へたれ向日葵さんの方言SSに九州弁バージョンを軽くコメントしたらリクエストされたので書いてみました
・キャラは全員九州弁です
・てるもこ?です
・なんと言ってるか分からない方はコメントで聞いてください
・日本てるもこ協会公認です
夏の日差しも日毎に暑さを増す幻想郷
迷いの竹林も例外でなく、永遠亭の軒下に吊り下げられた風鈴だけが唯一、涼を感じさせた
「はぁ~、暑かねぇ…」
そういいながら、永遠亭の主である蓬莱山輝夜は、縁側でタライに溜めた水に素足を浸している
裾の長い着物を膝まで捲し上げ、普段は隠されているその白い足が露になっている
「姫様、そぎゃんみっともなかこつせんで部屋に入りんしゃい」
誰が覗く…ということもないだろうが、仮にも姫である輝夜が人前で素足を晒しているなど、年頃の乙女としてははしたない所業であろう
冷麦をゆでていた永琳が、汁の入ったボトルをもってちゃぶ台に並べていた
「今日も冷麦ね、もう飽きたばい」
輝夜が恨めしげに言った。もう三日も続けて冷麦である
夏場は永琳も忙しく、あまり調理に手間をかけない冷麦は便利であるが、流石にこうも続くと飽きてしまう
「そげんいうてん、お中元でもろたとんまだいっぴゃああるけん、はよ喰わな悪なるばい」
そういいながら、永琳はそそくさと食卓の用意をする
普段からグータラしている輝夜と違い、永琳は診療所の業務に、薬を作ったり忙しいのだ
「はぁ~あ、甘~いカルピスが飲みたかねぇ…」
輝夜が漏らした。あの甘酸っぱいカルピスの味
普通は水で割って飲むが、氷を敷き詰めたグラスになみなみと注いで飲む「オン・ザ・ロック」が通の飲み方だ
「今は不景気やけん、どこも安かモンではぐらかしとるったい
そうそう、今日は慧音先生がお中元ば持ってくっごていいよらしたけん、カルピスば持ってこらすっちゃなかね」
永琳が言った。人間の里で寺子屋をやっている慧音とは浅からぬ縁がある
去年、一昨年と慧音のお中元はカルピスだったので、今年もカルピスの可能性は高い
「ほんなごつね、はよこらっさんかな」
カルピスが来るかもしれない…、そう思っただけで輝夜の胸は弾んだ
恐るべきカルピスの魔力である
ピンポーン―――!
そう思った矢先、永遠亭のチャイムが鳴った
普段、鍵を掛けることも無いこの屋敷に、わざわざチャイムを鳴らしてくるのは慧音くらいだ
「あら、噂をすればやね…」
「やったー、カルピスー!!」
輝夜が喜びいさんで玄関に向かった
ふだんは自分で動くことをしないくせに、こんな時だけは現金なものである
しかし、玄関に着くや、それまでの喜びようとは打って変わって、静まり返った
「よう…、御免」
ぶっきらぼうな挨拶でそこに立っていたのは、白い髪に紅白のリボン、もんぺを履いた藤原妹紅だった
「なんね、あんたやったんね。なんの用ね」
妹紅の姿を見た瞬間、輝夜のテンションは駄々下がりだった
こんな暑い日には会いたくない、暑苦しい女である
「慧音が夏風邪引いて寝込んどっけん、代わりにお中元ば持って来たったい」
ムッ…としながら、もぞもぞと縦長の丁寧に包装された箱を差し出す妹紅
どうやら、慧音に代理を頼まれたらしい
他に頼むべき人間がいなかったのだろうか?
「そやんね、ほんなら確かにもろうたけん、とっとと帰りぃ…」
犬を追い返すような仕草で、輝夜は妹紅を追い返そうとする
流石に、このクソ暑いなかをわざわざ届けに来てやったというのにこの仕打ち
ただでさえ、ここには来たくなかったというのに
「なんかきさん!、あんま舐めとっと、くらぁすぞ!」
妹紅が右手の中に炎を呼び出した
「ふん、できるもんならやってみんね!」
輝夜も挑発にのるように、臨戦態勢をとる
「姫!、せっかく持ってこらしたとに、なんちゅう口ば利きよっとね!」
二人の騒ぎを聞きつけて、永琳が飛び出してきた
輝夜にお小言をいいながら叱り付ける
まるでお母さんのようだ
「妹紅ちゃん、うちの姫がいたらん口ば利いて悪かったね
暑かったやろ、上がって麦茶でも飲んでいきぃ」
妹紅に謝りながら、永琳が言った
永琳の言葉に、妹紅も機嫌が直る
「よかよか、あんたも忙しかろうけん、気ぃ使わんちよか」
永琳の申し出を、妹紅はやんわりと断る
「なんば遠慮しよっとね、大したもんはなかばってん、玄関口で帰したら申し訳なかたい」
断る妹紅を、無理やりにでも引き込もうとする永琳
本当は、妹紅の言うとおり、永琳も忙しいはずなのだが
「いやいや、ほんなごつよかて、うちも今度の夏祭りん準備があるけん忙しかとよ
ほんと、気ぃ使わんでよかけん」
永琳の申し出を、妹紅は頑なに断る
永琳が忙しくなって部屋を出れば、輝夜と二人っきりになってしまうかもしれないからだ
「そやんね、ほんなら患者さんからのお裾分けばってん、これば持っていきんしゃい」
そういうと、永琳は隣の部屋から袋に入った甘夏をもってきた
先日、検診した患者が持ってきたものである
「いつもいつも悪かねぇ、そんじゃあ、そえぎんた」
「はいはい、気をつけて帰りんしゃい」
妹紅は踵を返し、永遠亭を後にした
輝夜は妹紅が見えなくなるまで、アッカンベーをしていたが、永琳の鉄拳が振り下ろされる
「もう…、姫様は妹紅ちゃんが来ると、いつもあげんかこつばっかいして
ウチが恥ずかしかやんね、恥ばかかせんとって」
永琳がブリブリと起こりながら座敷に戻っていく
食卓では、すでに優曇華とてゐが食事の準備を終え待っていた
「永琳、慧音先生からのお中元、空けてよかっちゃろ」
いうが早いか、輝夜はすでに妹紅が置いていった箱の包みを破いていた
「もう、姫、お行儀が悪かばい」
永琳が呆れながら言った
「ありゃあ、カルピスやなか…。琵琶ゼリーばい」
そこに入っていたのは、カルピスではなく長崎名物琵琶ゼリーだった
輝夜がショボーンとしているなか、てゐが床に落ちた紙きれを拾う
「姫様、これ手紙ばい」
そういって、てゐが紙切れを輝夜に差し出す
それは、慧音が妹紅に当てた手紙であった
「なになに…
『親愛なる妹紅殿、酷暑の候、お身体にお変わりはありませんか?。蓬莱人なのだからお変わりがあるはずがありませんね。私は忙しさにかまけ、体調管理を怠って調子を崩しております。貴方には心配をかけるかもしれませんが、これも身体を大事にせよとの天からの声なのかもしれません。
それはそうと、今年こそは輝夜との仲直りをしてください。貴方達が毎度の如く命のやり取りをするたびにこちらは寿命が縮む思いです。どうか、今年の夏祭りまでに…。
それでは、時節柄、ご自愛のほどを…。 慧音』
…ですって」
輝夜は、声を出して慧音の手紙を読んでしまった
再び、永琳の鉄拳が輝夜の頭部を襲った
「もう、姫様、勝手に他人の手紙を読んだらいかんばい。どうやら、妹紅ちゃんが私達の分と自分の分を取り違えて持ってきてしもたらしかね」
「ふん、妹紅もそそっかしかねぇ」
困った顔の永琳が、困った顔のまま輝夜を殴る
どうやら、妹紅が自分の分と永琳達にやる分とを間違えたようだ
「お師匠さん、どげんすっと?。こん後は、人間の里に回診にいかんばいけんし
今日は熱中症になっとう人が多かけん、帰りもおそなるばい」
優曇華が言った。永琳も優曇華も、この後は人間の里に出向かなくてはならない
てゐはこんないうことを聞かないだろうし…
「困ったねえ、どやんしようか…」
永琳が腕を組んで考える
…と、言っても、答えは一つしかない
「しょんなか、姫様、悪かばってん、これば妹紅ちゃんに届けちゃらんね」
結局、輝夜に頼むしかなかった
「ええ~!、めんどクサか~!」
当然のように、輝夜は嫌がった
普通の日だって、外にでるのがイヤなのに、こんなクソ暑い中、しかも妹紅の所に出掛けるなんて…
「文句ばっかい言わんでよ。里に行ったらカルピスば買うてくるけん」
輝夜をカルピスで宥める永琳
輝夜は渋々、妹紅の家に向かった
永遠亭と人間の里の中間地点、妹紅の家はそこにある
古風な書院造りの永遠亭と違って、粗末なあばら屋といっていいほどの小さな小屋である
もちろん、チャイムなどありはしないが、大抵は妹紅は鍵も掛けずに出かける
輝夜は遠慮もせず、玄関を開けて中に入った
「妹紅、おるっちゃろ、返事しぃ…」
人様の家だというのに、全く遠慮せず輝夜は中に上がる
「輝夜、きさんなんばしにきたとや」
勝手に家に上がってくる輝夜を、妹紅は凄い形相でにらみつけた
当の輝夜はどこ吹く風で部屋に入り、ちゃぶ台に腰を落ち着けた
普段出歩かない輝夜は、ほんの僅かな距離を歩いただけで疲れ果て、一刻も早く休みたかったのだ
「あんたが持ってくるもんば間違えたけんたい」
そういうと、輝夜は妹紅が間違って渡した琵琶ゼリーを差し出した
「ああ、ウチもいま気付いたけん、後で持っていこうと思っとったったい」
ちゃぶ台の横には、封の開いた箱が置いてあり中にはカルピスが入っていた
「そやんことより、麦茶ば頂戴。暑くて喉カラカラばい」
手で顔を仰ぎながら、輝夜は妹紅に麦茶を催促した
妹紅が来た時はさっさと追い返そうとしたくせに、図々しい
「はぁ~、それんしてん、この小屋はいつきてん暑かねぇ」
妹紅が出した麦茶を啜りながら、輝夜が言った
確かに、部屋中の戸を開け放っているが、ちっとも風も入ってこない
風通しが悪い上に、日差しをモロに受けるこの小屋は暑い
「こげん暑か部屋おったら、全身あせもがでくっばい。クーラーでも買わんね」
最近、妖怪の山の河童達が外の世界から入ってきたエアコンを自分達で開発して売っているらしい
価格は、目玉が飛び出るくらいに高いらしいが、それは夏でありながら冬になったかのように空気が冷たくなるらしいと評判である
紅魔館や守矢神社ではさっそく導入されたらしい
「ふうけもんが、そやんかもんに頼ったらいかんばい。暑かったら水浴びでもすりゃあよか」
実際、妹紅の資金力ではとてもエアコンは買えないが、妹紅はそれを口にすることができなかった
「ふぅん、ウチもつけたかばってん、永琳が怒るっちゃんね。『ただでさえ出歩かん姫様にそぎゃんかとやったら、ますます外に出んごてなったい!』って」
それは、確かにいえている
妹紅の家に来るだけでもこれだけ億劫なのだ。エアコンなど入れた日には、それこそ完全な引き籠りになってしまうだろう
「ああ、ほんなごて、今日は暑かばい。妹紅、団扇であおいでんさい」
そばにあった団扇を、妹紅に差し出す
「アホか、ウチは今度の夏祭りの用意で忙しかったい。麦茶飲んだら、とっとと帰りぃ」
さっき輝夜が言った台詞を、そのまま帰す妹紅
「なによ、妹紅のケチンボ!、貧乳!、天狗の新聞に『竹林に住むM・Fさんは、全身水虫になって乳首が黒い』って投書してやる!」
言われたら、100倍にして言い返す輝夜
輝夜の暴言に、妹紅もキレた
「なんかきさん!、大体、そやんか厚着しとっけんが暑かっちゃろうが!、脱げ!、見とるだけでん暑苦しか!」
妹紅は輝夜に襲い掛かり、その着物を脱がしにかかった
「あん!、なんばすっとね!、やめてよ恥ずかしか!」
妹紅が脱がせようとするのを、輝夜は必死で防いだ
しかし、頭に血が上っている妹紅は、何が何でも輝夜を脱がそうとしていた
…ちょうどその頃、妹紅の家の玄関では、一人の来客があった
今度の夏祭りで、一緒に屋台を出す予定のミスティア・ローレライである
「妹紅しゃん、おらんとね」
玄関から呼びかけるが、返事はない
人の気配はするのに、返事が無いということは、奥で寝ているのかもしれない
みすちーが玄関に手を掛ける。毎度の如く、鍵がかかっていない
無用心だと思いながら、みすちーは妹紅の小屋に入った
「妹紅しゃん、お邪魔するばい」
そういいながら、みすちーは妹紅の家に入った
すると、奥の方からなにやら騒がしい物音がする
「なんね、やっぱりおるやんね」
みすちーは、その音を頼りに進んでいく
襖の開け放たれた部屋に着いた。どうやら、妹紅はこの部屋にいるようだ
「妹紅しゃん、今度の夏祭りの件やけど…」
そういって、みすちーは部屋に入った
そこでみた光景は…
「やめて、妹紅、恥ずかしかばい」
輝夜の着ていた着物は、無残に引き裂かれ散乱していた
輝夜は薄い肌着一枚で、恥ずかしそうに胸を隠している
「なんばいいよっとや、ほら、こん袴も脱げ」
妹紅は輝夜に馬乗りになり、今まさに下半身に手を伸ばし袴を脱がそうとしていた
「も、妹紅しゃん…」
みすちーは唖然となった
以前から二人の仲が怪しいとは思ってたが、まさか白昼堂々、鍵も掛けずにこんな行為に及んでいるとは…
みすちーの漏らした声に、二人が反応し視線を上げた
そこには、二人を見て固まったみすちーの姿があった
「み、みすちー。勘違いしたらいけんよ」
「そ、そうたい。これは…」
二人は必死で言い訳を探すが、どう考えても言い逃れができる状況ではなかった
「し、失礼したばい。用件ば忘れてしもうたけん、また来るばい!」
そういうや、みすちーは脱兎の如く逃げ出した
「ま、待っちゃりぃ!」
妹紅がみすちーを追いかけるが、みすちーは捕まるまいと必死で逃げた
後日、天狗の新聞に二人の情事の記事が載ることになった
しかし、永琳が圧力を掛けたので記事は民間に流布することはなかった
輝夜は、外出するときは薄着をするようになった
けど、なぜか輝夜とみすちーの九州弁には色気を感じます。
華奢な感じとのギャップからくるんですかねー。
つまり、九州弁アリスや九州弁パチェもアリだ!
SS的に九州弁であることになんの脈絡もなく、ほんとにただ全員が九州弁なだけなんだけど
すげえ和む、雰囲気に合ってる そして何故か楽しい
これはこれでありだ
輝夜が普通以上にかわいく、尚かつ色っぽい
もっと方言SS流行れ
それは王道なのかどうか…
>4
アリス「か、勘違いしなさんなや。ウチはあんたのことなんて、どやんも思っとらんけん」
パチュリー「今日と云う今日は許さんち、魔理沙覚悟しなっせ!」
>8
てるもこですから
>9
これは、いわゆるパラレルワールドですので
もしくは、ドラえもんのもしもボックスを使った世界
>11
69は読んだことない
方言SSがはやるかなぁ
楽しかったです
けっこうキツめの方言使ってるんだけどな…
意味が通じてるのかな?
九州弁を以前生で聞く機会があったのですが、意味がわからなくても聞いていて心地がよいものでした。
それと同じように、読んでいてとても心地よかったですわ。
目撃したのが慧音じゃなくてほんとよかった。
いや、思いつきだけで書いたインスタントSSですので、そんなに褒められると…
私にとっては普段の言語なんですけどねぇ
>山賢
慧音にはあんまり方言使うイメージが湧かないですねぇ
東京弁でクールなイメージが…
きさん、って方言やったとね、今知ったし。
でら、は熊本のほうだから無かとか。
すいとぉ、すかん、辺りも入れてほしかったぁ。
あれ、熊本ですか
私も棲み家は熊本です、健軍あたり
昔あったすいとぉパイのCMを思い出しました
あれが好いとぉバイをもじってるのに、今頃気付きました
永遠亭が九州に繋がりなくてもこまけぇこたあいいんだよ!
わさん、なんち言いよっかいっちょんわからんばいwww
いゃ、個人的に大ヒットでした!素敵なssに感謝です♪
ありがとうございます。そのうち続編書くかもね
〉ふーけもんさん
その方言、東松浦郡出身とお見受けしますが。若干、各地方の方言を混ぜてますので、一部不自然かもしれません
方言での会話が妙に和やかな雰囲気を醸し出していますが、内容自体も非常に微笑ましくて面白かったです
俺は鹿児島弁は分からんけどね。熊本弁でも天草や人吉の言葉はよう分からん