点を挙げて下さりありがとうございます!
東方キャラの名前の読み仮名は東方を知らない友人に読ませた時に付け足したままでした(汗
申し訳ありません
三点リーダーですね、なるほど。
一応バトル物なんで激しくしたいという思いだったんでしたが裏目に出てしまったようですね(泣
様々な意見ありがとうございました
この意見を活かし、もっと力量を上げていきたい思います!
これからも東方幻闘現を見かけた時に気が向いたらでよろしいので立ち寄って頂けると作者としてはとても嬉しいです^^
「『東方○○○ プロローグ』みたいなのじゃなけりゃ読むよ」
ドツボですね。
>駄作中の駄作
>処女作のくせに連載物を手掛けるという愚行!!
あえて聞こう。
自分でわかっててなぜやった?
自分なら大丈夫とでも思った?
危ういぞ、実に危うい。
>なんとか成長していきたい!
成長したいなら連載で始めるべきではなかった。
連載は必然的にだんだんと読者が減っていく。
しかも色々なことを自由に試せないし、方向修正がしづらいという欠点がある。
基本投げっぱなせるので、話に落ちをつける練習もやりづらい。
成長したいなら短編から始めるべき。
さて、ストーリーですが。
こういう形でオリキャラを使ってしまったという非常に痛い一点を前提として、可もなく不可もなくといったところでしょうか。
これから始まるといった感じで、今後次第といったところでしょう。
学園の説明が必要だったのかどうかも今後次第なんでしょうかね。
キャラクター。
冒頭の人がとてもキモイですね。
狙ったこととは思いますが、あそこで読むのを挫折した人も多いのではないかと思います。
あんなの幻想郷に入れたくないですもん。当たり前の話ですよね。
主人公の輝くん。
イマイチ彼のことが理解できません。まぁテンションの高さについていけないのは個人的な問題として。
東方キャラと違って、前提としての共通理解がないので、もっと一人称寄りに心情描写していったほうがわかりやすいのではないかと。
独り言激しすぎだしね、彼。
もう少しそれを地の文の描写にまわしてあげてもいいと思う。
地の文。
がんばって書こうという意気込みはみてとれます。
少なくともこれだけの長さを書いているのですから、たまにいるちょろっと書いて『続きをお楽しみに!』とか言ってる『東方○○○ プロローグ』よりははるかに好印象です。
ただ、力のいれどころが偏っている上に、描写が少々くどい。
冒頭の
>その椅子には普通の人が見たらその存在するものが普通の人間では無いと気付くことすら出来ないほどに姿形や雰囲気が人間と酷似している生き物が座っている。
なんかは、区切りもないし似たような言葉が並ぶしややこしいし、何を言っているか理解するのにしばらく時間を要しました。
『そこに座っているものは普通の人が見れば間違いなく人間と見える。しかし、それは言うなれば限りなく人間に酷似しているだけの何かであった』
とかちょっと整理すればわかりやすくなるんじゃないかなぁと。
例が結局わかりづらかったらゴメン。まぁ一行で語りつくそうとせずに文を分けるだけでもだいぶ違ってくると思う。
あとは妹紅と輝夜の弾幕戦の描写もくどくて説明的で、戦闘の勢いが殺されてしまっているなと思いました。
テンポを意識して地の文を考えてみればよいのではないかと。
また、その労力を普通の会話パートの心情描写にも入れてあげてくだされ。
>キュィーーーン・・・・ボォォォォォァァァン!!!
みたいな擬音は多用しちゃダメですよ?
それをいかに描写するかがSSの醍醐味なんですから。
行間あけは別に凝らなくてもいいのではないかと。
逆に読みにくい気もします。
会話は会話で纏めて、行間をあけて地の文を書いていく、なんて手法もありますし、行間タグなんていうのもあります。
他の人がどういう書き方をしているのかを、内容も含めて色々読んでみるとよいでしょう。
うーん、これくらいですかね?
では最後に。
この連載を諦めて短編でチャレンジしなおしても、少なくとも私は怒ったりしませんので。
だって下地がマゾすぎるもん。この連載。
・一つ目について
大丈夫などとは微塵も思っていませんとも
ただ「人は過酷な状況にあれば必ず成長する」
という言葉を信じているだけです
・ストーリーについて
ここは、まだ触れる事はできません
・キモい人について
彼についてもまだ触れる事はできないんです
・輝君の性格について
彼の性格、心情描写ですか……
確かにわかりにくいですね(汗
わかりやすいように地の文に力を入れていけるように心がけます
・描写がくどい件について
これは読者の皆様のアドバイスや他のSS作家様や一般小説家様の方々を参考にさせてもらい力量向上を努めます(汗
・擬音について
もっともな意見ですね(泣
これからは気を付けます
・行間あけについて
これは本当にどうすればいいのか判りづらかったので試しに全部あけてみたんですが見にくかったですか(汗
そうですね
他のSS作家様を参考にさせて頂きます
・最後について
作者の気力が続く限り続けて行こうと思うので見かけた時は寄ってやって下さい^^;
申し訳ありませんが、この言葉は否定させていただきます。
『成長をまたずの挫折』という可能性が色濃いからこその『過酷な状況』なわけですし、『必ず』というのは明らかに矛盾しています。(『過酷な状況を乗り越えられれば必ず』の間違いではないですか?)
一番『必ず』に近い方法は、まず普通のことができるようになってから、徐々にレベルを上げていく事です。
メルヘンやファンタジーじゃないんですから、そんなスポ根みたいな理論で上手くなるわけないじゃないですか。(しかもSSという、気合や根性でなんとかなるわけではない世界で)
もしあなたが何かの漫画の主人公だというのならば、この反論は取り下げさせていただきますが。
>ここは、まだ触れる事はできません
作者サイドとしては当たり前の言葉ですね。
そうして続きを隠して驚かせよう、というのは実に当たり前です。
ただ、連載、しかもオリキャラものという状況において、『続きが読みたい!』『続きが気になる!』ではなく、『今後次第』という感想を抱かれる時点で、連載としてのつかみに失敗しているのだということを認識していてください。
この第一話の印象としては、それなりに気合を入れて書かれているものの、『幻想入りもののよくあるパターン』でしかありませんから。
何か読者を唸らせる一ひねりがあればまた違ってくるのでしょうが……。
私もまた読ませていただくかはわからないのですが、まぁ気が向いたらまたお会いしましょう。
それでは。
悪くないと思いますよ、6さん曰く。
でも、やっぱりあれですね・・・
もっとひねりがほしいかも・・・
あと、前の人も言ってたりしてますけど
ある程度文才がつくまでは
句読点で短く文を区切った方がいいかもですねぇ
まぁ、次回以降に期待。っていうことで!
ネット環境っていう匿名性の高いところでの
あまりにもしつこい批評に負けないで頑張ってくださいね。
あ、でもないがしろにしちゃダメですよ?(笑)
全部当たってますからね
2さんだ。
ただなんかの映画でこんなセリフがあったんで試しに使ってみただけですよ
その位見逃してくれませんかね?(泣(泣
まぁこれでも一つの作品なのですからいいじゃありませんか?
14さん>
この作品を読んでいただきありがとうございます
アドバイスありがとうございます!
いえいえ、どんな方でもアドバイスという事は変わりありませんので全て大事に返答させて頂きますよ?
はい、次回も見かけた時に寄っていただけると作者は大変喜びます^^