※この作品には95%の妄想で出来たユウゲンマガンが登場します。自分の中のユウゲンマガンのイメージを大切にしたい人、そもそもユウゲンマガンってなんぞ?って人はまだ間に合うので逃げてください。
ユウゲンマガン愛してる、ユウゲンマガンは俺の嫁、ユウゲンマガンたん可愛いよ!、ユウゲンマガンのぱっちりおめめに目薬注したいよハアハア……、ユウゲンマガン?俺の隣で寝てるよ。という方々はそのままお進み下さい。
あ、一応続編です。
「次はこれ着てみて!」
「ま、まだあるの……?」
エリスは笑顔で服を手渡す。
それを涙目で受け取るのが小さな可愛らしい少女の姿をしている、ユウゲンマガンの本体。
「まずは周りからの視線に馴れないと!いつまでも恥ずかしがってちゃダメ!」
「だって私……人を見てばっかりで全然見られた事ないんだもん……」
本体は唇を尖らせた。
ユウゲンマガンの本体がエリスに見られてしまってから、本体として活動する時間が多くなった。
エリスの前はもちろん、サリエルにも見せてと言われ、魔界神はお察しの通りである。
「だからその考えがダメなの!他人とのコミュニケーションは大事なんだよ!?社会で生活する上でとても重要なの!いくら魔界が平和だとは言え、そんなたるんだ考え方ではいけない!」
エリスが物凄く珍しく正論を言った。
流石に本体も返す言葉が無い。
「な、何で真面目に言うの……」
「私はマガンちゃんを心配して言ってるんだよ?マガンちゃんがみんなとうまくやっていけるように……(訳 マガンちゃん可愛くてついいじめたくなっちゃうから♪)」
「エリス……」
この言葉の真の意味を理解出来なかった本体は素直に感動している。
「分かったよ、私頑張る!」
「そう、その意気!はい、じゃあ次はこの服!」
「うん!」
「おや、マガン。着替えたんですか?可愛いですよ」
「サリエル様お帰りー!」
「か、可愛いですか?」
エコバッグを持った、買い物帰りのサリエルの言葉に本体は顔を赤くする。
それにしても今までこんなに所帯じみたラスボスがいただろうか?
あ、いましたね。魔界にもう一人。
「ええ、とっても似合ってます」
「ほんと?嬉しいな……」
本体は顔を赤くしたまま微笑んだ。
「マガンちゃん、その服他の人にも見せて来なよ」
「で、でも……」
「大丈夫。まずは馴れてる人に見てもらって少しずつ恥ずかしがりを治してこ?」
エリスはにっこり笑った。
なんだかんだ言ってもちゃんと心配しているようだ。
「……う、うん!分かった!」
本体は大きく頷くと眼の裏側に飛び乗った。
「それでは、サリエル様、エリス、少々出掛けてくる。夕飯までには帰るので、我の皿にはピーマンを入れないで頂きたい」
「駄目です。ちゃんと食べないと」
「……仕方が無い。では、出掛けてくる」
五つの眼はふよふよと動いていった。
「最近はちゃんとご飯食べるね」
「ええ。本体を見付ける前は食べなかったのですけどね」
「その辺りは少し成長かな?」
「そうかもしれませんね」
「えぇっと……その……」
「だから魔界神にお会いしたいのだが、可能か?」
「あの……」
パンデモニウムの入口で、五つの眼に見つめられ、入口近くにいたメイドは困惑していた。
突然、無気味な眼に話し掛けられたらそれは困惑するだろう。
「何をやってるの?」
後ろから聞こえた声にメイドはぱっと振り向いた。
「夢子さん!こちらの方が……」
メイドはそう言って五つの眼を指差す。
「あっ!……貴方は下がって良いわよ」
夢子の言葉にメイドは頭を下げると小走りで立ち去った。
「久しいな夢子殿」
「え、ええ……。マガンさん、今日はどのような用件で?」
若干頬を赤らめた夢子が問う。
「魔界神にはお会い出来るか?」
「はい、ご案内します。こちらに……」
夢子の後ろを五つの眼がついていく。
「一応内容をお聞きしてもいいですか?」
歩きながら夢子は言う。
「神綺様は神ですので、お聞きしないといけない事になっているんです。……まあ、私が決めたんですけど……」
「仕事熱心なのだな」
「い、いえ……そんな……」
「内容だったな?……服を見てもらいたくてな」
「服……ですか?」
もちろん夢子も本体の方の事だと理解している。
「エリスが選んでくれたのだ。それで、少しでも恥ずかしがるのが治るように見てもらおうと思ってな」
淡々と話す内容では無いのだが、五つの眼は淡々と話す。
どこから声を出しているのは不明である。
「はい、分かりました。……それは私が同席しても……?」
「構わない」
そして、夢子は顔を先程よりも赤くして、何か言いたそうにもじもじとしていたが、やがて口を開いた。
「あと、マガンさん…………その……こ、今度、一緒に……お食事なんて……ど、どうでしょうか?」
「構わないが、良いのか?我で」
「マガンさんとが……いいです……」
「そうか?なら我は構わない」
その言葉に夢子は顔を明るくした。
「ありがとうございます!詳しい日程はまた後日……」
「ああ、楽しみにしている」
淡々と言われ、社交辞令にしか聞こえないが、夢子は幸せそうだった。
「あ、ここです」
夢子は一つの扉の前で立ち止まるとノックした。
「神綺様、お客様です」
「はーい、いいわよー」
返事を受けると夢子は静かに扉を開いた。
「どうぞ」
五つの眼はふよふよと部屋の中に入っていく。
「魔界神、ご無沙汰して……」
「きゃー!マガンちゃ~ん」
五つの眼にも留まらぬスピードで神綺は本体を抱き上げた。
「し、神綺様……ご無沙汰してます……」
「ご無沙汰ね~」
神綺は本体の柔らかい頬に触れている。
「今日は何?私に会いに来てくれたの?」
「その……服を見てもらおうと……」
「あら~、確かに今日は一段と可愛いわ。ほら、夢子ちゃんもこっちこっち」
神綺が手招きしているのに従い、夢子はすぐ横に立つ。
「……これは可愛いですね」
「あ、ありがとうございます……」
本体は恥ずかしそうに笑った。
その表情を見た夢子は鼻を押さえてしゃがみ込んだ。
「あれ、夢子ちゃん?」
「な、何でも無いです!」
本人がこう言うのなら、鼻から血が流れてるように見えるのも気のせいだろう。
「だ、大丈夫ですか?」
神綺の手元で本体は心配そうに夢子を見る。
「大丈夫です。メイドですから」
夢子理論によるとメイドだと大抵の事はなんとかなるらしい。
「そ、そうですか……?」
「そうです。マガンさんが心配される程の事では無いです」
夢子は微笑む。鼻を押さえて。
「マガンちゃん、やっぱり侮れないわ……」
「ほぇ?」
本体は意味を理解できず首を傾げるだけだ。
「……まあいいわ。それにしても、何で私に見せに来てくれたの?」
本体は恥ずかしそうにもじもじとする。
「その……知り合いが……神綺様と夢子さんくらいしか……」
「……なら、今度外にいる私の娘を紹介してあげる。アリスちゃんって言ってね~可愛いのよ~」
神綺はアリスを思い出し、にたにた笑う。
「に、人間ですか……?」
「いえ、元は人間だけど、今は魔法使い。人間苦手?」
「そういう訳じゃないです……けど昔、魔界に来た人間が、おめめにボールぶつけてきて……」
「そうなの?でもアリスちゃんは大丈夫よ。優しくてね、強がりなんだけど淋しがり屋さんなの。そしてお人形さんたくさん持ってるの」
「お人形さん!?」
本体は眼(周囲のものも含め計七つ)を輝かせて神綺を見つめた。
「マガンちゃんはお人形好き?」
「は、はい!」
「そう。ならさ、アリスちゃんのお友達になってくれる?」
「え?」
本体はきょとんとする。
「駄目かしら?」
「い、いえ……わ、私でいいなら……」
「本当?ありがとう、マガンちゃん!」
神綺は本体をぎゅっと抱きしめる。
それを夢子は羨ましそうに見つめていた。
「この部屋よ」
夢子姉さんに連れられて、私は一つの扉の前に案内された。
数日前にママから手紙が送られてきて、内容は紹介したい子がいるとの事だった。
なぜ私に紹介するのか聞いてもはぐらかされてしまった。
とにかく会ってみてとの事らしい。
「それじゃアリス、お願いね」
何を頼まれているのか理解出来ないうちに夢子姉さんは去ってしまった。
こうなれば直接会ってみるしかあるまい。
「失礼するわね」
扉を開ける。
そこにはテーブルと椅子が置かれていて、向こう側には小さな少女が腰掛けていた。
「あ!あの……その……えと……は、はじめまして!」
少女は立ち上がり、テンパり気味で言葉を並べる。
小さくて可愛らしい少女。
それだけで充分なのだが、彼女の周りには五つの眼がふよふよと浮いていて、全てが血走った眼で私を見つめる……と言うよりは睨みつけている。
「貴方がママ……いえ、神綺様の言っていた?」
流石に初対面の相手の前で魔界神をママと呼ぶのはまずい気がする。
「は……は、はい!ゆ、ユウゲンマガンと言います!……長いからみんな、ま、マガンって呼んでます……」
少女、ユウゲンマガンは次第に声が小さくなっていってしまう。
「私はアリス・マーガトロイド。ほら、貴方達もご挨拶」
持って来ていた人形二体、特別に愛着のある上海と蓬莱を操り、ぺこりと礼をさせる。
「わぁ……」
ユウゲンマガンはそれを目を輝かせて見てくれた。
「貴方……マガンで良いかしら?」
「は、はい!」
いちいち背筋を伸ばすのが可笑しい。
「マガンの後ろにある……それは何なのかしら?」
「え……お、おめめですか?これは……私の一部で……普段はこっちを……何と言いますか……」
マガンは小さな声でぼそぼそと続けていく。
それが面白くて思わず笑ってしまった。
「へっ?」
「ごめんごめん。面白くてつい……」
「わ、私は真面目です~……」
そんな涙目で弱々しく抗議されると……駄目だ、ニヤつきが収まらない。
「とにかく……このおめめも……私なんです」
「マガンの一部ってこと?」
「そ、そんな感じです……」
なんか凄い私を睨んでるんだけど。貴方の一部。
「その……おめめだけなので……表情に乏しくて……」
「それは分かるかも……」
眼も血走ってるし……。
「それは……みんな触るから……」
この子も苦労しているらしい。
「それで、私は何でここに呼ばれたの?」
「そ……そのですね……」
マガンはもじもじと手を動かす。
「わ、私とお友達になってください!」
「へっ?」
告白でもするのではないかと思うくらいもじもじした後、彼女はそう言った。
「そ、その……私、お友達少なくて……。それで、神綺様が……娘さんを紹介してくれるって……だから今日……アリスさんを呼んでもらって……」
「ああ、そういう事だったの」
マガンが落ち着くように、私はにっこり微笑んだ。
「いいわよ。なりましょ、お友達に」
「ほ、本当ですか!?」
マガンの顔がぱぁっと明るくなる。
彼女はこんなに楽しそうなのに、後ろの眼はやっぱり私を睨んでいるようにしか見えない。
「ええ」
断ったら泣いちゃいそうだと思ったのは秘密だ。
それに、それだけでなく私も彼女ともっと話してみたいと思ったから。
彼女はとても可愛らしくて、見ていると幸せになる。
私は上海と蓬莱を操り、彼女の前まで動かした。
「わわっ!……さ、触ってみてもいいですか……?」
「いいわよ。壊さない程度にね」
手を輝かせて恐る恐る私の人形を触るマガン。
何とも言えぬ可愛さだ。
夕食の席にて
「あ、あのね……お友達が出来たの……」
「おぉ!やったじゃん!」
「良かったですね。それとエリス、口からものが飛んでますよ」
「う……うん。……エリス、サリエル様、ありがとね……」
「いいってことよ!」
「私は何もしてませんよ。マガンの力です。エリス、飲み込んでから喋りなさい」
「……ありがとう。今度二人にも紹介するね」
「うん、楽しみにしてるよ」
「……マガン、成長しましたね」
「え?何です?」
「いいえ、何でもありません。ピーマンもちゃんと食べてください」
「……はい」
ゴメンナサイ