太陽が雲に隠れ、少し肌寒く感じる。
魔法の森は静けさに包まれていた。
それは何かを待つような、もしくは追い出すような。
男はそこにたたずむ洋館の前に立っていた。
コンッコンッ
扉を叩くと中から人の足音が聞こえてきた。
「あら、やっと来たのね。」
扉を開けた少女はため息をつきながら、どこか安堵したように見えた。
「今日は冷えるから早く中に入りなさい。」
男を急かして中へと招く。
男は申し訳ないと思いつつ、一礼をして家の中へと入っていった。
少女は、男には見えない位置で嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
―――小さな約束―――
「はい、これで温まると思うわ。」
アリスは用意していた紅茶とクッキーを男に差し出す。
男が一礼をすると、クスッっと笑う。
「いいのよ、私も好きでやってるんだからお礼なんて。」
少女はそう言って男の向かいの椅子に座る。
「それで、今日は何のようだったかしら。」
少女の問いかけに男は今気づいたように持ってきた細長い袋を机の上に置く。
それを少女は男と交互に見る。
「・・・開けていい?」
男が頷くとアリスはその袋を手に取り、ゆっくりと包みを取り除いていく。
取り除いた後には紅い和傘があった。
少女は少し考えた後に男を見る。
「確か傘張りの仕事をしてるんだったわね。」
アリスは再び手に持っている和傘に目をやる。
綺麗で、繊細な傘だった。
ふと、何か模様のようなモノを見つける。
アリスは席を立ち、ゆっくりと和傘を広げる。
「へぇ・・・」
そこには百合の花が描かれていた。
多く描かれてる訳でも無く、一輪の百合がひっそりとそこにあった。
ただ、その一輪がとても繊細で綺麗に見えたが、少し寂しくも感じた。
「すごいわね・・・」
素直な感想をアリスを見て、男は少し照れくさそうに頭をかいていた。
「え、ち、違うのよ。これはそうよ、普通に綺麗と思ったから・・・」
なぜかそれを見たアリスもつられるように顔を赤くして顔をうつむかせた。
「それで、これを私にくれるの?」
少女がまだ赤みの残った表情を浮かべながら男に問う。
男はすぐにうなずく。
「でも、あなたは仕事で作ってるのだから、タダでもらう訳にも・・・」
アリスはそこまで言った後に何か引っかかるモノを感じた。
「もしかして聞こえてたの?」
男は力強く頷いた。
アリスはそれを見てハァっとため息をついた。
「あなた思ったより地獄耳なのね・・・」
アリスは一週間前に行った時の人里のことを思い出した。
―――――
「あなたの作る傘ってとても綺麗ね。」
アリスは傘を売っていた男に話しかけた。
「あなたの弟さんかしら、ここでお兄さんが傘を売ってるから見てくれって頼まれたのよ。」
「どうせ暇だし、人里を回るつもりだったけど・・・」
アリスは少し困ったように頭を抱える。
「思ったより出し物が多くて迷ってるのよ、あなたの傘はそれで最後だから私が・・・」
すると横から中年ぐらいの男性が傘を一つ買うと申し出てきた。
男はその男性に傘を売ると再び、アリスに振り向く。
財布をしまいながら、アリスはコホンと咳をする。
「まぁ、それで暇になったなら少し人里の案内をしてくれないかしら。報酬もあるわよ。」
男はその要求に少し考えてから、了承する。
それから少し片づけをすると言って、持ち物を整理を始めだした。
「一つぐらい欲しかったな・・・」
その光景を見ながら、アリスは誰にも聞こえないようにポツリと呟いた。
―――――――――
「それにあなた、案内料を渡すと言ったのにつき返したじゃない!」
アリスは少し怒った口調で喋りだす。
「私は約束を破らないように心がけてるのよ!なのにあなたは・・・」
―弟がお世話になったようですし、これでチャラですよ。
「ただ人形劇を見せただけなのよ、あなたはしっかり仕事をした訳で・・・」
―あなたの人形劇一度見たことがありますよ。
―あなたはあれを遊びでやってるのかもしれませんが・・・
男の言葉を思い出して、徐々に顔が朱に染まっていく。
「弟さんだって、一度話しかけられただけだし・・・」
―私はあなたの操る人形たちが生きてるように見えました。
―そうですね、なんと言いましょうか。
「・・・」
―とても綺麗でした。
記憶の中にある屈託のない男の笑顔が浮かび上がり、アリスは耳まで顔を真っ赤にして言葉をつまらせる。
男はそれを見て、熱でもあるのかと、心配になってアリスを見つめる。
アリスは男の顔を直視できないのか、男に背中を向けて歩き出す。
「ちょっと、外の空気を吸ってくるわ!」
バタンと言う音が鳴り男は一人になった。
困り果てた男は、自分も落ち着かせようと少しぬるくなった紅茶に口をつけた。
――――――
アリスは冷たい風を受けて、熱くなった身体をさましていた。
(ダメだわ・・・あの人と一緒にいると調子が狂ってしまうわ・・・)
アリスはゆっくりと深く息をして呼吸を整える。
(あの人はどうしてもお金を受け取ってくれなかった。)
(だからお茶に招待するってことで、あの場は収めた。)
そこでアリスは懸念していた事を思い出す。
(今日はお金を渡す予定だった。でも、そうしたら・・・)
自分と彼をつなぐモノが無くなってしまう。
彼とはもう一緒に紅茶が飲めない。
(また誘えばいいんだろうけど、私にそんな・・・)
きっかけが欲しい。
きっかけさえあれば、関係をつなげれる。
それは、言い直せばきっかけがなければ何もできない。
臆病者な自分。
目に見えない絆は存在する。
誰かがそんなことを言っていた。
でも、私にはそれが信じれなかった。
目に見える、確実なモノ。
そんなつながりが欲しかった。
臆病な自分がゆっくりと前に出てくる。
強く生きようとしていた自分が徐々に姿を消していく。
(多分彼は頼めば私の話し相手になってくれるだろう)
でもそれは、どうだろう。
彼は私をどう見るのだろう。
一人の女性として見るのだろう。
一人の魔女として見るのだろう。
だけど
特別な人として見るのだろうか。
(どうしよう・・・どうしよう・・・)
この気持ちが何かは知っている。
何度も何度も味わったことのある気持ち。
そして何度も何度も泣いてしまった。
何より、今回はそれ以上に胸が痛くて苦しかった。
幼い頃に戻ってしまったように、不安が押し寄せる。
その不安が現実になったかのように、ポツリポツリと雨が降り始めた。
――――――
ガチャリと扉の開く音が聞こえ、男はその方向に顔を向ける。
「さっきはごめんなさいね。なんだか変に興奮しちゃって。」
アリスは笑顔でそれに応える。
「紅茶が無くなったようね、新しいの淹れてくるわ。」
アリスはそう言ってポットを持って台所へと消えていった。
男には見えていなかったが
その手に持っていたポットはほんのわずかだけ震えていた。
―――――――
「もうこんな時間ね。」
アリスが時計に目を向ける。
空が暗く、時間の進みがわからなかったが、いざ時計を見るとすでに夕刻を過ぎている時間だった
「弟さんと二人暮らしなんでしょ、心配させるといけないから、今日はこれでお開きね。」
アリスの言葉に男は今日のお礼を言って立ち上がる。
(もうこれで終わりなんでしょうね・・・)
アリスはこの気持ちをバレないように、笑顔を顔に貼り付ける。
男を玄関まで見送り、別れの言葉を告げる。
男も同じように別れを告げる。
その言葉は普通に言ったつもりだっただろうが、アリスにはとても重く、辛く聞こえた。
扉を開けた男は、困ったような声をあげる。
アリスは肩越しに外を見ると小雨だった雨が本降りに変わり始めていた。
(今日は私の家に泊めれば・・・)
と考えたが、家族のいる男を引き止めるのは少し気が引けた。
男は小難しそうに考えた後で、アリスに再び別れを言ってから走り出そうとする。
「ま、待ちなさい!」
慌ててアリスは男の袖をつかんで止める。
男は濡れて帰ろうとしていた。
男は驚いてアリスを見る。
アリスはとっさの行動に頭をフル回転させる。
(と、止めたけどどうしよう・・・)
袖を掴んだまま思考を巡らせる。
そしてある考えを浮かばせた。
「少し待ってなさい。」
アリスはそう言い残して家の中に駆け足で入っていった。
幾分もかからぬうちにアリスは玄関まで戻ってきた。
その手には男が持ってきた和傘があった。
「はい。これを使ってね。」
アリスはそう言って男に傘を渡す。
だが男はこれをアリスに押し返す。
男の行動が思った通りになったことが少しおかしくて、アリスはクスッと笑う。
「返すんじゃないわよ。あなたにこの傘を貸すのよ。」
アリスは再び男に傘を手渡す。
男は困ったように傘とアリスを交互に見る。
「だからね。」
「またその傘を返しに来なさい。約束よ。」
―――――――――
男が帰った後、アリスは一人で椅子に座り、身体を机に投げ出していた。
「ねぇ上海。」
アリスは顔だけを上げ、自分の操る人形に話しかける。
「あの人、また来てくれるって約束してくれたわ。」
その言葉はとても楽しそうで
「この関係をつなぎとめるにはどうすればいいのかしら。」
男の困った顔を思い出して、少し嬉しくなって
「魔理沙に聞いてみようかしら、イジワルな約束とか得意そうだし。」
少女は満面の笑みで人形に話しかけていた。
「そうね、今度は人形劇を見せて、何か要求しようかしら。」
「そうしたら否応なしにまた来てくれるわね。」
少女はあの痛みを知っていた。
なにかを失うという痛み。
だけど、なぜ今回はいつもより痛かったのかが理解していなかった。
「でも、そんなことしたら嫌われてしまうかしら・・・」
その気持ちに気づくのはまだ少し先のようで・・・
end
魔法の森は静けさに包まれていた。
それは何かを待つような、もしくは追い出すような。
男はそこにたたずむ洋館の前に立っていた。
コンッコンッ
扉を叩くと中から人の足音が聞こえてきた。
「あら、やっと来たのね。」
扉を開けた少女はため息をつきながら、どこか安堵したように見えた。
「今日は冷えるから早く中に入りなさい。」
男を急かして中へと招く。
男は申し訳ないと思いつつ、一礼をして家の中へと入っていった。
少女は、男には見えない位置で嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
―――小さな約束―――
「はい、これで温まると思うわ。」
アリスは用意していた紅茶とクッキーを男に差し出す。
男が一礼をすると、クスッっと笑う。
「いいのよ、私も好きでやってるんだからお礼なんて。」
少女はそう言って男の向かいの椅子に座る。
「それで、今日は何のようだったかしら。」
少女の問いかけに男は今気づいたように持ってきた細長い袋を机の上に置く。
それを少女は男と交互に見る。
「・・・開けていい?」
男が頷くとアリスはその袋を手に取り、ゆっくりと包みを取り除いていく。
取り除いた後には紅い和傘があった。
少女は少し考えた後に男を見る。
「確か傘張りの仕事をしてるんだったわね。」
アリスは再び手に持っている和傘に目をやる。
綺麗で、繊細な傘だった。
ふと、何か模様のようなモノを見つける。
アリスは席を立ち、ゆっくりと和傘を広げる。
「へぇ・・・」
そこには百合の花が描かれていた。
多く描かれてる訳でも無く、一輪の百合がひっそりとそこにあった。
ただ、その一輪がとても繊細で綺麗に見えたが、少し寂しくも感じた。
「すごいわね・・・」
素直な感想をアリスを見て、男は少し照れくさそうに頭をかいていた。
「え、ち、違うのよ。これはそうよ、普通に綺麗と思ったから・・・」
なぜかそれを見たアリスもつられるように顔を赤くして顔をうつむかせた。
「それで、これを私にくれるの?」
少女がまだ赤みの残った表情を浮かべながら男に問う。
男はすぐにうなずく。
「でも、あなたは仕事で作ってるのだから、タダでもらう訳にも・・・」
アリスはそこまで言った後に何か引っかかるモノを感じた。
「もしかして聞こえてたの?」
男は力強く頷いた。
アリスはそれを見てハァっとため息をついた。
「あなた思ったより地獄耳なのね・・・」
アリスは一週間前に行った時の人里のことを思い出した。
―――――
「あなたの作る傘ってとても綺麗ね。」
アリスは傘を売っていた男に話しかけた。
「あなたの弟さんかしら、ここでお兄さんが傘を売ってるから見てくれって頼まれたのよ。」
「どうせ暇だし、人里を回るつもりだったけど・・・」
アリスは少し困ったように頭を抱える。
「思ったより出し物が多くて迷ってるのよ、あなたの傘はそれで最後だから私が・・・」
すると横から中年ぐらいの男性が傘を一つ買うと申し出てきた。
男はその男性に傘を売ると再び、アリスに振り向く。
財布をしまいながら、アリスはコホンと咳をする。
「まぁ、それで暇になったなら少し人里の案内をしてくれないかしら。報酬もあるわよ。」
男はその要求に少し考えてから、了承する。
それから少し片づけをすると言って、持ち物を整理を始めだした。
「一つぐらい欲しかったな・・・」
その光景を見ながら、アリスは誰にも聞こえないようにポツリと呟いた。
―――――――――
「それにあなた、案内料を渡すと言ったのにつき返したじゃない!」
アリスは少し怒った口調で喋りだす。
「私は約束を破らないように心がけてるのよ!なのにあなたは・・・」
―弟がお世話になったようですし、これでチャラですよ。
「ただ人形劇を見せただけなのよ、あなたはしっかり仕事をした訳で・・・」
―あなたの人形劇一度見たことがありますよ。
―あなたはあれを遊びでやってるのかもしれませんが・・・
男の言葉を思い出して、徐々に顔が朱に染まっていく。
「弟さんだって、一度話しかけられただけだし・・・」
―私はあなたの操る人形たちが生きてるように見えました。
―そうですね、なんと言いましょうか。
「・・・」
―とても綺麗でした。
記憶の中にある屈託のない男の笑顔が浮かび上がり、アリスは耳まで顔を真っ赤にして言葉をつまらせる。
男はそれを見て、熱でもあるのかと、心配になってアリスを見つめる。
アリスは男の顔を直視できないのか、男に背中を向けて歩き出す。
「ちょっと、外の空気を吸ってくるわ!」
バタンと言う音が鳴り男は一人になった。
困り果てた男は、自分も落ち着かせようと少しぬるくなった紅茶に口をつけた。
――――――
アリスは冷たい風を受けて、熱くなった身体をさましていた。
(ダメだわ・・・あの人と一緒にいると調子が狂ってしまうわ・・・)
アリスはゆっくりと深く息をして呼吸を整える。
(あの人はどうしてもお金を受け取ってくれなかった。)
(だからお茶に招待するってことで、あの場は収めた。)
そこでアリスは懸念していた事を思い出す。
(今日はお金を渡す予定だった。でも、そうしたら・・・)
自分と彼をつなぐモノが無くなってしまう。
彼とはもう一緒に紅茶が飲めない。
(また誘えばいいんだろうけど、私にそんな・・・)
きっかけが欲しい。
きっかけさえあれば、関係をつなげれる。
それは、言い直せばきっかけがなければ何もできない。
臆病者な自分。
目に見えない絆は存在する。
誰かがそんなことを言っていた。
でも、私にはそれが信じれなかった。
目に見える、確実なモノ。
そんなつながりが欲しかった。
臆病な自分がゆっくりと前に出てくる。
強く生きようとしていた自分が徐々に姿を消していく。
(多分彼は頼めば私の話し相手になってくれるだろう)
でもそれは、どうだろう。
彼は私をどう見るのだろう。
一人の女性として見るのだろう。
一人の魔女として見るのだろう。
だけど
特別な人として見るのだろうか。
(どうしよう・・・どうしよう・・・)
この気持ちが何かは知っている。
何度も何度も味わったことのある気持ち。
そして何度も何度も泣いてしまった。
何より、今回はそれ以上に胸が痛くて苦しかった。
幼い頃に戻ってしまったように、不安が押し寄せる。
その不安が現実になったかのように、ポツリポツリと雨が降り始めた。
――――――
ガチャリと扉の開く音が聞こえ、男はその方向に顔を向ける。
「さっきはごめんなさいね。なんだか変に興奮しちゃって。」
アリスは笑顔でそれに応える。
「紅茶が無くなったようね、新しいの淹れてくるわ。」
アリスはそう言ってポットを持って台所へと消えていった。
男には見えていなかったが
その手に持っていたポットはほんのわずかだけ震えていた。
―――――――
「もうこんな時間ね。」
アリスが時計に目を向ける。
空が暗く、時間の進みがわからなかったが、いざ時計を見るとすでに夕刻を過ぎている時間だった
「弟さんと二人暮らしなんでしょ、心配させるといけないから、今日はこれでお開きね。」
アリスの言葉に男は今日のお礼を言って立ち上がる。
(もうこれで終わりなんでしょうね・・・)
アリスはこの気持ちをバレないように、笑顔を顔に貼り付ける。
男を玄関まで見送り、別れの言葉を告げる。
男も同じように別れを告げる。
その言葉は普通に言ったつもりだっただろうが、アリスにはとても重く、辛く聞こえた。
扉を開けた男は、困ったような声をあげる。
アリスは肩越しに外を見ると小雨だった雨が本降りに変わり始めていた。
(今日は私の家に泊めれば・・・)
と考えたが、家族のいる男を引き止めるのは少し気が引けた。
男は小難しそうに考えた後で、アリスに再び別れを言ってから走り出そうとする。
「ま、待ちなさい!」
慌ててアリスは男の袖をつかんで止める。
男は濡れて帰ろうとしていた。
男は驚いてアリスを見る。
アリスはとっさの行動に頭をフル回転させる。
(と、止めたけどどうしよう・・・)
袖を掴んだまま思考を巡らせる。
そしてある考えを浮かばせた。
「少し待ってなさい。」
アリスはそう言い残して家の中に駆け足で入っていった。
幾分もかからぬうちにアリスは玄関まで戻ってきた。
その手には男が持ってきた和傘があった。
「はい。これを使ってね。」
アリスはそう言って男に傘を渡す。
だが男はこれをアリスに押し返す。
男の行動が思った通りになったことが少しおかしくて、アリスはクスッと笑う。
「返すんじゃないわよ。あなたにこの傘を貸すのよ。」
アリスは再び男に傘を手渡す。
男は困ったように傘とアリスを交互に見る。
「だからね。」
「またその傘を返しに来なさい。約束よ。」
―――――――――
男が帰った後、アリスは一人で椅子に座り、身体を机に投げ出していた。
「ねぇ上海。」
アリスは顔だけを上げ、自分の操る人形に話しかける。
「あの人、また来てくれるって約束してくれたわ。」
その言葉はとても楽しそうで
「この関係をつなぎとめるにはどうすればいいのかしら。」
男の困った顔を思い出して、少し嬉しくなって
「魔理沙に聞いてみようかしら、イジワルな約束とか得意そうだし。」
少女は満面の笑みで人形に話しかけていた。
「そうね、今度は人形劇を見せて、何か要求しようかしら。」
「そうしたら否応なしにまた来てくれるわね。」
少女はあの痛みを知っていた。
なにかを失うという痛み。
だけど、なぜ今回はいつもより痛かったのかが理解していなかった。
「でも、そんなことしたら嫌われてしまうかしら・・・」
その気持ちに気づくのはまだ少し先のようで・・・
end
アリス=マーガトロイドが心を奪われた、美しい百合がらの和傘が二人の仲をつなぐ時は来るのでしょうか?微々たる量ですが作中の端々ににじみ出る「雨」の味を噛みしめ噛みしめ読みました。「弟」君とアリス嬢との関係も気になるところですね。
2点気になったカ所があるので、卑見を述べさせて頂きます。まず句読法に関してですが、3点リーダーは「…」(U+2144)をふたつ重ねて使う[……]ことが好まれます。また、作中の視点が度々動き回る上、注視点の変化も急速な為にやや不安定な印象を受けました。
とまれ、綺麗な作品です。願わくは、大きな勇気を必要とする小さな約束がいつか花開かんことを願います。またお会いしましょう。では。
作者様の書く世界をもっと読んでみたくなりました。
また楽しみにしてます。