携帯電話とは、かくも便利なものにございます。
家に居ながらにして他所の友人との会話ができ、式を飛ばさずともあらゆる情報を知ることができます。
待ちぼうけすることもなくなり、迷子の時も役に立ちます。
わざわざメイドを連れて決死の日下行進をすることもなくなります。
式に「せめて命令のときくらい起きてください」と言われ万年床の中から這い出ることもなります。
ハイカラな男性はモテるし、流行に敏感な女性はとても魅力的でございます。
そんな携帯電話が今なら二ーキュッパ!
一家に一台!
いや、一人に一台!
皆様の手に携帯電話を――
――とかいう怪しいキャッチフレーズが、新人天狗の一件ののち幻想郷各所に広まっていた。流したのは河童と天狗である。なぜ、と言われても確かな答えはない。広めた張本人たちからして「なんでだっけ」「よく思い出せない」などと言っている。申し訳ないがこの答えでどうか納得していただきたい。納得できない場合には、大天狗様が直々に話を聞くと言うので、すぐ山に登るといい。ただ、葬式代を出すのは残された家族であることを念頭に置いておいてほしい。
ともかく、天狗たち独自の方法によって無理矢理流行となった携帯電話は、工業的に量産され、格安で売りに出され、妖怪どころか人里にも支店が出来た。年月にしてほんの半年足らず。今では「持っていない」などと言えば、どこにお住まいの貧乏巫女ですか? とか、冬眠でもなさっていたのですか? とか心配されてしまうくらいになった。さらに驚いたことに現在、そのような皮肉を言われ、流行なんぞ乗りたくても乗れないはずの貧乏巫女ですら携帯を所有しているのである。
流行はすでに流行の域を超え、携帯を日用品と位置付けるに至っている。もちろん流行らせた本人たちですら予測していなかっただろう。
これは、そんな幻想郷での小話。
**
「静かでいいわね」
掃き掃除もそこそこに、縁側に腰を下ろした霊夢は、陽だまりでとぐろを巻く猫のように寝ころぶ魔理沙へ言葉を投げかけた。真剣に寝ていたらしい魔理沙は眠そうに薄目を開け、ひとつあくびをして起き上った。
「そうだな。誰も来ない」
背伸びして、関節をほぐして、それから屈伸する。自分の部屋が雑多で狭いせいか、あまり範囲を取らず寝起きの運動をするのが魔理沙の癖だった。また、この癖を認識しているのは霊夢のみである。霖之助も知らない。魔理沙すら知らない。
「こなくていいのよ、妖怪なんて。来たら煩い、荒される、いいことない」
「参拝客の話だぜ?」
「サン……パイ、ギャグ?」
「すまん、言い過ぎた」
魔理沙は乾いた笑いで話を切る。霊夢の目にただならぬ哀愁が見え隠れしたため、これ以上は彼女の精神と自分の肉体に多大な損害が出る危険があると判断したのだ。霊夢の発狂なんてあまりに恐ろしい。嫌な未来を想像してしまって思わず出た「むむぅ」という声が境内に響く。神社はそれほど静かだった。
携帯が流行してから、神社に妖怪は殆どこなくなった。用事はだいたいメールや電話でどうにかなるためだ。さらにはテレビ電話と呼ばれる、モニターによって相手の顔が見えかつ複数人相手に喋れる専用機器が出回ったため、用事のない連中すらこなくなりことさら神社は閑古鳥となっている。だが霊夢はそれを寂しいと思うような人種ではない。先ほどのように、静かでむしろ良いとすら思っていたりする。本人がそう話していたので間違いないと魔理沙は言う。
突然、魔理沙の帽子から軽快な電子音が聞こえてきた。でぶつぶつ呟いていたその音霊夢はびくっと肩を揺らす。授業中寝ている寺子屋生徒の真似ではない、精神が正常に戻ったのだ。魔理沙はホッとした。
「なによ、メール?」
「いや電話。……もしもし」
そう言いながら、魔理沙は手慣れた手つきで携帯を操作し、話し始める。そのまま声の聞こえない場所に移っていった。なぜか電話をするとき皆する行為だ。霊夢はいつもこれを見ると、話声を気にする人がいない環境で離れてもあまり意味がないだろうにと思う。
魔理沙が見えなくなった途端、心なしか周囲の音量が下がったような気がした。その錯覚により霊夢は一人になったことを自覚する。
とても静かだ。あるのは自分がお茶を啜る音と、風。枝の摩擦音。静かすぎて、耳がキィ―ンッと鳴る。静けさが耳に痛いというやつである。この耳鳴りに耳を傾けると、音がどんどん大きくなっていって煩いくらいになる。これは一体どんな仕組みになっているのか、そんなことを考えた。こんなものは紫あたりが考えればいいと思いながらも、やっぱり気になる。
「いやぁ、携帯って便利だな」
「終わった?」
「ああ」
思考に集中し始めた途端、魔理沙が帰ってきた。心の中で間の悪い奴と舌打ちする。
「明日にさ、ここで宴会しようだと」
「宴会?」
「うん」
「……待って。なんで場所を提供する私よりあんたの方が先に連絡がいくのよ」
「いきなり大人数で押し掛けた方が断られにくいからだろ」
「迷惑なところだけシッカリしてるわよね、あんたら」
無言で頭をかく魔理沙に、霊夢はため息をついた。悔しいがもう霊夢の中にはある種の覚悟みたいなものがある。いうなれば聖人のような達観した精神状態、つまるところ諦めている。
その後、夕食を作って、お風呂に入って、魔理沙が帰ってからメールで宴会の連絡が来た。内容は全て決定事項であった。泣きたくなった。
**
宴会が始まってしまえば、もう誰も明日のことなんて気にしない。若者(心が若いという意味である)が集まればどこでもそうだろう。あちらでは倒れるまで飲み比べ、こちらでは早食い大会、上を見れば弾幕ごっこ。これが幻想郷博麗神社での宴会である。このコンスタントに自分の体をいじめる作業に反対するものは一人もいない。なにかの宗教の戒律なのかもしれない。
だが、宴は必ず終わるもので。終わったら片づけが待っているわけで。でも酷い二日酔いで片づけなんて出来る奴はいないわけで。つまり次の日は、散らかったものを纏めるのが精いっぱいな連中が皆永遠亭に送られてしまい、少数の大して飲まない派であるメイドや風祝、二日酔いの概念がない鬼たちが残ることになる。
「全く、毎回騒ぐだけ騒いで……」
「まぁまぁ。私がいるからいいじゃん。ゴミくらいいくらでも萃めてやるよ」
霊夢は萃香の言葉に不満そうに頷く。
確かに、後片付けに萃香の能力は偉大である。早苗曰く「一度萃香さんを見た現代人はもう二度と掃除機なんて使えないです」だそうだ。それに加え咲夜の能力もあるため、言うほど負担にはならない。しかし、それでもなにか言いたくなるのが人間だ。そのあたりの感情についても諦めている霊夢である。
「じゃ、私も帰るかな」
最後の食器洗いが片付いたところで萃香が言った。咲夜と早苗は、家で二日酔いに苦しむ家人がいらないほどいるため、すでにひと足早く帰宅していて残っているのは彼女だけとなっていた。
「えっ、もう?」
霊夢が何気なく返した一言に、萃香は目を丸くする。
「おお、どうしたの霊夢。明日の天気はお酒かな」
にやにやする萃香に霊夢は眉を上げる。
「なにがよ」
「いや、あの霊夢がさ。妖怪が神社にいるのをあれほど嫌がった博麗霊夢が、そんなこと言うとはね」
「……別に、深い意味はないわ。いつもグダグダしてくから意外だっただけ」
霊夢がちょっと冷たい口調で話す。ちょうど異変のときのようだった。
「ま、いいや。寂しくなったら……天子のケータイなんとかに電話してよ。誰か出るから」
そりゃ誰かは出るさ、とは言わず、はいはいわかったわと突き放した。その様子に、なぜかむかつくほど満面の笑みを見せ、萃香は霧になって消えた。
**
宴会の後の疲労感は、何かを成し遂げた達成感に似ていると思う。恐怖の大宴会を生き抜いた者にしか味わうことのできないトクベツな感覚なのだ。そして、そんなアホなことを寝ころびながら考えられるのも、宴会の後のトクベツだ。
霊夢は開けっ広げた部屋の真ん中で寝ころんでいる。疲れた体には部屋の真ん中に大の字が一番の薬であるという霊夢式民間療法に基づいてのことである。
静かだ、と思った。最近はよくこんな静けさが自分を襲う。静かなのは好きなので良いけれど、眠くなる。
何か考えよう。
かすかに残る酒とつまみの香りが、昨日のどんちゃん騒ぎを思い起こさせる。あれは楽しかった。いの一番に萃香が勇儀と飲み比べを始め、宴会序盤で酒がなくなりそうになった。その流れで酔った誰かが「鬼はもっとしおらしくあるべきだ」と言いだした。それから、しおらしい鬼はどうなんだと議論が展開され、最後は吸血鬼は鬼に入るのだろうかというズレた話になった。そこでレミリアが「吸血鬼は皆しおらしくて孤高の花のようなのよ」と発言したせいで、議論はさらなる盛り上がりをみせる。初めはレミリアはしおらしいかの話をしていたはずだが、酔っ払いの発想力は天才のレベルである。至った結論は、レミリアは吸血鬼じゃない。だった。どうやってその結論になったのかはもう分からない。
それから、それから……。
ええと……。
…………。
――。
「霊夢~、来たぜ」
「――っ。……また来たのあんた」
魔理沙の声に霊夢は、閉じそうになった目を気合いでこじ開け、覚醒した。それでも眠いので腹筋に力を入れてうおおっと吠える。バカらしくなった。魔理沙が笑っている。
外はまだまだ明るい、今寝ると夜寝れなくなる。第一夕飯の支度がまだだ、寝る訳にはいかない。頭をブンブン振ってから無理に起きる。
「寝てたのか?」
「ううん。横になってただけ」
「そうか、なら布団貸してくれ。寝る」
神社に来てまで寝ようとする魔理沙に霊夢は何も言わない。元々よくわからない行動ばかりする奴だからだ。
無言で押入れを指差す。そこにあるから自分で敷けというジェスチャー。魔理沙はサンキューとあまりありがたみのなさそうな言い方でお礼をし、布団を敷き始めた。
数十秒で布団は敷き終わり、魔理沙はその中に潜り込む。霊夢はぼーっとする頭でその作業を見ていたが、このままではまた寝そうだったので仕方なく立ち上がる。魔理沙が静かなうちに夕飯の支度を済ませようと思った。そして台所まで歩いていくが、足にまだ力が入らなかった。頭が覚醒しきっていないようだ。
そういえばと、ぼやける頭で考える。
魔理沙はいまだに毎日神社にくるなぁ、なんて。携帯があるのだから神社に来る理由はないはずなのに、不思議だと思った。
思ったのだが、マトモな理由付けするだけの気力はない。どうせ毎日神社に通うと世界を制する力が云々とか訳のわからない願掛けでもしているのだろう。あいつの行動原理はそんなもの。すでに夕食のことで頭が埋まりかけていた霊夢はそう結論づけた。
寝苦しいのか、なにやら苦悶の表情を見せる魔理沙を尻目に霊夢は支度を始めるのだった。
**
「いぃたっだぁきまぁす」
あくびと言葉が混じるよくわからない発音と共に、魔理沙は手を合わせた。今晩も彼女は博麗家で夕飯である。
ちょうど食事が出来たくらいの、起きて時期を窺っていたのではないかというほどのタイミングで魔理沙は起床した。食べていくなんて一言も言っていなかったが、霊夢は最初から二人分作っていた。どうせこうなるだろうと読んでいたのである。魔理沙限定のサトリだ。
「頭痛いぜ。……こんなときは迎え酒だな。霊夢、例のブツを」
「レイもムもないわよ。水にしなさい、水に」
「上手いこといったつもりか」
ははっと笑ってから魔理沙は頭を押さえた。眉がよっている。平静を装っているようだが内面では二日酔いとの壮絶な殴り合いが展開されているようだ。それを見た霊夢はやれやれと立ちあがって、水がめに向かう。そうすると、歩いているときに出来るちょっとした思考の空白に、ふと辛そうな魔理沙の顔と昼間の疑問がリンクした。
「そういえばさ」
水の入ったコップを差し出しながら、何気ない感じで霊夢は言った。魔理沙は無言でコップを受け取る。
もしや、なんていうある種の期待はあった。ここ最近の静けさ、それについての行動ではないかという期待。自分が寂しがると思っての行動ではないかと。そんな可愛らしいことを、この少女は考えているのではないかと。ちょっとの期待と、いつもの雑談の種として、言葉を続ける。
「なんであんたは、毎日ウチに来るの?」
「え、駄目か?」
コップの水を一気飲みした魔理沙が驚いた顔で霊夢を見る。
「そういうわけじゃないわよ。でも携帯があるじゃない、わざわざ出向かなくったってさ」
「ああ、まぁな」
「どうして来るのよ」
「んー」
「ちゃんと言いなさい」
「それはだな」
「うん」
「……言わなきゃだめ?」
「うん」
魔理沙はまいったなといった風に視線を逸らす。少しの間があって、もう一度霊夢を見る。少し息を吸って、止める。霊夢は一緒に時間が止まったように感じた。
「ご飯出るから」
「は?」
「いやさ、お前の家に行けばご飯は出るじゃん。もっと言うならお酒も出るんだぜ? いかないわけないだろ、そりゃ」
さらさらと練習でもしたのかと思えるほど滑らかな文字列が魔理沙の口から吐き出された。そして、ちょっと上目づかいに笑う。
霊夢はむかついた。何がむかついたかって、このちょっと顔を赤らめた魔女の顔が不覚にも可愛くて、さらにはその表情から自分が少しばかりの期待をしてしまっていたことにだ。
そうなのだ。こいつはそういう奴だった。特に何も考えずなぜか自分の隣にいつもいる、いわば自分の対称者……いやそれではカッコよすぎる、正確な表現なら背後霊かそこらだろう。または割り箸についてくる爪楊枝。そんなオマケか使い道のなさげな奴なのに自分は何を期待したのか。よく考えてみればこの魔女が「静かなのが寂しいと思って~」なんて調子のいいことを考える訳がないのだ。考えたとしても、捻くれた精神が邪魔をして行動まで起こさせない。曲がった蛇口がまともに水を出さないのと同じだ。
霊夢は、完璧に馬鹿を見たと悔しくなった。
「……お風呂入ってくる。片づけは頼んだわよ」
「ん、なんで怒ってるんだ、おい。おいって」
焦って立ち上がろうとする魔理沙を睨みすくませ、ついてくるなとアイコンタクトを送ってやる。小動物チックな目で怯んだ魔理沙は大人しく従って座っていた席に正座した。まるで猛獣使いとリスのような構図だ。ずっとそうしていろと思う。
いつも隣にいるからといって、余計なことまで求めるのはよくない。隣にいるだけで十分だ。オナカイッパイだ。胸焼けすらしかねない。霊夢は心の中で存分に罵詈雑言を浴びせてやって、ぴしゃりと障子を閉じ風呂場へ向かっていった。
**
霊夢をを見送った魔理沙は、しょげた風にもそもそと残ったおかずを平らげて、皿を台所へもっていく。それから皿をタライに張った水に浸けて、案の定怒られたな。なんて思う。そしてホッとした。なんとか煙に負けたとひとり笑う。
奴はどんな答えを期待していたのだろうか。自分の普段の行動を考えるならば、あんなようなことを言うと思わなかったのだろうか。それとも、あの厄介な直感が鈍いながらも働いたのだろうか。魔理沙は少し考えてみたが、上手い答えを思い浮かべられなかった。
次に聞かれたらどう言おうかと考えて、多分もう聞かれることはないだろうと思い至る。これは自分の直感だったが、おそらくもうすぐ以前のように騒がしくなる。なぜなら、携帯は会話が出来るだけだからだ。会話程度で満足する連中は初めから神社にこない。だから、誰かの、または何かの弾みで、そう遠くないうちに元に戻るだろう。
だから、もうすぐ独り占めは出来なくなる。
だから、もう聞かれることはなくなる。
それにどちらにしろ、面と向かって言える訳がない。
「携帯なんかじゃ、お前の隣にいられないからな……」
月に呟いた少女の一言は、誰にも聞かれず消えた。
**
あの静けさが嘘のようだった。
霊夢曰く残念なことに、神社は以前のように騒がしい魑魅魍魎の巣窟となっていた。宴会のあとしばらくして、また少しずつ妖怪たちが神社に集いだしたのだ。その人数は加速度的に増え一週間程度で元通りになった。皆携帯に飽きたのだとか萃香が何かしたとかいう噂がまことしやかに囁かれたが、確証は得られなかった。なので客観的な説明としては、神社が再び妖怪に占領されたことになる。霊夢としてはこれ以上ない不名誉な説明であるが、本人は持ち前の諦めの精神で現実逃避を完了していたため、あまりダメージはないようだった。時折、そのうち死ぬ気じゃないだろうかと思えるほど深いため息が漏れるだけである。
「結局いつもどーりじゃん」
「だな。初め霊夢は嫌がってたみたいだったが」
騒がしい神社にて、魔理沙と萃香は並んで縁側に座っていた。霊夢は境内で見張り兼掃除だ。境内では妖怪たちがわんやわんやと遊んでいるため、目を離すとミスで鳥居が消滅したりするのである。
「ねぇ、魔理沙」
「んー」
何度目かの酒の誘いをやんわり断りつつ魔理沙は返事する。見ると萃香はなぜかむかつくほど満面の笑みを見せていた。嫌な予感がする。
「なんで魔理沙は毎日神社に通うのさ」
「……デジャヴだな」
顔をしかめる魔理沙に萃香が「そなの?」と言って笑った。
「霊夢にも同じこと言われた」
「へぇ……! それで?」
「飯が出るからって言った」
「……で?」
「怒られた」
苦笑する魔理沙に、萃香は小さくいくじなしと呟いた。聞こえなかったようで、魔理沙は何も言わない。
「ま、あんたがそれで良いなら良いさ」
「ああ」
頷く少女の横顔をちらりと盗み見て、萃香は思った。以前のようになって、こいつはどう思っているのだろうかと。
彼女は霊夢と一緒に居たいのだろう。出来れば二人っきりの時間を共有したいのだろう。それはこの年の人間にはよくある考え方であるし、自分なりに理解も出来る。妖怪の自分から見ても、博麗霊夢とは不思議な魅力を持った人間だからだ。独りに慣れている妖怪ですらそう思う。その感情は独占欲からか、あるいは別の感情からか、そこまでは分からない。流行と同じ、理由のない、言葉にするのが難しいことだからだ。それでも一緒にいたいと思う。だがしかし、この騒がしくなった神社では、霊夢だけといることは難しい。常時誰かいるので、そんな状況そうそうなくなる。現に今だってそれは叶っていない。それを魔理沙はどう思っているのか、疑問がわいた。
「そうだ、魔理沙」
「なんだ?」
「そうだなー」
「どうしたんだお前」
「言っていい?」
「いいぜ」
少し間があった。萃香はちょっとだけ視線を外して、少し息を吸って、止める。魔理沙は一緒に時間が止まったように感じた。
「また神社に妖怪が集まったのは私の能力のせいって言ったら、どうする?」
「どうもしないよ」
止まった時間が緩むまでしばらくかかった。元に戻ったあとも、魔理沙はしばらく萃香をじっと見つめていた。萃香は、そうなのか。と、どこかの妖怪のようなことを思う。
まだ完全に戻っていないのだろうか。騒がしいはずの神社は、いやにゆっくりしていて、静かだ。
萃香は笑った。
魔理沙は、静かに微笑み返した。
それでも、霊夢との距離を守りたいと願う乙女な魔理沙がいじらしいですな。
霊夢と一緒にいたい魔理沙がすごく可愛いですな!
携帯と境内をかけた洒落ですね。