最近紅魔館の図書館には魔理沙の他にもう一人の客人が来るようになった。
アリス・マーガトロイド
いつも彼女は午後に訪れるので、この時間は結構しんどいのだ。
だって、私は寝てるから。
いつも寝てるけど、この時間の私は特に深い眠りに入っている。
私が寝ている間にアリスさんは紅魔館へと足を踏み入れている。
門番である私がお通しせねばならないのに、まったくと言っていいほど役目を果たしていない。
少しでもお話出来たらいいな、とは思っているけれど私と彼女では接点が無さすぎる。
だから話す機会がなかなかない。
まあ、私が寝ているのが悪いんだけど…。
「今日も、ぐっすり寝てるわね」
あ、アリスさんの声がする。
なんか久しぶりに聞くなぁ…。
いつまでもこうして寝ていたいけど、さすがに今は駄目だ。
さて、そろそろ目を開けなければ…。
「…アリスさん?」
「ッ!?」
目を開けたらアリスさんの手があった。
綺麗な指先が眩しくて私の血豆だらけの手が少し恨めしくなった。
それにしてもアリスさんパニック起こしてる…?
「ご、ごめんなさい!」
「へ? なにがですか?」
「え、あ…えっと」
突然謝られた。
あれ、私寝てる間になにかしたのかな。
アリスさん、なんか顔赤いし…。
「アリスさん、顔赤いですよ? 大丈夫ですか?」
「ちょ、」
ちょっと心配になって私より背の低いアリスさんの顔を覗き込んでみた。
わあ~、すごく整った綺麗な顔だな。
瞳だって吸い込まれそうな感じだし。
それにしてもアリスさんさっきから微動だにしないけど、本当に大丈夫かな?
「アリスさん? ぼーっとしてますけど、もしかして熱でもあるんじゃ!?」
「う、あ…、めーりん!?」
昔から熱を測るときはおでこをくっつけて調べていたからつい癖でやってしまったけど…。
迷惑じゃないかな?
怒らないかな?
でもこのおかげではっきり判った。
「ちょっと熱いですね。よかったら私の部屋に行きませんか? 横になれば少しは楽になるかもしれませんし」
「へ…部屋ぁ!? いいいいいです! 私もう帰るから!」
「そうですか? なら家まで送りますよ?」
「ええっ!? ここの仕事はどうするのよ!?」
「大丈夫ですよ。咲夜さんに事情を言えばきっと許しは貰えますから」
アリスさんを一人で帰らせてもしものことがあったら私いろんな人に殺されかねない…。
でも、私のこと心配?してくれるなんて、優しいな。
そうしてまたアリスさんのことが気になっていくんだ。
初めて会った時のことはよく覚えている。
魔理沙が『今日は特別ゲストを呼んだんだぜ!』とか言った隣に貴方はいた。
綺麗な金色の髪をした、まるで人形のような人だった。
そこで見た貴方の美しい姿に、私は心奪われたんだ。
まるで生きているかのように人形を操り、戯れ、おしゃべりしている。
あの時の貴方は幻想郷の天使と言ってもいいくらいだった。
「アリスさん? 本当に大丈夫ですか?」
「え? ああ、ごめんなさい。考え事してたの。大丈夫よ」
「そうですか? ならいいんです。それじゃあ咲夜さんに聞いてきますね」
「そんな、悪いからいいわ。だいぶよくなってきたから一人でも帰れるし」
「ふむ。確かに先ほどよりはだいぶ赤らみが消えてきましたね」
「でしょ? それじゃ、私はこれで失礼するわね」
「はい! またいらしてください。いつでもお待ちしてますよ、パチュリー様が」
「……ええ。またね」
最後の一言は私へのけじめ。
貴方が見ているのは私ではなくてパチュリー様だ。
だから毎日と言っていいほど紅魔館に来るのでしょう?
貴方はまたそうやって遠くから見ている私の心に深く棘を刺す。
いつものようにすれ違う毎日が苦しい。
やっぱ相思相愛ですよね、そしていつしかすれ違いもなくなるんですよね。
続きに期待します!
どんかんみすずおいしいです