注意
この作品は
無駄に長い&レイマリ成分が混入しています
以上が大丈夫という心が海よりも深い人のみスクロールしてください
「霊夢。私、霊夢が好きだぜ。友達って意味じゃない。勿論、友達って意味でも好きだけどな。でもそれより上なんだ。誰よりも何よりも霊夢が好きなんだぜ」
いつものようにお茶を飲みに来ていた魔理沙に真剣な目でそう告白された。
しかし私の心は何も感じなかった。
一つ言うとすれば少々の驚きだろうか。魔理沙がそういう対象として私を見ているとは思っていなかった。
だけどそれは気の迷いだ。友人の間違いは指摘してあげなきゃいけない。
「何言ってんのよ。あんた自分の性別分かってる? 女でしょ。それとも私が男に見えるのかしら?」
「ち、ちがっ……。あの、その、男とか女とか関係なくて」
「関係大有りよ。恋愛は男と女がするもんでしょ? それに百歩譲って女同士がOKだとしても魔理沙は私の恋愛対象にはならないわ」
魔理沙は大切な友人だ。間違いは早めに言ってあげるのが正しいと分かっているのにどうして少し胸が痛むんだろう。
「霊夢にとって私は恋愛対象にはなりえないって言うのかよ……? たとえ私が男だったとしても、か?」
幾分、絶望の色を含む瞳で魔理沙が私に問いかける。
「当たり前じゃない。魔理沙は魔理沙。大切な友人よ。それ以上でも、それ以下でもないわ。大方、あんたは憧れとかと人を好きなるってことを勘違いしてんのよ。一晩頭をひやして」
「もういい。霊夢の気持ちは分かった。……邪魔したぜ」
一晩頭をひやして落ち着けなさい、と言い切る前に魔理沙が箒に乗って帰っていった。
その横顔に流れた涙に胸が刺されたように痛む。なんでだろう。私は正しいことをしてるのに。
次の日、魔理沙は神社に来なかった。魔理沙がいないと静かで落ち着ける。
そう思って境内を掃除していると背後から気配が近づいてきた。
「霊夢、話があるの。分かるわよね?」
振り返ると魔理沙の近くに住んでいるアリスがいた。だがいつものような穏やかな雰囲気はない。
「話? 何かしら、あなたまで私のことが好きとか言い出すの?」
言い終わった瞬間、頬に熱いものが当たった。アリスにぶたれたのなんて初めてだった。
「何するのよ。痛いじゃない」
アリスにぶたれる理由が見つからない。特に怒らせるような発言をした覚えもないし。
「なんで魔理沙を振ったの? 魔理沙のことを好きなんじゃないの?」
私が魔理沙のことを好き? ありえない。
私は博麗の巫女であって誰かが特別になるなんてことはない。
「何を言ってるの? 私が魔理沙を好き? あり得ないわ。魔理沙はちょっと仲がいい友達ってだけよ」
魔理沙は友達。魔理沙は友達。魔理沙はトモダチ。
「じゃあ! じゃあ私が魔理沙と付き合ったりしてもいいの!? 霊夢はそれを見て何も思わないの?」
肩で息をつきながらアリスが一気にまくし立てる。
だけど私にとってはアリスが魔理沙と付き合おうが知ったこっちゃない。二人が好きにすればいいじゃないか。
「ええどうぞ。二人の友人として応援するわ」
再度、頬に痛みが走った。アリスの蒼い瞳は怒りと少しの失望が映っていた。
「そうさせてもらうわ。あなたには失望したわ、霊夢」
捨て台詞を残して去っていくアリスを呆然と見つめた。なんで失望されなきゃいけないのかしら。
昨日といい今日といい、私の周りでは理解できないことが多すぎる。
暫くして魔理沙とアリスが付き合い始めたということが天狗の新聞に載った。周りの反応は様々で幻想郷は喧騒に包まれた。
私はというと挨拶にきた二人にいつもどおりの対応をして一応、お祝いの言葉を一言述べた。
そのとき魔理沙は凄く傷ついたような顔をしていた。初めてみる表情になぜだが胸が痛んだ。
アリスはアリスで終始、私と目を合わせなかった。私も無理に合わせようと思わなかった。
分からない。考えれば考えるほど頭の中の声が煩くなって、それが何故かすごく怖くて自分の大切な何かが壊れてしまいそうで直ぐに思考を停止した。
「あら霊夢。何をやっているのかしら?」
神出鬼没とは紫のためにある言葉なのかのごとく縁側にひょいと紫が現れた。
「別に何もやってないわ。ただぼーっとしてるだけ。あんたこそ勝手に人ん家に現れないでよ」
私が何処で何をやっていようと紫に何か言われる筋合いはない。
「冷たいわね。でもあなた、ずっと考えているんでしょう?」
「何をよ? 私は特になにも考えていないわ」
紫が何を言いたいのか分からない。
「あの魔法使いのことよ。あなた最近、何をやっても上の空よ? 自覚してる?」
「私がぼーっとしてちゃいけないのかしら? ほっといてよ」
魔理沙なんて関係ない。そもそも最近魔理沙に会ってすらいない。魔理沙のことなんてただの友人としか思ってないのに。
「ほおって置くわけにはいかないの。あなたは今、結構精神不安定な状態なのよ」
私が不安定? 冗談も大概にして欲しい。一体紫は何がしたいんだろう。
「もう紫、あんた帰ってよ。はっきり言って邪魔だわ」
「帰らない。霊夢、あなたは真面目よね。責任感も強いわ」
いきなり何を言い出すのかしら。
ふざけている表情ではなさそうなので、とりあえず黙って話をきく。
「霊夢、あなたは博麗の巫女としての責任感から魔理沙への想いを自分で封印してるわ。それこそがんじがらめと言っていいくらいにね。でも」
「でも例え博麗の巫女でも誰かを好きになっていいのよ。誰かに恋をしてもいいの」
意識を失う前に見た紫の顔は信じられないほど優しげで、綺麗だった。
誰にも言えなかったけど、私と違って人間らしくて、努力家な魔理沙に憧れた。気が付くと魔理沙が大好きになってた。
……だけど私は博麗の巫女で、誰かを特別にしちゃいけなかった。
当然、魔理沙を好きという感情さえも私は持っちゃいけなかった。
魔理沙はただの幼馴染で。それ以上でも、それ以下でもない。
そうやって自分で自分を戒めた。魔理沙と会う度に早くなる心臓も無理やり押さえつけた。
そんなことを繰り返してるうちに魔理沙と会っても鼓動が早くなったりしなくなった。魔理沙を見て胸が苦しくなることもなくなった。
でもあの日、魔理沙から告白されて、心は嬉しいと叫んでた。魔理沙も私のことが好きだと聞いて私も伝えきれないくらい魔理沙のことが好きだと言いたかった。
だけど博麗の巫女としての私が邪魔をして何も感じなかった。
否、感じてた。感じてたけど怖くて。
博麗の巫女としての自分が壊されそうで、聞こえないふりをした。嬉しいはずないと思い込ませた。
そして魔理沙達が挨拶に来た日、本当の本当は魔理沙のことを自分のものにしたかった。
アリスと一緒に並んで歩いているのを見るのも嫌だった。
臆病な私はここでも自分の気持ちに嘘をついた。
‘‘魔理沙のことなんて好きじゃない’’こう思い込むしか自分を保てなかった。
そんな私のエゴが魔理沙を傷つけた。アリスもたくさん傷つけた。
今なら私をぶったアリスの気持ちが分かる気がする。アリスは魔理沙のことが好きで、でも魔理沙がアリスの方を向いてないこともわかってた。
だから自分が傷つきたくないという理由で嘘をつき続ける私を叩いたんだ。
……なにが博麗の巫女だ。そんなこと言って本当は傷つくのが嫌なだけだった。魔理沙に嫌われるのが怖いだけだった。
それで紫にも八つ当たり、か。
本当、惨めで情けないな……。
「目が覚めたかしら? 水でも飲む? ジュースがいいとか言わないわよね」
目が覚めたら悪戯っぽく笑う紫の姿があった。いつの間にか私は自分の部屋に寝かされていた。
「いらないわ。それより紫、私あなたに謝らなくちゃ」
八つ当たりしてしまった恥ずかしさで顔をあわせずらい。そんな私の顔をくいっと自分の方に合わせて紫は素早く私の頬にキスをした。
「な、何すんのよ。びっくりするじゃない」
「迷惑料よ。それに謝る人は私じゃないでしょう」
「そうね。まずは魔理沙とアリスに謝らなくちゃ」
そさくさと準備をする私を見る紫の目は母親のように優しかった。
魔理沙の家に前に立ってチャイムを押す。ただそれだけのことがここまで緊張するとは思わなかった。
「はーい。なんのようで……」
出てきたアリスが私を見て嫌悪の表情をあらわにする。
私がやってきたことを考えれば当たり前だ。
「おいアリス、誰なんだぜ?」
中にいる魔理沙の声がひどく懐かしくて、不意に泣きそうになる。中を向いているアリスに見られないように袖で顔を拭う。
「……ちょっと私の友達よ、話してくるわね」
「りょーかい。早くしてくれよなー」
二人のやり取りは自然で二人の関係をそのまま表してるみたいで羨ましかった。
アリスに無言で連れられて近くの原っぱに移動した。
しばらく沈黙が続いて私が意を決して話し出す。
「あの、アリス、今更かも知れないけど本当にごめんなさい。私、ただ」
「最初から、魔理沙が霊夢のこと好きだって分かってた。でも霊夢にむかってひたむきに努力する魔理沙を私は好きになったの」
私の話を遮ってアリスが語る。後ろを向いているアリスの表情が私にはわからない。
だけど、なんだが分からないけど私まで泣けてきちゃったから多分アリスも泣いているんだと思う。
「霊夢、一つ約束して。絶対、ぜっーーったい魔理沙を大切にするって」
そう言って振り向いたアリスの目をやっぱり潤んでいたけれど何処か幸せそうに見えたのは私の都合のいい妄想だろうか。
「ええ。約束するわ。私、魔理沙を大切にする。それこそ私を犠牲にしてでも」
これだけは自信を持って言えるから。
もう、間違えないから。
「馬鹿ね。霊夢が怪我したら魔理沙が悲しむわよ。……本当馬鹿ね」
最後の馬鹿ねという言葉は私に向かって言われた言葉ではない気がした。
少し此処で落ち着いていくわと言ったアリスを残してもう一度、魔理沙の家に辿り着く。
一回深く深呼吸してチャイムをならした。
「お帰りーって、れい、む……?」
アリスが帰ってきたのと勘違いした魔理沙が私を見て固まる。
久しぶりに見た魔理沙は変わってなくて嬉しかった。そんな単純なことが今はすごく愛おしい。
「魔理沙、あなたに伝えたいことがあるの。私、魔理沙のことが好き。昔から世界で一番に」
フリーズした魔理沙がさらにフリーズしたけど、続ける。
「でね、私怖くて。自分が傷つくのが嫌で、みんなに一杯嘘ついた。魔理沙にもね。それで魔理沙を傷つけたの。自分が傷つきたくないから。だから、ごめん。謝ってすむことじゃないと思う。だけど言わせて。本当にごめんなさい」
頭を下げてるせいで表情が見えない。
きっと呆れた顔をしてるんだろう。仮にも自分が好きなった相手の浅ましさに。
私はどんな罵詈雑言にも甘んじて受けようと目を硬く閉ざした。
「 ……アリスには謝らなきゃな」
「へ?」
魔理沙の真意が分からなくて間抜けな声を漏らしてしまった。何が言いたいんだろう。
「アリスは私に優しさと安らぎをくれたけど、私が一緒にいて一番幸せなのは今でも霊夢だぜ」
顔をあげると魔理沙が微笑んでくれていた。
だけど魔理沙が言った言葉がまだ信じられない。
「で、でも魔理沙はアリスと一緒にいた方が傷つかないと思うわよ? 絶対優しくしてくれるだろうし。それに」
「でも私が一番好きなのは霊夢だぜ。アリスにひどいこと言ってるの分かってる。だから、後で二人で謝りに行こうぜ」
悲しくなんかないのにぼろぼろと涙がこぼれていく。
「でもアリスが」
「確かにアリスはいい奴だし、霊夢より優しいしお菓子作るのとか、霊夢が持ってないものをたくさん持ってたけど、それでも私は霊夢が一番好きってことは変わらなかったんだぜ」
アリスには悪いと分かっていても魔理沙が差し出す手をとってしまう。
こんな私でも人を好きになっていいんだろうか。
こんな私でも魔理沙を愛していいんだろうか。
「私、霧雨魔理沙は霊夢のことが大好きだ。だから私と付き合ってくれないか? 勿論、アリスに二人で殴られに行ったあとに」
そう言って笑う魔理沙は私の大好きな笑顔を浮かべていた。
アリスにきちんとぶん殴られてから、そして紫様にきちんとお礼を言ってから
幸せになるんだ、二人でね。
ア「あんた達なんて幸せになればいいのよ!」ドカッ!バシッ!
霊「もちろんです女王さまぁ~!」
魔「私の霊夢がぁ~!」シクシク
なんて展開になってたりして…ww