朝が来る。
日が昇り、日が沈み、当然のように時間が進む。
自分がどれだけの月日を生きたのか、数えるのも億劫になってしまった。
日が昇ったら起きて、暗くなったら眠る。
朝にご飯を食べ、昼にご飯を食べ、夜にご飯を食べる。
幾度と無く繰り返してきた作業。
魔女になり、眠る必要も食べる必要もなくなってしまったとはいえ、惰性で続けている習慣。
朝のまどろみや、二度寝の幸福を手放すのは惜しいとも思っている。
美味しいものを食べた時の喜びは、他に代えがたい。
だから、もうしばらくは人間染みた生活を続けようと思う。
しっかり休み、美味しいものを食べ、規則正しい生活をする。
そうしてこそ、しっかりと研究に打ち込めるというものだ。
時間に縛られなくなった反面、自分で自分を律しないとどこまでもだらけてしまえる。
知識の虜で、何でも知りたがりの魔法使いには、だらける暇もありはしないけど。
健全な魔女っていうのも、滑稽な話よね。
……。
さて、もう日も昇った。
いい加減ベッドから出るとしよう。
バタンッ、 どさっ。
何者かがいきなり扉を開け、私のベッドに飛び込んでくる。
強盗の類かと思ったけど、その風貌には見覚えがあった。
そして、彼女がこんなことをするのはこれが初めてでもない。
警備用の人形達は何をやっているのかしら。
尤も、時間を止められたら何も出来るわけがないんだけど。
闖入者は私に抱きつき、すっかり寝る体勢に入っている。
私はもうベッドから出るつもりだったんだけど、そんなのお構い無しだ。
「おはよう、咲夜」
「おやすみ、アリス」
銀髪のメイドは立ち上がる気力もないようで、そのままぐっすりと眠ってしまいそうだ。
そのくせ、私を逃がさないようにしっかり抱きしめてくる。
このまま寝られたら、咲夜に捕まったまま動けなくなってしまう。
そうなる前に、早く逃げ出さないと。
「咲夜。寝るならベッドは貸してあげるから、放してくれないかしら」
「アリスがいないとやだ」
そう言うとは思ってたけど。
疲れてる中、わざわざ私のところまで来たのだ。
私に用があって当然だ。
添い寝するくらいなら別に構わないけど、少しは時間を考えてほしい。
私は今まで寝ていて、これから起きて活動するつもりだったのに。
朝までレミリアの相手をして疲れてるのは分かるけど、少しは私の生活も考えてよ。
ねえ、咲夜、聞いてるの?
……。
早くも寝ちゃってるし。
揺すってもホッペを抓んでもちっとも反応しない。
咲夜の腕から逃げられる気もしない。
ねえ、これから数時間、私に何をして過ごせっていうの?
その幸せそうな寝顔に悪戯するわよ?
咲夜の髪を弄る。
ほんの少し、髪が伸びて、顔が大人びてきたような気がする。
咲夜は人間なのだから、成長するのは当たり前なのだけど。
それを目の当たりにすると、少し奇妙な気持ちになる。
咲夜は、きっちり人間として時を刻んでいる。
あっという間に、私より大人になってしまうだろう。
人間でいることに拘る理由は何かと聞いた事がある。
答えは、その方が楽しそうだから。
歳をとれば、その歳に応じた喜びがあるはず。
少女の姿のままでは、少女の生き方しか出来ない。
少女の姿のままでは、少女の考え方しか出来ない。
少女のままで何百年生きたとしても、それでは人間の人生の半分も楽しめない。
それがどの程度正しいのかは知らないけど、咲夜はそう信じている。
咲夜は、歳をとるのが楽しみなのだ。
そうは言っても、体力だって落ちるし、皺だって出来ちゃうのよ?
その気になれば不老不死にだってなれるのに、人間として歳を取って死ぬ事を選ぶ。
紅魔館の御多分に洩れず、咲夜も相当な変わり者に違いない。
……。
つまらぬ考えに思いを巡らせたところで、光陰矢の如く時間が過ぎるわけでもなく、咲夜が目を覚ますわけでもない。
咲夜の髪で遊ぶのも飽きてしまった。
仕方ないから、私も寝ることにしようかな。
疲れてるみたいだし、今日は咲夜に付き合ってあげることにしよう。
『私の時間は咲夜のもの』ってね。
おやすみ、咲夜。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
お昼を回り、そろそろ二時になろうかという頃。
ようやく咲夜が目を覚ます。
私はあれから一時間程で起きたので、上半身を起こし、咲夜を腰にくっつけたまま仕方なしに本を読んでいた。
これでようやくベッドから出られるわね。
「おはよう、咲夜」
「ありがと、アリス。とても気持ちよく眠れたわ」
「どういたしまして。そろそろ離れてくれない?」
「だめ。もうちょっとだけ」
咲夜は、時々人肌恋しくなるときがあるらしい。
人の温もりが欲しいと言っていた。
吸血鬼は体温が低いらしく、パチュリーは病弱もやし、美鈴は日中は門の前にいるから論外だそうだ。
それで、レミリアが寝ている間に、館を抜け出して私のところに遊びに来る。
何で私に頼るのか分からないのだけど。
一番始めは、そう、あれだ。
掃除用の人形を何体か貸して欲しいと言ってきたのだ。
館が広いせいで掃除が大変だと。
ただでさえ広い屋敷を、自分の能力を使って余計広くしているくせに。自業自得じゃないの。
人形が増えすぎて家が手狭になっていたのと、紅魔館に恩を売り、あわよくば弱みを握れないかという下心から快く了承したけどさ。
「メイド長がさぼってていいの?」
「たまには息抜きも必要なのよ。それに、アリスの人形達が優秀だからする事がなくて」
「ありがと。貴方の処の役に立たないメイドとは違うのよ」
咲夜の命令を聞くように調整しなおし、家事全般を完璧に行えるエリートを10体ほど貸し出している。
最初は紅魔館用にプログラミングするため何度か足を運んだけど。
今では完璧に順応して紅魔館のメイドとなっている。
そのうち魔道書と交換でパチュリーにも貸してあげる予定だ。
近頃は門番も顔パスで、月に何度かは点検や交換のために様子を見に行っている。
人形を修理する人形を二体も作れば、それすら必要ないのかもしれないわね。
次なる目標は簡単な会話と、妹様の弾幕への対策。頭が痛いわ。
人形を貸すようになってから、時折咲夜が家に訪ねてくるようになった。
話す事は、最初は人形に関することが主だった。
妹様がおいたしてしまった人形を持ってきたこともあった。
人形用のメイド服を一緒に作ったこともあった。
人形の扱い方を一通り教授し終わったら、それからは用も無くやってくるようになった。
とりとめもないことを話して、美味しい紅茶を飲んで、そして昼寝して帰っていく。
今更ながら、体よく便利な人形を手に入れ、抱き枕も手に入れた咲夜の奸計には恐れ入る。
憩いの場所に選んでもらったのは光栄だけど、わざわざこんなところを選ばなくてもいいと思うのに。
お嬢様に気の抜けた姿を見られたくないのかしら?
長い付き合いになるんだろうし、見栄を張っても疲れるだけなのにねえ。
完全で瀟洒な従者も大変ね。
……。
あれ、咲夜?
もしかして、また寝ちゃった……?
・・・
「いい匂いがする」
「おはよう、咲夜。おはようって言うの、これで何度目かしら?」
「ハーブティー? それにしてもいい香り。どんな配合なのかしら」
上海に淹れさせたハーブティーを飲んでいたら、急に咲夜が起きてきた。
鼻が利くのか、食い意地が張っているのか。
咲夜は犬だから、多分前者なんだろう。
寝ぼけているのかもしれないけど、まるでこちらの話を聞いてやしない。
レミリアの自分勝手が移ったんじゃないの?
「いま咲夜の分を淹れるから、少し待ってて」
「これでいいわ」
そう言って、私が飲んでいたカップを奪い取る。
本当、自分勝手よね。
咲夜のせいで今日の予定が全部狂っちゃったし。
咲夜は香りを堪能した後、少し考えるような素振りを見せて、こう聞いてきた。
「間接キスとか、気にする方?」
「飲まないなら返しなさいよ」
思わず顔を抑え、溜息が漏れる。
そんな私を見て、可笑しそうに咲夜が笑う。
そして、私のハーブティーをゆっくり時間をかけて味わう。
「ほんとう美味しい。これってアリスのオリジナル?」
「そうよ。美容と健康に良い特製ブレンド。気に入ったなら教えてあげるわよ」
咲夜の目が好奇心で輝く。そんなに気に入ってくれたのだろうか。
お茶を飲み干した後、勿体つけてこう答える。
「必要ないわ。飲みたくなったらまた来るから」
「言っておくけど、ここは喫茶店じゃないのよ?」
「アリスが淹れる美味しいお茶が飲めて幸せだわ」
咲夜がにんまりと笑って、ベッドから起き上がる。
ぐっすり寝て元気になったらしい。
外を見て、軽く体操をしてからシャワーを浴びに行ってしまった。
手際良くタオルと着替えを勝手に箪笥から出して持っていくし。
勝手知ったる他人の家とはまさにこのことよね。
・・・
「そんなに疲れてたの?」
「そうでもないんだけど、アリスがすごく抱き心地よかったから、ついね」
咲夜の髪を梳かしながら尋ねてみる。
忙しいとは言いつつ、一応身だしなみには気を使っているらしい。
髪もちゃんと手入れされているし、肌も綺麗だ。
あんまりストレスは感じてないのかしら?
「アリスって意外と世話焼きよね」
「困ってる人に手を差し伸べる程度には、お節介なつもりだけど」
「そうね。頼まれたら嫌と言えない損な性格」
「悪かったわね」
「アリスには感謝してるのよ」
上海がハーブティーのお代わりを持ってくる。
猫舌の咲夜は、淹れたての熱いお茶を持て余している。
しばし飲むのを諦め、香炉代わりに香りを楽しむことにしたようだ。
なんだか、とてもリラックスしている。
ワイシャツにズボンというラフな格好で、足を投げ出して椅子に座っている。
今だけは、完璧なメイドを止めているらしい。
いま目の前に居るのは、歳相応の普通の女の子。
紅魔館の面々は、こんな咲夜を知っているのだろうか?
知られたくないから、わざわざこんな辺鄙な家までやってきてるの?
「生涯現役でいるつもりだけど、私は人間だもの。いつ何があるか分からない。
そうなってから困らないように、予防線を張っておきたいのよ」
「それが私の人形を欲しがった理由?」
「アリスがうちのメイドになってくれれば一番いいんだけどね」
咲夜なりに色々と考えた末に、私に縋ってきたらしい。
大して縁もない私に、500歳児の後見人を頼まれても困るのだけれどね。
自分が吸血鬼になってずっとお仕えするっていう選択肢は無いみたい。
「お断りするわ。私には荷が重いもの」
「たまにでいいから遊びに来ない? アリスだって、一人じゃ退屈しちゃうでしょ」
「たまになら、まあ」
「週に一度くらい?」
「もっと少なくていいわ」
「じゃあ週に一度、私がアリスに会いに来るわ」
「何でそうなるのよ」
「週に一度くらい、息抜きが欲しいもの」
楽しくてやりがいを感じていると言っても、たまには気晴らしが欲しいらしい。
咲夜がようやくカップに口をつける。まだ少し熱いようだ。
難儀しながら、少しずつ飲み込んでいく。
その仕草が可愛いらしく見える。
咲夜の髪を編む。
今は借りてきた猫のように大人しい。
遠くを見ているような眼。その横顔は人形のようにも見える。
咲夜は人間だ。
成長し、老い、そして死ぬ。
私を追い越して大人になり、おばさんになり、おばあさんになる。
私や、紅魔館の面々を置き去りにして死んでしまう。
歳をとることでしか辿り着けない境地があるのだろうか?
もしそうなら、それは私でも知る事が出来るのだろうか?
ほんの少し。そう、ほんの少し、人間が羨ましくなる。
私はもう、歳をとることが出来ないのだから。
「アリス、そろそろ」
「そうね、日が暮れる前にやっておきましょうか」
・・・
ギブ&テイク。
咲夜は貰った分はちゃんと返す主義らしい。
どこぞの泥棒とは大違いだ。
「他には何を腐らせればいいのかしら?」
「今日の分は終わりでいいわ。今回も大して有効なデータは取れなかったし」
「そう、先は長いわね」
「私には時間はいくらでもあるから、別にいいのよ」
「私の時間は有限なのを忘れないでね」
「分かってる」
咲夜の能力の研究。
時間を操る程度の能力。
簡単に言うけど、それがどのくらいとんでもない能力か自覚してるのかしら?
私やパチュリーのような小手先の魔法じゃなくて、八雲紫の能力に匹敵する程のイレギュラーな能力。
遊びの範疇でなければ、到底勝てる気のしない能力だ。
その一部だけでも私の魔法に応用できないかと思ったけど、イレギュラーすぎてどう扱ったものかさっぱり分からない。
パチュリーはこんなレアな研究素材が目の前に居るというのに、早々に匙を投げてしまったらしいし。
彼女の専門は精霊魔法だから、興味が湧かなくても仕方ないかもしれないけど。
魔法使いは知識を究めるからこそ魔法使いたりえるのだ。
たとえ成果が出なくとも、知りうる限りの測定方法を試し、可能な限りデータは集めておきたい。
望む結果が出なくとも、この経験は絶対無駄にはならない。
こういう地道な経験と研究こそが、魔法を究める事に繋がるのだ。
そんなこんなで自分を慰めつつ、色んなものの時間を進めたり、空間を弄ったりしてもらってるわけだけど。
成果はと言うと……。
宴会でのつまみに事欠かなくなったのと、収納BOXの内容量が増えた程度。
要するに、成果無し。
「いい加減諦めたら? 私でもどういう仕組みで発動してるのかさっぱり分からないんだから」
「それでも咲夜がいるうちに、可能な限りデータは集めておきたいのよ」
「そういう執念深さも、魔法使いに必要な要素かしらね。チーズとワイン貰うわよ」
自分でも半ば諦めているけど、何かの拍子に進展があるかもしれない。
継続は力なり。半端な所で諦めて後悔する羽目になるのだけは避けたい。
なにせ、こんなレアな能力を持つ者が二人と現れる保証は無いのだから。
「この家は快適ね。何でもかんでも人形がやってくれて、お姫様みたい」
「レミリアの気持ちが少しは分かるんじゃない?」
「そうね、とっても気分がいいわね」
座っているだけで、人形達がグラスやクラッカーを持ってきてくれる。
他にも、気を利かせてあれやこれやと世話を焼いてくれる。
多少のコミュニケーションも取れるし、愛嬌もある。
何よりサボらないし文句も言わない、まさにパーフェクトメイドだ。
「そのお嬢様のとこへは帰らなくていいの?」
「まだ大丈夫よ。帰るのに時間はかからないもの」
それでも、人形に出来ない事は山ほどある。
ルーチンワークならばプログラム通り完璧にこなすけど、流石にレミリアの我侭に付き合えるほどのAIはない。
それを分かっているのか、十六夜咲夜としてのプライドか、今までどおり咲夜がレミリアの従者をやっている。
メイドの仕事はサボるくせに、従者としてはきっちり働くからマメなことだ。
あのお嬢様に振り回されて何が楽しいのかよく分からないのだけど。
そんなに大事なら、吸血鬼にでもなって一生お仕えすればいいと思うのだけど。
もしかして、自分が死ぬまでの期限付きだから頑張れてるのかしら?
・・・
咲夜はいつものメイド服に着替え、帰る前の最後のティータイムを楽しんでいる。
咲夜特製ブレンドの紅茶を二人で飲む。
とても美味しいから配合を教えて欲しかったんだけど、企業秘密って断られた。
飲みたくなったらいつでも呼んで、と言っていたけど。
咲夜が死んでしまう前には、なんとしても聞きだしてやろうと心に誓っている。
あるいは、自分の舌で配合を見抜いて驚かせてやりたい。
どちらにせよ、一朝一夕にはいきそうにないけどね。
小難しい事は考えず、今はこの紅茶を楽しむとしよう。
咲夜は喋らない。
帰る前のこの時間だけは、咲夜は本当に人形のようになる。
何を考えているのか分からないし、どこを見ているかもよく分からない。
気が抜けてて、押したらそのまま倒れちゃいそうな。
随分と気を許してくれていることだ。
オンとオフを切り替えてるのかしら?
私はいつまで、こうやって咲夜とお茶を飲むことが出来るのかしらね。
「そろそろ帰るわ。今日はありがとう」
「どういたしまして」
外を見ると、もう日が落ち始めている。
一時間もしないうちに、世界が紅に染まり、あっという間に闇に飲まれてしまうだろう。
そして、あのお子様吸血鬼が起きる時間になる。
それまでには、館に戻って何食わぬ顔で働いているに違いない。
忙しいことだ。半日程度の息抜きで、本当にリフレッシュ出来たのだろうか?
咲夜が立ち上がる。
私も見送りのために席を立つ。
道案内のために、人形を一体咲夜に預ける。
咲夜が、私の頬にキスをする。
「ここは居心地がいいから、本当はもっとゆっくりしたいんだけどね。
あんまりお嬢様を放っておくわけにもいかないから」
人形を胸に抱き。名残惜しそうに玄関へ向かう。
並ぶと、咲夜の背の高さがよく分かる。
もしかしたら、私よりよっぽど大人なのかもしれない。
私より、色んなものが見えているのかもしれない。
何も出来ない子供が、格好いい大人に憧れるような、そんな羨望を覚えてしまう。
魔法使いになるのを、少し早まったかもしれない。
「楽しかったわ、ばいばい」
「ばいばい、またいらっしゃい」
「そのうちね」
咲夜が紅魔館に帰っていく。
彼女はそこにいるのが相応しい。
昼はメイドで、夜は従者。
ひ弱な人間なんだから、無理して体を壊さないといいけど。
無理をしないように、私が支えてあげればいいのかな。
咲夜がおばあちゃんになったとき、咲夜の眼に私はどう映るだろう。
生きた歳月相応に、ちゃんと分別がついてるだろうか。
それとも、やっぱり外見相応の小娘のままだろうか。
あと30年くらい経ったら、咲夜おばあちゃんに聞いてみよう。
そして、人間として生きて後悔は無いか、人間として死ぬ事に迷いは無いか、改めて聞いてみようと思う。
きっと、瀟洒な笑みを浮かべて、私が嫉妬してしまいそうな素敵な答えを聞かせてくれるに違いない。
全てが紅に染まり、藍に侵食され、闇に包まれる。
これからは妖怪の時間。
健全な魔女は早めに眠るとしよう。
なんだか疲れちゃったし。
今日一日くらい、サボったところで誰も文句を言うまい。
おやすみ、咲夜。
またお話聞かせてね。
日が昇り、日が沈み、当然のように時間が進む。
自分がどれだけの月日を生きたのか、数えるのも億劫になってしまった。
日が昇ったら起きて、暗くなったら眠る。
朝にご飯を食べ、昼にご飯を食べ、夜にご飯を食べる。
幾度と無く繰り返してきた作業。
魔女になり、眠る必要も食べる必要もなくなってしまったとはいえ、惰性で続けている習慣。
朝のまどろみや、二度寝の幸福を手放すのは惜しいとも思っている。
美味しいものを食べた時の喜びは、他に代えがたい。
だから、もうしばらくは人間染みた生活を続けようと思う。
しっかり休み、美味しいものを食べ、規則正しい生活をする。
そうしてこそ、しっかりと研究に打ち込めるというものだ。
時間に縛られなくなった反面、自分で自分を律しないとどこまでもだらけてしまえる。
知識の虜で、何でも知りたがりの魔法使いには、だらける暇もありはしないけど。
健全な魔女っていうのも、滑稽な話よね。
……。
さて、もう日も昇った。
いい加減ベッドから出るとしよう。
バタンッ、 どさっ。
何者かがいきなり扉を開け、私のベッドに飛び込んでくる。
強盗の類かと思ったけど、その風貌には見覚えがあった。
そして、彼女がこんなことをするのはこれが初めてでもない。
警備用の人形達は何をやっているのかしら。
尤も、時間を止められたら何も出来るわけがないんだけど。
闖入者は私に抱きつき、すっかり寝る体勢に入っている。
私はもうベッドから出るつもりだったんだけど、そんなのお構い無しだ。
「おはよう、咲夜」
「おやすみ、アリス」
銀髪のメイドは立ち上がる気力もないようで、そのままぐっすりと眠ってしまいそうだ。
そのくせ、私を逃がさないようにしっかり抱きしめてくる。
このまま寝られたら、咲夜に捕まったまま動けなくなってしまう。
そうなる前に、早く逃げ出さないと。
「咲夜。寝るならベッドは貸してあげるから、放してくれないかしら」
「アリスがいないとやだ」
そう言うとは思ってたけど。
疲れてる中、わざわざ私のところまで来たのだ。
私に用があって当然だ。
添い寝するくらいなら別に構わないけど、少しは時間を考えてほしい。
私は今まで寝ていて、これから起きて活動するつもりだったのに。
朝までレミリアの相手をして疲れてるのは分かるけど、少しは私の生活も考えてよ。
ねえ、咲夜、聞いてるの?
……。
早くも寝ちゃってるし。
揺すってもホッペを抓んでもちっとも反応しない。
咲夜の腕から逃げられる気もしない。
ねえ、これから数時間、私に何をして過ごせっていうの?
その幸せそうな寝顔に悪戯するわよ?
咲夜の髪を弄る。
ほんの少し、髪が伸びて、顔が大人びてきたような気がする。
咲夜は人間なのだから、成長するのは当たり前なのだけど。
それを目の当たりにすると、少し奇妙な気持ちになる。
咲夜は、きっちり人間として時を刻んでいる。
あっという間に、私より大人になってしまうだろう。
人間でいることに拘る理由は何かと聞いた事がある。
答えは、その方が楽しそうだから。
歳をとれば、その歳に応じた喜びがあるはず。
少女の姿のままでは、少女の生き方しか出来ない。
少女の姿のままでは、少女の考え方しか出来ない。
少女のままで何百年生きたとしても、それでは人間の人生の半分も楽しめない。
それがどの程度正しいのかは知らないけど、咲夜はそう信じている。
咲夜は、歳をとるのが楽しみなのだ。
そうは言っても、体力だって落ちるし、皺だって出来ちゃうのよ?
その気になれば不老不死にだってなれるのに、人間として歳を取って死ぬ事を選ぶ。
紅魔館の御多分に洩れず、咲夜も相当な変わり者に違いない。
……。
つまらぬ考えに思いを巡らせたところで、光陰矢の如く時間が過ぎるわけでもなく、咲夜が目を覚ますわけでもない。
咲夜の髪で遊ぶのも飽きてしまった。
仕方ないから、私も寝ることにしようかな。
疲れてるみたいだし、今日は咲夜に付き合ってあげることにしよう。
『私の時間は咲夜のもの』ってね。
おやすみ、咲夜。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
お昼を回り、そろそろ二時になろうかという頃。
ようやく咲夜が目を覚ます。
私はあれから一時間程で起きたので、上半身を起こし、咲夜を腰にくっつけたまま仕方なしに本を読んでいた。
これでようやくベッドから出られるわね。
「おはよう、咲夜」
「ありがと、アリス。とても気持ちよく眠れたわ」
「どういたしまして。そろそろ離れてくれない?」
「だめ。もうちょっとだけ」
咲夜は、時々人肌恋しくなるときがあるらしい。
人の温もりが欲しいと言っていた。
吸血鬼は体温が低いらしく、パチュリーは病弱もやし、美鈴は日中は門の前にいるから論外だそうだ。
それで、レミリアが寝ている間に、館を抜け出して私のところに遊びに来る。
何で私に頼るのか分からないのだけど。
一番始めは、そう、あれだ。
掃除用の人形を何体か貸して欲しいと言ってきたのだ。
館が広いせいで掃除が大変だと。
ただでさえ広い屋敷を、自分の能力を使って余計広くしているくせに。自業自得じゃないの。
人形が増えすぎて家が手狭になっていたのと、紅魔館に恩を売り、あわよくば弱みを握れないかという下心から快く了承したけどさ。
「メイド長がさぼってていいの?」
「たまには息抜きも必要なのよ。それに、アリスの人形達が優秀だからする事がなくて」
「ありがと。貴方の処の役に立たないメイドとは違うのよ」
咲夜の命令を聞くように調整しなおし、家事全般を完璧に行えるエリートを10体ほど貸し出している。
最初は紅魔館用にプログラミングするため何度か足を運んだけど。
今では完璧に順応して紅魔館のメイドとなっている。
そのうち魔道書と交換でパチュリーにも貸してあげる予定だ。
近頃は門番も顔パスで、月に何度かは点検や交換のために様子を見に行っている。
人形を修理する人形を二体も作れば、それすら必要ないのかもしれないわね。
次なる目標は簡単な会話と、妹様の弾幕への対策。頭が痛いわ。
人形を貸すようになってから、時折咲夜が家に訪ねてくるようになった。
話す事は、最初は人形に関することが主だった。
妹様がおいたしてしまった人形を持ってきたこともあった。
人形用のメイド服を一緒に作ったこともあった。
人形の扱い方を一通り教授し終わったら、それからは用も無くやってくるようになった。
とりとめもないことを話して、美味しい紅茶を飲んで、そして昼寝して帰っていく。
今更ながら、体よく便利な人形を手に入れ、抱き枕も手に入れた咲夜の奸計には恐れ入る。
憩いの場所に選んでもらったのは光栄だけど、わざわざこんなところを選ばなくてもいいと思うのに。
お嬢様に気の抜けた姿を見られたくないのかしら?
長い付き合いになるんだろうし、見栄を張っても疲れるだけなのにねえ。
完全で瀟洒な従者も大変ね。
……。
あれ、咲夜?
もしかして、また寝ちゃった……?
・・・
「いい匂いがする」
「おはよう、咲夜。おはようって言うの、これで何度目かしら?」
「ハーブティー? それにしてもいい香り。どんな配合なのかしら」
上海に淹れさせたハーブティーを飲んでいたら、急に咲夜が起きてきた。
鼻が利くのか、食い意地が張っているのか。
咲夜は犬だから、多分前者なんだろう。
寝ぼけているのかもしれないけど、まるでこちらの話を聞いてやしない。
レミリアの自分勝手が移ったんじゃないの?
「いま咲夜の分を淹れるから、少し待ってて」
「これでいいわ」
そう言って、私が飲んでいたカップを奪い取る。
本当、自分勝手よね。
咲夜のせいで今日の予定が全部狂っちゃったし。
咲夜は香りを堪能した後、少し考えるような素振りを見せて、こう聞いてきた。
「間接キスとか、気にする方?」
「飲まないなら返しなさいよ」
思わず顔を抑え、溜息が漏れる。
そんな私を見て、可笑しそうに咲夜が笑う。
そして、私のハーブティーをゆっくり時間をかけて味わう。
「ほんとう美味しい。これってアリスのオリジナル?」
「そうよ。美容と健康に良い特製ブレンド。気に入ったなら教えてあげるわよ」
咲夜の目が好奇心で輝く。そんなに気に入ってくれたのだろうか。
お茶を飲み干した後、勿体つけてこう答える。
「必要ないわ。飲みたくなったらまた来るから」
「言っておくけど、ここは喫茶店じゃないのよ?」
「アリスが淹れる美味しいお茶が飲めて幸せだわ」
咲夜がにんまりと笑って、ベッドから起き上がる。
ぐっすり寝て元気になったらしい。
外を見て、軽く体操をしてからシャワーを浴びに行ってしまった。
手際良くタオルと着替えを勝手に箪笥から出して持っていくし。
勝手知ったる他人の家とはまさにこのことよね。
・・・
「そんなに疲れてたの?」
「そうでもないんだけど、アリスがすごく抱き心地よかったから、ついね」
咲夜の髪を梳かしながら尋ねてみる。
忙しいとは言いつつ、一応身だしなみには気を使っているらしい。
髪もちゃんと手入れされているし、肌も綺麗だ。
あんまりストレスは感じてないのかしら?
「アリスって意外と世話焼きよね」
「困ってる人に手を差し伸べる程度には、お節介なつもりだけど」
「そうね。頼まれたら嫌と言えない損な性格」
「悪かったわね」
「アリスには感謝してるのよ」
上海がハーブティーのお代わりを持ってくる。
猫舌の咲夜は、淹れたての熱いお茶を持て余している。
しばし飲むのを諦め、香炉代わりに香りを楽しむことにしたようだ。
なんだか、とてもリラックスしている。
ワイシャツにズボンというラフな格好で、足を投げ出して椅子に座っている。
今だけは、完璧なメイドを止めているらしい。
いま目の前に居るのは、歳相応の普通の女の子。
紅魔館の面々は、こんな咲夜を知っているのだろうか?
知られたくないから、わざわざこんな辺鄙な家までやってきてるの?
「生涯現役でいるつもりだけど、私は人間だもの。いつ何があるか分からない。
そうなってから困らないように、予防線を張っておきたいのよ」
「それが私の人形を欲しがった理由?」
「アリスがうちのメイドになってくれれば一番いいんだけどね」
咲夜なりに色々と考えた末に、私に縋ってきたらしい。
大して縁もない私に、500歳児の後見人を頼まれても困るのだけれどね。
自分が吸血鬼になってずっとお仕えするっていう選択肢は無いみたい。
「お断りするわ。私には荷が重いもの」
「たまにでいいから遊びに来ない? アリスだって、一人じゃ退屈しちゃうでしょ」
「たまになら、まあ」
「週に一度くらい?」
「もっと少なくていいわ」
「じゃあ週に一度、私がアリスに会いに来るわ」
「何でそうなるのよ」
「週に一度くらい、息抜きが欲しいもの」
楽しくてやりがいを感じていると言っても、たまには気晴らしが欲しいらしい。
咲夜がようやくカップに口をつける。まだ少し熱いようだ。
難儀しながら、少しずつ飲み込んでいく。
その仕草が可愛いらしく見える。
咲夜の髪を編む。
今は借りてきた猫のように大人しい。
遠くを見ているような眼。その横顔は人形のようにも見える。
咲夜は人間だ。
成長し、老い、そして死ぬ。
私を追い越して大人になり、おばさんになり、おばあさんになる。
私や、紅魔館の面々を置き去りにして死んでしまう。
歳をとることでしか辿り着けない境地があるのだろうか?
もしそうなら、それは私でも知る事が出来るのだろうか?
ほんの少し。そう、ほんの少し、人間が羨ましくなる。
私はもう、歳をとることが出来ないのだから。
「アリス、そろそろ」
「そうね、日が暮れる前にやっておきましょうか」
・・・
ギブ&テイク。
咲夜は貰った分はちゃんと返す主義らしい。
どこぞの泥棒とは大違いだ。
「他には何を腐らせればいいのかしら?」
「今日の分は終わりでいいわ。今回も大して有効なデータは取れなかったし」
「そう、先は長いわね」
「私には時間はいくらでもあるから、別にいいのよ」
「私の時間は有限なのを忘れないでね」
「分かってる」
咲夜の能力の研究。
時間を操る程度の能力。
簡単に言うけど、それがどのくらいとんでもない能力か自覚してるのかしら?
私やパチュリーのような小手先の魔法じゃなくて、八雲紫の能力に匹敵する程のイレギュラーな能力。
遊びの範疇でなければ、到底勝てる気のしない能力だ。
その一部だけでも私の魔法に応用できないかと思ったけど、イレギュラーすぎてどう扱ったものかさっぱり分からない。
パチュリーはこんなレアな研究素材が目の前に居るというのに、早々に匙を投げてしまったらしいし。
彼女の専門は精霊魔法だから、興味が湧かなくても仕方ないかもしれないけど。
魔法使いは知識を究めるからこそ魔法使いたりえるのだ。
たとえ成果が出なくとも、知りうる限りの測定方法を試し、可能な限りデータは集めておきたい。
望む結果が出なくとも、この経験は絶対無駄にはならない。
こういう地道な経験と研究こそが、魔法を究める事に繋がるのだ。
そんなこんなで自分を慰めつつ、色んなものの時間を進めたり、空間を弄ったりしてもらってるわけだけど。
成果はと言うと……。
宴会でのつまみに事欠かなくなったのと、収納BOXの内容量が増えた程度。
要するに、成果無し。
「いい加減諦めたら? 私でもどういう仕組みで発動してるのかさっぱり分からないんだから」
「それでも咲夜がいるうちに、可能な限りデータは集めておきたいのよ」
「そういう執念深さも、魔法使いに必要な要素かしらね。チーズとワイン貰うわよ」
自分でも半ば諦めているけど、何かの拍子に進展があるかもしれない。
継続は力なり。半端な所で諦めて後悔する羽目になるのだけは避けたい。
なにせ、こんなレアな能力を持つ者が二人と現れる保証は無いのだから。
「この家は快適ね。何でもかんでも人形がやってくれて、お姫様みたい」
「レミリアの気持ちが少しは分かるんじゃない?」
「そうね、とっても気分がいいわね」
座っているだけで、人形達がグラスやクラッカーを持ってきてくれる。
他にも、気を利かせてあれやこれやと世話を焼いてくれる。
多少のコミュニケーションも取れるし、愛嬌もある。
何よりサボらないし文句も言わない、まさにパーフェクトメイドだ。
「そのお嬢様のとこへは帰らなくていいの?」
「まだ大丈夫よ。帰るのに時間はかからないもの」
それでも、人形に出来ない事は山ほどある。
ルーチンワークならばプログラム通り完璧にこなすけど、流石にレミリアの我侭に付き合えるほどのAIはない。
それを分かっているのか、十六夜咲夜としてのプライドか、今までどおり咲夜がレミリアの従者をやっている。
メイドの仕事はサボるくせに、従者としてはきっちり働くからマメなことだ。
あのお嬢様に振り回されて何が楽しいのかよく分からないのだけど。
そんなに大事なら、吸血鬼にでもなって一生お仕えすればいいと思うのだけど。
もしかして、自分が死ぬまでの期限付きだから頑張れてるのかしら?
・・・
咲夜はいつものメイド服に着替え、帰る前の最後のティータイムを楽しんでいる。
咲夜特製ブレンドの紅茶を二人で飲む。
とても美味しいから配合を教えて欲しかったんだけど、企業秘密って断られた。
飲みたくなったらいつでも呼んで、と言っていたけど。
咲夜が死んでしまう前には、なんとしても聞きだしてやろうと心に誓っている。
あるいは、自分の舌で配合を見抜いて驚かせてやりたい。
どちらにせよ、一朝一夕にはいきそうにないけどね。
小難しい事は考えず、今はこの紅茶を楽しむとしよう。
咲夜は喋らない。
帰る前のこの時間だけは、咲夜は本当に人形のようになる。
何を考えているのか分からないし、どこを見ているかもよく分からない。
気が抜けてて、押したらそのまま倒れちゃいそうな。
随分と気を許してくれていることだ。
オンとオフを切り替えてるのかしら?
私はいつまで、こうやって咲夜とお茶を飲むことが出来るのかしらね。
「そろそろ帰るわ。今日はありがとう」
「どういたしまして」
外を見ると、もう日が落ち始めている。
一時間もしないうちに、世界が紅に染まり、あっという間に闇に飲まれてしまうだろう。
そして、あのお子様吸血鬼が起きる時間になる。
それまでには、館に戻って何食わぬ顔で働いているに違いない。
忙しいことだ。半日程度の息抜きで、本当にリフレッシュ出来たのだろうか?
咲夜が立ち上がる。
私も見送りのために席を立つ。
道案内のために、人形を一体咲夜に預ける。
咲夜が、私の頬にキスをする。
「ここは居心地がいいから、本当はもっとゆっくりしたいんだけどね。
あんまりお嬢様を放っておくわけにもいかないから」
人形を胸に抱き。名残惜しそうに玄関へ向かう。
並ぶと、咲夜の背の高さがよく分かる。
もしかしたら、私よりよっぽど大人なのかもしれない。
私より、色んなものが見えているのかもしれない。
何も出来ない子供が、格好いい大人に憧れるような、そんな羨望を覚えてしまう。
魔法使いになるのを、少し早まったかもしれない。
「楽しかったわ、ばいばい」
「ばいばい、またいらっしゃい」
「そのうちね」
咲夜が紅魔館に帰っていく。
彼女はそこにいるのが相応しい。
昼はメイドで、夜は従者。
ひ弱な人間なんだから、無理して体を壊さないといいけど。
無理をしないように、私が支えてあげればいいのかな。
咲夜がおばあちゃんになったとき、咲夜の眼に私はどう映るだろう。
生きた歳月相応に、ちゃんと分別がついてるだろうか。
それとも、やっぱり外見相応の小娘のままだろうか。
あと30年くらい経ったら、咲夜おばあちゃんに聞いてみよう。
そして、人間として生きて後悔は無いか、人間として死ぬ事に迷いは無いか、改めて聞いてみようと思う。
きっと、瀟洒な笑みを浮かべて、私が嫉妬してしまいそうな素敵な答えを聞かせてくれるに違いない。
全てが紅に染まり、藍に侵食され、闇に包まれる。
これからは妖怪の時間。
健全な魔女は早めに眠るとしよう。
なんだか疲れちゃったし。
今日一日くらい、サボったところで誰も文句を言うまい。
おやすみ、咲夜。
またお話聞かせてね。
完全オフモードの咲夜さんは新鮮ですねえ。甘えっぷりが可愛いです。
咲夜さんが逝く時も、なんとなくな感じで付いていきそうな印象を受けました。
そんな端から見ると少し抜けた感じのする二人が大好きです。
さすがは瀟洒な咲夜さんだw
この作品のレビューを下のURLにもあげておきましたので、どうぞ参考にしてください。
http://bantenmaru.at.webry.info/201009/article_1.html
レビューを書く事を快諾してくださった作者様、ありがとうございます。
力を抜いて、年相応になる咲夜さんもいいですね。
二人が今の時間を大切にしているのが伝わってくる、しんみりした雰囲気の良いお話だったと思います。