魔理沙とアリアが喧嘩した結果、
結局、魔理沙はアリアの家に泊まることとなった。
だが、二人とも納得して居ない顔をしていた。
アリアは魔理沙を泊めたくないと思っているだろうし、
魔理沙はアリアの事を気に入らないらしいし。
どうしてこんな結果になったのかは、空に輝くこの世界の青い星を眺めていた所、
喧嘩する声があまりにもうるさく、僕は思わず怒鳴ってしまったからだ。つまり勢いで決まった。
どちらも納得できない答えになってしまった為、魔理沙は顔をしかめて舌打ちをしている
アリアも目つきが悪いまま僕を睨みつけて歩いている。
僕が先頭なので、後ろから不気味な視線が降り注ぐのだ。
『しょうがないんじゃない?どうせ泊まるところもないんでしょ』
『霊夢、君は帰るんじゃなかったのか?』
『だって一人で帰るなんて寂しいじゃない』
霊夢は涼しい顔で返して来た。
なるほど、アリアの家でも飯をたかる気か。
十分に気をつける必要があるな。
『大体なんでこの野郎の家に泊まることになったんだ』
『だったらあんた一人だけでも帰りなさいよ!!』
『ふざけんな!こっちは香霖を連れ戻す為にここに来てんだ!!!』
また口喧嘩が始まった。
だが、その喧嘩もすぐに終わるだろう。もう家が近くにあるのだ。
『アリア、もう家についたから喧嘩は止めなさい』
僕は自分でも何様かと思ったが、アリアは僕に従うように喧嘩を止めた
僕はアリアの家に入ろうとしたが、二人は固まっていた
『魔理沙、霊夢、どうしたんだ?』
『おい…………これって家って言うより……………』
『宮殿…………よね………………』
魔理沙と霊夢は家のそばでかがんでしまった
『世の中にはものすごい金持ちが居るものね…………』
『ああ。だからあいつはあんな糞生意気に育ったんだな。』
二人は僻むように落ち込んでいた
確かに、こんなに大きな家を目の当たりにしたら自分がみじめに思うほどだが、
そんな事言っている場合ではないだろう。
『霊夢、魔理沙、入らないなら鍵を閉めるぞ』
僕がその一言を言うと、慌てたように魔理沙と霊夢は家に入ってきた。
『うわ…………また広いなぁ…………。』
魔理沙は見上げるようにそう呟いた。
『師匠ー!早くご飯作りましょうよー。』
アリアが厨房の場所で呼んでいた。
僕は言うとおりに厨房に向かうと、魔理沙と霊夢も付いてきた。
『へぇ。随分珍しい食べ物があるものね。』
霊夢は冷蔵庫を勝手に開けて、中から適当な物を持って食べていた
『何勝手に他人の家の物食べてんのよ!!!』
アリアは当然霊夢に怒鳴ったが、霊夢は聞こえない様な涼しい顔をしていた
『おっ。これは珍しいチーズだな、ちょっと貰ってくぜ』
『泥棒!!泥棒ぉぉぉぉぉぉ!!!!』
アリアがさらに怒鳴った声で魔理沙に指を刺した
『いいから二人!!とっとと返しなさい!!これはれっきとした犯罪よ!!』
アリアは強引に二人からこの厨房にあった物を取り戻した
『いいじゃねえか。お前私達に堂々と悪口言ってたんだからその代償』
『代償も何も、これは犯罪だそうだから止めなさい。』
僕がそう言うと、魔理沙と霊夢はがっかりしたような態度を取った。
『ねぇ、この人達本当に師匠のなんなんですか?妹と言うにはものすごく似てないし非常識なんだけど?』
アリアが僕に責任を問うように言ってきたが、
『そうだな、どれも僕の友人の娘と言った方が良いな。』
と、僕は適当に嘘をついた。いやあながち嘘ではないのだが、
『友人の娘……………。随分悪い友達だったんだね。』
アリアが僕に怒るように言った。僕は何もしていないのだが、
とりあえず料理を作ることに専念した。今日は人が多いから大変だった
料理をしながら考えた。今日一日考えていた事なのだが、
アリアの母親の容態の事、
どうすれば彼女を救えるのだろうか。
料理が完成すると、まず最初に大きなテーブルに並べた。
食べ物を食べる事の感謝もせずに彼女たちは料理を食べ始めた。
魔理沙はともかく、霊夢は巫女ではなかったのだろうか
『そんなに唐突に食べなくてもいいんじゃないのか?』
『そんな事言ったって、あっちでは霖之助さんを探して一日中ずっと何も食べてなかったのよ。それに今日だって……』
そういえば、幻想郷の方も今頃大騒ぎだろう。
魔理沙と霊夢も急に気配を消したのだから。少し不安になってきた。
『香霖は食わねえのか?』
『ああ。まず最初に食べさせなきゃいけない人が居るからね』
僕がそう言うと、アリアも食べるのを止めて、僕の後について来た。
僕たちが部屋から出ると、魔理沙と霊夢は首をかしげていた
『お母さん。今日も食事を持ってきたよ。』
アリアが料理を乗せたお盆を持って母親の前に置いた
『そう、今日はなんだか騒がしいけど、何かあったの?』
『ああ。霖之助さんの友人の娘さんが遊びに来てるみたい』
アリアがそう言うと、母親は昨日のように嬉しそうに優しく微笑んだ
『そう、賑やかな友達ができたのね。』
『友達なんかじゃない!!!』
アリアは真剣に母親の前でそう言った。
どうやら、本気であの二人が気に入らないらしい。
まぁ、勝手に他人の物を持っていく奴らだからな…………。
『あらそうなの。』
だが、母親はただ面白可笑しく微笑んでいるだけだ。
アリアは怒りで震えている
よほど嫌いなのだろうか。
そのまま、僕の袖を引っ張って部屋の外に出ようとした
『あの、』
僕は彼女に伝えたい事があったのだが、それを許さない様にアリアは扉を閉めた
『修行!!修行!!!』
アリアは怒りにまかせて僕を例の広い部屋に連れていかれた。
そしてアリアは木刀を持ち、練習を再開した。
そういえば、僕たちの夕飯はもういいのだろうか、僕はともかく彼女は
だが、その事を言う余裕が無かった。
アリアが怒りをぶつけるように棒を木刀で叩いているのだ。
よほどストレスが来てたのだろう。まぁ、泥棒されようとされれば怒るのも無理ないが
何度も棒を木刀で斬っているうちに、その棒はポキリと折れてしまった
結構な力を使っただろう。アリアの息は切れていた
そして、その場で横になった。まだ息は荒かった。
『………………師匠』
アリアが呟くように、消えそうな声で僕に声をかけた。
『明日…………お母さんの誕生日なんだ…………。』
アリアが嬉しそうに、だがまだ息は荒くしてそう言った
『そうなのか。ならプレゼントを用意しなければな』
これは、彼女を元気づける良い薬になるかもしれない。そう期待する自分が居た
『私ね、お母さんの為のプレゼントの場所があるんだけど…………』
アリアは少し息が大人しくなるのを待ち、しばらくしたらまた口が開いた
『師匠と一緒に来てくれないかな………?あの二人抜きで』
アリアは確かにそう言っていた。
『そんなにあの子たちが嫌いか』
『大嫌い!!』
多分、魔理沙の所にもとどいているくらい大きな声で言っていた。
『確かに少しずれている所はあるが、あれでも結構優しい子なんだ。それだけは知ってくれ』
『物を盗む奴が何が優しいのよ!』
アリアはむくれて僕の方から顔を逸らした。
だが、その後に魔理沙と霊夢もこの場所に来てからすぐに僕の方に顔を戻した
『なんか大きな音が聞こえたけど』
どうやら二人には僕たちの会話は聞こえてなかったようだ。
『いや、なんでもないよ』
『嘘つきなさい。目の前の棒が一本折れてるわよ』
『修行よ修行!!あんた達はどっか行って!!』
アリアが怒鳴って魔理沙達を追い払うと、どこからか扉を閉めた
この部屋に扉なんかあったのか。初めて見た
『それじゃぁ、明日の6時に家を出るわよ』
僕に確認するようにそう言うと、アリアは別の扉を開けて、その扉の中にある階段で部屋に戻っていった。
この家は何かのからくり屋敷なのだろうか。一層興味が湧いた
朝の5時頃
『師匠、起き…………やっぱり師匠の朝は早いですね。』
アリアは嬉しそうに僕を見た。
まぁ、僕はただ眠らないだけなのだが、
念のため草薙の剣は持っていこうと腰に掲げた
アリアは僕の手を引っ張って微笑んで家の外に出ようとした。だがその微笑みは一瞬で消えた
目の前に魔理沙と霊夢が居たのだ。どうしてこんなに早起きなのは分からないが
二人とも何か不機嫌そうだった。
『二人で仲良くどこに行くつもりなのかしら?』
不気味な満面の笑みをした魔理沙が、不気味に女口調になって何か恐ろしいオーラを出して僕たちを睨みつけた
『お母さんのプレゼントを取りに行くだけだよ!』
アリアは誤解を解くように必死だった。
『そう、なら私達も御一緒するわ』
霊夢がそう言った。僕はそれを聞いて安堵したが、アリアはまだ納得ができないようだった
『駄目よ!!あんた達プレゼントを横取りする気でしょ!!』
『随分、嫌なイメージつけられたようだな私。』
魔理沙がため息をつくと、僕たちの近くに歩み寄った
『あのな、さすがに私達もそんなに外道じゃねぇんだ。プレゼントを泥棒するほど私達もそんなに』
確かに、魔理沙もそれほど外道では無い。
一度、自分の為に買った高い酒を一晩で飲まれた事があるが
アリアは、まだ納得していないような雰囲気だった。
しょうがないので、僕が割り込む事にした
『アリア。不満なのは分かるが、魔理沙達は空も飛べるんだ。連れていくだけ便利だと思うぞ』
『あら、人を物扱い?』
アリアはしばらく悩んだ後、負けたように腕をだらんと下げた。
だが、すぐに逆上して叫ぶように忠告した
『いい!?もしもプレゼントを盗もうと考えたら師匠に斬りつけてもらうからね!!』
結局、僕頼みか。だが、確かに魔理沙がそのような事をしたら斬りつけるかもしれないか
『そう言う事だ。分かったか魔理沙』
魔理沙は分かった分かったと鬱陶しそうに僕らをあしらった。
『それでは、そのプレゼントの場所に行こうか』
アリアはふんっとそっぽ向いて僕たちから離れて歩いて行った
森の中を段々と進んでいくと、その中にその建物はあった
『これは…………遺跡か?』
そう質問すると、アリアは頷いた
『うん。本当はここで結婚式とかあげたりするんだけどね』
その言葉を聞いて、魔理沙と霊夢はこちらを睨んだ
『二人でここに来て何をするつもりだった?まさかプレゼントってのも…………』
魔理沙が再び僕たちを睨んだ時、アリアはため息をついた
『何変な想像してるの?違うわよ。この遺跡の中にしか咲かない花を摘みにきただけよ』
遺跡の付近を見ると、そこには看守らしき人達が居た。
紅魔館に居たあの看守よりも有能そうだ。
『いろいろ守られてる気がするのだが』
『そりゃあそうよ。ここは結婚式挙げる以外は入っちゃ駄目だもの。』
『つまり泥棒って事か?お前も私達とほとんど変わんねえじゃねえか』
『ちょっと私も入ってるの?』
『違うわよ、ちゃんとお願いして摘んでるの』
アリアはそう言うと、看守の方に歩み寄った。
何か取引をしているようだが、途中でいきなりもめ始めた
一体何が起こったのか、アリアは暗い表情でこちらに戻ってきた
『何があったんだい?』
僕が質問すると、アリアは暗い声で返した
『一週間前から駄目だって…………女神さまが許さないんだって…………』
随分理不尽な要因だ。
『どうしよう…………お誕生日過ぎちゃうよ………』
アリアが悲しそうな顔をすると、今度は魔理沙が動き出した
『あの遺跡の中に入りてえんだな?』
魔理沙はそう言うと、弾幕を看守にめがけて発射した。
だが、弾幕の威力がすごかったのか看守は大きな鈍器で殴られたかのように吹っ飛ばされてしまった
森の真ん中あたりまで吹っ飛んでしまっていたのだ。
『ありゃ?そんなに強くした訳でもないんだけどな…………』
予想外な結果に、魔理沙も驚いていたが、すぐに走りだした
『おい行くぞ、花を摘みに行くんだろ』
『え?でも許可を得てないじゃない…………』
『何言ってんだ。母親の誕生日祝うんだろ。早くしろよ』
アリアは少し戸惑いながらも、母の為か遺跡の方に走り出した
遺跡の中は、外見とは裏腹に綺麗な作りだった。
中にも看守は所々居る為、隠れて移動する必要があった
『おい、その花ってのは一体どこにあるんだ』
魔理沙は看守に気付かれない様に小声で話していた
アリアもさらに小声で魔理沙に返した
『この最上階の所よ』
『え?』
あまりにも小さな声なので、魔理沙は聞き取れなく聞き返そうとした時
『誰だ!!』
その声が大きすぎたのか、看守に気付かれてしまった
『くそ!』
魔理沙は反射的に看守に弾幕をぶつけた
だが、吹っ飛んだのは良い物の吹っ飛んだ勢いで壁にぶつかり大きな音を出してしまった
『何事だ!?』
ほとんどの部屋から看守が出てきて、僕達は囲まれてしまった
『あーあ』
霊夢が魔理沙を呆れるようにそう言った。
『ちょっと!!これどうすんのよ!!』
アリアが魔理沙を責めるように言ってきた。
『仕方ねぇ。その花の所まで逃げるぞ!!』
魔理沙はそう言いながら。アリアを先頭にして逃げるように言った
当然、看守も大勢追いかけてくる
『アリア!!花の場所はどこにあるか分かるか!?』
『だから最上階だってば!!!』
アリアがそう言うと、階段を上がる途中で足を崩した
『キャッ!』
僕はとっさにアリアの腕を持ち、なんとか体を地に付かせずに済んだ
『あ………ありがとう』
アリアは礼を言うと。再び走りだした。
だが、そのせいで看守はさらに僕たちとの距離を縮ませていた
『どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
魔理沙は多くの弾幕を看守達に浴びせた。
そのおかげで看守たちは一斉に下の階まで落ちていった。
さらに霊夢は僕たちの後ろで結界を張り、僕たち以外ここから入れなくも出れなくもした
魔理沙の弾幕で吹っ飛ぶ奴らだから、当然この結界は崩せないだろう。
僕たちは急いで最上階まで上がった
最上階まで辿りついた時は、そこは屋外だと言うのに廊下があった。
その奥には十字架ではなく、人間と人間が粘土のようにくっついて叫んでいるような紋章が浮かんでいた。
随分趣味の悪い。
『で、どこに花があるんだ?』
僕はアリアに確認すると、アリアは紋章に指を刺した
『あそこよ』
花が咲いて居る場所は、紋章の後ろ側だった。
紋章の後ろは一見崖になっているが、普通は落ちる所に行くとそこにはお花畑があった。
全て白花だ。花弁は白い羽だ
まるで街に降ってきたあの白い羽とは別のようなものだった。
『なんか華が無いよな…………』
魔理沙がそう言うと、アリアは再び魔理沙を睨みつけた
『この花は………≪女神の花≫か………。』
僕はその花の名前を口走ると、アリアはまた嬉しそうな顔をした
『うん。お母さんとお父さんの思い出の花らしいんだ…………。』
だが、また悲しそうな顔をした
『お父さんとお母さんは幼馴染で、小さい頃から結婚しようって約束してたんだって。
そして12歳になった時、ここのお花畑で結婚して私を産んだんだって。』
『12歳!?』
二人の声が重なった
『何よ。別におかしい事じゃないじゃない。10歳から結婚できるのよ』
その言葉を聞いた二人は、口を開けたまま固まっていた
『お父さんは、天使に食べられちゃって死んじゃったんだって。』
アリアは少し声のトーンを落としてそう言った。なぜ今になってその事実を僕たちに言うのか。
僕たちはかなり気まずい空気に囲まれていた
『私も、いつの間にかお母さんが私を産んでくれた年になってるんだなぁ………。』
アリアは寂しそうに摘んだ花を眺めていると、魔理沙と霊夢は少し慌てて
『さっさっさと帰るぞ!』
そう言ってこのお花畑から姿を消した
僕たちもこのお花畑から姿を消そうと、入口のあった場所に体を突っ込んだ
『?』
後ろの方で何か物音がした気がした
振り向くと、そこには大きな顔が見えたような気がした。
その顔は、何かを恨むような顔だった。
一瞬だったので、気のせいかは分からない
『で、こっからどうやって帰るんだ?』
僕はとっさにそう言った後、アリアは苦笑いをした。
笑っている場合じゃないのだが
『アリア、ここって壁無いんだよな?』
魔理沙は箒をまたがりながらそう言った
『うん。この紋章の奥以外の端は本当の崖だよ』
魔理沙はその言葉を聞くと、安心したように箒にまたがりながら宙に浮いた
『よっしゃ!こっからは家まで私が送ってってやるからな!』
魔理沙はそう言うと、僕の手を握った
その後にアリアの手も握ろうと思ったが、魔理沙は拒むように空を飛び始めた
『霊夢!そいつは頼んだ!』
魔理沙はそう言うと、アリアの家の方まで一直線に進んだ
後ろを見ると、ちゃんと霊夢はアリアの手を持って僕たちに付いてきていた。
ちゃんと女神の花も持っている。これでプレゼント作戦は終了か。
いや、あとは渡すだけか
『魔理沙』
『ん?どうした香霖』
魔理沙は僕の問いになんでも答えてやるぞと言うように笑顔になった
『これなら最初から空を飛んだほうが良かったんじゃないか?』
『それは言わない約束だ』
魔理沙は急に真面目な声になりながら僕から顔を逸らした。
そしてしばらくした後、アリアの家にたどり着いた
だが僕はアリアの家を見た後、凄まじく嫌な予感がした
家の前に大勢の野次馬が居たのだ
『なんだよ………この騒ぎは…………』
そこには人、人、犬、人が大勢居た
アリアもこの光景を見た時、かなり青ざめた顔色をしていた
『お母…………さん……?』
僕も同じ心配をした。
僕は居ても立っても居られず、
『魔理沙、ここで下ろしてくれ』
と口走った
『はぁ!?この人の上にか?』
『いいから頼む!!』
魔理沙は僕から手を離し、僕は真っ逆さまに下に落ちてしまった。
アリアも暴れたのだろう。手を離してしまって真っ逆さまに人の上に落ちてきた
『おい!!上から人が降ってきたぞ!!』
さらに人だかりは騒がしくなる
『アリアちゃん!!』
どこからかアリアの名前を言っていたが、アリアはその言葉は聞こえなかったらしく、人ごみをかき分けて家の中に入っていった
『お母さん!!』
僕はいつの間にかアリアより先に居た。
アリアよりも先に母親の状態を確認したかったからか。
僕は母親の居る部屋の扉を開けた。
母親の状態は、信じられない物だった
母親は透けて居たのだ。
まるで空気のように、そこに居ないかのように
下の布団のしわが目立つように彼女は透けていた
『お母さん!!!!』
アリアは医者を乱暴にどけながら母親の傍に駆け寄った
どうして医者がこんなに早くこの場所に居るのか。
誰かがこの状態を察したのだろうか
『お母さん!!花だよ!!今日お誕生日でしょう!!』
アリアは母親に触れようとしたが、アリアの手は母親の胸を貫通した
『…………!!』
僕は思わず絶句した。
これでは薬も飲めないだろうし、検査もできない。
徐々に消えていく彼女。
回復は絶望的だった
『そんな…………』
僕はこの状況に絶句すると。母親の口が動いた
『アリア…………』
アリアはその言葉を一瞬も無駄にしないように耳を傾けた
その顔は、涙でくしゃくしゃになっていた
『アリア………………そのお花…………』
『持って来たんだよ………。お母さんの為に持って来たんだよ…………。』
アリアは母親にすがろうとしていたが、貫通してしまうため布団の上に腕を置いてしまう。
その状況に絶望していると、母親は優しい微笑みを浮かべてアリアの方を見た
『その花…………懐かしいわね…………。』
母親は懐かしそうに、天井に目をやって何かを思い出していた
『あの人と…………あの人と別れてしまったのはもう14年も前なのね………。なつかしいわ………。』
母親の目には涙が一筋流れた
『もうすぐで………もうすぐで会えるわね』
『お母さん!!!』
母親は、今度は僕の方に顔を向けた
『森近さん………。あなたにも出会えて本当に良かった。』
僕の顔は今どうなっているだろうか。無念で一杯になっている事は予想できた。
今は表情以上に無念がいっぱいだろう。歯が震えている
顔が引きつっている。吐き気がする。
胸が、締め付けられる。
『私も………出会えてよかったですよ。まだ一緒に居たいくらい』
僕は本心を言った。
だが、冗談としてとらえられたのか、母親は笑った
『そう。嬉しいわね』
僕は切ない気持になった。
だが、母親はそんな事も知らない様に微笑んでいた
『アリア、森近さん』
この母親は無責任だ。
本当に……………
次に母親を見た時は、そこにはただ羽が花弁の花がそこに置いてあるだけだった……………
いつの間にか野次馬も医者も居なくなっていた。
傍には魔理沙が僕の目をさますように揺さぶっていた。
どうした事だろうか。敗北感が僕の中で湧きあがった
アリアの母親、本名はマリア・ブルーズ。
結局、名前も呼ばずに彼女は去ってしまった。
無念だ。
彼女だけはどうしても助けたかった
『……………なぁアリア』
魔理沙がアリアに問いているが、アリアは振り向かなかった
『お前の母親って………。一体何の病気で死んだんだ?』
『病気じゃないわよ。寿命よ寿命』
僕はその言葉を聞いて思わず声を上げた
『寿命!?』
魔理沙と霊夢と声が重なった。
『人間は30年しか生きる事ができない。故に30年以上は生きられないのよ。』
アリアは羽が花弁の花を握りしめながら、震えていた
『…………なんだよそんな悲しい種族』
魔理沙のその言葉がいけなかったのか、一体何がいけなかったのかアリアは逆上した
『出てってよ!!出てって!!この部屋から出てってよ!!!』
魔理沙と霊夢は何も反論せずにこの部屋から出ていった。
一人になりたいのだろう。僕もちょうど一人になりたいところだった
『師匠は此処に居て………』
僕は思わず耳を疑い、え?と声を出してしまった。
そして二人は部屋から出ていった
この部屋には僕とアリアとマリアの終わりの後しか無い。
アリアは僕の服にしがみつき、わんわん泣いた
父親にでもすがるように、ずっとずっと泣いていた
僕の服がだんだん濡れてきたが、そんな事気にしなかった。
僕も悲しくてしょうがないのだが、涙が出ないのだ。
アリアはまだ僕にしがみついている。まだ泣いている。
しばらくして大人しくなった時、アリアは僕に問いてきた
『師匠………。師匠の国は寿命はどのくらいなんですか………?』
あまりにも辛い質問が来てしまった。
さすがにこの世界の常識とは違う僕の世界では、嘘は付けなかった。
何かに恐れていたのか
『普通の人間は大体80年くらいだ。特別な人で万単位いく人も居る。僕は200年は生きている』
嘘をつく余裕も無かった。だから嘘を言わなかった。
その後、アリアはさらに小さな声で囁いた
『どうして………私の世界はこんなにちっぽけな人生なんだろう………』
僕を掴む手は、次第に強くなっていた。
だが、僕はその事を指摘しなかった。
指摘する余裕も無かったのだ。
窓にまた青い星と白い羽が降っているとき、僕はふと思った
どうして僕はこの世界にやってきたのだろうか?
いつの間にか店の掛け軸に大穴が開いて
その大穴の向こうにはこの世界があって
この穴は魔理沙達は認識できなくて
でも、今はこの世界に居て
大穴
全てはこの始まりからだ
あの大穴は一体誰が開けたのだろうか。
一体何のために、何が目的だろうか
その時、僕はあの花畑で見たあの大きな顔を思い出した。
あの大きな顔は、明らかに僕の方を見ていたのだが、
一体、僕に何が関係しているのだろうか
『アリア』
僕は彼女の肩を持ち、僕の体と離れさせた。
『明日、またあの花畑に行ってみようと思うのだが』
あの大きな顔が関係するのであれば、その場所に行く必要がある
だが、彼女の答えはあまりにも不利な情報だった
『駄目よ。今日は魔理沙のおかげであの花畑に入り込めたけど、私達がその遺跡に入ったから………』
アリアは夕刊であろうような紙を取り出した。
そこには、あの遺跡を厳重に監視する事が書いてあった
『でも、これでも魔理沙や霊夢の技でなんとかなるんじゃないか?』
『そしたら、私もこの街に居られなくなっちゃう』
そうだ。彼女の事を考えて居なかった。
アリアがこの街から追い出されるかもしれない。これは確かだった。
『今度入ったら追放だってさ………。』
アリアは悲しそうにそう言った。
僕は頭を抱えてた。これではどうすればいいのか。
『なら、今度は僕たちだけで行くしか』
『師匠達の顔も見られたの。だから………お願い』
アリアは俯いてそう言っていた。
アリアはこの街が大好きなのだろう。その街に嫌われるのが嫌なのだろう。
『この街が好きなのか?羽が降る、天使が降って来る、天使に食われた父親のこの街を』
途中で最低な事を言っている事に気付いた僕は、途中で言うのを止めた。
『私達は街から出るとすぐ死んで地獄に落ちるのよ…………』
僕は本当に最低だと感じた。
『ならばどうすればいい?』
この質問に、アリアはしばらく考えていた。
そして思いついたのか、少し戸惑っていたが、予想外な答えを返して来た
『師匠と私が結婚すればいいのよ』
結局、魔理沙はアリアの家に泊まることとなった。
だが、二人とも納得して居ない顔をしていた。
アリアは魔理沙を泊めたくないと思っているだろうし、
魔理沙はアリアの事を気に入らないらしいし。
どうしてこんな結果になったのかは、空に輝くこの世界の青い星を眺めていた所、
喧嘩する声があまりにもうるさく、僕は思わず怒鳴ってしまったからだ。つまり勢いで決まった。
どちらも納得できない答えになってしまった為、魔理沙は顔をしかめて舌打ちをしている
アリアも目つきが悪いまま僕を睨みつけて歩いている。
僕が先頭なので、後ろから不気味な視線が降り注ぐのだ。
『しょうがないんじゃない?どうせ泊まるところもないんでしょ』
『霊夢、君は帰るんじゃなかったのか?』
『だって一人で帰るなんて寂しいじゃない』
霊夢は涼しい顔で返して来た。
なるほど、アリアの家でも飯をたかる気か。
十分に気をつける必要があるな。
『大体なんでこの野郎の家に泊まることになったんだ』
『だったらあんた一人だけでも帰りなさいよ!!』
『ふざけんな!こっちは香霖を連れ戻す為にここに来てんだ!!!』
また口喧嘩が始まった。
だが、その喧嘩もすぐに終わるだろう。もう家が近くにあるのだ。
『アリア、もう家についたから喧嘩は止めなさい』
僕は自分でも何様かと思ったが、アリアは僕に従うように喧嘩を止めた
僕はアリアの家に入ろうとしたが、二人は固まっていた
『魔理沙、霊夢、どうしたんだ?』
『おい…………これって家って言うより……………』
『宮殿…………よね………………』
魔理沙と霊夢は家のそばでかがんでしまった
『世の中にはものすごい金持ちが居るものね…………』
『ああ。だからあいつはあんな糞生意気に育ったんだな。』
二人は僻むように落ち込んでいた
確かに、こんなに大きな家を目の当たりにしたら自分がみじめに思うほどだが、
そんな事言っている場合ではないだろう。
『霊夢、魔理沙、入らないなら鍵を閉めるぞ』
僕がその一言を言うと、慌てたように魔理沙と霊夢は家に入ってきた。
『うわ…………また広いなぁ…………。』
魔理沙は見上げるようにそう呟いた。
『師匠ー!早くご飯作りましょうよー。』
アリアが厨房の場所で呼んでいた。
僕は言うとおりに厨房に向かうと、魔理沙と霊夢も付いてきた。
『へぇ。随分珍しい食べ物があるものね。』
霊夢は冷蔵庫を勝手に開けて、中から適当な物を持って食べていた
『何勝手に他人の家の物食べてんのよ!!!』
アリアは当然霊夢に怒鳴ったが、霊夢は聞こえない様な涼しい顔をしていた
『おっ。これは珍しいチーズだな、ちょっと貰ってくぜ』
『泥棒!!泥棒ぉぉぉぉぉぉ!!!!』
アリアがさらに怒鳴った声で魔理沙に指を刺した
『いいから二人!!とっとと返しなさい!!これはれっきとした犯罪よ!!』
アリアは強引に二人からこの厨房にあった物を取り戻した
『いいじゃねえか。お前私達に堂々と悪口言ってたんだからその代償』
『代償も何も、これは犯罪だそうだから止めなさい。』
僕がそう言うと、魔理沙と霊夢はがっかりしたような態度を取った。
『ねぇ、この人達本当に師匠のなんなんですか?妹と言うにはものすごく似てないし非常識なんだけど?』
アリアが僕に責任を問うように言ってきたが、
『そうだな、どれも僕の友人の娘と言った方が良いな。』
と、僕は適当に嘘をついた。いやあながち嘘ではないのだが、
『友人の娘……………。随分悪い友達だったんだね。』
アリアが僕に怒るように言った。僕は何もしていないのだが、
とりあえず料理を作ることに専念した。今日は人が多いから大変だった
料理をしながら考えた。今日一日考えていた事なのだが、
アリアの母親の容態の事、
どうすれば彼女を救えるのだろうか。
料理が完成すると、まず最初に大きなテーブルに並べた。
食べ物を食べる事の感謝もせずに彼女たちは料理を食べ始めた。
魔理沙はともかく、霊夢は巫女ではなかったのだろうか
『そんなに唐突に食べなくてもいいんじゃないのか?』
『そんな事言ったって、あっちでは霖之助さんを探して一日中ずっと何も食べてなかったのよ。それに今日だって……』
そういえば、幻想郷の方も今頃大騒ぎだろう。
魔理沙と霊夢も急に気配を消したのだから。少し不安になってきた。
『香霖は食わねえのか?』
『ああ。まず最初に食べさせなきゃいけない人が居るからね』
僕がそう言うと、アリアも食べるのを止めて、僕の後について来た。
僕たちが部屋から出ると、魔理沙と霊夢は首をかしげていた
『お母さん。今日も食事を持ってきたよ。』
アリアが料理を乗せたお盆を持って母親の前に置いた
『そう、今日はなんだか騒がしいけど、何かあったの?』
『ああ。霖之助さんの友人の娘さんが遊びに来てるみたい』
アリアがそう言うと、母親は昨日のように嬉しそうに優しく微笑んだ
『そう、賑やかな友達ができたのね。』
『友達なんかじゃない!!!』
アリアは真剣に母親の前でそう言った。
どうやら、本気であの二人が気に入らないらしい。
まぁ、勝手に他人の物を持っていく奴らだからな…………。
『あらそうなの。』
だが、母親はただ面白可笑しく微笑んでいるだけだ。
アリアは怒りで震えている
よほど嫌いなのだろうか。
そのまま、僕の袖を引っ張って部屋の外に出ようとした
『あの、』
僕は彼女に伝えたい事があったのだが、それを許さない様にアリアは扉を閉めた
『修行!!修行!!!』
アリアは怒りにまかせて僕を例の広い部屋に連れていかれた。
そしてアリアは木刀を持ち、練習を再開した。
そういえば、僕たちの夕飯はもういいのだろうか、僕はともかく彼女は
だが、その事を言う余裕が無かった。
アリアが怒りをぶつけるように棒を木刀で叩いているのだ。
よほどストレスが来てたのだろう。まぁ、泥棒されようとされれば怒るのも無理ないが
何度も棒を木刀で斬っているうちに、その棒はポキリと折れてしまった
結構な力を使っただろう。アリアの息は切れていた
そして、その場で横になった。まだ息は荒かった。
『………………師匠』
アリアが呟くように、消えそうな声で僕に声をかけた。
『明日…………お母さんの誕生日なんだ…………。』
アリアが嬉しそうに、だがまだ息は荒くしてそう言った
『そうなのか。ならプレゼントを用意しなければな』
これは、彼女を元気づける良い薬になるかもしれない。そう期待する自分が居た
『私ね、お母さんの為のプレゼントの場所があるんだけど…………』
アリアは少し息が大人しくなるのを待ち、しばらくしたらまた口が開いた
『師匠と一緒に来てくれないかな………?あの二人抜きで』
アリアは確かにそう言っていた。
『そんなにあの子たちが嫌いか』
『大嫌い!!』
多分、魔理沙の所にもとどいているくらい大きな声で言っていた。
『確かに少しずれている所はあるが、あれでも結構優しい子なんだ。それだけは知ってくれ』
『物を盗む奴が何が優しいのよ!』
アリアはむくれて僕の方から顔を逸らした。
だが、その後に魔理沙と霊夢もこの場所に来てからすぐに僕の方に顔を戻した
『なんか大きな音が聞こえたけど』
どうやら二人には僕たちの会話は聞こえてなかったようだ。
『いや、なんでもないよ』
『嘘つきなさい。目の前の棒が一本折れてるわよ』
『修行よ修行!!あんた達はどっか行って!!』
アリアが怒鳴って魔理沙達を追い払うと、どこからか扉を閉めた
この部屋に扉なんかあったのか。初めて見た
『それじゃぁ、明日の6時に家を出るわよ』
僕に確認するようにそう言うと、アリアは別の扉を開けて、その扉の中にある階段で部屋に戻っていった。
この家は何かのからくり屋敷なのだろうか。一層興味が湧いた
朝の5時頃
『師匠、起き…………やっぱり師匠の朝は早いですね。』
アリアは嬉しそうに僕を見た。
まぁ、僕はただ眠らないだけなのだが、
念のため草薙の剣は持っていこうと腰に掲げた
アリアは僕の手を引っ張って微笑んで家の外に出ようとした。だがその微笑みは一瞬で消えた
目の前に魔理沙と霊夢が居たのだ。どうしてこんなに早起きなのは分からないが
二人とも何か不機嫌そうだった。
『二人で仲良くどこに行くつもりなのかしら?』
不気味な満面の笑みをした魔理沙が、不気味に女口調になって何か恐ろしいオーラを出して僕たちを睨みつけた
『お母さんのプレゼントを取りに行くだけだよ!』
アリアは誤解を解くように必死だった。
『そう、なら私達も御一緒するわ』
霊夢がそう言った。僕はそれを聞いて安堵したが、アリアはまだ納得ができないようだった
『駄目よ!!あんた達プレゼントを横取りする気でしょ!!』
『随分、嫌なイメージつけられたようだな私。』
魔理沙がため息をつくと、僕たちの近くに歩み寄った
『あのな、さすがに私達もそんなに外道じゃねぇんだ。プレゼントを泥棒するほど私達もそんなに』
確かに、魔理沙もそれほど外道では無い。
一度、自分の為に買った高い酒を一晩で飲まれた事があるが
アリアは、まだ納得していないような雰囲気だった。
しょうがないので、僕が割り込む事にした
『アリア。不満なのは分かるが、魔理沙達は空も飛べるんだ。連れていくだけ便利だと思うぞ』
『あら、人を物扱い?』
アリアはしばらく悩んだ後、負けたように腕をだらんと下げた。
だが、すぐに逆上して叫ぶように忠告した
『いい!?もしもプレゼントを盗もうと考えたら師匠に斬りつけてもらうからね!!』
結局、僕頼みか。だが、確かに魔理沙がそのような事をしたら斬りつけるかもしれないか
『そう言う事だ。分かったか魔理沙』
魔理沙は分かった分かったと鬱陶しそうに僕らをあしらった。
『それでは、そのプレゼントの場所に行こうか』
アリアはふんっとそっぽ向いて僕たちから離れて歩いて行った
森の中を段々と進んでいくと、その中にその建物はあった
『これは…………遺跡か?』
そう質問すると、アリアは頷いた
『うん。本当はここで結婚式とかあげたりするんだけどね』
その言葉を聞いて、魔理沙と霊夢はこちらを睨んだ
『二人でここに来て何をするつもりだった?まさかプレゼントってのも…………』
魔理沙が再び僕たちを睨んだ時、アリアはため息をついた
『何変な想像してるの?違うわよ。この遺跡の中にしか咲かない花を摘みにきただけよ』
遺跡の付近を見ると、そこには看守らしき人達が居た。
紅魔館に居たあの看守よりも有能そうだ。
『いろいろ守られてる気がするのだが』
『そりゃあそうよ。ここは結婚式挙げる以外は入っちゃ駄目だもの。』
『つまり泥棒って事か?お前も私達とほとんど変わんねえじゃねえか』
『ちょっと私も入ってるの?』
『違うわよ、ちゃんとお願いして摘んでるの』
アリアはそう言うと、看守の方に歩み寄った。
何か取引をしているようだが、途中でいきなりもめ始めた
一体何が起こったのか、アリアは暗い表情でこちらに戻ってきた
『何があったんだい?』
僕が質問すると、アリアは暗い声で返した
『一週間前から駄目だって…………女神さまが許さないんだって…………』
随分理不尽な要因だ。
『どうしよう…………お誕生日過ぎちゃうよ………』
アリアが悲しそうな顔をすると、今度は魔理沙が動き出した
『あの遺跡の中に入りてえんだな?』
魔理沙はそう言うと、弾幕を看守にめがけて発射した。
だが、弾幕の威力がすごかったのか看守は大きな鈍器で殴られたかのように吹っ飛ばされてしまった
森の真ん中あたりまで吹っ飛んでしまっていたのだ。
『ありゃ?そんなに強くした訳でもないんだけどな…………』
予想外な結果に、魔理沙も驚いていたが、すぐに走りだした
『おい行くぞ、花を摘みに行くんだろ』
『え?でも許可を得てないじゃない…………』
『何言ってんだ。母親の誕生日祝うんだろ。早くしろよ』
アリアは少し戸惑いながらも、母の為か遺跡の方に走り出した
遺跡の中は、外見とは裏腹に綺麗な作りだった。
中にも看守は所々居る為、隠れて移動する必要があった
『おい、その花ってのは一体どこにあるんだ』
魔理沙は看守に気付かれない様に小声で話していた
アリアもさらに小声で魔理沙に返した
『この最上階の所よ』
『え?』
あまりにも小さな声なので、魔理沙は聞き取れなく聞き返そうとした時
『誰だ!!』
その声が大きすぎたのか、看守に気付かれてしまった
『くそ!』
魔理沙は反射的に看守に弾幕をぶつけた
だが、吹っ飛んだのは良い物の吹っ飛んだ勢いで壁にぶつかり大きな音を出してしまった
『何事だ!?』
ほとんどの部屋から看守が出てきて、僕達は囲まれてしまった
『あーあ』
霊夢が魔理沙を呆れるようにそう言った。
『ちょっと!!これどうすんのよ!!』
アリアが魔理沙を責めるように言ってきた。
『仕方ねぇ。その花の所まで逃げるぞ!!』
魔理沙はそう言いながら。アリアを先頭にして逃げるように言った
当然、看守も大勢追いかけてくる
『アリア!!花の場所はどこにあるか分かるか!?』
『だから最上階だってば!!!』
アリアがそう言うと、階段を上がる途中で足を崩した
『キャッ!』
僕はとっさにアリアの腕を持ち、なんとか体を地に付かせずに済んだ
『あ………ありがとう』
アリアは礼を言うと。再び走りだした。
だが、そのせいで看守はさらに僕たちとの距離を縮ませていた
『どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
魔理沙は多くの弾幕を看守達に浴びせた。
そのおかげで看守たちは一斉に下の階まで落ちていった。
さらに霊夢は僕たちの後ろで結界を張り、僕たち以外ここから入れなくも出れなくもした
魔理沙の弾幕で吹っ飛ぶ奴らだから、当然この結界は崩せないだろう。
僕たちは急いで最上階まで上がった
最上階まで辿りついた時は、そこは屋外だと言うのに廊下があった。
その奥には十字架ではなく、人間と人間が粘土のようにくっついて叫んでいるような紋章が浮かんでいた。
随分趣味の悪い。
『で、どこに花があるんだ?』
僕はアリアに確認すると、アリアは紋章に指を刺した
『あそこよ』
花が咲いて居る場所は、紋章の後ろ側だった。
紋章の後ろは一見崖になっているが、普通は落ちる所に行くとそこにはお花畑があった。
全て白花だ。花弁は白い羽だ
まるで街に降ってきたあの白い羽とは別のようなものだった。
『なんか華が無いよな…………』
魔理沙がそう言うと、アリアは再び魔理沙を睨みつけた
『この花は………≪女神の花≫か………。』
僕はその花の名前を口走ると、アリアはまた嬉しそうな顔をした
『うん。お母さんとお父さんの思い出の花らしいんだ…………。』
だが、また悲しそうな顔をした
『お父さんとお母さんは幼馴染で、小さい頃から結婚しようって約束してたんだって。
そして12歳になった時、ここのお花畑で結婚して私を産んだんだって。』
『12歳!?』
二人の声が重なった
『何よ。別におかしい事じゃないじゃない。10歳から結婚できるのよ』
その言葉を聞いた二人は、口を開けたまま固まっていた
『お父さんは、天使に食べられちゃって死んじゃったんだって。』
アリアは少し声のトーンを落としてそう言った。なぜ今になってその事実を僕たちに言うのか。
僕たちはかなり気まずい空気に囲まれていた
『私も、いつの間にかお母さんが私を産んでくれた年になってるんだなぁ………。』
アリアは寂しそうに摘んだ花を眺めていると、魔理沙と霊夢は少し慌てて
『さっさっさと帰るぞ!』
そう言ってこのお花畑から姿を消した
僕たちもこのお花畑から姿を消そうと、入口のあった場所に体を突っ込んだ
『?』
後ろの方で何か物音がした気がした
振り向くと、そこには大きな顔が見えたような気がした。
その顔は、何かを恨むような顔だった。
一瞬だったので、気のせいかは分からない
『で、こっからどうやって帰るんだ?』
僕はとっさにそう言った後、アリアは苦笑いをした。
笑っている場合じゃないのだが
『アリア、ここって壁無いんだよな?』
魔理沙は箒をまたがりながらそう言った
『うん。この紋章の奥以外の端は本当の崖だよ』
魔理沙はその言葉を聞くと、安心したように箒にまたがりながら宙に浮いた
『よっしゃ!こっからは家まで私が送ってってやるからな!』
魔理沙はそう言うと、僕の手を握った
その後にアリアの手も握ろうと思ったが、魔理沙は拒むように空を飛び始めた
『霊夢!そいつは頼んだ!』
魔理沙はそう言うと、アリアの家の方まで一直線に進んだ
後ろを見ると、ちゃんと霊夢はアリアの手を持って僕たちに付いてきていた。
ちゃんと女神の花も持っている。これでプレゼント作戦は終了か。
いや、あとは渡すだけか
『魔理沙』
『ん?どうした香霖』
魔理沙は僕の問いになんでも答えてやるぞと言うように笑顔になった
『これなら最初から空を飛んだほうが良かったんじゃないか?』
『それは言わない約束だ』
魔理沙は急に真面目な声になりながら僕から顔を逸らした。
そしてしばらくした後、アリアの家にたどり着いた
だが僕はアリアの家を見た後、凄まじく嫌な予感がした
家の前に大勢の野次馬が居たのだ
『なんだよ………この騒ぎは…………』
そこには人、人、犬、人が大勢居た
アリアもこの光景を見た時、かなり青ざめた顔色をしていた
『お母…………さん……?』
僕も同じ心配をした。
僕は居ても立っても居られず、
『魔理沙、ここで下ろしてくれ』
と口走った
『はぁ!?この人の上にか?』
『いいから頼む!!』
魔理沙は僕から手を離し、僕は真っ逆さまに下に落ちてしまった。
アリアも暴れたのだろう。手を離してしまって真っ逆さまに人の上に落ちてきた
『おい!!上から人が降ってきたぞ!!』
さらに人だかりは騒がしくなる
『アリアちゃん!!』
どこからかアリアの名前を言っていたが、アリアはその言葉は聞こえなかったらしく、人ごみをかき分けて家の中に入っていった
『お母さん!!』
僕はいつの間にかアリアより先に居た。
アリアよりも先に母親の状態を確認したかったからか。
僕は母親の居る部屋の扉を開けた。
母親の状態は、信じられない物だった
母親は透けて居たのだ。
まるで空気のように、そこに居ないかのように
下の布団のしわが目立つように彼女は透けていた
『お母さん!!!!』
アリアは医者を乱暴にどけながら母親の傍に駆け寄った
どうして医者がこんなに早くこの場所に居るのか。
誰かがこの状態を察したのだろうか
『お母さん!!花だよ!!今日お誕生日でしょう!!』
アリアは母親に触れようとしたが、アリアの手は母親の胸を貫通した
『…………!!』
僕は思わず絶句した。
これでは薬も飲めないだろうし、検査もできない。
徐々に消えていく彼女。
回復は絶望的だった
『そんな…………』
僕はこの状況に絶句すると。母親の口が動いた
『アリア…………』
アリアはその言葉を一瞬も無駄にしないように耳を傾けた
その顔は、涙でくしゃくしゃになっていた
『アリア………………そのお花…………』
『持って来たんだよ………。お母さんの為に持って来たんだよ…………。』
アリアは母親にすがろうとしていたが、貫通してしまうため布団の上に腕を置いてしまう。
その状況に絶望していると、母親は優しい微笑みを浮かべてアリアの方を見た
『その花…………懐かしいわね…………。』
母親は懐かしそうに、天井に目をやって何かを思い出していた
『あの人と…………あの人と別れてしまったのはもう14年も前なのね………。なつかしいわ………。』
母親の目には涙が一筋流れた
『もうすぐで………もうすぐで会えるわね』
『お母さん!!!』
母親は、今度は僕の方に顔を向けた
『森近さん………。あなたにも出会えて本当に良かった。』
僕の顔は今どうなっているだろうか。無念で一杯になっている事は予想できた。
今は表情以上に無念がいっぱいだろう。歯が震えている
顔が引きつっている。吐き気がする。
胸が、締め付けられる。
『私も………出会えてよかったですよ。まだ一緒に居たいくらい』
僕は本心を言った。
だが、冗談としてとらえられたのか、母親は笑った
『そう。嬉しいわね』
僕は切ない気持になった。
だが、母親はそんな事も知らない様に微笑んでいた
『アリア、森近さん』
この母親は無責任だ。
本当に……………
次に母親を見た時は、そこにはただ羽が花弁の花がそこに置いてあるだけだった……………
いつの間にか野次馬も医者も居なくなっていた。
傍には魔理沙が僕の目をさますように揺さぶっていた。
どうした事だろうか。敗北感が僕の中で湧きあがった
アリアの母親、本名はマリア・ブルーズ。
結局、名前も呼ばずに彼女は去ってしまった。
無念だ。
彼女だけはどうしても助けたかった
『……………なぁアリア』
魔理沙がアリアに問いているが、アリアは振り向かなかった
『お前の母親って………。一体何の病気で死んだんだ?』
『病気じゃないわよ。寿命よ寿命』
僕はその言葉を聞いて思わず声を上げた
『寿命!?』
魔理沙と霊夢と声が重なった。
『人間は30年しか生きる事ができない。故に30年以上は生きられないのよ。』
アリアは羽が花弁の花を握りしめながら、震えていた
『…………なんだよそんな悲しい種族』
魔理沙のその言葉がいけなかったのか、一体何がいけなかったのかアリアは逆上した
『出てってよ!!出てって!!この部屋から出てってよ!!!』
魔理沙と霊夢は何も反論せずにこの部屋から出ていった。
一人になりたいのだろう。僕もちょうど一人になりたいところだった
『師匠は此処に居て………』
僕は思わず耳を疑い、え?と声を出してしまった。
そして二人は部屋から出ていった
この部屋には僕とアリアとマリアの終わりの後しか無い。
アリアは僕の服にしがみつき、わんわん泣いた
父親にでもすがるように、ずっとずっと泣いていた
僕の服がだんだん濡れてきたが、そんな事気にしなかった。
僕も悲しくてしょうがないのだが、涙が出ないのだ。
アリアはまだ僕にしがみついている。まだ泣いている。
しばらくして大人しくなった時、アリアは僕に問いてきた
『師匠………。師匠の国は寿命はどのくらいなんですか………?』
あまりにも辛い質問が来てしまった。
さすがにこの世界の常識とは違う僕の世界では、嘘は付けなかった。
何かに恐れていたのか
『普通の人間は大体80年くらいだ。特別な人で万単位いく人も居る。僕は200年は生きている』
嘘をつく余裕も無かった。だから嘘を言わなかった。
その後、アリアはさらに小さな声で囁いた
『どうして………私の世界はこんなにちっぽけな人生なんだろう………』
僕を掴む手は、次第に強くなっていた。
だが、僕はその事を指摘しなかった。
指摘する余裕も無かったのだ。
窓にまた青い星と白い羽が降っているとき、僕はふと思った
どうして僕はこの世界にやってきたのだろうか?
いつの間にか店の掛け軸に大穴が開いて
その大穴の向こうにはこの世界があって
この穴は魔理沙達は認識できなくて
でも、今はこの世界に居て
大穴
全てはこの始まりからだ
あの大穴は一体誰が開けたのだろうか。
一体何のために、何が目的だろうか
その時、僕はあの花畑で見たあの大きな顔を思い出した。
あの大きな顔は、明らかに僕の方を見ていたのだが、
一体、僕に何が関係しているのだろうか
『アリア』
僕は彼女の肩を持ち、僕の体と離れさせた。
『明日、またあの花畑に行ってみようと思うのだが』
あの大きな顔が関係するのであれば、その場所に行く必要がある
だが、彼女の答えはあまりにも不利な情報だった
『駄目よ。今日は魔理沙のおかげであの花畑に入り込めたけど、私達がその遺跡に入ったから………』
アリアは夕刊であろうような紙を取り出した。
そこには、あの遺跡を厳重に監視する事が書いてあった
『でも、これでも魔理沙や霊夢の技でなんとかなるんじゃないか?』
『そしたら、私もこの街に居られなくなっちゃう』
そうだ。彼女の事を考えて居なかった。
アリアがこの街から追い出されるかもしれない。これは確かだった。
『今度入ったら追放だってさ………。』
アリアは悲しそうにそう言った。
僕は頭を抱えてた。これではどうすればいいのか。
『なら、今度は僕たちだけで行くしか』
『師匠達の顔も見られたの。だから………お願い』
アリアは俯いてそう言っていた。
アリアはこの街が大好きなのだろう。その街に嫌われるのが嫌なのだろう。
『この街が好きなのか?羽が降る、天使が降って来る、天使に食われた父親のこの街を』
途中で最低な事を言っている事に気付いた僕は、途中で言うのを止めた。
『私達は街から出るとすぐ死んで地獄に落ちるのよ…………』
僕は本当に最低だと感じた。
『ならばどうすればいい?』
この質問に、アリアはしばらく考えていた。
そして思いついたのか、少し戸惑っていたが、予想外な答えを返して来た
『師匠と私が結婚すればいいのよ』
もうすぐ完結ですか?